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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CSTS-ZOID2）【投稿エピソード】 |
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地球から約６万光年離れた惑星“Ｚｉ”。
今、この星にある群島“マヴィノ諸島”で、驚くべき事態が発生していた。
“Ｚｉファイター”達による生体機械獣“ゾイド”を使用した戦闘競技の最中、突如勃発した非常事態。
島の彼方此方で次々と、競技とは無関係な爆炎があがっていく。
謎の地震の後、銀色をした正体不明のゾイドの群れが現れ、次々と参加者のゾイドを無差別に破壊して行ったのだ。
飛行用ゾイド“レイノス”に乗っている実況リポーターも驚きの声を上げている。
「一体何事でしょうか！？突然島に正体不明のゾイド群が大量乱入です！
いくらなんでも有りとは言ってもこれは反則過ぎだあっ！！」
未だ状況が飲み込めていないリポーターが嬉々として叫んだその時、そのレイノスめがけ火の玉が撃ちこまれた。
「あああ、なんかこっちもやばそうなんで逃げます！！」
ようやく、異常事態に気付いたレイノスは、そのまま機首を返し、島から離れていった。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 序章 第１部 ★
メカ生体ゾイド外伝――時空を越えた戦闘機械獣・中編
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この島でゾイドバトルのバトルロワイヤルを行っていた獅子型ゾイド“ライガーゼロ”、
そしてその搭乗者であるイズキ・ティアリス。
同大会に参加していたサーベルタイガー型ゾイド“ブラストルタイガー”搭乗者のゴウ・ブラウズも、
この謎のゾイド軍団と闘っていた。
「だぁああぁあ！！」
ライガーゼロのストライクレーザークローが閃き、謎の銀のゾイドを跳ね飛ばす。
しかし、その装甲には大して傷は付いてはいない。
ブラストルタイガーのショックカノンからも攻撃が加えられるが……結果は同じだ。
「くっそ〜……なんで攻撃が効かねぇんだ？せめて装備ユニットがあれば……」
銀のゾイド群も口腔から火球弾や火炎放射を繰り出し、２機を追い詰めていく。
「えぇい！おぬし、下がれ！！“あれ”を撃つ！！」
と、業を煮やしたゴウがブラストルを前面に出し、機体の装甲を展開していく。
そしてブラストルの脚部の１０連ショックカノンと、機体上部にある複数の２連装サーミックレーザーガンを突き出した。
他にも各部から砲塔が開いている。
「サアァミックバァァストオォォォ！！！」
瞬時に、開かれた砲から放たれた凄まじい光の束が、銀のゾイド群に降り注ぐ。
爆音と共に銀のゾイドが爆風に飲み込まれた。
これがブラストルタイガーの必殺技、熱線砲の一斉砲火“サーミックバースト”だ。
その威力は超大型ゾイドの装甲すら打ち破る。
本試合で使用禁止だが、今回ばかりはやむをえない。
爆風が収まると複数のクレーターに、銀のゾイドの残骸が転がっていた。
流石にこれほどのエネルギーは防ぎ切れなかったらしい。
「……どうじゃい！」
「ふぅ……助かったぜ……さんきゅーな、ブラストルの人……
――あっ、エリルやイズルは大丈夫かな？ おぃ！２人とも聞こえるか！？」
しかし通信機からはノイズしか聞こえてこない……どうやら遠距離通信機器は使えないようだ。
「くっそ……あいつら大丈夫かな？ やられてないとは思うけど……」
と、其処に再び銀のゾイド達が現れた！
今度は前よりも数が多い……優に１０機はいる。
「げっ……またかよっ！ちょっとブラストルさん！悪いけど、あれもう１発撃ってくれ！」
「……そうしたいのはやまやまじゃが……あのサーミックバーストは１回使うとしばらくは撃てん……」
「う"ぇっ……そんな……」
その時、銀のゾイドの放った火球の１部がブラストルに命中した。
「ぐわっ！」
「あっ！！」
攻撃を受け倒れ込んだブラストルは大破こそ免れたが、
パイロットは衝撃で気を失ってしまったらしく、動かなくなってしまった。
ノーマルのライガーゼロでは恐らく勝ち目は薄い、かと言ってこのままブラストルを置いてはいけない。
「こうなったら……まだ上手く使えねえけど……“インフィニティシステム”で――」
しかしイズキが逡巡している間に、銀のゾイド達は大爪を振り上げながら２機に飛び掛った。
初めて迫る命の危機に、イズキは思わず絶叫する。
「うっ……うわああぁぁぁ！！」
――シャキイィィン！！！
その刹那――何か金属が閃く音が響いた。
イズキが目を開けると、腕を振り上げたままライガーゼロの鼻先で動かなくなった銀のゾイド群がいた。
すると……動かなくなった銀のゾイドが真一文字に切り裂かれ、
その銀のゾイドはまるで燃えるように装甲を溶かし、骨組みだけになってしまった。
「あっ……？」
イズキは見た。
燃え落ちる銀のゾイドの向こう、背部に巨大な日本刀のような刃を持った見た事もない獅子型ゾイドを……
そのゾイドは銀のゾイド達の最後を見届けると、颯爽と走り去っていった。
と、倒れ込んだブラストルタイガーが起き上がった……気が付いたようだ。
「うぬぅ……はっ、ヤツらは？」
しかしゴウが見たのは、残骸だけとなった銀のゾイド達の骨格だけであった。
「おおっ！！あいつ等がやられとる！！お主がやったのか？」
「あ……いや……その……」
「まぁ良い、とにかく助かった。お主、名は？」
「あっ、俺？ 俺はイズキ、イズキ・ティアリスて言うんだ」
「うむ、ワシはゴウ・ブラウズと言う。それにしても何者じゃこやつ等、ただのゾイドとも思えんが……」
「……はっ！そんなことよりイズルとエリルを探さねえと……」
「なんじゃ仲間がおるんか。良かろう。どうせ試合はもうお流れじゃ、わしも手伝ってやる」
「あぁ、悪い……」
こうして、ライガーゼロとブラストルタイガーは大地を駆けて行った。
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一方、そんなイズキ達とは裏腹に、いまだ謎のゾイドに追われている２体のゾイドがいた。
イズキと顔なじみのエリル・メイオンの“ケーニッヒウルフ”と、
島の法規維持を任されていたアッシュ・ハスラムの“レイズタイガー”だ。
２機は相手を振り切ろうと攻撃を避けながら、森林の道を駆けていた。
「くうっ……ビームや実弾が効かないとは……やっかいな！」
「あぁ〜！もうしつこい！！……あっ！待って、この先は……」
２機の前に断崖絶壁が立ち塞がった。
下は海、この機体では降りる事は自殺行為だ。
完全に追い詰めた銀のゾイド達は、奇怪な声を上げながらケーニッヒとレイズを威嚇する。
爪や牙を光らせながらじりじりと距離を詰めて行く銀のゾイド。
「ちぃぃっ……仕方が無い。私が突っ込んで奴等の気を引く。その隙に君だけでも此処を抜けるんだ！！」
「えっ……でも……」
「いいから行くんだ！！」
「そ、そんな……」
だが、銀のゾイドはそんな暇は与えまいと電光石火で襲い掛かる。
「「！！」」
「うおぉぉおおぉ！！」
其処にライガーゼロが割って入り、敵に体当たりを食らわせ火球の狙いを逸らせる事に成功した。
さらにどこからか放たれた砲弾が、同じ様に攻撃しようとした敵の足元を撃ち攻撃を中断させる。
「ライガーゼロ！？イズキなの！？」
「おう！エリル、無事だったか！！」
「爆砲のゴウ・ブラウズ、義によって助太刀致す！！」
イズキのライガーゼロとゴウのブラストルタイガーの登場によって、形勢はどうにか好転した。
「って、またあのへんちくりんなゾイドかよ……」
「このままではどうあっても勝てん！！今は一旦引くしかない……」
「ゴウさん、頼む！！」
「承知！！」
ブラストルタイガー上部のサーミックレーザー砲群が打ち上げられ、銀のゾイドに降り注ぐ。
爆炎と爆風があたり一面に立ち込める。
しかし、それでも銀のゾイド達は、大してダメージを受けた様子はない。
――だが、それが収まった後には、標的となった機体は消えうせていた。
獲物を逃した銀のゾイド群は再び少数の隊に分かれ、新たな獲物を探し始めた。
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「こっちだこっちだ〜！！早く避難しろ〜！！」
「皆さん急いでください！！」
島の外れの港。
事態を聞き付けてプリデリー島に乗り込んできたグリッドのゴジュラスギガとセイナの凱龍輝が、
島にいる大会参加者やその関係者をブランウェン港に止まっている、
多数の鯨型輸送艦ゾイド“ホエールキング”及びロブスター型輸送艦ゾイド“ドラグーンネスト”に誘導していた。
その周りには警護用の恐竜型ゾイドの“ゴドス”や“イグアン”、
さらに昆虫型ゾイドの“モルガ”と亀型ゾイドの“カノントータス”が防衛線を張っていた。
「くそっ……ＳＯＳ聞きつけて島に上陸してみれば、一体なんだってんだ！？ おい、これで全部か！？」
「いえ、まだ隊長と一部の参加者が残っているわ！」
其処に蝸牛型中型母船ゾイド“ホバーカーゴ”がやってきた。
ホエールキングほどではないが、全長９０ｍを超す輸送用ゾイド……イズキの弟、イズルの機体だ。
「なにやってんだ！早くお前も船に乗れ！！」
「あっ、いや……スイマセン。 ケーニッヒウルフとライガーゼロの２機を見ませんでした？
ゼロの方はノーマルでケーニッヒの方はＤＳＲ装備の……」
ホバーカーゴに乗っているイズルが２人に尋ねる。
「いや、見てねぇが……」
「まだ来てないみたいだけど……」
「ええっ！？ じゃあ……」
その時、いきなり見張りをしていたゴドスとイグアンの数機が爆発した。
あの銀のゾイドだ！
「なっ、なんだありゃ！？ あれが正体不明の乱入者か……？」
「皆、急いで！」
残ったモルガやカノントータス、ゴドスらが迎撃するが全く通用せず、火炎弾を受け全て爆発四散していく。
やがて敵はゴジュラスギガや凱龍輝にも攻撃の矛先を向けた。
「やろおぉぉぉぉ！！」
ゴジュラスギガはハイパープレスマニュピレーターで１匹を掴み、握り潰そうとする。
……しかし想像以上に固く、潰すのに時間が掛かる。
「くっ、こんな小型なのになんて装甲してやがる……」
「グリッド、どいて！！」
さらに迫る敵に、凱龍輝は口腔の集光荷電粒子砲を解き放った！！
半数の銀のゾイドはその１撃で吹き飛んだが、それでも大してダメージを受けずに健在なのも多い。
「なんて……やつらなの……？」
残った軍勢が再び攻撃を仕掛けてきた！！
だが、今度は別方向から凱龍輝と同等の荷電粒子砲がその銀の軍団を貫く！
２人が射出点を見やると、白亜のティラノサウルス型ゾイド“バーサークフューラー”が佇んでいた。
パイロットはデューク・シルバーク、先ほどアッシュのレイズタイガーと共にお尋ね者のゾイドを追っていた男だ。
「……ブルーセイヴァーか？」
「あぁ、そうだが……何故俺達の事を……隊長に会ったのか？」
「競技の途中で会った……すぐ逸れたがな。その後は知らん」
「……とにかく、感謝します……」
「……じゃねぇ！早く船に乗れ！！今は避難が先決だ！」
「あの〜……すいません……船ならもう行っちゃいましたけど……」
と、海の彼方にはそそくさと逃げるホエールキングとドラグーンネスト達があった……
先の戦闘で恐れをなし、一足先に脱出したらしい。
「あっ、おい！ くっそ見捨てる気か！！ 責任者の野郎、生きて帰ったら訴えてやる！！」
「文句は後で！ とにかく隊長と合流しないと！」
その時！再び近くの岩場から銀のゾイドがバーサークフューラーに踊りかかってきた。
だが、デュークは素早くバスタークローで迎撃する。
しかしやはりその装甲は見た目以上に固く、刺さりはするものの貫くのに１０秒近く掛かった。
「この大きさで……大型ゾイド並みの装甲だな」
「あっ、危ない！！」
今度は近辺に隠れていた銀のゾイドが顔を出し、口を開いて火球弾を放とうとしていた。
しかし、今度はさらに素早く回頭し、バスタークローに仕込まれたAZ185mmビームキャノンを放った！！
その砲は銀のゾイドの口腔に命中し、銀のゾイドは倒れこんだ。
……すると、今まで殆どの攻撃を受け付けなかった、銀のゾイドの装甲が溶けてフレームだけになってしまった。
「倒した……」
「どうやら口がウィークポイントのようだな……あの装甲も口だけは守れんらしい……
其処さえ狙えば、多少威力の低い武器でも倒せるか」
土壇場で意外な弱点な発見したようだ。
――その時、新たに近づく機影を発見する！
「またかよ……けど弱点さえわかっちまえばこっちのモンだ」
３機は襲撃に備え身構える、其処に現れたのは――
「お前達、無事だったか！！」
「おぉ！！ホバーカーゴだ！！俺達を待っていてくれたのか！！」
銀のゾイドから逃げ回っていた、アッシュやイズキたちだった。
「「隊長！！」」
「兄さん！！エリルも！！」
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その頃、プリデリー島の地下深くに存在する巨大な空洞で――
壁面や天井から漏れる淡い青緑色の光だけがほんのりと照らされた空間の中に、
全身を骨で覆われたような不気味な姿を持つ数体の巨獣の姿があった。
その中の１体、大きなラプトル系恐竜らしきモノが、胸のコアと目を光らせながら発言した。
「……この地の偵察のために散った“バイオラプター”が、何体か倒されているのを確認した……」
その言葉に、巨大な３本の角が確認できる影が反応する。
「何！？よもや“ムラサメ”の奴も来ているというのか！？」
「いや――この地には、他にも高い力を持っていると思われるゾイドに乗った“ニンゲン”も複数いるようだ……
それらにやられた可能性もある」
「えぇい！忌々しい“ニンゲン”共めが……！」
「……ラプターの報告では“ニンゲン”はあらかた追っぱらったそうだ……まだ残っているものもいるようだが……
さて、どうしてくれようか？」
「そんなもの！ 排除すれば良いだけではないか！……それにしても、ここは一体どこなのだ！？
妙な“嵐”に巻き込まれたと思ったら、こんな変な所に飛ばされて……おまけにここは、
“ニンゲン”の乗ったゾイドばかりで胸糞悪いわ！！」
３本の角を持つ影が忌々しげに吐き捨てると、その傍らに背中に鋭いトゲ状器官を持ったモノが水を指す。
「俺様に取っては、ここがどこだろうが、相手が“ムラサメ”だろうが何だろうが関係ねぇ、斬りたいやつをブッタ斬るだけよ！」
「……これから如何致します？ “ティラノ様”？」
トゲだらけの巨獣の叫びを無視するように、
ラプトル型巨獣は背後に鎮座する、自分等もよりも一回りも二回りもさらに巨大な影に問う。
「知らぬ――とにかく先ずは、偵察隊の報告を聞いてからだ」
そのティラノと呼ばれた巨獣は巨大な頭をもたげ、そう答える。
と、彼等がバイオラプターと呼んだ、あの外で大暴れしていた銀のゾイドが数匹ほど奥からやってきた。
ラプター達は言葉にならない声を上げ、その巨獣達を呼んでいるようだった。
「どうやら――“プテラ”が何か見つけたようだ」
４体は呼ばれるままに、洞窟奥深くに移動した。
奥には他の者達よりも華奢で細身な、翼を持った影があった。
「あぁ、“ティラノ”様、これをご覧下さい」
と、そいつは洞窟の奥のさらに光る場所を指した。
「何だ、ここは？」
彼等が洞窟の中を進んだ先に見たのは、地下にありながら明らかに人工の施設と思しき場所だった。
そこは巨獣達さえも小さく見えるほど広大な施設で、無人となって久しいようだが、
施設の彼方此方から溢れる薄い黄緑色の輝きが、まだここが稼動している事を示している。
しかも、その巨大な無機質の空間のさらに奥にはおよそ数百体はあろうかという、
夥しい数の未知のゾイド達が眠りに着くかのように静かに立ち並んでいた。
「こやつら、まだ“コア”は生きていますよ――」
それを聞いてティラノと呼ばれた存在はその光景にギラリと紅い双眸を輝かせた。
「……良かろう……この者共に新たな“力”と“命”を与えてやろうぞ――」
暗黒の要塞におぞましい咆哮が響き渡った。
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夕暮れ時。
イズキ始め取り残された島の残留者は、母船とも言えるホバーカーゴに集結していた。
……と言っても全ての機体が中に入るわけでもないので、
ホバーカーゴの円形格納庫の両ハッチを開き、殆どのゾイドはその上に待機している。
各ゾイドの足元ではブルーセイヴァーの３人がこれからの事を話し合っていた。
「救援はすぐ来そうか？」
「いえ……この島の海は今夜大きな嵐が来るそうです……少なくとも来るのは明日以降かと……」
「そうか……」
彼等がこの島に来るときに乗ってきた大型輸送船は既に、このホバーカーゴを除いて全て脱出してしまった。
いくら陸海両用のホバーカーゴでも、この大洋を渡り切るだけの性能は無い。
すなわち今の彼らにこの島を脱出する術は無いのだ。
「くっそう！それにしても何だよ、あのヘンなギンギラギンのゾイドは！？
まだ島の彼方此方をうろうろしているみたいじゃねえか！！」
「あの統制の取れた戦い振り、組織の物か……だが、パイロットがいる物とも思えない……
と言うか、何もかもが従来のゾイドとは違いすぎる……」
「そう言えば……あの隊長が取り締まりに行った違反者、どうしたんですか？」
「逃げられた……あの騒ぎのドサクサに紛れてな。やられたか……もしくはもうこの島には居ないかも知れん」
その違反者とはティラノサウルス型ゾイド“ジェノブレイカー”のヴェイム・ガーデスと、
ドラゴン型ゾイドの“デカルトドラゴン”のネメア・ダーキュリーである。
彼等を狙う、バーサークフューラーのデュークと共に追い詰めたが、この事件の際に取り逃がしていた。
「とにかく、どうしますこれから？」
「そうだな……救援を待つとしてもこのままでは危険だ。一度マナウィ島へ戻ろう。
あそこなら敵の攻撃に備えられるし、元は軍の施設だからもしかしたら船がまだ残っているかも知れない」
「そうですね。では、他の人達にもそう伝えましょう」
一方、ホバーカーゴの居住エリアにあるティアリス兄弟の部屋にて。
イズキは休息、イズルは島に現れたゾイドのデータをコンピュータで検索していた。
「あ〜……疲れた……死ぬかと思った……」
「う〜ん……やっぱり無いなぁ……」
「何が？」
「あのヘンなゾイド達のデータだよ。 ん〜……無いな。一体どこのゾイドなんだろう……？
野生体に似てるけど、やっぱり違うよね……」
「ビームも実弾も効かねぇ、効くとしたら荷電粒子砲か、よっぽど高い威力の武器じゃねえとなぁ……」
其処にエリルが入ってきた。
「２人とも、隊長さんが話があるようよ。来て」
ホバーカーゴの格納庫の１室で、アッシュが皆に今後の説明をする。
「――という訳で、救援は明日以降まで望めない。
となると、今は我々だけでこの窮地を乗り越えねばならないという事だ……
とにかく、救助が来るまで持ち堪えるしかない。 とは言え――ここでは危険だ。
私達は一旦マナウィ研究所に行こうと思うが、他に意見があるなら言ってくれ」
他者の意見は無い。この不測の事態の到来に際し、今は最善と考えられる策は他に無い事は誰もがわかっていた。
「んじゃ、決まりだな。早速向かうとするか」
「でも、何時またあいつ等が襲ってくるか解らないわ。私達が外に出て護衛をしましょう」
「そうだな。よろしければゴウさんとデュークさんも手伝って貰えないだろうか？」
「やれやれ……しょうがないな」
「うむ、承知した！！」
「あの〜……俺も手伝っていいっスか？」
デュークとゴウが言葉少なに応えると、イズキも元気良く挙手する。
「しかし、これは競技なんかじゃないんだぞ」
と、ノリと勢いとカッコだけで走り出そうとするイズキをアッシュが窘める。
エリルもそんなイズキを嘲笑する。
「あんたなんかが見張るくらいなら私が見張った方が効率いいんじゃない？」
「……喧嘩売ってんのか？ ジョートーだ、今こそ昼の決着を……」
エリルの言葉にイズキはムキになって詰め寄り、そんなイズキをエリルはふふんと笑っている。
イズルの方は、そんな２人を見て“またか”みたいな顔をしている……いつもの光景なんだろーね、わかる。
「任せてください、役に立って見せますから！！」
「はん！ コイツなんかよりアタシの方が働けますよ！！」
「……わかったわかった。でもあまり危ない事はしないでくれよ」
流石にアッシュも２人の勢いに気圧され、思わず彼等の参戦を了承する。
この展開にセイナはヤレヤレといった表情を浮かべ、グリッドは苦笑するしかなかった。
そして、アッシュ、グリッド、デューク、ゴウは各々のゾイドに乗り込み、ホバーカーゴから出てゆく。
「そいじゃ、そのマナウィ基地に向かうとしようか」
「あら、そういえば……イズル君だっけ？ 貴方達兄弟なのよね。お兄さんはゾイドに乗っているようだけど、貴方は乗ってないの？」
と、凱龍輝に乗り込もうとしたセイナが格納庫に積載されていた“あるゾイド”を指差してこう切り出した。
セイナが指差したのは、巨大な爪を持った隼型ゾイド“ジェットファルコン”だった。
両脇にはバーサークフューラーのよりも大きなバスタークローが搭載されている。
自分の事を指摘されたイズルは、どこかバツが悪そうにこう応える。
「僕はゾイド乗りじゃなくて、ゾイドの科学者になりたいんですよ」
「あぁ、そうなの。てっきりあそこにあるゾイドは貴方のかと思っちゃった」
「いやぁ……あれは兄のライガーゼロやこのホバーカーゴと同じく両親の形見なんですけど。僕にはちょっと……」
「あ〜、こいつはホバーカーゴの操作とか整備とかはできんだけど、ゾイドの操縦適性は無いみたいなんで……」
ゾイドを操るには、乗る人間に“ゾイドの操縦適正”が必要とされている。
ゾイドは言わば生きた機械であり、いくら体を完全に機械化されても、
ゾイドの心臓であり頭脳である“核”に残る本能は、時に“認めた相手以外の操縦を受け付ない”という事もある。
そして、ゾイドという存在と文化や文明が密接に繋がるこの星の人間にとって、
“ゾイドに乗れない”という事は、あまり気の良い話ではない。
「……？」
イズキはなるべく明るく語ろうとしているが、それを聞いたエリルは怪訝そうな顔を浮かべる。
「そう……じゃあ仕方ないわね……」
彼女もそう言うと凱龍輝に乗り込みホバーカーゴから出撃した。
（それは……僕だって……）
イズルは、やるせなさそうな顔でジェットファルコンを見上げていた。
「……それにしても美人だよなぁ……あの人♪」
「……ふんっ！！」
そんなイズキにエリルのエルボーが食らわされた。
「あぐっ……！！ てめぇ、マジで俺になんかうらみでもあるのか……？」
こうしてマヴィノ諸島は星一つ見えぬ漆黒の夜へと誘われていった……
だが、取り残された物達とそのゾイドが集うホバーカーゴを見据える、１つの影があった。
あの銀のゾイドではない、先頃イズキ達を助けたあの大きな刀を背負った、青いライオン型ゾイドであった……
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| （後編へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2007〜2009年頃に飛石武氏が投稿したエピソードを再編したもの。
『メカ生体ゾイド』のクロスオーバーを想定して執筆された“序章”であり、
旧ＯＷ企画及びＰＡシリーズでは現代の地球が主な舞台となるわけだが、こちらは未来史の惑星Ｚｉが舞台であり、
ゲームにもなった『ゾイドインフィニティ』及びアニメ『ゾイドジェネシス』の世界観をベースにしている。
大陸間戦争時代が１段落してから開催された競技としてのゾイド戦闘に参加したキャラクターがメインになっており、
そこに更に未来史に登場するバイオゾイドが敵として襲来するシナリオになっている。 |
