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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E034） |
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「あ、あの……初めまして、どうぞ宜しく」
ショートカットの女の子が、緊張した表情で頭を下げる。
その隣には、にこやかに笑うツインテールの少女――翔子さん。
「ほらぁ、そんな固くなったらエミちゃんたちが緊張しちゃうよ？」
（い、いえ……大丈夫です、し、仕方ないことですから）
「エミちゃんは大丈夫だって……気丈だなぁ」
はぁ、よく言われます……そうなのかな？
あたしの横には苦笑いするルイさん、そしてサラさん。
それにしても翔子さんたら、大胆だなぁ。
まさか施設訪問６日目にして、早くも眞希さん連れて来ちゃうなんて。
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第３章 金属生命体メタロード ★
第４話 神隠しの港
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新しい施設に引越ししてから、１週間が過ぎた。
前の廃墟も同然だった施設とは違って、ここには色々な設備がある。
広くもなく狭くもなく、すっきりとしてて居心地のいい個室。
温かいお湯がちゃんと流れる、清潔なシャワールーム。
カジュアルウェア１２０着がずらりと並ぶ、ウォークイン・クロゼット。
運動や体操をするための部屋もあって、床には木の板が張ってある。
談話室みたいな部屋では、ＴＶを見たりインターネットまでできちゃう。
で、そのすぐ横が、パドルさんやライカさんがいる事務室みたい。
翔子さんは寮みたいだって言ってたけど、こういうところが町にもあるのかな？
この１週間のうち、２日目以外の日に、全て翔子さんが来ている。
ルイさん始め、鉱物娘とのコミュニケーションが凄く刺激的らしい。
まぁ、分からなくもないかな……鉱物娘と会って驚かないってのがあたし的には凄いけど、
ルイさん曰く、１度石にされた経験があるみたいだし。
この施設は、町の港に面した岸壁の端っこに建っている。
周囲にも似たような古い倉庫が並んでて、そのうちの１棟を改修して使ってる。
元々町で１番大きかった総合商社？が、湾を挟んで向かい側のコンテナ群と一緒に管理していたらしいけど、
不況のあおりでほとんど放棄して、実質的に廃墟になったんだって。
その総合商社は、今は別の町に本社を移してて、その所為か町はちょっと寂れてる。
まぁ……１週間前に、あたしがトラックの荷台から見た限りでは、ね。
……何故だか分からないけど、懐かしい感じがした。
案外、この町に住んでたのかな……人間だった頃のあたしって。
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（――神隠しの港？）
「そ。この倉庫の対岸にあるコンテナ群のことなんだけど」
５人の少女が、談話室で喋っていた……うち３人は鉱物娘だけど。
眞希さんが得意そうな顔をして、最近流行りらしい噂話を喋っている。
「それでね、そのコンテナ群に真夜中に行くと、お化けにさらわれちゃうんだって」
「神隠しってのはたまに聞く話だけど、場所が変則的よねぇ」
（ふぅん……）
ルイさんが、物憂げな表情で、施設の小さな窓の外を見やる。
スモッグに煙る港のずっと奥に、対岸の岸壁がかすんで見えていた。
意識を集中すると、そこに確かに、コンテナらしきものが並んでいるように思える。
何となく、ルイさんの気持ちがわかる気がする。
さっきからサラさんが余り積極的に反応しないのも、多分同じ理由だろうな。
だって行方不明者が続出してるミステリースポットの話だもん。
ちょっと……嫌な予感がするんだよね。
眞希さんは、そんなあたしたちの態度には気付かない様子で、喋り続けた。
「ね、今夜あたり、そこに出かけてみない？」
「――はぁ？ あんた、この前の廃校で懲りたんじゃなかったの？」
「あ、あぅ……で、でもぉ……」
（眞希さんって、好奇心旺盛なんですねー）
「ほら、ルイさんも言ってるよ？ 物好きな娘だって♪」
（え！？ い、いや、違いますよ！ そういう意味じゃ！）
ルイさんが思い切り、手を振って否定する。
あたしたちの“声”が聞こえてるのは翔子さんだけだから、
翻訳１つで見方が変わっちゃうんだよね……あれ、もしかして確信犯とか？
「あ、エミちゃんが笑った♪」
あ、眞希さんが笑った♪
……そっか、眞希さんには初めて、笑顔を見せたのかも。
あたしは思わず、ぽりぽりと頭をかいた。
「照れてるよぉ翔子……可愛い♪」
「あんたっていつから妹萌えになったわけ？」
（妹萌え？）
（確かに、エミちゃんって可愛いですもんねー）
や、やだな……サラさんまで一緒に。
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あたしたちを乗せたライトバンが、港の外れで止まった。
……結局、来ちゃった、神隠しの港に。
（挿絵）
「気をつけなさいよ、何かあったらすぐ知らせて」
ライカさんの言葉に頷きながら、車を降りる。
あたしとルイさんと、翔子さんと眞希さんの、合計４人。
サラさんはまだそんなに早く動けないからお留守番。
出かける前、サラさんに言われちゃったよ。
ルイさん暴走しないか見張ってて、って。
結構言うよなぁ、サラさんも。
（ルイさん、勢いで行かないでくださいね）
（……わ、分かってるよ）
「脊髄反射な娘なんだねー、ルイさんって♪」
（……はは、でももう無いけどね、脊髄も背骨も）
潮風が漂う、夜の港。
晴れ渡った空には、満天の星空――凄く、綺麗。
町の中心部の方を見やると、色とりどりのネオンが瞬いている。
空と町の夜景の共演――まるで宝石箱のよう。
そう言えばあたし、今“外の世界”に立ってるんだよね……
それに引き換え――ここはまるで別世界。
ひび割れて雑草が茂る、アスファルトの残骸の奥に、薄汚れたコンテナ群。
幾つかは朽ちて穴が開き、とっても不気味――正しく廃墟。
側道をコンテナ群の方に向かって歩くと、すぐに街灯の届かない暗がりが広がる。
星空が淡い群青色にかすかな光を漂わせている所為か、完全な闇ではないけど、
それでも鉱物娘のあたしがこれだけ暗く感じるんだから、
翔子さんや眞希さんの目には、真っ暗闇に映ってるかも知れない。
「うわー……暗いね」
「怖かったら暗い声で言うんじゃないわよ」
「は、はぅ……」
その時にわかに、強い光の点が視界に現われた。
どうやら翔子さんが、持っていた懐中電灯を点けたみたい。
薄く黄色がかった光が、コンテナの方に向かって減衰しながら伸びている。
（……いかにも、何かが出てきそうな雰囲気よね）
や、やだぁルイさん、怖がらせないでぇ。
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……それから数分ほど歩いたかなぁ。
廃棄されたコンテナ置き場は思ったより広くて、変化に富んでいた。
遠くからだと黒いブロックの塊みたいに見えたけど、
近くで見ると、結構様々な色があって、積んでる高さも違う。
翔子さんたちは数ｍほど先を、ひそひそ話をしながら歩いている。
そして、その後ろにルイさん……いつの間にか、あたしは最後尾にいた。
……歩幅が狭いからかな？
置いてかれないようにしなきゃ、急いで――
その時だった。
ふと背後に――何かが動く気配を感じた。
恐る恐る振り向いた、あたしの目の前に――黒い男が立っていた。
（――――！！？）
「…………！？……な、何だと！？」
男はあたしの顔を見るや否や、声を上げた。
あたしの顔が、エメラルドに似た鉱物でできてたからだと思う。
でもあたしは――もうそれどころじゃなかった。
あたしの中で……失われていた“何か”が蘇ったような気がした。
そしてその“何か”は、この黒い男が恐怖の存在だと告げているような気がした。
事実――あたしはまるで、再び固め直されたみたいに１歩も動けなかった。
「……信じられん、ナンバー９の報告は冗談じゃなかったのか」
な、何の話をしているの！？
そ、それにこの姿……台風の中でルイさんと見た、あの男にそっくり。
まさか、この男はまさか……
（……い……や……ち、近づかないでぇ！！）
「なっ……これほど鮮明なテレパシー波を……は、ははは……素晴らしい」
（……いや、嫌……来ないで、来ないで！！）
もう、何がなんだか分からなかった。
あたしはもう、ほとんどパニック状態になっていた。
手足を振り回して抵抗しようとしたけど……何故か手足が凄く重かった。
全く動けないわけじゃなかったけど、さっきまでとはまるで違う……自分の体じゃないみたい。
「じたばたするな娘……まぁ、どうせ声も出せんだろうがなぁ」
だ、誰か……誰か助けて……！！
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――数秒後、コンクリートブロックで殴るような、大きな音が響いた。
「――ぐぉっっ！？」
黒い男が、斜め前に突き飛ばされるように倒れ込む。
その背後……港のネオンを半分反射し、半分透過する――真っ赤な体。
（……る、ルイ、さん……）
（大丈夫！？エミちゃん！！）
「こっ……この野郎……！！」
（お生憎様、あたしは野郎じゃないわよっ！！）
「ルビータイプだとっ！？……そ、そうか、お前が第３３番実験体か！」
（……ま、またあたしを……番号で呼んだなぁぁっ！！）
ルイさんが怒りでわなわなと拳を震わせた。
だ、ダメだよルイさん、勢いで行ったら……前と同じだよ。
「ふん……上等だ、だがそれ以上近づくと、この緑の娘が……」
「それって――この子のこと？」
気付けば、あたしの肩に――柔らかい手が。
いつの間にか、翔子さんと眞希さんが、すぐ後ろに来ていた。
「あんた……あの廃校で会ったヤツと同じ連中ね」
「あわわわ……あ、悪の組織だぁ……」
けど、黒い男はにやり、と笑った。
――え？ この気配、まさか。
（……くっ、仲間がいるのね）
「しまった……眞希、あたしから離れちゃダメよ？」
「ひぇぇぇぇ……！」
あたしたちはいつの間にか、数人の黒い男たちに囲まれていた。
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あたしのすぐ前に１人。
ルイさんの背後に１人。
そして……翔子さんたちの背後に更にもう１人。
あたしたち４人は、３人の黒ずくめの男に包囲されていた。
３人とも屈強な体格……１人で３人くらい余裕で相手に出来そう。
そんな男が３人……やばいよね、やっぱり。
しかもこいつら……あたしたちのことを知ってる。
ってことは、記憶の片隅にある、あの連中――あたしたちを石に変えた、あの組織。
ルイさんのピリピリした態度からも、その予感が間違ってないことが分かった。
翔子さんたちの後ろにいる男が、あたしの前にいる男に言った。
「ナンバー８、その緑の娘は第３０番実験体だ、間違いない」
「やはりな……どこかで見覚えがあると思ったぜ」
「安定活性体が２体か……素体になりそうな娘も２人、こいつは大漁だなぁ」
第３０番実験体？ やだ、あたしってそんな素っ気ない名前だったの？
……あ、そうか、ルイさんだってあの男に第３３番って呼ばれたっけ。
人を勝手に石像にしておいて、あまつさえ物みたいに扱うなんて……ほんと最っ低。
（この子はエミちゃんよ、そんな無機質な番号じゃないわ）
「はっ、無機質な娘に言われるとは思わなかったぜ！」
（い……言ったなぁっっ！！）
（だ、ダメ……ルイさん！）
「動くな３３番！後ろの小娘どもがどうなってもいいのか！？」
（…………っっ！！）
かろうじて、ルイさんが踏みとどまる――けど、状況は変わってない。
……あたしが遅れなければ、逃げ切れたかも知れないのに。
（ご……ごめんなさい、ルイさん……あ、あたし……）
（エミちゃんが謝る必要なんかないよ、悪いのはこいつらだもん！）
「あ、あたしがこんなところに誘ったから……？」
「後悔するのは逃げ切ってからにしてね眞希、今足手まといは作りたくないの」
「うぅぅ……ご、ごめん」
「ちょっと、しっかりしなさいよ……あんたの逃げ足を信頼して言ってるのよ！？」
凄いなぁ翔子さん……こんな状況でよく冷静でいられるな。
「我々を甘く見ないでもらいたいねぇ……無事に逃げられるとでも？」
「お前は大理石タイプが似合いそうだなぁ……そっちの娘はさしずめオパールか？」
「お、おぱーる……や、やだぁ」
「……冗談じゃないわ、あんな経験はもうたくさん」
あいつらが、じりじり、と近づいてくる。
あたしたちは後ずさり……いつの間にか、４人で寄り添っていた。
翔子さんもさすがに、少し怯えた表情をし始めている。
――その時だった。
（――ねぇエミちゃん、あの岸壁まで走れる？）
……る、ルイさん？ どうするつもり！？
「ルイさん……まさか？」
（翔子さんも黙って聞いて欲しいの……眞希さんを連れて、あの岸壁まで……こいつらはあたしが止めるから）
（やだ……やだよそんなの……ルイさんも一緒に――）
（――わがまま言わないでっ！！）
ルイ、さん……！！
（今囮になれるのはあたししかいないの、お願いだから言うことを聞いて！）
泣きたい――泣けるのなら。
（そんな……ダメだよルイさん、せっかく友達になったのに……）
（今のままだと、全員捕まってしまう……翔子さんも眞希さんも、石にされちゃうんだよ！？）
「ルイ、さん……？」
（――大丈夫、あたしはそんなに簡単にやられたりしないから♪）
強がりにしか聞こえないよ、ルイさん……
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「さぁて、大人しく我々のところに……なぁに、可愛がってやるぞ？」
（……いっせぇのぉ――でっ！！）
「――！！？」
ルイさんが、あたしと翔子さんにしか聞こえない掛け声と共に、男の１人に飛び掛った。
その隙に、翔子さんが眞希さんの手を引いて走り出す。
あたしも――全力で走った。
「この――無駄な足掻きを！！」
（エミちゃんたちに……触るなぁぁぁぁっっ！！）
「な――これが……活性体の動きか！？」
あたしの背後で、ルイさんが男たちを翻弄しているのが分かった。
掴みかかろうとする男たちの手をするりと潜り抜けて、その脇腹に１撃。
人間よりもずっと重い石の体だから、その衝撃は結構大きい。
１瞬相手がひるんだ隙に飛び退いて、飛びかかってきた背後の相手に足払い。
「この……ちょこまかとっっ！！」
――凄いな、ルイさん。
半透明の赤黒い体が夜の闇に溶け込んで、相手の間合いを鈍らせてる。
あたしは翔子さんや眞希さんと一緒に、ただひたすら走り続ける。
あの――遠く揺らめく港のネオンサインに向かって。
体が重いとか、動きが鈍いとか言ってられない……翔子さんたちを必死で追いかける。
怖いけど、悔しいけど、でも――ルイさんの思いを、無駄にしたくないから……
もうすぐ……もうすぐで、あの光の下に出られる。
けど――その光が突然、黒い塊に遮られた。
更に数人の、黒い人影……そんな、ここまで走ったのに！！
その時だった。
空気を切り裂くようなブレーキ音と共に、岸壁の横のひび割れたアスファルトに、
クリーム色のライトバンが飛び込んできた。
ブレーキと共に急ハンドルを切った所為で、車体の後半分が斜めに滑る。
いや――むしろ、狙ってやったのかも。
思わず飛び退く男たち……ライトバンはちょうど、あたしたちと男たちの間に。
勢いよくスライドドアが開かれ、中から声が。
「早く乗りなさい、急いで！！」
「――ら、ライカさん！？」
（行こう、翔子さん、眞希さんっ！！）
３人一緒に飛び込むように、ライトバンの中へ。
そしてあたしは、闇の中に振り向いた。
（ルイさん――早くルイさんも！！）
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ルイさんが男たちを振り切り、こっちに向かって走ってくる。
男たちが怒声を張り上げて、ルイさんを追いかける。
「エミちゃん、ドアを閉めて！」
（えぇっ！？ で、でもルイさんがまだ！！）
「分かってる、安心して任せてちょうだい！」
再び、ライトバンが唸りを上げて走り出す――ただし、後ろ向きに。
しかもただのバックじゃなくて、回転もかけてる。
ライトバンに群がった男たちが振りほどかれる……凄いテクニック。
しかも――うそ、ライカさん後ろ見てないよ。
猛スピードでバックして、ルイさんの横を突き抜け、再度前進、同時にドアを開く。
１８０度猛烈に切り替わる衝撃につんのめりながらも、あたしは必死で車体につかまった。
（ルイさん――こっち！！）
（うぉぉぉぉっ！？）
ライトバンのスライドドアに、ルイさんの手が引っかかる。
あたしはその真っ赤な手を、無我夢中で引っ張った。
そんなあたしを、翔子さんらが更に後ろから抱え込む。
黒い男の１人が、ライトバンから飛び出したままのルイさんの足を引っ張ろうとした。
刹那――ライカさんが急ハンドルを切る。
（ひゃあぁぁぁっ！？）
（ちょ――ライカさん、ルイさん落ちちゃう！！）
「うわわっっ、ライカさん、前、前！！」
もう１度――今度は逆方向に。
その勢いで、ルイさんの体がライトバンの中に飛び込んだ。
強引だけど、凄い――手を使わないでルイさん入れちゃったよ。
（――むぎゅっっ！？）
「しっかりつかまってなさ――危ない、屈んで！！」
（ひぇぇぇぇぇぇっ！？）
ライカさんの声に反応して屈みこむ直前、
再びハンドルを切ろうとするライカさんの向こう、フロントガラスの前で、
銃を構えた黒い男が視界に入った。
な――こんな町外れで銃を撃つなんて！
銃声は聞こえなかったけど――パリン、と音がしてガラスが砕けた。
けれど、ライトバンはブレーキをかけない……そのまま岸壁の脇の道路へ。
更に走り続け、ライトバンは町へと続く、国道に入った。
……逃げ、切れちゃった……良かったぁ。
（よ、良かったね……助かって）
ルイさんも興奮を隠せない……まぁ、当然だよね。
翔子さんも同じ感じ……眞希さんは――あぁ、失神しちゃってるよ。
ライカさんのおかげだなぁ……ほんと、さっきは凄かった。
「ライカさん、血、出てるじゃないですか！？」
翔子さんが急に大きな声を出した。
思わず運転席を覗き込んだら、ライカさんの白い頬に赤い線が１本。
「掠り傷よ、帰ったら絆創膏でも貼るわ」
けろっとした声で言うライカさん……動じてないよ、撃たれかけたのに。
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「……そいつは大変だったな」
施設に戻ると、パドルさんが腕組みをして待っていた。
てっきり怒られると思って縮こまってたら、帰ってきたのは意外に普通の言葉。
でも同情しているのとはちょっと違うな……別の意味で真剣そのもの。
多分……あたしたちが“あの組織”と遭遇したからだろう。
そしてそれは、パドルさんが調べている組織。
「ライカもご苦労さんだったな」
「まぁね。でも……これで動くかしらね」
「多分な……こっちにも“プロ”がいることが分かっただろうし」
（え……プロって、どういうことですか？）
あたしがふと感じたことを、先にルイさんが口にした。
「こういう裏の調査とか、そういうことをやるプロってこと……まぁ、探偵みたいなものだけど」
プロかぁ……だから撃たれそうになっても冷静だったのかな？
（あら、翔子さんたちはどうしたのですか？）
ふと、サラさんが聞いてきた……ちょっと、不安そうな表情を浮かべている。
サラさんも大分感情を表情で表現できるようになったなぁ、そう言えば。
（えぇと……眞希さんが失神しちゃって、それで介抱を……）
（そうなんですか……私も何かお手伝いしたいですねー）
（近くにいてあげるだけでいいと思うよ、サラさん♪）
こくんと頷いて、まだちょっとぎこちない足取りで、サラさんが談話室へ行った。
談話室に通じるドアのガラス窓から、翔子さんの膝で寝ている眞希さんが見えている。
サラさんが入って行ったら、翔子さんが振り向いて、苦笑いで出迎えた。
「いやぁ、面目ないです……この子ったら怖いもの見たさのクセに臆病でぇ」
（無理もありませんよ……拉致されるところだったんでしょう？）
「まぁ、そうなんですけどね……眞希が言いだしっぺなのに」
……でもほんと、みんな無事で良かった。
……けど。
これから、どうなるんだろう……？
「まぁ、余り保護者抜きで出歩かん方がいいだろうな、特に夜は」
（はい……自重します）
見透かしたように、パドルさんが１言。
“前科”のあるルイさんが、思わず頭を垂れた。
まぁ……難しいよなぁ。
動けるにもかかわらず、昼間は堂々と出歩けないんだから。
でも……事件が起きてしまったら、手遅れだもんね、気をつけなきゃ。
「彼女たち……翔子ちゃんたちは、あたしが家の近くまで送るわ」
「それがいいだろうな、よろしく頼むよ」
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| （第３章第５話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2008年頃に草稿を作成したエピソード。
実戦型メタロイド、メタロードの初登場シーンである。
ＡＳＧシリーズはただの石化ファンタジーではなく、曲がりなりにも“ＳＦ”なので、
石化処理も「強化人間開発のための技術」として想定しているのである。
ルイたちはあくまでもその実験体であり、アイガーのような実戦型が組織の目標なのだ。 |
