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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CM2130711A） |
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変わり映えしない――毎日。
ニュースは毎日のように色々な事件を報道しているけど、直接生活に何か影響を及ぼすわけじゃない。
あえて何か変わったことと言えば、スーパーの食品が値上がりしたことぐらい。
夏が何年前よりか、蒸し暑くなったことぐらい。
どこかの街では、若者がキレて通り魔事件を起こしたらしい。
どこかの県では、コンビニ強盗が多発しているらしい。
どこかの国では、民族紛争が起きてるらしい。
何年後かには、異常気象がもっと極端になるという。
何十年後かには、石油がなくなってパニックになるかも知れないという。
――でも、それが何だって言うんだろう。
テレビ画面の向こうでどんな大事件が起きてたって、あたしの生活には関係ない。
いつも同じ時間に起きて。
同じパンを食べて。
同じ服を着て、学校に行くだけ。
そう――いつも、当たり前のように。
「――加奈、そろそろ行くよ」
父さんが、いつものように玄関で呼んでる。
「――はぁい」
あたしはいつものようにＴＶを消して、当たり前のようにカバンを持った。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 第１章 交じり合った世界 ★
2013年7月11日―日本・関東其の１
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「おはよ、加奈姉ちゃん♪」
「あらカズヤ君お早う――って、いいの、こんな時間で？」
「ううん、遅刻しちゃうかも……それじゃっ」
近くに住んでる男の子が、小走りであたしの横を駆け抜けて行った。
駅前にある、金芽台第１小学校に通ってる中嶋カズヤ君……確か６年生だから、２歳年下だね。
メガネをかけてるけど性格は至って普通……聞くところによると、成績も普通らしい。
視力が悪いのは……多分、ＴＶゲームばっかりしてる所為だろーな。
あたしが通ってる中学校――私立金芽台学校中等部は、カズヤ君の通ってる第１小学校より、近いところにある。
だからいつも徒歩……カズヤ君は周回バス使ってるもんね、間に合ったのかなぁ。
校門に向かう道路脇の歩道を歩いていくと、横の細い路地から少年が１人、歩いてくるのが見えた。
目の覚めるような金髪で、やや童顔だけどまぁうん、そこそこハンサム？
――金髪、といっても別に不良少年じゃないよ……てかぶっちゃけ、日本人じゃない。
「や、加奈ちゃんおはよ♪」
「あるぇ、今来たの？……朝練はぁ？」
少年の名前はディアス・トロイ……つまりいわゆるガイジン。
……なんだけど、言葉はすっかり日本人。
要するに在日アメリカ人ってヤツで、物心付いた頃からずっと、日本に住んでるらしい。
だから、どこから見てもカンペキ白人なのに、英語は全くダメ。
英語の授業の時はよく天然ボケを連発して、クラスが爆笑の渦に包まれる。
考えてみてよ、白人の子が「えーと、アイ・アム・ア・ペン？」とか言うんだよ？……あり得ないでしょｗｗｗ
……そう、ディアス君はクラスメイトの１人――てか、実質“幼馴染”ってやつだね。
小学校の頃から一緒だもんな……あの頃から全然キャラ変わってないしｗ
「俺さ、朝練はしなくていいの♪」
「どーしてよ？」
「ほら俺、両親が仕事してるじゃん？」
あぁ、確かに……外資系ってやつだっけ、外人だけど。
まぁ……あたしんちもそーなんだけどね。
といっても……あたしんちの場合、母さんはいないんだけど。
３年前……死んじゃったんだよね。
「でもさぁ、それって言い訳じゃないの？」
「カタイこと言わない言わない♪」
「えぇ〜もしかして確信犯？ い〜けないんだ〜、空手部の先輩に言っちゃうよ〜？」
「……“喫茶はなこ”のクリーム蜜豆でどうですかお嬢さん？」
「うん、手を打とう♪」
こんな風に……あたしの毎日は過ぎていく、いつものように。
……平和だなぁ。
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「おーい、ドッジボールやろうぜ！」
「あ、やるやるー！」
「なぁ、カズヤはどーすんねん？」
「あぁ放っとけ、あいつはいつもあんなんだから」
――悪かったね、あんなんで。
気付いたら、１時間目が終わってた。
なんかボーっとしてたなぁ。
遅刻寸前で校門に駆け込んで、その脚で教室へ。
だからなのかも知れないけど……それだけじゃないと思うんだよね。
国語の先生、すんごい退屈なんだもん。
ひょっとこみたいな顔でごにょごにょもじょもじょ、もー何言ってんのかワカンネｗ
次は……あぁ算数か。
あの嫌味な金田の授業だな……間違うと色々言われるんだ、勝ち誇ったみたいな顔で、オトナのクセに。
イジメとかあっても、絶対真剣にならないタイプだよなアイツ。
僕は運動が苦手だから、休み時間も教室にいる……外暑いしねぇ。
今朝はバス停まで走ったけど、ギリギリだったもんな体力的にも。
大好きなのはゲームとＴＶ……面白かったヒーロー番組、この前終わっちゃったけどね。
あーあ、また面白い番組始まらないかなぁ。
――その時だった。
突然――視界がぐらぐらと揺れて、頭が痛くなってきた。
な、何だよコレ……風邪引いたのか！？ 夏なのに？
「あ、頭が……」
「うわぁぁぁ！？」
……って、僕以外にもおかしくなっちゃってる子が！？
病気が流行ってるなんて話、聞いてなかったぞ……いやホームルームとかいつも聞いてないけどさ。
く、くっそぉ、どーなってんだよ一体！？
だ、ダメだ……保健室に行こう。
あーでも、もうすでに一杯になっちゃってるかも……僕いつも遅れる方だし。
僕がふらふらと立ち上がって、教室を出ようとした時だった。
窓の外の風景に、目が釘付けになった。
「って……何だよコレ！？」
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「――東郷次官、防衛省との連絡会議は終わったのですか？」
俺が外務省の廊下を歩いてると、前から近づいてきたスーツ姿の男に呼び止められた。
まぁ……俺の部下、いわゆる次官補の山田だよ、いつも何かと口うるさいけどな、まるで死んだ親父か姑みたいだ。
「……終わったけど？」
「じゃあすぐ、この資料にサインをお願いします」
「……ここで見せなくったっていいだろう」
「急ぎますので、お早めにお願いしたく……では」
言いたいことだけ言って、山田は足早に去って行った。
Ｅ大出身ってみんなあんなんだっけか？
俺だって帝都大卒だからいわゆるキャリアだけど、同期生にあんなのはいなかったよなぁ。
ま……２０年以上も前の話か、そいつも。
外務省と防衛省は、外交面で協調する関係だ。
官僚同士の打ち合わせが、そりゃぁもう頻繁に行われてる。
……９割方機密扱いだけどなｗ
なんせ、テロリストがどこに潜んでるかもわからないご時世だからな。
３年前――２０１０年には、ついに日本でも過激派の同時爆弾テロが起きた。
白昼堂々、交差点に面した有名銀行と、証券会社がやられた。
しかも週末の客でごった返した取引窓口でだ……ありゃ悲惨だったな。
犠牲になった女性客の子供だったか……１０歳ぐらいの少女の泣き声が、今も耳に焼き付いている。
あの少女も、今は中学生ぐらいか。
あの事件でダウが一時暴落したが……今は何とか持ち直している。
全くもって不透明な時代だ。
隣人が何考えてるか分からんなんて、不気味にもほどがある。
キレたから殺したとか――命ってのはそんなに軽いモンなのかね、分からんねぇ。
人間が、人間じゃなくなってきてる……そんな気がして仕方ない。
憂鬱だよな、まったく。
――その時だった。
突如視界がぐらり、と揺らいだ――地震か！？
いや、違う――だが……これは何だ？
眩暈とも少し違う……なんて表現していいか分からない奇妙な現象。
溜まった疲れが溢れ出して、頭に来ちまったのか？
「く、くぁあぁぁ！！」
「う、うぅぅ……」
って……変なのは俺だけじゃないのかよ！？
俺はまだぐるぐる回ってる視界にふらつきながら、壁際で“異変”の終息を待った。
足元から突き上げるような揺れとか、激しい震動は感じない。
ただ吐き気を起こすような“視界異常”が、２日酔いのような頭痛を伴って続いている。
変な音――耳鳴りのような音も聞こえている。
パンチドランカーの気分って、こんな感じなのかな？
しかもそれが俺だけじゃなく……廊下を歩いていた、全員に起きていたみたいだった。
――くそぅ、一体何だってんだっ！？
その時――俺は何気なく、外の景色を見た。
「……な……何だ、コレは！？」
そこにあったのは……破壊し尽くされた廃墟。
東京が今、マグニチュード８の直下型地震に襲われたら、こんな景色になるだろうか。
昔どこかの映画館で見た、終末的な廃墟のイメージそのままだ。
だが……だがこれは、地震じゃないはずじゃないのか！？
第一俺が立ってる……この外務省の建物は……くそっ、頭がガンガンして思考がまとまらない！
どうなってるんだ……夢ならいっそ覚めてくれっ！！
俺は思わず目を閉じて、必死に念じた。
別に信奉している神様や仏様なんかいやしないが、祈るような気分だった。
――何分、経ったのか。
ふと――頭痛と眩暈がすっと引いた……不思議なほどあっさりと。
もう……変な感覚はない……さっきまでの異変が嘘のようだ。
俺の周りでうずくまってた連中も、頭にクエスチョンマークを３つくらい並べてそうな顔で起き上がる。
そうだ、外の景色は……
外の風景も、元の風景――いつもの東京に戻っていた。
いや……ちょっと待て。
「……ん？ ……あんなビル、さっき建ってたか？」
見覚えのないビルが、視界に混じっているような気がした。
近くだけじゃない……全体にどうも、さっきより妙に建て込んだような印象がした。
いやまぁ、東京って元々がコンクリートジャングルだが……
そう言えば……建物の中も妙に騒がしい。
まぁ……フロアの全員が“異変”を感じたのなら、騒がしくても不思議はないか。
そう思って、俺は自室のドアを開けた。
そして――硬直した。
見覚えのない男が、俺の椅子に座っていた。
歳は５０過ぎくらい……髪は黒いが多分、俺よりは上だろう。
しかもどういうわけか、制服軍人みたいな格好をしている……自衛隊とも、ちょっと違う気がする。
更にそいつは、さも当然のようにこう言った。
「何だね君はノックもしないで……どこの部署の者だ？」
「……何、言ってるんだ？……失礼だが、部屋を間違えてないか？ ここは外務次官“東郷一善”の――」
「君こそ何を言ってるんだね、どうして防衛省の将官室に、外務次官がいるんだ！？」
「……は？？？」
今度は俺の頭の上に、クエスチョンマークが何個か並んだ気がした。
つい数分前に、防衛省から戻ってきたばかりの俺が防衛省にいるだと！？ そんなバカな。
第一こんな顔、防衛省の高官名簿で見た覚えもないぞ。
しかも将官室って何だよ、いつから防衛省はビル内に制服組の執務室を作ったんだ！？
……この後、部屋の持ち主を巡って、俺はその男と延々５分くらい口論することになるんだが、
その時はまだ、全く予想できていなかった……いや、予想なんてできるはずはなかった。
この世界が、かつてない異常事態に放り込まれたということを……
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| （関東其の２） |
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【Meking Memo／設定補記】
2007〜2008年頃に草稿を作成したエピソード。
当時はまだ旧ＯＷ企画であったが、ＰＡ期に入っても基本的なシナリオは変わっていない。
（現在のエピソードは旧ＯＷ『ファーストクライシス始動編１章１話』を再編したものである）
クロスオーバー企画専用の舞台として、ＯＣＤ世界の原形が確立したのもこの頃である。
「型破りの外務官僚」が主要メンバーとして登場するのも、当時としては新鮮だったように思う。
このパターンは『シン・ゴジラ』の矢口蘭堂巨災対室長とよく似ているが、
もちろん偶然の類似であり、東郷の設定とまったく縁はない。 |
