ＧＤＷ雑記帳

　　　　　

　
★考察１３２――平和主義を幻想で終わらせないために必要な視野について　後編　（2024年12月22日作成）
　

　　（※このテキストは12月初旬に書いたものを編集しています^^;）

　　……そんなわけで、前編から続く後編である（笑）


　　前編の最後では「唯一思想による世界革命」が不可能に近いことを書いた。
　　平和を実現するために「思想統制による世界の統合」を考える者たちが一定数いるが、
　　自我が強くワガママな人間に、そんな画一的なシステムが使いこなせる気もしないのである。
　　もちろん筆者は前編の中ほどに書いたように、理性的な協調を重視する考え方だが、
　　現状はまだ「自分勝手な人間が余りに多い」という悩ましい現実を、認めざるを得ない。
　　思想統制的な考え方をする者たちも、結局は自分勝手な考え方を周りに強要しているだけで、
　　「多様性の尊重」などという言葉が白々しく聞こえることが多いのだ。

　　その１方、感情や欲望をコントロールせずに垂れ流すままでも、理想郷は遠いと考えられる。

　　それこそ野生動物と同じであり、それが文明を持つのはとても危険だ。
　　文明の利器は「理性的なコントロール」が出来て初めて有効に機能するものだからだ。
　　分別のない幼児に銃や刃物を持たせたらどうなるか、想像すると分かるのではなかろうか。
　　「野生動物に回帰する」ことが答えでないのなら、私たちは感情に支配されることなく、
　　文明を「理性的に利用する」ノウハウを確立させる必要があると分かるのではないだろうか。

　　独善的な世界観を持つ異民族であっても、それと知って付き合うことは不可能ではない。
　　知らなければ貧乏くじを引くこともあるだろうが、知っていれば「有効利用」も可能だろう。
　　もちろん相手が目に余るほど身勝手に振舞うならば、さっさと関係を切れば良いし、
　　それに激高して攻撃しようとすれば、こちらにも「正当防衛の権利」が生じるだけのことだ。
　　感情に流されず、理性的に現実を直視出来るなら、そうすることが出来るはずなのだ。
　　圧倒的な力関係があればその限りではないが、そこまで差が出来る関係は多くはあるまい。


　　実は「多様性の世界」に、「絶対的な平和」は存在しない、と言うことも出来る。


　　世界中の全ての人間が争わず、和気藹々と共存することを「平和」と定義するのであれば、
　　異なる世界観や常識を持つ異民族が多様に存在する世界では「平和はない」とも言えるのだ。
　　世界観や常識が違う以上、どんなに気を遣っても多少の摩擦は生じてしまうからだ。
　　自然災害をなくすことが出来ないように、人間社会の摩擦をゼロにするのも多分無理だろう。
　　口喧嘩のレベルまで「争い」と見なすならば、争いをなくせないというのも確かだと思う。

　　しかし、「そういう事態を想定出来るかどうか」で、事態の悪化を抑止することは可能だ。
　　これこそ危機管理や安全保障の概念であり、リスクをゼロにすることは出来ないが、
　　大きなダメージを受けないように対策することが重要だという論理である。
　　そして「大規模な戦火を十分に抑止出来る世界」が可能であるなら、
　　多少の諍いや摩擦はあったとしても、その世界は「相対的に平和である」とは言えないか。

　　実は筆者が願い、期待する平和はまさにこのレベルの平和なのである。

　　現に日本は平和な国だと良く言われるが、同時に世界屈指の「災害大国」でもあるはずだ。
　　常に災害に備えてきたからこそ、災害を「日常レベル」で見られるようになったのだ。
　　記録破りの豪雨や台風、巨大地震などが来れば日本でもただでは済まないが、
　　例えば震度４くらいの地震では「いつも通り」なのが日本人の“日常風景”だろう。
　　地震に慣れていない外国人からしたら、これは十分に「クレイジーな非日常」なのである。
　　耐震構造に不理解な国なら、実際にこのくらいの震度でも家が倒壊したりするのだ。

　　極端なことを言えば、あらゆるリスクに十分に対処可能なシステムやスキルがあるのなら、
　　混沌に満ちた世界でも、日常風景の１部に取り込むことだって出来るはずなのだ。
　　例えば海外では結構な頻度でコンビニやスーパーで強盗事件が起き、
　　日本でもたまに起きる（外国人がやらかすケースもある）が、想定の範囲内であるならば、
　　防災措置によって強盗を抑止することも決して不可能ではないだろう。

　　価値観の違う異民族やマイノリティの尊厳も、最大限に公平に尊重すべきである１方で、
　　彼らが社会の基本ルールを無視するなら、「公平に裁けば良い」までのことである。
　　勘違いしている者もいるようだが、「尊重」と「優遇」は全く違う概念であり、
　　優遇する必要などない……「対等の立場」であることが望ましいからだ。
　　だから仮に「自国民より外国人を優遇するようなシステム」があるのなら、改正が必要だ。
　　国家が最も大事にしなければならないのは「国民」なのだから。

　　故に国会議員の選挙権など、「自国民と完全に同じ権利を外国人に与える」ことに対し、
　　反対する意見があることは理解可能だし、筆者も基本的に反対の立場である。
　　外国人に自国民と完全に同じ権利を与えるのが正しいのなら、
　　そもそも国家や国民といった概念も曖昧なものになってしまう危険性があるからだ。
　　（「国家解体」を夢見る左派の活動家がこうした外国人選挙権をよく訴えているらしい）
　　国政の是非にどうしても参画したいなら、国籍を取得すれば良い話であるし、
　　国境を越えたルールを作りたいなら、国連などで国際法の提起をするという手もあろう。


　　時々感じるのは、日本という国は、かくも「覇権主義者に嫌われる国」だということだ。


　　ことある度に反日的な主張を展開する、近隣の韓国や中国だけではない。
　　「独善的な１神教世界観」に影響を受けている、アメリカなどの欧米列強も含まれる。
　　今でこそ欧米諸国は「反日ではない」が、日本が急速に近代化し国力を蓄えた前世紀初頭、
　　欧米列強は日本の急成長を「覇権の障害」と見ていた節がある。
　　アジアの台頭が欧米を脅かすという「黄禍論」も、知る人ぞ知る人種差別的な言説だろう。
　　世界征服という壮大な野望を持つ国や指導者にとって、日本は相当に目障りな国なのだ。

　　何故なら、日本は長い歴史を有し、世界列強に居並ぶ高い実力を持っておきながら、
　　世界征服という野心に「ほとんど無縁」な国でもあるからだ。
　　大東亜戦争時代に、「日本も世界征服を試みた」という説があるが、
　　これは敗戦国に責任を負わせるための「事後的なレッテル貼り」の要素が強いものである。
　　いわゆる「大東亜共栄圏構想」も、本来はアジアにある欧米の殖民地を独立させて、
　　相互に国力を蓄えてアジアを自立させるという構想だったし、
　　朝鮮半島や台湾の併合も１方的な軍事侵攻で制圧したものではなかった。

　　また日本は「多神教文化圏」に属し、異教徒に対して寛容的な文化を持っている。

　　“国産”の宗教に相当する神道は、渡来宗教である仏教と共存するスタイルを取るし、
　　１神教文化圏に属するキリスト教やイスラム教のように、異教徒を敵視することも少ない。
　　安土桃山時代から江戸時代にかけてキリスト教を追放し鎖国政策を採ったのは、
　　宗教弾圧というよりもむしろ、西欧列強の植民地化工作を阻止するという意図があった。
　　戦後教育では鎖国政策を宗教弾圧と解釈した歴史教科書もあるが、
　　これも恐らくは、敗戦国となった日本の歴史認識をＧＨＱが変えようと図ったものだろう。

　　現在においても、例えば日本式のアニメが世界で人気な理由として、
　　映像のクォリティやドラマの奥深さに加えて、「宗教色のなさ」が挙げられている。
　　デリケートな宗教問題を気にせずに楽しめる作り方がなされているのが特徴の１つなのだ。
　　これはイスラム教の影響が色濃い中東に『ドラゴンボール』のテーマパークが構想され、
　　実際に現実になろうとしていることからも分かることである。
　　戦争の理由にもなるほど敏感な、宗教の枠を越えるほどの力が、日本アニメにはある。
　　厳格なイスラム国家の１つであるサウジアラビアの皇太子も、日本アニメファンだそうだ。

　　こうした事実も、ムスリムが常に異教徒と敵対しているわけではない証拠だろう。
　　付け加えると、日本はかつては欧米列強の植民地工作に対峙し、
　　日露戦争ではロシア帝国を敗走させ、大東亜戦争では植民地主義の時代を終わらせた国だ。
　　こうした「有色人種の尊厳を守った歴史」を称えるムスリムも多いそうである。
　　日本とは違った世界観を持つ民族なので、100％信頼出来るわけではないが、
　　欧米諸国のような因縁を持たないこともあり、日本は中東で概ね好意的に見られている。
　　日本人を攻撃したテロリストもいるが、それはあくまでも少数派なのだ。

　　「神話などで悪を決め付けていない」のも日本の宗教文化の大きな特徴の１つだ。
　　神道やそれをベースにした日本神話には、悪魔という概念が存在しない。
　　人間に不幸をもたらす事象に対しても、「疫病神」などのように神の概念で応対している。
　　逆説的に言えば、日本において神とは「絶対者」の意味ではないということだ。
　　日本の風土に根付いた霊的なシンボルを指す言葉だが、それ以上のものではないし、
　　善悪の境界線を曖昧にしておくことも、日本人の大らかさの源泉になっているように思う。

　　日本は古来から、多様な文化を極力差別せずに受け入れてきた国であり、
　　独善的な覇権を追求せず、民族を越えた共存共栄を理想と考えてきた国なのである。
　　それ故に、固有のイデオロギーで世界を支配しようと考える国や指導者に、嫌われるのだ。
　　移民に厳しいのは日本というアイデンティティを破壊し兼ねないからであり、
　　異民族に対して差別的な感情を持っているわけでは必ずしもないのだが、
　　日本のやり方が気に入らない覇権主義者は、そこに付け入って印象操作をしたがるのだ。

　　だからこそ、私たちも「知識武装」して誤解されない対策を立てる必要があるのである。

　　物理的な抑止力である軍事力だけではなく、情報における安全保障も重要であり、
　　外国人や異文化に対しても、同様に深い理解によって不要な摩擦を軽減する努力が必要だ。
　　もちろん「話が通じない場合」のために、物理的な抑止力も必要ではあるが、
　　それはあくまでも「身を守る最後の手段」であるべきなのは、これからも変わらない。
　　可能な限り戦わないことが望ましいが、生き残りを賭ける必要があるなら、
　　「戦う覚悟」も時には必要であり、それも含めた「覚悟のある平和主義」でありたい。

　　異文化に寛容な先進国である日本は、キナ臭い世界に希望をもたらし得る可能性を持つが、
　　国内にも巣くっている独善的な活動家たちが、そんな日本の活躍を妨害し続けている。
　　前時代的な覇権主義のロマンに浸り続ける者たちや、非現実的な理想にこだわる者たちが、
　　日本が「現実主義的な平和主義」を実践しようとする試みを阻害しているのだ。
　　欧米諸国も基本的には日本の味方であるが、上記の通り１神教文化圏の国々であるため、
　　必ず同じ視野を持っているとは言えない所もあり、悩ましいのである。


　　可能ならば――日本こそ「真の多様性」を体現する国になって欲しいと筆者は願っている。


　　多様性とは名ばかりの、独善的なイデオロギーを押しつける欧米のポリコレではなく、
　　あらゆる文化遺産を対等に捉えて、民族を越えた共生を探るような国になって欲しいのだ。
　　これは「１神教世界観」に縛られる欧米や中東イスラム圏には、多分出来ないと思う。
　　彼らがそれをやると、どうしても独善的な「上から目線」になりそうに見えるからである。
　　その世界観に縛られる限り、彼らは「創造主の圏外」を想像することが難しく、
　　「異文化の神」を対等に受け止めることも難しいのではないかと筆者には見えるのだ。

　　原点から「無数の神々」を想定する日本の世界観は「マルチバース」とも言えるだろう。

　　多様な世界観を対等に受け止められる視野を持つ主要国、というとやはり日本なのである。
　　自惚れに聞こえることを覚悟で書くが、上に書いた「人類の次の段階」の可能性を、
　　強く持っている国の代表格が、日本であると筆者は考えている。
　　もちろん日本にも問題はあるが、世界観を越えた相互尊重という概念に最も近いのが、
　　多神教文化を持ち、異文化に寛容で、更に静かで優しい国民を持つ日本だと思えるのだ。
　　日本より相応しい国があるというなら、逆に聞いてみたいくらいである。

　　日本の寛容さが、より広い視野を獲得して影響力を強めることが出来るのなら、
　　それこそ「真の意味での平和」を日本が実現することも夢ではなくなるのではなかろうか。
　　もちろんこれはあくまでも希望的観測の話であり、今の日本では難しいことである。
　　異文化に寛容でクールな国だが、国際協調の重心を担うほどの影響力はまだないと思うし、
　　欧米や中国など他の列強国に振り回されがちなところもあるからだ。
　　日本が国際社会のイニシアチブを握るには、更に経験を積んでいく必要があるだろう。

　　狡猾なネガティブキャンペーンを展開する、活動家たちに向き合うスキルの強化も必要だ。

　　何かと日本のマイナスイメージを煽りたがるこれらの活動家たちは、
　　日本が国際社会のイニシアチブを握る未来など、最も望んでいない状況に違いない。
　　いや厳密に言うなら「今の日本が」と書くのが正確かも知れない。
　　左派の活動家たちが目指すのは「日本の共産化」だからだ。
　　2,000年の歴史をリセットし、日本の共産化を仮に彼らが実現した暁には、
　　日本の国力を最大限に使って、「世界革命」という覇権を推し進めようとするだろう。

　　別に決め付けるつもりはない……これはかつて共産主義者の国際組織であった、
　　第３インターナショナル（通称コミンテルン）が公式に目指した世界戦略だからだ。
　　日本共産党に代表される日本国内の左派も、このコミンテルンの影響を強く受けている。
　　故に日本を革命によって共産化すれば、それを世界に拡げようとするはずなのだ。
　　多様な文化を内包することこそ日本のアイデンティティだと筆者は考えているので、
　　これは何としても避けるべきだと考えている……共産主義という「１神教」を国是に据え、
　　日本の歴史を抹消することは、日本の滅亡に等しいからである。


　　ただし――そうした左派の価値観も“全否定”するつもりはないのである。


　　筆者が考える「多様性の尊重」には、左派の価値観を尊重することも含まれるからだ。
　　左派が推進する価値観も全てが否定に値するものではなく、
　　富の偏在を緩和する社会主義的な取り組みは、大いに評価に値すると考えている。
　　共産主義の悪いところは「１党独裁による権力集中」にあると考えており、
　　民主主義的な「権力の相互監視」と組み合わせる方が、活かしやすいと筆者は考えている。
　　これは旧ソ連にしろ中国にしろ、集団指導体制時代が「最も大人しかった」のも証拠だ。

　　ただしスターリンにしろ毛沢東にしろ習近平にしろ、単一の独裁者を容認した共産国家は、
　　中世ヨーロッパの「絶対王政」や古代中国の「皇帝政」と同じであり、
　　暴君的な「恐怖政治」を止められないリスクがあるため、大きな問題を抱えるのである。
　　もちろんコミンテルンが推進した「世界革命構想」も問題だ。
　　全世界を共産主義１色に「塗り潰してしまう」など、典型的な多様性の否定であろう。
　　結局の所それはクリスチャンやムスリムが夢見た“世界征服”と同質のものなのである。

　　王家が長く続いている国は、「王家とは別に政治権力の構造がある」共通項がある。
　　1,000年以上の歴史を持つ世界の３大歴史大国である、日本、デンマーク、英国に共通し、
　　いずれも王家を有すると同時に、これとは独立した政府機構を持っているのだ。
　　王権独裁という腐敗構造を回避したことが、長い歴史を育み得たことがよく分かる。
　　その意味において、日本の天皇制を、他の腐敗した王家と同一視することも無知なことだ。
　　ましてや天皇を「侵略戦争の主犯」のように決め付けるのは論外である。

　　天皇陛下は当時確かに「総責任者」だったが、彼が１人で戦争を命じたわけではないのだ。
　　大東亜戦争を主導したのは天皇家とは独立した日本政府と軍部であり、
　　その決断の是非に賛否はあろうが、天皇陛下はその決定を「追認しただけ」なのである。
　　そして王権と政府が別個にあるからこそ、こういうやり取りが生まれるのであり、
　　同時に「暴君の暴走」を抑制することも可能になるのだ。
　　そして現代も王家が残る国は、大体こういう制度で国を運営しているはずである。

　　前編でムスリムの“ヘイトリスク”に釘を刺したのも同じ視点からである。
　　歴史や価値観の異なる異民族を無邪気に信じるのもおめでたい話だとは思うが、
　　価値観が異なるからといって差別が正当化出来るわけではない、と考えられなければ、
　　民族を越えた平和など語る資格はない、と言いたいのである。
　　異民族ならではのリスクがあるなら、それをカバー出来る方法を考えれば良いだけであり、
　　感情論で敵視しても、悪しき歴史を繰り返すだけだと考える必要がある。

　　だからこそ、日本人はもっと「世界の真実」を学び、理解を深める必要があるだろう。
　　日本人は異文化に寛容でクールだが、視野が十分に足りているとは言えないからだ。
　　筆者自身上から目線で言えるほど世界に詳しいわけではないが、
　　感情論で異民族を批判するような「幼稚な行為」は極力したくない、と考えている。
　　それは世界をリードする使命を持つ、先進国の国民として恥ずかしいことだと思っている。
　　リスクがあると認識しているなら、それを冷静に克服する方法を考えたいのだ。


　　キナ臭い世相が続くと、人類の未来に悲観的な気分になるが、絶望だけはしたくない。


　　その１方で「平和」という概念が、イデオロギー用語としてだけ使われるのも感心しない。
　　平和とはそんなに浅い概念ではないはずなのに、自己都合で弄ぶ人々によって、
　　平和という言葉の意味まで軽くなってしまうのは、とても残念である。
　　しかし同時に、民族や宗教などの“壁”を越えた平和を実現するためには、
　　その民族や宗教の“常識”をよく知る必要があり、それが足りている人はまだ多くない。
　　これは専門家も例外ではないと思う（返って「専門バカ」になる恐れがあるからだ）

　　しかし異民族や他宗教の常識や現実に多くの理解を得ることが出来る限りにおいて、
　　民族間、宗教間に存在する摩擦のリスクを減らすことは可能なはずなのだ。
　　これは単純に「話せば分かる」といった理想主義的な概念ではなく、
　　むしろ『兵法』に「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」などと書かれたように、
　　外交戦略や安全保障の文脈でこそ、活かすべき方策ではないかと考えるのだ。

　　同時に自然災害の話をしたように、リスクを想定内にして対策を行うことによって、
　　それを「日常化」することもある程度は可能になるのである。
　　理想郷のような平和ではないが、日常の許容範囲にリスク抑制が可能であるのならば、
　　その日常は「相対的に平和」なはずであり、それを目指すことは有意義なことだと思う。
　　また外国人労働者などの問題も、そうしたリスク管理の枠で扱いたいと思うのだ。
　　トラブルが多いからって感情論で対処すると、結局は差別の温床になるからである。

　　中国では最近、通行人を無差別に襲撃するような通り魔的な犯罪が相次いでいるという。
　　日本人児童が刺殺された深?の事件もその１つだが、それ以外にも続発している。
　　数年ほど前まで、中国は「幸せな監視社会」などと言われていた。
　　これは無数の監視カメラで生活を管理される、ディストピア的な監視社会化が進みつつ、
　　経済は好調なのでそれほど問題視されていないという世相を指していたが、
　　急激な景気悪化が起きたことで、人民のストレスが一気に暴走し始めたのである。

　　これは「平和維持に何が重要なのか」の意味深な示唆とは言えないだろうか。
　　経済成長などによって、人々に豊かな暮らしを約束させることももちろん大事であるが、
　　相互不信でピリピリするような空気を、出来るだけ作るべきではないという示唆だろう。
　　もしも今の中国社会に、人民相互の尊重や信頼に基づいた優しい関係があったら、
　　こんな世相になっていただろうか、と筆者は問わずにいられないのだ。

　　そのためにこそ、「お互いをよく知る努力」が重要になるのではないだろうか。
　　国家権力による１方的な監視ではなく、相互尊重による信頼関係の醸成こそ大事であり、
　　日本は幸い、国内ではそうした相互尊重や信頼の醸成に成功しているが、
　　世界平和を目指すのなら、こうした試みを「世界規模」でやることを考えるべきだろう。
　　もちろん異民族の世界観は私たち日本人とは違うから「勉強」が必要であり、
　　それをどこまで極めていくかが、世界平和の重要な鍵を握るのではないかと思うのだ。