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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E042） |
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無造作に鉄格子を開ける音で、俺は目が覚めた。
気がつけば、目の前にナンバー２が。
「アイガー、出ろ。ミッションだ」
ナンバー２の手には、拡散性ＥＭＰ発生器の操作レバーが握られている。
レバーの下から伸びているコードは、俺を縛る電極の束につながっている。
……こいつの道具にだけは、なりたくなかったが……畜生め。
「……ミッション？ 俺はただの実験体じゃなかったのかよ」
「私にとってはな。 だが、アイガーよ……復讐したい相手がいるのだろう？」
なっ……どこから漏れたんだ？
あいつが……ホルスがそんな野暮なことを言うはずはねぇ。
そう言えば……ホルスはどうなったんだ？
とてつもなく嫌な予感がするが。
「誰から聞いた？……だとしたらどうだというんだ」
「復讐させてやると言ってるんだ……感謝して欲しいものだな？」
こいつ……１体、何を考えてやがるんだ？
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第４章 戦いの幕開け ★
第２話 復讐の始動
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「くっくっく、似合うじゃないか、人間の時よりも強く見えるぞ？」
下らねぇことばかり言いやがって……普通にシャツとズボンを着ただけだというのに。
俺の腕に巻きついてる電極がなければ、今頃てめぇは刺身だぞ。
「それで……どう運ぶ気だ？ いくら変人の貴様でも、往来の中に俺を放置はしないよな？」
「お前はここで待ち構えていればいい……陽動作戦は普通の人間にやらせるさ」
「……陽動作戦？ 相手はプロなんだろ、簡単に引っかかるのかよ？」
「引っかかるさ……人質を取れば済むことだ、くくく♪」
ナンバー２が、ひときわ嫌らしい笑みを浮かべ、肩をゆすって低く笑った。
何をしても気色悪い動作になるなこいつは。
「お前が最初の屈辱を受けた町外れの廃校、そして先日のラボ近傍での衝突……
どっちにも関わっている、素人の娘たちが２人いるだろう？」
……あの２人組のことか。
１人は抵抗したんでその場で固めてやったが、復元されたみたいだったな。
台風の日にもう１度廃校を訪れたが、もうあの娘はいなかったし、行方不明者の報道もなかったみてぇだからな。
「人質ねぇ……」
「素人の娘２人くらい、他のメンバーでも問題はない」
「黒い髪の女が、あの男と一緒にいると聞いたぞ？ そいつもプロらしいが大丈夫か？」
「んー？ お前にしては、やけに慎重だなぁ♪」
「別に……ナメてかかると痛い目に会うこともあり得る、９号――ホルスの口癖だったんでね」
「くきききき♪ 心配ないさ、そんなこともあろうかと、すでに２号体も用意してあるんでね」
ナンバー２はひときわ狂ったような笑い声を上げ、意味深な目つきでそう言った。
――２号体、だと？ まさか……！
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「――来たまえ、メタロード第２号“ホルス”」
ナンバー２の言葉と共に、処置室の扉が開かれ、前室に１人の男が現れた。
……そう、俺がよく知っている男だ。
「……ほ、ホルス……」
よく知っている男だ、が……入ってきたホルスは、俺の予想を超えて変貌していやがった。
まるで作りたての銀貨かプラチナのように輝く、白銀のボディ。
淡い金色を帯びた、オールバック気味の長い髪。
サファイアのような目と、同じ色をした額の結晶体。
全身に刻まれた模様は青みがかった銀色に輝き、
まるでリベットでも打ち込んでるみてぇに、ルビー状の小さな結晶が並んではまっている。
だが、何よりも不気味だったのは……ホルスがまるで無表情だったことだ。
「貴様……ホルスに一体、何をした？」
「何って、見てのとおりさ……まぁちょっと従順になるように、自我を抑え込んだがね」
……俺は耳を疑った。
これがいつも、「洗脳は性に合わない」とほざく男の回答だというのか？
「今、彼の人格は、電脳チームがあらかじめ上書きした、仮想人格の支配下にある。
とても従順な兵士だよ……私もここまでうまくいくとは思わなかったが」
「て、てめぇ……これじゃロボットも同然じゃねぇか！」
「人聞きの悪いことを言わないでくれよ、生命体は必ずしも自我が優先されるわけじゃない。
個より全体の利益を優先する知性も、自然界には多くあるんだぞ？」
俺は今にも殴りかかろうとする衝動を、必死に抑え込んだ。
今そんな行動に出たら、間違いなく拡散性ＥＭＰの制裁を受ける。
もがき苦しむ俺を見下して笑う、ナンバー２の馬鹿面だけは見たくねぇ。
「さて……作戦を始めるとしようか。アイガー、君はギャラリーでも眺めているといい♪」
けっ、大した余裕だな、コイツは。
まぁ……あいつに復讐できるのだから、今は耐えておくか。
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“ギャラリー”は閑散としていた。
研究チームの白衣どもは、俺を恐れてメインラボに引きこもっちまったし、
黒服の工作員連中は別室待機組以外は出払っているからだろう。
メインラボの入口に、ホルスが人形みたいに突っ立っている。
俺が暴走してラボの連中を切り刻む可能性に備えて、立たせてるらしい。
さっき何度か話しかけてみたが、応答は皆無だった……くそ、無残なもんだな。
ナンバー２が部屋を出て行く時に発したコンピュータみたいなセリフが、耳に焼き付いて離れねぇ。
……あれがホルスを抑え込んでる、仮想人格というやつか。
もちろん――閑散ったって、誰もいないわけじゃねぇ。
人間じゃないヤツはいっぱいいる……もっとも俺以外は、自由に動けねぇやつばかりだが。
そう言えば、この体になってから、この部屋に入るのは初めてだったな。
それにしても、静かだな……全員、思考を停止しているのか？
……いや、どうやらそうでもないらしい。
（……ぅ、ぁ……っく、はぅ……ぁっ……）
（……、……！…………、……！！…………！……）
意識を澄ませると、周りに立ってる身動き１つしない石化実験体から、かすかな喘ぎが聞こえる。
もちろん……肉声じゃなくて、精神の呻きだが。
言葉にすらならずに、途切れながら感情を発散する奴も何人かいる。
さては、ナンバー２のやつ……出て行く前にこいつらに拡散性ＥＭＰを食らわせやがったな。
悪趣味極まりない、ナンバー２の“拷問趣味”の１つだ。
指先１つ動かすことのできねぇこいつらが、精神崩壊寸前まで追い込まれるのが、
ナンバー２には楽しくてたまらねぇらしい……筋金入りのサディストだ。
今は少し、同情しちまうぜ……あの電撃は、全身を何度も切り裂かれるみたいな痛みを感じるからな。
おまけに電撃を止めても、激痛がしばらく体内で乱反射しやがるんだ。
しかもここにいる連中の場合は、どんなに痛くても身をよじることすらできねぇ。
それこそ、魂をズタズタにされるような気分だろうぜ。
ここにいると、俺まで気が滅入りそうだ。
そう思って、俺はギャラリーを出ようとした。
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――その時だった。
（……ぃ、行かなぃ……で…… ――くぅっ……ぉ、お願い……）
……今、俺に話しかけたのは誰だ？ 奥にいる第７０番実験体か？
そういやあいつ……ホルスと何度か会話していたな。
「……何故だ？ 俺がいても、何も変わるこたぁねぇぞ」
（……そ、そんな、こと――ぅあっっ……ない……ぁ、あなた……この、痛み……知って、る……）
「それがどうした？ 看病でもしてほしいのか、あぁん？」
（……うぅっ……こ、ここ、に……っっ……ぃ、いて、くれる……だけ、で……）
「甘ったれんじゃねぇぞ……他の連中は――――！！？」
（……い……行かない……で……）
（……ちょっと、だけ……で……ぃい、から……くぅぅっっ……）
（……ぉ……がぃ……もぅ……こ……だけ……ぃて……）
（…………！……、…………！！……）
――な、何なんだ、こいつらは！？
俺を頼っているというのか……何故だ、俺なんかを！？
こいつら、俺が誰か分かってるのか！？
お前たちを拉致して、石化する実験に付き合っている人間だったんだぞ、俺は！？
（……ほ、ほら……み、みんな………言って、る――ぅっっ……）
ば、馬鹿馬鹿しい……傷口を舐め合う関係など、俺は……
だが――何故だ、何故脚が動かない？
脚だけじゃねぇ……何かが俺を引き止めてやがる。
……同情の所為か？
確かに……今や俺も他人事の痛みじゃねぇが。
待てよ……同情、だと？
もはや血も涙もなくなった俺に、そんな感覚が残ってたのか？
――そうか、俺は今感傷に浸ってたか――
俺は思わず、後ろを振り向いた。
今頭の中によぎった言葉をかつて放った、その張本人を見る。
……相変わらず、何も感じていないような表情で、そいつは突っ立っていた。
ホルス……お前には、この光景が見えているのか？
お前だったら……この状況をどうする？
今……お前はどこにいるんだ？
何かが始まろうとしている。
俺の個人的な復讐とは違う、もっとでけぇモンが。
俺は思わず、身震いした。
“金属戦士”の武者震いなのか、それとも忘れかけていた恐怖感なのか。
まったく皮肉だよな……人間を捨てて、感情に目覚めるなんてよ。
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| （第４章第３話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2008年頃に草稿を作成したエピソード。
アイガー視点で描いた２つ目の物語で、メタロード化したホルスが最初に登場する。
同時にこの“実戦型メタロイドコンビ”の今後を占うエピソードにもなっている。
またホルスの自我を抑え込む上書きプログラムも、この時は深く考えていなかったが、
後の戦闘エピソードで再利用することになったりもする（笑）
せっかく作った設定なのだから、色々なところで使いたいのは親心でもあるのだ（爆） |
