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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E012） |
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最近、妙な連中が暗躍しているらしい。
少女ばかり拉致しては石や金属の生きた彫像に変えるという、
およそ合法とは言えない実験を繰り返しているそうだ。
非人道的、というと偽善に聞こえるかも知れんが、事実そう思うよ。
ある程度サンプルが揃ったら、施設ごと放棄して行方をくらます。
彫像にされた少女たちも置き去りにしてね……多分かさばるからだろう。
そしてまた別の場所で活動を始める……ほとぼりが冷めた頃にな。
何が目的なのかよくは分からんが、かといって放置できる問題じゃない。
……別におせっかいでこんなことを言ってるわけじゃないよ？
俺はそういう、オーバーテクノロジーの気配がある危険な行為を、
摘発し抑制するために活動してるんだ。
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第１章 動く石化少女 ★
第２話 星から来た男
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俺の名はヤヌス・パドル。
簡単に言えば宇宙人のエージェントだ……外観は人間そっくりだけどな。
組織の性質や使命なんかを詳しく言ってもさっぱりだろうから、説明は省略させてもらうが。
……いや、決して面倒ってワケじゃないけど。
詳しくはココを参考ってことで。
――で、２度ほど、そいつらが放棄した山間部の施設を訪れたことがある。
雑木林の奥に半地下の施設が、ツタに半ば覆われて埋まっていた。
その施設の地下部分に、３０体ほどの彫像化された少女が放置されていた。
しかも何も着てない状態でね……ひでぇことするもんだぜ。
その中に１人だけ、意識が残っている娘がいた。
１年位前に石化されたらしく、はっきりではなかったが過去を記憶していた。
彼女は自分を“ルイ”と名乗り、俺に元に戻りたいと訴えかけてきた。
しかし……俺はそれは難しいと言わざるを得なかったんだな、彼女には酷だったが。
彼女たちを彫像へと変えた物質の名前を、俺は知っている。
メタ・クォーツ……あるいは、メタ・ソリッド。
特殊な技術で合成された鉱物で、生命体に侵食し、融合・同化してしまう特性がある。
もちろん、この星――地球文明の水準から見れば、明らかなオーバーテクノロジーだ。
同化された生命体は生ける彫像と化し、その魂と意識は冷たい鉱物の中に閉じ込められる。
同化されてからの時間が２〜３ヶ月程度の場合は、元に戻してやることができる。
しかし、３ヶ月を過ぎれば困難になり、半年以上はほとんど絶望的だ。
被害者の意識や思考は最悪の場合停止するが、それでも死んでいるわけではない。
肉体が均質な鉱物に置き換えられるため、鼓動や呼吸も停止するから、
生存していると厳密には言えないんだが、少なくとも死んではいない。
……というより、魂が体を離れられないんだな。
ルイと名乗る少女の場合は１年を過ぎていたから、確実に復元は不可能だった。
実際、復元を可能にするための“情報”は、もう彼女の中にはなかった。
何で無理なのかは説明が長くなるから省略させてもらうが。
当然、彼女は失望した……心苦しいが、こればかりはどうしようもない。
ただ――１つだけ望みがあった。
それは、封印状態の彼女の魂や幽体（精神体）を、この鉱物と完全に融合させてしまうことだ。
彫像化されただけのメタ・クォーツ変異体は、石化した肉体と精神体の結合に障害が起きている。
メタ・クォーツはただの鉱物ではないため、魂はそこから抜け出すことができない。
だが石化された際に被害者が拒絶反応を起こすことが多いため、精神体と肉体の結合場にヒビが入るんだな。
結果的に、これが被害者の半永久的な活動停止を引き起こしているってワケだ。
逆に言えば、被害者が石化した肉体との共生を受け入れることができれば、
この障害を修復し、活動能力を復元することが可能になるんだな。
……もっとも、動けるようになったとしても、体は鉱物のままなんだが。
地球人の精神体はまだ十分に進化していないから、鉱物の体を十分に制御できない難点もある。
視覚や触覚は戻るものの、体質自体は石像と同じだから、動けても活動能力は制限されるし、
体内組織も均質化されているので、基本的に活動能力以外の機能は戻らない。
つまり喋ることはできないし、食事をする能力もない……もちろん有機生物としての諸機能もだ。
自分で考えて、意思を行動に反映する。
メタ・クォーツ同化生命体“メタロイド”に与えられる能力は、基本的にそれだけだ。
もちろん、メタロイド特有の能力もないわけじゃないが、
それは被害者の意識が、鉱物化した肉体の特性を熟知した場合に限られる。
精神体融合初期のメタロイドは、ゆっくりと歩くことで精一杯だろう。
その体に慣れるまでは、かなり強く意識しないと動くこともできないからな。
ルイはしばらく悩んでいたが、最終的にはメタロイドとなることを受け入れた。
俺は彼女の精神体に干渉し、破損した結合場を修復してやった。
彼女はすぐに、活動能力を復元させた……覚えは早そうだった。
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そして、それから半年余り。
俺はまた、その施設に脚を運ぼうとしている。
鬱蒼と茂る雑木林を掻き分け、急斜面をよじ登っていくこと１時間余り。
ジャングルのような森林の中に生まれた小さな盆地の角に、その施設がある。
半分以上は地下に埋まっており、コンクリート打ち放しの壁に、小さな窓が２、３個、
そして重そうな鉄の扉が１つ……赤錆が浮き上がり、傾いている。
今にも外れて倒れてしまいそうだが、絡まっているツタがかろうじて扉を立たせている。
窓の奥で、何かがちらりと動いた……あぁ多分、彼女だな。
間もなく窓から赤い顔がのぞき、俺の姿を確認すると手を振った。
木漏れ日を反射して、その真っ赤な腕がキラキラと輝く。
その質感はちょうど、宝石のルビーにそっくりだ。
……実際のところ、メタ・クォーツの硬度はダイヤモンドにも匹敵するんだがね。
多分１０階建てのビルから転落しても、傷１つつかないだろう。
（パドルさんっ、久しぶりですっ！♪）
錆びて傾いた扉をこじ開けて、全身真っ赤な少女が小走りに駆けてくる。
……へぇ、もう走れるようになったのか。
と、その扉の奥から、もう１人がこっちを見ている。
エメラルド色の顔……確か、前回訪れた時に処置した子だったか。
あの子も階段を上れるようになったんだな。
……っておいおい、抱きつくなって。
「よ、よぅルイ……元気してたか？」
（はいっ！♪ もうピンピンですよぉ☆ ……ちょっと埃被ってますけど///）
宝石のような赤い顔がコロコロと人懐っこそうに笑う。
もっとも、その目に瞳はなく、１見視線の方向は分からない。
だが、その奥にきらめくかすかな輝きは、確実に俺の方を見ている。
半透明の鉱物でできた体はところどころが透けていて、着ている服や背後の草木がぼんやりと歪んで見える。
「あの子は……前に処置した子だよな？ 大分普通に動けるようになったんだな」
（あ、エミちゃんですよね？ はい、まだ遅いけど普通に動けますよ♪）
俺は彼女たちの心の声が聞こえる。
まぁ、聞こえるからこそ復元処置をサポートできるわけだが。
俺はルイの後に続き、施設の中に入った。
エミと呼ばれた子が、玄関でおずおずと頭を下げる。
（ど、どうも、こんにちわです……こ、この前はありがとう御座いました）
「礼はいいよ、俺の方も酷な選択をさせたわけだし」
（い、いえっ！ そんな、あたしが選んだ体ですから……）
彼女はどうやらルイより大人しい性格らしい……芯はしっかりしてそうだが。
廃棄された施設は相変わらず薄暗く、むせ返るほど埃臭い。
もっとも、息をしない彼女たちには関係ないだろうな。
ルイとエミが使っている、元雑品倉庫らしき部屋はそれなりに整理されているが、
それ以外は文字通り廃墟のようだ……いや実際廃墟同然なんだが。
（あ、そうだパドルさん……えーと実は、頼みたいことがあったんですよ）
ルイがいきなり、もったいぶったような態度で語りかけてきた。
彼女がいつもの積極性を控えた態度を取る時は、
大抵自分たちだけでは対処できない事態が起きている。
「その様子だと……また回復者が出たか？」
（……分かります？ はい、まだちょっとおぼつかないんですけど……）
そう言って、ルイはエミの肩に手をかけた。
（エミちゃんが気付いてくれなかったら分からなかったかも……ありがとね）
（え？あ、そ、その……は、はい、いいえ……）
エミは戸惑いを隠し切れない……今時珍しいぐらい純粋な子だな。
余り笑わないのはどうやら、まだうまく表情を作れないのもあるようだ。
まぁ、活動能力を復元してまだ１ヶ月程度だから、それでも大したものだがな。
「まぁ取り合えず……紹介してくれるかな？」
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廃棄された実験施設の奥の部屋に、石化された少女の像がずらりと並んでいる。
その数、２９体……ルイとエミを含めれば３１体だ。
最初にここを訪れた時は、ルイもエミもまだ微動だにできない彫像だったからな。
しかもあの時は、ルイ以外の少女像にはまったく意識の発露が見られなかった。
言ってみれば、仮死状態も同然……もちろん、エミもだ。
そして今もなお、２９体の意識が戻らず、仮死状態のままというわけだ。
様々な種類の半透明の鉱物や、大理石に似た石に変えられた少女の中に、
数体ほど、メタリックな光沢を放つ少女が混じっている。
彼女たちは、金属成分を持つ初期のメタ・ソリッドの同化変異体だ。
推測だが、恐らく石化……いや、金属化されてから２年以上は経っているだろう。
金属系メタ・ソリッドの変異体は、最も精神体の封印効果が大きい。
もしも意識が戻らねば、それこそ何千年も仮死状態のままということになる。
余りといえば余りな仕打ちだが……さしもの俺にもどうにもできない。
彼女たちが自分で目覚めない限り、どうすることもできないんだ。
ルイはその中ほどに置かれている、青い鉱物様の少女を示した。
見た目、ただの石像にしか見えない。
意識が活発に発露しているメタロイドは、ルイにしてもエミにしても、
ただの石像とは違うオーラを持っているんだが……
（彼女なんです……まだ途切れ途切れだけど、意識が……）
「ほぅ…… ――君、俺の声が聞こえるか？」
俺はそのサファイアのように青い少女に、念を込めて語りかけてみた。
すると……
（…………は……い……聞こえ……ま……す…………）
確かに、途切れがちだが反応が返ってきた。
彼女が意識を発露させた瞬間、鉱物化した体から、わずかにオーラが放たれた。
呼びかけを続けてみるか。
「君の名前は？」
（…………分から……ない…………）
「彼女たちの名前は聞いたかい？」
（………………ルイ……さん……と…………エミ……ちゃ……ん…………）
ふむなるほど、何とか思考する気力はあるらしいな。
「君は人間だったのか？」
（…………はい………多……分…………）
わずかだが、記憶のかけらも残っているらしい。
確かにまだおぼつかないが、それを言うなら初期のルイもこういう感じだったし、
記憶の大部分が欠如している点ではエミも同じだ。
彼女が同意さえすれば、十分に活動復元の余地はあるな。
（パドルさん……この子、どうですか？）
ルイが不安そうな表情で語りかけてきた。
エミも不安げだ。
「見込みは十分あるよ……だが、もう少し意識がはっきりしてからだな」
（え？……ど、どういうことですか？）
「しばらくコミュニケーションを繰り返して、彼女が自分の判断がしっかりできるまで待った方がいい」
（あぁ、なるほど……でもそれじゃ、パドルさんはどうされるんですか？）
「何日か通うよ……彼女が普通のコミュニケーションができるようになるまでね」
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「ところで、だ……俺からもルイに提案があるんだが」
地上階の１室で、俺はルイに思っていたことを打ち明けてみた。
案の定、彼女は怪訝な表情をした。
（提案……ですか？）
「その体を、使いこなしてみる気はないか？」
少し驚いたらしく、ルイの目がやや大きく開かれる。
彼女はそのまま首ごと傾けて、自分の体をまじまじと眺めた。
（この体を……使いこなす？）
どうやら、意味がよく分かっていないらしい。
まぁ、動けるだけでも十分と思ってたようだから、無理もないけどな。
「その体を使いこなせば、もっと色々なことができるようになる……まぁ、人間とは少々違うがね」
ルイは明らかに戸惑いの表情を見せた。
その気持ちも分からなくはない。
自分が人間とは違う存在であることを、否が応にも思い知ることになる。
体は鉱物でも心は人間である、というプライドで自分自身を支えてきたなら、なおさらだ。
（どういうことができるようになるんですか？）
（え、エミちゃん！？）
意外にも、質問が帰ってきたのは本人からじゃなく、隣で聞いていたエミからだった。
「意識を体の隅々まで働かせることができるなら、もっと運動能力を高められるし、
感覚の精度も飛躍的に上がるだろう……心の声も、もっと離れた相手に伝えられるようになるはずだ」
（よく分からないけど……凄いですね、あたしもできるかな？）
（エミちゃん……でもそれは……人間にはできないことかも知れないんだよ？）
するとエミは、静かに笑った。
まぁもともと声は出せないんだが、そういう表現が当てはまる笑い方だったんだな。
（……ルイさん……あたしたち、もう人間じゃないじゃないですか）
（……！！……え、エミちゃん……？）
（パドルさんが言ってたじゃないですか……もう元には戻れないって）
（そ、それは……）
こいつは少し予想外だったな。
エミの方が気丈にも、現実を受け入れている。
いやあるいは、人間だった頃の記憶がほとんどない所為で、未練が少ないのかも知れないが。
ルイには人間だった時の記憶がかなり残っている。
漠然としたものとは言え、親の顔まで覚えていたぐらいだ。
かつて人間だったものが、人外の存在として生きていくということ。
１５〜１６歳の少女にそれを覚悟させるのは、確かに重過ぎる決断かも知れんな。
まぁもとより……すぐに結論を出してもらうこともない。
「すぐに決めろとは言わない……いやむしろ、じっくり考えて決めて欲しい」
（ぱ、パドルさん……）
「これは君の問題だからな……どっちでもいい、よく考えるんだ」
今日のところは切り上げよう。
施設の玄関でもう１度、ルイとエミに声をかけた。
「また明日来る……今日会った娘のこともあるからな……それじゃ」
（は、はい…………あ、あの、今日はどうもありがとう御座いました！）
気がつけば、日も傾いていた。
空はやや薄暗くなり、茜色に染まりかけている。
思えばあの施設には電灯がない。
鉱物系メタロイドは全身がプリズムのようなもので、
人間よりもわずかな光で視界を得るが……それでも夜中は怖いだろうな。
いつまでもここに置いておくのも、それはそれで酷かも知れん……
出張所の設置、本気で掛け合ってみるか。
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| （第１章第３話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2007〜2008年頃に草稿を作成したエピソード。
ディガス大使のパドルを協力者として参加させることが決まったエピソードであるが、
実はコンセプト自体は2007年頃にほぼ確立していた。
ルイたちは「自分の意思で動ける石化被害者」であるが、特筆する戦闘力があるわけではなく、
彼女たちをフォローするキャラクターが物語上、ｊ必要だったからだ。 |
