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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E031） |
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「こっちだ、こっちに運び込め！」
「この馬鹿め、勝手な行動を取るからだ！」
おいおい、何の騒ぎだよ。
突然、実験ラボの横の多目的処置室に、ストレッチャーが運び込まれてきた。
その上には、血まみれの男が乗っている。
なんだおい……１３号――アイガーじゃないか。
この台風騒ぎの中、どこに行ったのかと思えば。
何をしでかしたのか知らんが……世話の焼けるヤツだな。
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第３章 金属生命体メタロード ★
第１話 禁断の実験
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「い〜い機会じゃないか♪」
ふと、俺の背後で声がした。
いつ聞いても、性格の悪そうな声だ。
そう言えば、昨日からこの第２ラボに来ていたな。
血色の悪そうな白い肌、やせこけた顔。
まだそんなに老けてはいないが、その髪はすでに真っ白だ。
あるいは、いわゆる“アルビノ”なのかも知れんが。
そのくせ、眼光だけは恐ろしいほど鋭い。
「ナンバー２……いい機会、とはどういう意味ですか？」
「新たな研究のサンプルを探していたのだろう？ちょうどいいじゃないか」
「ナンバー１３を使う、と？」
部下もこの男にとってはただの素材に過ぎんか。
相変わらず鬼畜な性格は変わってないな、にしても……
「珍しいですな？あなたが男のサンプルに関心を示すとは」
「それは皮肉かい、ナンバー９？……まぁ、確かに私もできれば女がいいなぁ」
狭い肩を揺すって、ナンバー２“セラフィ”はくつくつと笑う。
表の人間なら、それだけで引くだろう気味の悪い仕草だ。
「しかしだね……若い女のサンプルはそうそう簡単には手に入らんだろう？
おまけに今回の実験は負担が大きいと聞いている。
ラットの実験にしても、奇跡的なケースだったそうじゃないか」
あの“黄金ラット”のことを言っているのかこの男は。
確かにナンバー１１に言わせれば、１万匹に１体しか出なかった活性体を１０体以上使って、
わずかに２匹しか成功しなかったらしいからな。
「それに……男のサンプルなら、仮に失敗しても砕いてしまえば済む。
女のサンプルでそういう失敗作は、作りたくないのでねぇ」
そっちが本音か。
よく言うぜ……なら、あの実験室のトルソーは何なんだよ。
「メインラボにある古い実験体は、上半身だけ残されていますが？」
「あれは生命維持を示す痕跡が消えたからね、泣く泣くああしたのさ。
もっとも、除去した部分もまだ廃棄処分にはしていないんだよ？
特に金属系の変異体のパーツは、今回の実験にも使えるからねぇ♪」
無駄なく使い切るというわけか。
やっぱり、この男は筋金入りの鬼畜だ。
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俺はナンバー２と共に、処置室の中に入った。
真ん中に置かれたベッドの上で、ナンバー１３が生命維持装置を付けられている。
どうやら擦り傷や切り傷だけでなく、骨も何本か折ってるらしいな。
時折激しく咳き込み、そのたびに赤黒い血を吐き出す。
この様子だと、内臓もやられているようだ。
第３ラボに近い山のふもと、大規模な土砂崩れ現場の近くで回収されたらしい。
土砂崩れに巻き込まれた挙句、そのまま土石流に流されたようだ。
……まったく、よく生きていたものだ。
「が――げほっ、ごほっ、ごぷ――」
「おいナンバー１３、しっかりしたまえ、そのぐらいで死ぬ軟弱者か？」
「そ、その声、は……な、ナンバー、２……ゴフッ……な、何の、これぐら――がふっ」
ナンバー２の挑発に、満身創痍にも関わらず反応するナンバー１３。
ふと、その視線が俺の方に向く。
その目が「済まない」と言っているように見えた。
……俺に謝っても仕方ないと思うが。
「どうだ？今無力感を感じているんじゃないか、ナンバー１３、いや“アイガー”」
「……………………がっ、ごほっ」
ナンバー１３は答えない……そりゃ図星だと言ってるようなもんだぞ。
「何をしたか知らんが、ひどく痛めつけられたな……このままじゃ使いモンにならんか」
「…………！！」
「どうだアイガー……“新しい体”が欲しくはないか？」
「……？……新しい、体……？」
ナンバー１３は、ナンバー２が何を言っているのか分からんらしい。
まぁ無理もないが……ナンバー２は更に言葉を重ねた。
「そう、新しい体……人間を超えた力、と言ってもいい」
「…………！！！」
人間を超えた力、か……まぁ、間違いではないな。
あの“黄金ラット”を見た時は、俺も興奮でゾクゾクしたもんだが、
こうも早く、そいつを人間で試す時が来るとは……
しかもよりによって、その候補がナンバー１３とはな。
まったく、因果なもの――
――ん？ 俺は、何を考えてるんだ？
まるで、感傷に浸ってるみたいじゃねぇか。
ずっと裏社会で生きてきた俺に、そんな感情があったというのか？
信じられん……偶然に決まっている。
ナンバー１３は黙っている。
だが目はしっかりと開き、薄笑いを浮かべるナンバー２を凝視している。
迷っているのか？ 自分が人間以外の存在になるということに。
数分ほどの間を開け、ナンバー１３は再び言葉を発した。
「……俺は……強く、なりたい――げほっ、ごふっ」
その言葉を聞き届けたように、ナンバー２はにたりと笑った。
なんとも言えない、嫌らしい笑みだ。
「それは……実験に志願する、と解釈していいのかね？」
「俺、を……強く、して、くれ！……もっと――ごっ、げほぁっ、ぅぶっ」
肺から絞り出すような声で、ナンバー１３はそう言った――語尾は濁っていたが。
再び激しく咳き込み、赤黒い静脈血を吐き出すナンバー１３。
「いいだろう……始めるぞ、１３号を処置室に入れろ！」
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処置室は、メインラボの１角にある。
円形の台座の上に特殊なベッドが置かれ、そこに移されたナンバー１３が寝ている。
周囲からは壁や天井から、複数のアームがぶら下がっている。
円形の台座はスライドレールに乗っており、その向こうに直径４ｍほどの球状のチェンバーがある。
俺が前に黄金ラットを見せてもらった時、そのすぐ隣に置かれてたヤツだ。
普段小娘どもを固める際にもチェンバーを使うが、そいつはもっと小さいし形状も筒型だ。
「では……１次処置を始めるとしようか」
ナンバー２の言葉と共に、レールに乗った円形台座がするすると動き出し、
まだ激痛で身をよじる、ナンバー１３をチェンバーの中へと運んでいく。
やがて台座はチェンバーの中にすっぽりと納まり、その扉が閉められた。
スライドレールがチェンバーから離れ、完全に密閉される。
チェンバーのガラス窓の向こうから、ナンバー１３が俺を見ている。
少し、不安げな表情だ……まぁ、当然といえば当然か。
今から“生きた彫像”へと変えられるわけだからな。
「ＭＭ００３を２ユニット投下」
実験チームの主任が、部下に指示を出す。
しかし……２ユニットとはどういうことだ？
確か、ＭＭ００３とはジュラルミン・タイプの変異結晶だったと思うが、
人体を変異させるには１ユニットあれば十分だろう。
そんなことを考えていたら、心を読んだようにナンバー２が言った。
「２ユニットでは多いと思ったかね？しかし完全に変質させるには必要なのだ」
そう言えば……１ユニットでは骨の芯など、１部が変質せずに残ったことがあったらしいが、
それは昔の話のはず……１００％完全に変異させなければならないということか？
しかし１体に２ユニットも使ったら、最悪意識反応すらないただの石像になるんじゃないのか？
ただでさえ意識信号が封印されやすい金属タイプだというのに。
俺がそんな思いを巡らせているうちに、チェンバーの底から２つのカプセルが出てきた。
やがてカプセルが開き、２個のメタリックな、指先ぐらいの塊がナンバー１３のベッドに転がり落ちる。
その小さな塊が、ナンバー１３の肉体に接触した瞬間――眩い光を放った。
見る見るうちにナンバー１３の表皮が、ジュラルミン色の物質へと変化していく。
さしものナンバー１３も、驚きで顔をゆがめる――いや、痛いのかも知れない。
条件反射の如く身をよじるが、腕を突き上げる余裕すら、その変化は許してくれない。
全身がくまなくメタリックな光沢に置き換えられるまで、わずか１０秒余り――早い。
２ユニットを使った石化処理は、１ユニット時の数倍の早さで終わるらしい。
完全に動きを止める直前……ナンバー１３――アイガーが俺の名を呼んだような気がした。
１分ほど間を開け、再びチェンバーの扉が開かれた。
その中から、１次処置が完了したナンバー１３が、ベッドに乗った状態で出てくる。
もちろん――今や完全に、ジュラルミン色の金属像と化している。
半分ほど身をよじり、口を開け、目をかっと見開いた状態で。
しかしもはや、その目には瞳の痕跡すらなく、鏡のように周囲の風景を反射している。
人間が石化する過程は、この組織にいて何度か見ているが、
金属人間――いや、金属“人形”と化したナンバー１３は、
さっきまで有機物の肉体を持っていたことが信じられないほど、完全に金属の塊となっていた。
しかも……どうやら、精神を完全に封印された状態になっているようだった。
テレパシー波で呼びかけてみても、全く反応がなかったからだ。
「精神反応がないぞ……本当に生きているのか？」
「今は仮死状態に近いだろうねぇ……このまま放置すれば１ヶ月でただの人形になるな♪」
ナンバー２がニヤニヤ笑いながら言う……そんなに楽しいかねぇ。
裏社会で生きてきた俺が言うのも何だが、悪趣味以外の何物でもないと思うが。
「１時間後に２次処理を開始する……ＭＭ００１と００２、ＭＣ００３を用意しておけ」
金銀と赤の変異結晶か……どうやら、こいつに融合させるらしいな。
に、してもこの処置室は消毒薬臭い……少し、外の空気を吸ってくるか。
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それから間もなく……俺はメインラボのすぐ横の保管庫に立っていた。
そう――石化した娘どもが立ってる、悪趣味な部屋だ。
ここに置いてあるのは、大体２０〜３０体ほどか。
確か最後に固めたあの金色の娘が第７０番実験体と呼ばれていたな。
俺の記憶には１００体を超える人間の実験体がいたはずだが、初期の連中には失敗作が多かった所為か、
実験体番号さえ与えてもらえずに処分されたケースも多いようだ。
人間を実験体にしてから２０体目くらいから、成功例が増えたんだったな。
小娘ばかりサンプルに使うようになったのも、そう言えばその頃からか。
もう――３〜４年くらい前のことか、思えば俺も長いな。
裏社会であぶれて、雇われ工作員としてナンバー１３と組んでから、３年は経ってるのか。
そのナンバー１３が……今、新たな段階の実験台にされてるわけだが。
そういや、今日はずいぶんと静かだな。
いつもならここに置かれてるサンプルたちの３分の１ぐらいから“声”が聞こえてくるが、
今は全員思考を止めてるのか寝てるのか、珍しく何も聞こえねぇ。
なんて俺が思っていたら――
（……何を……考えてる、の……？……）
誰かが俺の心に語りかけてきた。
どうやら……テレパシー波を発したのは、あの第７０番実験体らしい。
自分から言い出す気力が残ってるとは、なかなかいい根性だ。
金属系実験体は、たいていの場合寡黙だからな。
さっき固められたナンバー１３にしても、完全に沈黙しちまったわけだし。
しかもこいつ、透明度ゼロの実験体のクセに、どうやら俺の姿が見えているらしい。
「何の用だ、第７０番実験体」
（……７０、番……？……違うよ……あたしの、名前は……春海……）
「ハルミ？知るかよ、ここじゃお前の番号は７０番だ」
（……違う、春海……そんな、番号じゃ……ない……）
外見こそ悲痛な表情を浮かべた金色の彫像だが、結構気が強いらしいな。
……あの第３３番実験体を思い出すぜ、まったく。
「五月蠅い。手も足も出ない実験体が主張するな、貴様にそんな権利はない」
（……偉そう……あなた、も……番号で、呼ばれてる……のに……）
な……聞こえてやがったのか、コイツ？
というか……ここまで意識がはっきりしたヤツだったとは。
「俺はただの番号でもなきゃ実験体でもねぇ、ホルスというコードネームもある、一緒にするな」
（……あたし、にも……春海、という、名前……ある……同じ……）
「違うと言ってるだろうが！俺をからかってるのか？実験体の分際で！」
（……怒ると、良くない……楽しく、ない……）
「誰の所為だ、誰の！？」
「――誰と話してるんだ？ナンバー９」
ふと背後から、ナンバー２の声がした。
「……別に、何でもない。この第７０番が少し五月蠅かっただけだ」
「五月蠅かった、だと？ 意外だな……私がいる時は何も反応しないのに」
そう言えば……この部屋にナンバー２が入ってきてから、何も言わなくなったなコイツ。
話しかける相手を選んでいるというのか？
「私には心を開かないのに、君には開くのか……くっくっく、実験体にしては随分と生意気だなぁ♪」
ナンバー２がにたり、と寒気のするような笑みを浮かべた。
ふと気付けば、いつの間にかその手に拡散ＥＭＰスタンガンを持っている。
――１瞬、背後の第７０番実験体に、脅えの感情が見えたような気がした。
「身の程をわきまえぬ実験体には、少し立場を教えてやらねば……」
「……いや、その必要はない」
――って、俺は何を言っているんだ？
「必要はないだと、何故？――まさか、庇ってるなんて言わんよな？」
「そんなんじゃない……別に俺に心を開いたわけじゃないと言いたいだけだ」
「だが……ナンバー９には話しかけたのだろう？」
「突発的に感情を爆発させただけさ……実に五月蠅かった、だがまた沈黙した、それだけだ」
「ふぅん……あっそう――まぁ、いいさ」
ナンバー２はつまらなさそうな表情をして、ぽい、とスタンガンを投げ捨てた。
「それよりナンバー２……治療する前にナンバー１３を固めてしまって、良かったのか？」
「んー？ いいのさ、どうせ全面的に改造するのだから♪」
そう言って、ナンバー２は薄笑いを浮かべたまま、メインラボを後にした。
それにしても、俺はなぜ、この“黄金娘”を庇うようなことを……どうしちまったんだ？
さっき、ナンバー１３が固められる前に感じた気分にしろ……
いや、悩む必要などない……そうとも、ただの気まぐれに違いない。
（……ありがと……取り合えず、礼……言っとく……）
また、７０番からテレパシー波が聞こえた。
どうやら本当に、ナンバー２が来た時は黙ってるらしいな。
「――ふん、必要ない……庇ったわけじゃない、勘違いするな」
（……それでも、助かった……あれ、怖い、から……）
「なら、もう俺に構わぬことだ……今までのように沈黙していればいい」
（……でも、今日……楽しかった……）
「バカバカしい……実験台は大人しく立ってればいいんだよ」
そう……実験台に情がうつるなど、あってはならないんだ。
俺はナンバー９号“ホルス”……太陽神の名を汚してはならない。
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| （第３章第２話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2008年頃に草稿を作成したエピソード。
メドゥアスが実戦型メタロイドの１種メタロードを開発する展開であり、
アイガーが“鋼の戦士”となったきっかけのエピソードである。
またメドゥアスの“狂気の化身”であるセラフィの初登場シーンでもある。
ＡＳＧシリーズがただの石化ファンタジーではない要素の１つと言えるだろう。 |
