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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E082） |
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旧奥沢村。
朝陽市の北部に広がる山地の奥、沢伝いに広がる盆地に、３年前まであった小さな村である。
総人口１８０人弱で、農業と林業が主な収入源であった。
そんな小さな集落が、３年前のある日突然、忽然と消えた。
いや……集落が消えたと言うよりも、住民が失踪したと言うべきだろうか。
朝陽市に出稼ぎに来ていたわずかな村民が、人気の消えた村に入って、分かったことだった。
朝陽市警が現場を捜索したが、何も手がかりが得られないまま、村は地図から消えた。
奇妙なことは、その跡地が“封鎖された”ことである。
「猛毒の細菌が棲んでいる」とか「凶暴な大蛇が棲んでいる」などのウワサは立ったが、
朝陽市警は村民失踪の原因はもちろんのこと、跡地封鎖の理由も何一つ明かさなかったのである。
“神隠しの村”の都市伝説が生まれたのは、それから１年後であった。
封鎖用の金網をくぐって、中を調べようとする者が、しばしば行方不明になる事件が起きたからだ。
全員が帰って来なかったわけではなかったが、今もその原因は明らかになっていない。
唯一の鍵となるのは、帰って来る事のできた“目撃者”の奇妙な報告だ。
彼らは口を揃えてこう言ったという。
「村の跡地が灰色の砂漠になっていた」と――。
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第８章 新たなる謎 ★
第２話 封印された村
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「で、これがその“ゲート”？」
「……みたいね」
朝陽市の北部を走る車道から、脇道に逸れて間もない、林道の奥。
木々がうっそうと茂る、心なしか不気味な道の突き当たりに、突如現れる無骨な金網。
そこには血のように真っ赤な文字で『ここから先立ち入り禁止』と書かれている。
しかし金網は誰かに破られた後があり、その気になれば子供でも押し開けてくぐれそうに見えた。
その金網の前に、３人の少女……眞希、春海、そして瞳。
興味で目が輝いている眞希と春海に対し、瞳はちょっと不安げだ。
正直、この薄暗い脇道に入った頃から、“嫌な予感”がずっとしていたからだ。
「ねぇ坂本さん……本当に行くの？」
「え……滝川さん、やっぱり怖くなった？」
「大丈夫ですよ先輩、あたしが付いてますから！」
そんな春海の言葉に、苦笑する瞳。
「しょうがないなぁ……」
瞳はぼやきながら――しかし苦笑いの顔で――金網をくぐる眞希たちの後へと続いた。
林道は車１台が十分に通れる広さがあったが、あちこちがひび割れ、雑草が茂っていた。
いつ頃舗装されたものか、細かい埃で砂色にすすけた道が、木立の中をうねるように走っている。
さび付いた鉄柱の上には色あせた標識が残っており、ここがかつて実際に車道であったことを物語る。
真夏の陽光が木々の隙間からこぼれ落ち、遠くでツクツクボウシの鳴き声が響いている。
両側が土色の急斜面なのでガードレールはなく、息を吸い込むと濃厚な土と草木の香りが肺に流れ込む。
何の変哲もない、山間の林道……ハイキングコースにはちょうどいい雰囲気だ。
コンクリートジャングルしか知らない、首都圏の子供たちに教えてあげたいような、そんな場所。
そんな風景が――数百ｍほど先で、唐突に途切れた。
「あれ……何かな、ここ？」
「採石場？」
「おかしいな、道間違えた？」
突如開けた視界に飛び込んできたのは、まるで山肌をブルドーザーで削ったような荒地。
ところどころに建物が見えており、それは農家のように見えなくもないが、
一面砂でもかぶったように黄色がかった灰色に染まっていた。
視界に入るものがほとんど同じ色をしているため、近くまで行かないと何があるか分からない。
まるでモノクロの写真でも見ているようである。
「あれ……民家だよね？」
「作業場って感じじゃないですよねぇ」
「ってことは、やっぱりここがその村だったのかな？」
そう言いながら、歩いていく眞希と春海の後ろから、瞳が付いていく。
しかし……その表情は不安に染まっていた。
“嫌な予感”はますます募っていた……何故なのかは分からないが、とにかく胸騒ぎがして仕方ないのである。
やっぱり、ここに来るべきではなかったのじゃ……と彼女が思った時だった。
ふと――視界の端に、“それ”が映った。
それは枯れたように立っている、１本の木……まるで化石のようだ。
しかし瞳が釘付けになったのは、その枝である。
何枚かの葉が付いているのだが、それが皆一様に、灰色に染まっていたのである。
しかも、“砂埃を被って枯れた葉”という感じではなかった。
縁が異常なまでに、キラキラと光を反射していたからだ――まるで、石膏細工のように。
そもそもここまで朽ち果てた木に、葉がまだ付いていること自体がおかしい。
瞳は恐る恐る――その葉に触れた。
「――！！」
驚くべきことに――その葉は瞳の指を“力強く”受け止めた。
枯葉なら、触った瞬間、粉々に砕けていただろう。
しかしその葉は、その色からは想像もつかない“硬さ”を持っていたのだ。
厚さ１ミリあるかどうかも分からない葉なのに、まるで鉄板のようだったのである。
その瞬間――瞳は何かを確信し、先行する２人に向かって叫んだ。
「――坂本さん、春海ちゃん、ちょっと待って！」
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「そうですか……眞希、やっぱり来てないんですか」
こちらはセンターＤ。
まだ午前のうちから、翔子が訪れていた。
眞希と連絡が付かないので、ここにいるかと期待してきたのだ……が。
不安そうな翔子の前で、ライカはかぶりを振る。
「今日は来てないわねぇ、連絡がないの？」
「はい……あの子結構意地っ張りだから、やっぱり昨日言ってた場所に行ったのかも」
（昨日言ってた場所って……あの何とかいう村の跡？）
ルイの問いかけに、翔子が無言で頷いた。
そんな翔子の表情を見たルイが、隣に立ってるユウやサラと顔を見合わせる。
（神隠しの森、とか言ってたっけ？）
（森の奥に村の跡があるって話でしたよね……）
「あんまり突き放さなきゃ良かったなぁ……言い出すと聞かないし」
やり切れなさそうな翔子……小さな溜息が漏れた。
（優しいんですね、翔子さんって♪）
これはサラだ。
思わず、翔子が顔を赤らめた。
「や、やだサラさん、そんなんじゃないよ、あの子放っとけないから……」
（お、珍しいな、翔子さん赤くなってやんの♪）
「な、何よユウ君、それいつもの仕返し？……あ」
話を逸らせようと顔を振った翔子が、視界に何かを見つけた。
その先にはよろよろ、とおぼつかない足取りで歩く、緑色の鉱物娘が１人。
エミでもスイでもない、不透明だが濃いグリーン……マラカイトに似ていると言えばいいのか。
（あ、翔子さんは初めてかな？ マリさん、一昨日活性化されたばっかりだから）
「へぇ……あ、初めまして、あたし石塚翔子って言います♪」
（……あ……ど、どうも……マリです……あ、でも……聞こえないんですよね）
「ううん、大丈夫ですよ、ちゃんと聞こえてますから」
（……えっ……そ、そうなんですか！？）
（翔子さんは１度石化されたことがあって、それ以来聞こえるようになったんだって）
（……そ、そうなんですか……人間に……戻れたん、ですよね……）
（あっ……）
マリの寂しげな“言葉”に、周囲の一同がはっとした表情を浮かべる。
特にルイは明らかに“しまった”という表情になっていた。
「ご、ごめんなさい……」
（あたしも……ごめんマリさん、そういうつもりじゃなかったの）
（……え……あ、い、いえ……仕方ない、ことですから……）
気まずい空気が支配する……誰もが悪気がないだけに、余計である。
マリとて「戻れなくても動きたい」から今の状態を選択した……覚悟したはずだった。
しかし、目の前で「人間に戻れた石化経験者」を見たため、心が揺れたのだ。
そしてその気持ちを、ここにいる全員が理解できた……だからこそ気まずいのだ。
理屈で割り切れるほど、感情は便利なものではないのである。
「ま、まぁ、これを機会に、仲良くすればいいじゃない、ね？」
ぎこちない空気をほぐそうと、ライカが割って入る。
苦笑いを浮かべながら、ルイやユウ、サラもこれに同調した。
（そ……そうそう、これも経験のうちってやつで♪）
（翔子さんは自分達の翻訳係みたいなもんだからさ、色々話せばいいんだよ）
（翔子さんだって経験者ですから、私たちの同志ですよね）
棚上げにしたわけではない……悩んでいても始まらないからだ。
ルイもユウもサラも、そう自分に言い聞かせて、翔子たちを受け入れてきたのである。
何よりも、“受け入れる心”がなければ、石化した体を動かすことも出来なかっただろう。
図らずもルイたちの“激励”を受ける形になった、翔子の表情が緩んだ。
「あ……ありがとね、みんな」
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「――ちょっと待って！」
瞳が先行する２人を止めようとした――まさにその時だった。
出し抜けに発生する――不気味な地鳴り。
「きゃ――何っ、じ、地震！？」
「それとも本当に祟り！？」
「２人とも戻って……ここから先は危――」
２人が瞳の言うとおり、引き返しかけた時――地面にひびが入った。
「きゃぁっ！？」
「わぁ――あぁあぁっっ！？」
「はっ……春海ちゃん！！」
足元の地面がごっそりと陥没し、春海の体が宙に浮いたかと思うと、そのまま沈んだ。
眞希は思わず手を伸ばしたが――届かない！
「いやぁっ、せ、せんぱ――」
「春海ちゃん、春海ちゃん！！」
「ダメよ坂本さん、あなたまで落ちちゃう！！」
しかも――更に異変は続いた。
突如２人を襲う、何とも形容のしがたい奇妙な感覚――全身の毛が逆立つような悪寒。
そして、その異変が何を意味するのか、真っ先に悟ったのは瞳だった。
「な、何、何なの！？」
「逃げて坂本さん――早く！」
「そんな、春海ちゃんを助けないと！」
「いいから今は逃げて……お願い！――――くぅっっ」
眞希を半ば無理やり、来た道に押し戻そうとした――瞳が倒れるように座り込んだ。
「た……滝川さん……！！？」
「早く……さ、坂本さんだけ、でも……！」
その体が、見る見るうちに半透明に変化していく。
いや――変わっていくのは瞳だけではなかった。
足元から血の気が引くような嫌な感覚と共に、眞希の片足もまた、灰色に変色していった。
「いやぁ……なっ、何これ……滝川さん！？」
「に、逃げて……お願い、だ……か―― 」
必死で訴え続けていた、瞳の声が唐突に途切れた。
変化が容赦なく上半身を這い上がり、そして頭部へ、髪の毛へ。
自身もまた片足の自由が利かなくなった眞希の目の前で、瞳はクリスタル状の石像へと姿を変えた。
ただ――完全に硬化したわけではないらしく、カタカタと小刻みに震えている。
経験者の精神力がなせる業か……瞳は“再石化”後もなお――体を前に出そうとしていた。
軽くきしむような音を響かせながら、１歩また１歩、眞希の方へ。
（お願い……坂本さん逃げて、あたしのことはいいから！）
水晶を思わせる瞳の指先が、必死で林道の帰路を指差す。
「で……でも……――ぅくっっ」
眞希はもう涙目だ……無理もないが。
そうこうしている間に、眞希自身の変化も膝を這い上がっていく。
変化が進む脚と同じ側の手の指先も、間もなく灰色に変化を始めた。
意思を受け付けなくなった片足を引きずるように、眞希は瞳の指差す方へと、よろよろ歩いていく。
血行が変化したのか、その息は荒く、まるで病人のようだ。
（早く……あの境界まで行かなきゃ、あたしみたいになっちゃうよ！）
林道の植生が途切れた“境界”まで、２０ｍほど。
その先には真夏の森林が繁茂しているが、その手前はまるで枯れたようになっている。
いや恐らく……瞳の直感が正しいならば“石化している”のである。
あの境界を越えたら、きっと助かる……瞳はそう考えたのだ。
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１分ほど――経っただろうか。
２人には多分、何倍も長く感じたであろうが……
境界を越えたところで、眞希が転ぶように地面にへたり込んだ。
変化が片足と片手の付け根に達し、体を支えきれなくなったためである。
自分の意思で動かせないばかりか、何ｋｇもある重りを巻きつけられているようなものだ。
しかしそれでも、何とか境界線は越えることが出来た。
瞳はこれで、眞希が助かることを期待したのだが……
「く、うぁぁ……っっ」
（そ、そんな……坂本さん！？）
だが……期待は裏切られた。
変化はなおも体を侵食し、灰色に染めていく。
今まで変化していなかった方の脚でも灰色の侵食が始まり、その細い首筋にも変化が現れる。
体を半分ほど折り曲げた眞希が、姿勢を変えないのは……恐らく、変化が腰に達しているのだろう。
（ど、どうして……？）
「た、滝川さん……あ、あたし……もう、だめかも」
（そ、そんな、弱気になっちゃダメだよ！）
眞希に遅れること１～２分、眞希の前にたどりついた瞳は、彼女を励まそうとした。
しかし、かろうじて動けているとは言え、既に声を出すことはかなわず、その言葉は届かない。
瞳は思わず、眞希の石化してしまった、片手を握り締めた――自身もまた、石化した手で。
「この前……あんなこと言ったからだね……罰が当たったんだね、あたし」
“あんなこと”というのは、未経験であるために、気持ちを共有できないもどかしさをぶつけた２日前。
友達になったルイら“経験者たち”の苦悩が理解できないわけではなかったのに、
歯がゆさから軽率な言動をしてしまった自分を、眞希は悔いていたらしい。
この“廃村探検”をするかどうかで、親友の翔子と口論した昨日の後悔も、含まれていただろう。
（そんな、あんなことぐらいで、罰なんか！）
「不思議……坂本さんの声が聞こえるよ……大丈夫、覚悟はしてるから」
（覚悟なんて、そんなこと言わないでよ……あたし嫌だよ）
「死ぬわけじゃないもん……石になるだけ……でしょ……滝川さんたちと……同じ」
一筋の涙の跡を残し、少女の片目が色を失い、灰色に染められた。
（やめてよ……あたしそんなの嬉しくないよ……あぁ神様……）
今や半透明の結晶と化した自身の手を組み、祈るようなポーズを取る瞳。
しかし彼女には、ただ祈ることしかできなかった。
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| （第８章第３話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2009年頃に草稿を作成したエピソード。
今まで最前線にいながら奇跡的に難を逃れてきた眞希がついに被災する物語である（鬼）
また第２部の核心舞台の１つである、旧奥沢村の地下基地の潜在的な初登場エピソードでもある。
マラカイトをモチーフとしたマリは、2009年になってから新しく作った鉱物娘キャラクターの１人。
半透明宝石モチーフがあらかた出尽くした中で、久し振りに“不透明鉱物”がモチーフになっている。 |
