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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E083） |
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“１夜で滅んだ”旧奥沢村へと続く、閉鎖された林道の外れ。
静かな時間が流れる正午前、ツクツクボウシの鳴き声だけが響き渡っている。
そんな道端に、２人の少女が座り込んでいる。
もっとも……その片方はまるで水晶のような質感を持ち、もう片方は灰色だが。
謎の異変に巻き込まれ、石化変異した瞳と眞希である。
ただし眞希の方は、変化が途中で止まっていた。
その右半身が灰色の砂岩を思わせる石となっていたが、左半身はまだ生身が残っている。
もっとも、そのためか呼吸困難に近い状態で、顔色は概して悪く、息も荒い。
石化したのが右半分だったのは、不幸中の幸いだったのかも知れない。
これが逆なら、心臓が止まった可能性もあったからだ。
瞳は眞希を膝に寝かせ、複雑な表情を半透明な顔に浮かべて、斜め上を見上げている。
“経験者”である瞳の方は、全身が石化していても、いちおうは動けるようだ。
そしてその視線の先に――長身の人影が立っている。
サファイアを思わせる蒼い目と、全身に散りばめられたルビー状の結晶体。
銀色の逞しいボディには、青みがかったメタリックな模様が刻み込まれている。
“彼”の名はホルス――かつて、ルイ達を石像に変えた、地下組織に所属していた男だ。
今は組織を離脱し、相棒のアイガーと共に放浪の身であるが。
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第８章 新たなる謎 ★
第３話 鍵を握る少女たち
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（あ……ありがとう……ございます）
「礼を言うのはまだ早い……変化を止めただけだ、復元したわけじゃない」
（凄い……声を出して会話できるんですね）
「ふん……良い度胸だな、元々敵だった者を目の前に、随分と落ち着いたものだ」
（あ、あたしは……直接あなたにやられたわけじゃないですから）
そう――実のところ、瞳がホルスと接近遭遇するのはこれが初めてだ。
先のテロ事件では瞳と出会ってはいない……アーケードに向かったのはアイガーだからだ。
かろうじて動く左目で、眞希は不安そうにホルスを見上げている。
彼女は人間時代のホルスと会っているが、どうやら同一人物だと気付いてはいないようだ。
（それに……坂本さんを助けてくれたことは事実ですし）
「開発中の能力が上手く作用しただけだ……失敗していたら、今頃その娘は石像だった」
（そう、なんですか……）
「だ……大丈夫、だから……石になってたって……覚悟は……――ケホッケホッ」
（坂本さん、無理して喋らなくていいよ、息をするのも大変なんだから！）
ホルスは眞希を見下ろし、呟くように言う。
「思っていたより気丈な娘だな……もう１人の娘は、最初からかなり気が強かったが」
「翔子は……男勝りだから」
力なく、苦笑いをする眞希。
顔の半分近くが石化している所為か、その笑顔もやや引きつって見える。
２人を見下ろしていたホルスは、ふとその視線を上げた。
「さて……今度は俺が質問する番だ」
（……え……？）
サファイア色の目の先に見えているのは、３年前に地図から消えた村へと続く道。
瞳らがいる場所から数ｍほど先から植生が枯れ果て、灰色に染まっている。
「何故――あの場所へと向かおうとした？」
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「３年前に全住民が謎の失踪を遂げた村、か……嫌な予感がするな」
センターＤの事務室で腕組をするのはパドルだ……隣にはライカもいる。
午前から来ていた翔子は、談話室でルイやユウ、そして“新顔”のマリと交流中らしい。
「でも半年前に訪れた時は、何もなかったんでしょ？」
「詳しくは調べてないからな……それに、異様な雰囲気はあった」
「異様な雰囲気って？」
パドルは半年ほど前に、問題の廃村跡を訪れたことがある。
調査を始めて初期の頃であり、まだそれが事件の重要な鍵を握るという実感がなかった。
ルイが収容されていた第３ラボの方が、より重要な場所だと考えていたこともあっただろう。
そのため、数分ほど散策しただけで、その場を後にしたのである。
「村の周囲に生えていた木が、まるで土石流に呑まれた“化石木”みたいに枯れていたんだ」
「まさか、それって……」
「あぁ……その時はまだルイに会って間もなかったから、奇妙としか思わなかったんだが……
今思えば――誰かに見られていたような気もした」
「誰かに見られていたって……」
「そうなんだよ……全く人気のなくなっていた廃村でだぜ？ それにあれは、野生動物の気配じゃなかった」
「その予感が本当だとしたら……眞希ちゃんたちが心配ね」
その時――事務室のドアを叩く音が響いた。
直後、“声のない言葉”がドアを通して飛んでくる。
（パドルさん、ライカさん、ちょっと来てください！）
「サラちゃん！？」
「どうしたサラ、何かあったのか？」
事務室を出た２人は、サラの先導で被害者の保管庫へ向かった。
サラが言うには、“意識を取り戻した被害者がいる”とのことであった。
もちろん、それだけなら別段珍しいことではない――しかし。
意識を取り戻したのは――朝陽署から譲り受けた被害者だったのだ。
１年半前に朝陽署が保護した段階で、既に石化から１年以上が経っていた被害者である。
爆破されたメドゥアスの第２ラボに残っていた記録から、かなり初期の実験体だと判明した。
“最悪精神自体が破壊され、意識が蘇らない恐れもある”と危惧していた実験体たちである。
その被害者たちが突如――何の前触れもなく意識を取り戻したのである。
２人が保管庫に入ると、他の鉱物娘たちが既に奥の被害者を取り囲んでいた。
朝陽署から譲り受けた被害者は６体……いずれも灰色の砂岩のような質感を持っている。
外見的年齢も似通っていて、大体高校生ぐらいに見える。
２人が近づくと、鉱物娘集団の中央にいたルイが、２人に向かって振り向いた。
（あ、パドルさん！）
「彼女たちが意識を取り戻したって！？」
（はい、さっき急に……しかも、かなり鮮明な子が！）
（…………ここは、どこ……？……あなたは……いったい…………）
「――！！ ……今のは、君か？」
ルイの言葉に割り込むようにテレパシー波を放ってきたのは、まさにその被害者の１体であった。
これまで、意識復興から間もなくここまではっきりと言葉をつむいだ被害者はもちろん、
パドルらに直接語りかけようとする被害者も皆無であっただけに、パドルは驚いた。
（…………あなた、たちは……動けるん、だね……羨ましい…………）
「君は……自分の状況が、分かっているのか？」
（…………石に、なってる……どのくらい、経ったかは……覚えてない、けど…………）
「驚いたわね……こんな気丈な被害者は初めて」
「君の……名前は？」
「それはさすがに……覚えてないんじゃない？」
（……………………エリ…………）
グループの１番手前に立っていた、灰色の石化娘は、驚くべきことに自分の名前を覚えていた。
目を見開いて顔を見合わせる、パドルとライカ。
「こりゃ驚いた……」
（…………ここは……あいつらの……施設じゃ、ない？……）
（あいつら？……あいつらのことも覚えてるの？……うん、違うよ。ここは別の施設）
（この人たちは私たちの仲間……いや、恩人ですね。私たちを再び動けるようにしてくれた）
（本当は……人間に戻りたかった、ところだけど……これは仕方ない、から……）
ルイ、サラ、そしてまだ活性化間もないマリが、エリと名乗った石化娘に語りかける。
周りに集まった鉱物娘たちも、思い思いに頷いた。
（…………そう……お願いが……あたしも……動ける、ように…………）
「今すぐにか？……確かに意識の発露はしっかりしているが、まだ様子を見た方がいいと思う」
（…………今は、無理？…………急がなきゃ……大変な、ことが…………）
「――大変なことって！？」
ライカが問い返した――その直後。
訪問者を告げるベルが、保管庫に鳴り響いた。
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玄関シャッターの中に、訪問者を乗せた小型トラックが入ってきた。
もっとも、そのタイヤは大型トラックのものを使っているので、妙にアンバランスだが。
大きなタイヤは妙にひずんでいる……まるで鉛の塊でも積んでいるかのように。
既に訪問者と面会したであろう、パドルとライカの表情は一様に硬い。
小型トラックの前にはルイ達と、昼前からセンターに来ていた翔子――その顔も、引きつっている。
翔子やルイの視線の先には、今まさにトラックから降りようとする訪問者。
全身半透明のクリスタルを思わせる鉱物娘だ……その腕にはもう１人の少女を抱き抱えている。
体の半分が灰色の石に変化した少女……翔子にとっても、なじみの深い少女である。
「ま……眞希……」
「へ……へへ……ちょ、ちょっと……失敗、しちゃった――ケホッケホッ」
（瞳さん……いったい、何があったの？）
（それが……あたしもよく分からなくて……気付いたらこうなっちゃって、そしてこの人に――）
瞳がそこまで説明しかけた時、翔子がつかつかと、２人と一緒にトラックから降りてきた人物に詰め寄った――その目は怒りに燃えている。
「あんた――眞希に……眞希に何をしたのよっっ！！」
銀色の胸板を半分ほど覆う、タンクトップを鷲づかみにして、翔子は声を荒げた。
そんな翔子を、瞳に抱き抱えられた眞希が制する。
「やめて、翔子……違うの、その人は……あたしを、助けてくれたの！」
「……え……？」
まだ疑うような色をその目に残したまま、翔子は怪訝な表情で目の前の人物――ホルスを見上げた。
「俺はたまたま通りかかっただけだ……半分は、その娘の運だな」
「……説明してくれんかな？」
隣からパドルも、ホルスに話しかけた。
ホルスがその真っ青な目を、ちらりとパドルへと向ける。
「……何をだ？」
「何をって……あ、あんたねぇっ！」
「……あの廃村跡に、何があるんだ？」
「それは――言えねぇよ」
ふと、ホルスとは違う位置から、声が飛んできた。
トラックの助手席に当たる場所から、チタンのような色の顔が露出する。
パドルの視線が、横目でその顔を捉える。
「お前は確か――アイガーだったか……今更隠し立てすることか？ 組織を離れたんだろうが」
「離れたのは俺自身の意思だと言ったろうが？ てめぇに義理立てする必要はねぇな、ふん」
「こ、この鉄肉男……言わせておけばっっ！」
「翔子……やめて！」
「よせ、アイガー……悪いが、答えることはできんな。別に隠し立てしているわけじゃないが」
「……どういうことだ？」
「我々にとっても、あの場所はタブーだった……それだけのことだ」
「だから、俺たちにも知らされてねぇんだよ……上から、あの場所には立ち入るなとだけ言われてた」
パドルは何も言わずに、深い溜息を吐いた……“嫌な予感”が見事に当たったからだ。
その横で、パドルの気分を代弁するように、ライカが口を開く。
「つまり……組織の“最高機密”が、あの場所にはあるわけね。あんたの予感は正しかったみたいよ」
「侵入者が神隠しに会うって……こういうことだったのね」
「えへへ……そうみたい……ごめんね、翔子」
「はぁ……ほんと、あんたと春海ちゃんって似たもの同志―― って、そう言えば春海ちゃんは！？」
翔子が思い出したようにそう言うと、眞希は一転、悔しそうに俯いた。
瞳も視線を落として、常人には聞こえない言葉で打ち明ける。
（あたしたちがこうなった直前……林道が崩れて、その中に……）
（じゃあ、春海ちゃんはそれに巻き込まれたってこと！？）
「何てこった……」
「どうやら、ぼやぼやしてる余裕はなさそうね……瞳ちゃんは眞希ちゃんを連れて付いてきて。 まずはその子を復元してあげないと」
（あっ、はい！……坂本さん、行くよ？）
「うん……じゃ、じゃあ翔子、後でね」
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３人が奥の処置室へと向かう……サラら数人の鉱物娘も、心配そうに付いて行った。
翔子もしばらくためらったが、結局処置室の前で待つことにしたようだ。
後には２人の金属戦士と、パドル、そしてルイが残った。
「侵入者は石化して拉致ってわけか……村が消えたのも、多分それが理由だな」
「……何だそりゃ？」
「分からないか？あの廃村の地下には、秘密の施設がある」
直接の根拠を持ったものではなかったが……パドルには確信に近いものがあった。
自分が以前見た廃村跡の風景と、眞希らの被災が、頭の中で１つに結びついたようである。
ホルスとアイガーは顔を見合わせた……どうやら、本当に“何も聞かされていなかった”らしい。
「俺たちは聞いたことがないが……確かにそう考えたら、娘どもが変異した理由も分からなくはないな」
「じゃあ何か？あの村にいた連中も、今頃その施設の展示品ってワケかよ」
「……元・敵の割には馴れ馴れしく聞くな、義理はないんじゃなかったのかよ♪」
「ンだとてめぇ……もう１度、斬り合ってみるか？」
（ちょ、やめてくださいよ、今そんなこと言ってる場合じゃ）
殺気を帯びた目で睨み合う２人の間に、慌ててルイが割って入った。
そんな様子を眺めていたホルスが、低く笑う。
「ふっ、元・実験体に諭されるとはな」
「ま、確かにそうだな、こりゃ失敬」
「……ちっ」
舌打ちするアイガー、ルイは戸惑ったような表情で、更に続ける。
（実験体ってやめてくれませんか？……あたしにはルイって名前がちゃんとあるんです）
「ルイ、か……そう言えば前にもそんなことを言っていたな、お前」
「確かに……組織を離れた俺らにとって、実験体番号など意味もないか」
「ふん、だったら今は同志ってか？」
（……えー、なんかそれもダサいかも）
「……生意気な小娘だぜ」
「くく……ははは、こいつは面白い♪」
出し抜けに、ホルスが笑い声を上げた。
遠巻きに眺めていた別の鉱物娘たちが、ぎょっとした表情を浮かべる。
その中にはメドゥアスのラボで人間時代のホルスと会った、サヤやミカもいた。
「おいホルス、何がおかしいんだ？」
「面白いじゃないか、この娘……実に人間臭い」
（ちょっと……それ嫌味ですか？）
「嫌味に聞こえたか？これは失礼……だが大した者だ、その姿で人間臭さを失わんとは」
「ふん……まぁ確かに、壊れてしまうやつも少なくなかったしな」
（な……何ですかそれ……ほ、褒めても何も出ませんからねっ）
一転、照れるような仕草で斜めに俯くルイ、可愛い。
「この娘だけじゃない……ここに来たのは初めてだが、皆、人間臭さを残している。人肌を持っていても、人間とは思えぬ存在もいるというのに……」
「何だよホルス、また感傷病か？」
「感傷病？……そうだな、俺も変な持病を持ったものだ」
（……何なの、こいつら？）
付いていけないような表情をするルイ。
パドルはその後ろで、何かを察したような、そんな表情を浮かべている。
「人間らしいか否かってのは、外見じゃ決まらないってことだよ……ここの子は皆それを理解している。
まぁ、ルイという素晴らしいお手本がいたからこそだがね♪」
（や、ちょ、パドルさんまでぇ……///）
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「――はい、これで復元は終わり。でも、まだ寝ていた方がいいわ」
「……あ……ありがとう、ございます……」
センターの中ほどにあるメディカル・ルーム……まぁ、要は処置室のことだが。
駅前テロで被災した人々を復元し、休養させたのもこの部屋だ。
入口に近いベッドの家に横たわるのは眞希……翔子も面会を許されている。
すぐ横には、依然結晶化状態の瞳と、眞希の復元に立ち会ったサラ。
「まったく……今度こそ懲りたでしょ」
「……かも知れない」
「あなたは少し後の方がいいわね……それにしても災難ねぇ、２度も」
ライカが瞳に向かってそう言う。
活性化状態の石化体は、他のケースと勝手が少々違い、復元にタイミングがある。
これは春海のケースでも同じであった。
（はぁ……あ、でも、あたしはしばらくこのままでいいです）
すると瞳は、意外なことを言い出した……怪訝な表情をするライカと翔子。
「……どうしたの？ まぁ１時間くらいはそのままがいいとは思うけど」
「そういう意味じゃ……ないってこと？」
（嫌な予感がするんです……今戻ったら、ダメみたいな気がして）
（どういうことですか、瞳さん？）
サラも不思議そうな表情をする。
瞳は半透明の体を、確認するようにゆっくりと動かす。
人間と同じようには動けないが、さりとて引っかかる様子もなく滑らかだ。
（今回の事件……このまま収束するとは思えないんです）
「まぁ……確かに、春海ちゃんが行方不明のままだけどね……」
そう言いながら、ライカはふと、１時間ほど前の出来事を思い出していた。
突如意識が回復した、エリと名乗る石化被害者の言葉。
――急がなきゃ、大変な、ことが――
（……ライカさん？）
「……え？……あぁうん、ごめんごめん、じゃあしばらく様子見の方がいいのかな？」
（はい……すいません、勝手なこと言っちゃって）
眞希はぼんやりとした表情で、瞳の水晶細工のような顔を見上げている。
そんな親友の表情に気付いた翔子が、彼女に話しかけた。
「……どうしたのよ、滝川さんの顔じーっと見ちゃって」
「え？……あぁうん……聞こえないなぁって」
「聞こえない？……もしかして、滝川さんの“声”のこと？」
「うん……さっきは聞こえたんだけど」
（そう言えば……あたしも１度石化してから、ルイさんたちの声が聞こえるようになったな）
「そうね……今までの経験者には共通するわね……あ、もしかして」
ライカはふと何かを思いついたような表情をして、瞳に語りかけた。
「瞳ちゃん――眞希ちゃんの手を握ってあげてくれない？」
（え？……あ、あぁ、はい、分かりました）
応えるように、瞳はベッドに寝ている眞希の横に歩いてきて、そっと彼女の手を握った。
ちょうど……林道で彼女を介抱していた時のように。
（これでどう、坂本さん？）
「あっ……聞こえる、聞こえるよ、滝川さん！」
「やっぱり……ね♪」
（どういうことですか、ライカさん？）
サラにはさっぱり要領が分からない……人間の感覚を“忘れた”こともあるのだろうが。
「眞希ちゃんは半身だけの変異だったから、共鳴のレベルが低いと思うの。だから直接触れないと、聞こえないんじゃないかと思って」
「あぁ言われてみれば……それじゃ、サラさんも眞希と触れ合ったら？」
（え、わ、私ですか？……き、聞こえるんでしょうか……）
ライカと翔子に促される形で、サラも恐る恐る、眞希の横に来て、その手を握った。
（……えーと、あの、もしもし、聞こえますか？）
おずおずと聞いたサラに向かって、眞希はにっこりと笑った。
「嬉しい……サラさんの声、初めて聞こえた♪」
（ホントに……聞こえるみたいね……半分だったら、そうなるんだ）
「まぁ……ケガの功名ってことなのかしらねぇ……眞希、滝川さんに感謝しなよ？」
「うん……滝川さん、ありがとう――それから……その、ゴメンね、ワガママ聞いてもらって」
（坂本さん……い、いいよ、もう）
照れ臭そうに言う眞希に、瞳も照れ笑いするような笑顔で返す。
その横で、サラも何だか嬉しそうな表情だ……昨日の口論が和解したことも、ほっとしているのだろう。
そんな３人を横目に見ながら、ライカはそっと、何も言わずに部屋を出た。
「さて……どうやら、忙しくなりそうね……」
彼女の足は、知らず知らずのうちに保管庫の方へと向いていた。
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| （第８章第４話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2009年頃に草稿を作成したエピソード。
眞希についにメタキャリアの能力が与えられた（をぃ）
……ただ、翔子や春海と同じタイプにするのもワンパターンだったので、半身のみの石化経験ということにして、
「鉱物娘に振れることで初めてその意思を感じる」という制約（個性とも言う）を設定している。
１方、第２部のキーパーソンの１人となる新たな鉱物娘・エリがここで登場する。
こうして物語は“真のクライマックス”に突入していくのだ。 |
