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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E033） |
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……
…………
………………
…………こ……こ……は…………どこ……だ……？…………
……暗い……寒い……いや……何も……感じ、ない……
…………俺……は…………誰……だ？…………
「気がついたか？ ナンバー１３“アイガー”」
…………ア……イ……ガ……ー…………
……そうだ……俺は……俺の名は……“アイガー”だ！！
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第３章 金属生命体メタロード ★
第３話 鋼鉄の男
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突如――光が――蘇る。
俺の新たな目覚めだった。
「意識の復興を確認しました」
「早いな、こいつをサンプルにしたのは正解だったようだ」
おい、聞こえてるぜ。
ナンバー２、俺をモノのように言うんじゃねぇ。
そうか……こいつの実験要請を受け入れたんだったな、俺は。
ということは、俺の体はもはや有機物ではなくなってるってワケか。
ちっ……どうやらまだ、動くことはできねぇらしいな。
視覚と聴覚は蘇った……こいつらが何をしているのかも分かる。
だが、まだ動けねぇ所為だろうが、視界を動かすことはできんな。
どうやら……俺は実験室の真ん中に立っているらしいが。
「アイガー、私の声が聞こえるかね？」
聞こえてるって言ったろうが……と、言っても分からねぇか。
ナンバー２が俺のすぐ近くまで歩いてきた。
いつ見ても血色悪い顔をしていやがる。
コンコン、と音がした。
俺の体を叩いているらしいな……触った感触があった。
なるほどな、確かに俺の体は硬いモンになっちまったらしい。
鉄か金銀か鉱物か知らねぇが、動けるならこいつの頭を割ってやりてぇぜ。
「聞こえてるなら返事をしたまえ、私に向かって念じねば聞こえんぞ？」
あぁ、そう言えばテレパシー波ってのはそういう性質だったな。
（……さっきからしっかり聞こえてるぜ、五月蝿いぐらいにな？）
「ククク、その無礼な態度も変わってないな」
（悪かったな、これが俺の性格だ、嫌なら洗脳すりゃ良かっただろ）
「そういう手もあったが、それもつまらんしなぁ」
（この鬼畜が……どうでもいいが、いつまで俺を銅像にしておく気だ？）
「焦るな、意識のないものに活力を入れても意味がないだろう？ 順番ってものがある」
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ナンバー２が俺から離れた。
ワンアクションじゃ殺せない距離ってのを分かってるなこいつは。
ただの鬼畜じゃないのが余計に気に入らねぇ。
「起動ショックを与えてやりたまえ」
ナンバー２がそう言って間もなく、俺の体内に電気ショックみたいなモンが走った。
瞬間的に脳天まで突き上げる刺激が全身を駆け巡る。
俺は思わず魂が抜けそうなショックを、必死でこらえる。
……すると、にわかに感覚が解放されたような気がした。
「……さぁアイガー、動いてみたまえ」
言われなくても動いてやるさ。
まず指から……くそ、動いているような気はするが、この位置からじゃ分からんな。
首を曲げて、肘を曲げて、そいつを視界に入れようとした。
おぉ、動いてるじゃねぇか、俺の指。
……ん？ 今、俺は首や肘も動かしたのか。
俺はもう１度首を動かしてみた。
視界が流れるように移り変わっていく。
もう片方の指を、手首を、肘を曲げてみる。
こいつは面白い……実にスムーズに動くじゃねぇか。
俺はじっくり、その手を眺めてみた。
銀色の手……いや、銀にしては暗いか……鉄かステンレスといった印象だ。
ただ……手の甲には、何本かの金色の筋が入っていた。
あの黄金ラットと同じように、俺にも幾つかのタイプが混じってるってことか。
その手で、もう片方の腕を触ってみた。
自分の胴体を軽く小突いてみた。
硬い腕、硬い胸……さっきナンバー２がやったのと、同じような音が響く。
「これが……俺の体か」
ん？ 俺は今、喋ったのか？
というか、この体は喋ることができるのか。
昔の声に、金属っぽい残響が混じるのが耳障りだが。
「やはり思ったとおりだ……合成強化型には発声能力もある」
「分かっていたのか？……ナンバー２」
「ラット実験で確認済みさ」
あの金ピカのネズミは鳴き声も出せたか。
俺に取っちゃ、別にどうでもいいことだが。
試しに、脚も動かしてみた。
おぉ、普通に動く――なっっ！？
俺の鉄色の体が、突然バランスを崩した。
とっさに踏ん張って、倒れずには済んだ……危ねぇ危ねぇ。
大分、体が重くなった気がするな……金属なら当然か。
おかげで重心の制御ができなかった……まぁ、慣れれば問題はねぇだろう。
ぎこちない動きが我ながら気に入らねぇが、もう１方の脚も前に出す。
ゆっくりと、重心の移動に気をつけながら、１歩、また１歩。
周りを取り巻く白衣の連中が、そのたびに歓声を上げる……いちいち五月蝿ぇよ。
「自分の姿を見てみろ」
そう言って、ナンバー２が目の前に大きな鏡を置いた。
その鏡に、金属人間となった、俺の姿が映っていた。
頭から脚まで、ステンレスのようなメタリックな色をしている。
ただ茶色だった頭髪は銀色に変わり、体の其処此処に金色の模様がある。
目はまるでルビーのように赤く、瞳はない。
第３の目みたいな赤い結晶体が、額にも埋まっている。
両手両足の爪は頭髪と同様、銀色に光っている。
俺は口を開けてみた。
銀色の歯が並んでいる……虫歯になった記憶はねぇが、今や全部“銀歯”だ。
口の中は体と同じ、ステンレスのような色合いをしている。
血の気というモンはもはやないらしい。
「……俺の体はどうなっている？」
「外観は見ての通りだ……体内は１部を除き均質化されている。つまり……内臓も消化器官も、筋肉も骨もない」
「完全な金属人形というワケか」
「意思を持つ金属生命体と言って欲しいところだな」
「この体は血も涙もないのだろうが？」
「確かにないな……だが君は今や、全く新しい生命体となったのだよ」
恍惚とした表情で、ナンバー２が自慢げに語る。
てめぇが作ったわけじゃねぇだろうが。
我こそ新時代の神だ、みたいな表情しやがって……つくづく気に入らねぇ。
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そう言えば……この模様は何を意味しているんだ？
あの黄金ラットはどうだったか……――まさか。
「さぁて、そろそろ追加調整を――」
「待てナンバー４２、不用意にそいつに近づくな！」
ニヤニヤと笑って近づいてきたナンバー４２……白衣の馬鹿を、俺は振り向きざまに殴りつけた。
そのつもりだったんだが――
「なぶぁ――ひゅ」
「「ひぃぃぃぃっ！？」」
悲鳴にもならない声を上げて、ナンバー４２が倒れた。
周囲の白衣が代わりに悲鳴を上げる。
ナンバー２が、引きつった笑みを浮かべている。
ふと目と落とすと、ナンバー４２が死んでいた。
心肺停止を確認したワケじゃねぇが、
頭を輪切りにされて、生きてる人間はこの世にいねぇだろう。
手足がぴくぴく痙攣してやがる……うえぇ、気持ち悪ぃ。
俺は今――何をやったんだ？
俺は、自分の手を見た。
そして、自分がやったことの意味を悟った。
手の甲から……金色の“刃”が４本、長く突き出ていた。
その刃の先端から、真っ赤な血がぽたぽたと滴っている。
赤黒い静脈血じゃねぇ、鮮やかな動脈血だ。
恐らく……ナンバー４２の血だろう。
俺の体に何本も走ってる、金色の模様の１部だったところだ。
殴ったつもりが、切り裂いちまったらしい。
そうか……今の俺はこういうことができるのか。
試しに念じてみると、金色の刃はすっ、と引っ込んでただの模様に戻った。
ほほぅ、こいつはなかなか面白い能力だなぁ。
「こ、こいつ！！」
「やめんかナンバー５１、そんなもの――」
周りにいたボディーガード担当の男が銃を引き抜き、ナンバー２の制止も無視して俺を撃った。
――キィィィンッッ
鉄板を撃ったような音が響いた。
胸辺りに衝撃を感じ、その衝撃が電流のように全身を伝播する。
痛い――という感じはしたが、“撃たれた痛み”じゃねぇ。
案の定……俺の体は、ナンバー５１の銃弾を弾いていた。
「く――は、ははっっ……そんなもんが……俺に効くかよっっ！」
俺の恐ろしさを思い知らせてやる。
俺がそう思って、ナンバー５１に向かって飛び出した時だった。
突然、激しい衝撃が全身を突き抜けた。
「なっ――がっ！？ はぁぐ――！！」
これは……なんだ？
俺の左腕に巻きつけられた、ワイヤーみたいなモンから流れてくるのか。
起動時のショックや、さっきの銃撃とは比較にならないほどの電撃。
そいつが俺に体内に飛び込み、猛烈な勢いで乱反射する。
くそぅ、今にも――粉々に砕けちまいそうだ！！
まさか……こいつは……！！
「そのぐらいにしておくんだアイガー、拡散性ＥＭＰをこれ以上浴びたくなければな」
落ち着き払った声で、ナンバー２が言った。
こん畜生が、全て計算の上だってのか……ますます腹が立つぜ。
あぁくそっ……分かった、分かったよ！
（ぐぅ……がっぐ……わ、分かった、もぅ……もう、いい……！！）
そのテレパシー波が聞こえたか、ナンバー２が電撃を止めさせた。
俺はほとんど、這い蹲るような姿勢になっていた。
覚えてやがれナンバー２……自由になったら、まず貴様から切り刻んでやる。
そう、か……あの娘も、こいつを味わったんだったな……
へっ、俺としたことが、あいつに少しだけ、同情しちまったぜ。
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その後間もなく、俺は別室に移された。
もちろん……電流コードを巻きつけられたままな。
俺は硬い椅子に座った状態で、オリの中に放り込まれた。
まるでライオンかトラでも扱ってるように。
まぁ……すでに１人殺しちまったし、仕方ねぇか。
隣の部屋は、あの不完全活性体のガラス部屋らしい。
意識があるのかないのかハッキリしねぇオブジェの娘たちが、不規則に揺れている。
――と、その中の１体が、ふとこっちを見て止まった。
何だよてめぇ……俺がそんなに珍しいかよ、自分も大差ねぇくせに。
……そうか、大差ねぇんだよな、今の俺は。
こうなる前は、あいつらを気色悪いオブジェだと思ってたが。
俺はもう１度、自分の手をまじまじと眺めた。
鉄パイプみてぇな色をした腕に、金色の筋が入っている。
よくよく見りゃ、手の甲だけじゃなく腕の中ほどにも、似たような筋が２本。
試しに念じてみると、金色の筋は瞬く間に変形して、まるで槍みてぇに長く伸びた。
さっき使ったやつよりでかいな……こいつもなかなか切れ味が良さそうだ。
最初は気付かなかったが、少し腕の動きが遅い。
まぁ、最初はこんなもんなんだろうな……あのオブジェ娘なんかもっと遅い。
……と思ったら、そのオブジェ娘はもう停止していた。
そう言えば、不定期に動くくらいしか出来なかったな、この娘は。
俺の方を見た瞬間、何か感じたような気配がしたが、今は反応がない。
――そう言えば、あの第３３番実験体はやけに速く動けてたな、意識もハッキリしていた。
あの金髪の男に訓練されたのかも知れん……今もあそこにいるのか？
自由の身なら、今すぐにも押しかけていって、やつにリベンジしてぇが。
この体なら背後から殴られても効かねぇだろうし、逆に向こうを切り裂くことも出来る。
なるほど……こいつは確かに、人間を超えた体だぜ。
と……そこに人間が１人、入ってきた。
何だよ、９号――ホルスじゃねぇか。
俺が目覚めた時はいなかったから、どこに行ったのかと思ってたぜ。
おいおい、何て顔をしてやがるんだ……相棒の変貌がそんなにショックか？
俺は新たな体を得たんだぜ？――そうとも、前よりずっと、強くなった。
「変わったな……１３号」
はっ、何を言うかと思えば。
「ふん……むしろ、アイガーと呼んで欲しいもんだな」
「喋ることができるのか？」
「……生憎だったか？お前の記憶もしっかり残ってるぜ♪」
「どうやら……中身は変わってないようだな」
「そう簡単に変わってたまるか……まだやり残してることがいっぱいあるんだぜ？」
「やり残してること、か……」
「何なら、お前もどうだ？ こういうボディも案外悪くねぇぞ」
そう言ってやったら、ホルスは妙に寂しそうな顔をしやがった。
おいおい、どうしちまったんだコイツ。
「……いや、俺はいい」
「どうしたよ？――変わったな、ホルス」
「……変わった？俺がか？」
意外そうな顔をしてやがる……自分じゃ気付いてねぇのか。
「昔のお前は……感傷に浸るようなキャラじゃなかっただろうが」
ホルスは１瞬、驚いたように目を見開いた。
「……感傷……そうか、俺は今感傷に浸ってたか……」
「俺が知ってるホルスは、もっとクールな男だったが……記憶違いか？」
「……そうだったかも知れんな」
それだけ言って、ホルスは部屋を出て行った。
いったい、俺が実験台になってる間に、何があったってんだ？
――その時だった。
「……２体目は、あいつで決まりだな」
ふと、遠くから妙な声が響いてきた。
今のは……何だ？ 誰の声だったんだ？
くそ……嫌な予感がするぜ。
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| （第３章第４話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2008年頃に草稿を作成したエピソード。
実戦型メタロイド、メタロードの初登場シーンである。
ＡＳＧシリーズはただの石化ファンタジーではなく、曲がりなりにも“ＳＦ”なので、
石化処理も「強化人間開発のための技術」として想定しているのである。
ルイたちはあくまでもその実験体であり、アイガーのような実戦型が組織の目標なのだ。 |
