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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CM2130711B） |
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「――ふぅ、ちょっとはマシになったかな？」
何だかさっきからずっと――頭が痛いんだよね。
それも僕だけじゃなくて、何か周りの子たちがみんなそんな状態。
廊下にへたり込んでたり、落ち付かない表情で行ったり来たりしている子も。
教室の中も変に緊迫した空気が流れてて、まるで大きな事件でも起きた後みたいな雰囲気だ。
さっき一瞬だけ、街が壊れたような風景を見たんだけど……それはどうも幻覚だったみたい。
でも変な幻覚だよなぁ……いきなり何で、あんなもの見たんだろう？
けれど――変なことはそれだけじゃない。
（それで――あんたは一体誰なの？）
（それは……私が聞きたいぐらいなんだがねぇ）
あの頭痛の後から……どういうわけか、僕の頭の中に別の人が紛れ込んじゃったみたいなんだ。
しかも……何つーか、おじさんみたいな感じの人なんだよね。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 第１章 交じり合った世界 ★
2013年7月11日―日本・関東其の２
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（僕は……えっと、中嶋カズヤって言うんだけど？）
心の中に響く声に対して、自己紹介する……なんだか変な気分だよな。
なんて言うの？ 自分で劇を想像しているような感じに似ているけど、それでいてちょっと違う。
何しろ……その劇は僕の思い通りにならないんだから。
（ほぅ、奇遇だね……私の名前も“中嶋一也”なんだ）
えぇー、同姓同名？ ウソみてぇ。
あれかもしかして、２重人格とかいうやつ。
でも、そうだとしても、なんでおっさん臭い人格が突然？
（これは……夢ではないのだよな？）
（……僕に聞かないで欲しいんだけど？）
聞かれたって分かんないし。
“一也さん”はともかく、僕自身は頬をつねったらちゃんと痛い。
けれどそれって……えぇと、僕にとって夢じゃないってワケで、一也さんにとっては……あぁ、ややこしいな。
（今見えているのは……これは、小学校の光景か……君は小学生なのか？）
（そうだけど……悪い？）
（信じられんな……さっきまで高校で教鞭を取っていたというのに）
え？ それって……どういうこと？
えぇっとつまり……この一也さんって人は先生なワケ？
……先生になりたいなんて思ったことなんか、１度もないけどなぁ。
（で……結局あんたは……僕の何なの？）
（……？ ……あぁなるほど、つまり君は私を分離した人格だと思っているわけか。
ふむ、中々頭の回転が速い子だな、将来が頼もしい）
……なんか、からかわれてる気がする。
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「……つまり、あなたにとってここは防衛省で、“防衛隊”という軍事組織の省内部署であり、その部長であると？」
「あなたの言い分では、ここは外務省で、あなたは外務次官の“東郷一善”だと？」
２人同時に頷き――ほぼ同時にため息が出た。
外務次官・東郷一義が自室と思って開けた扉の中にいた男は、自分を樋口大二郎と名乗り、
“防衛隊”なる組織の“幕僚長”つまり軍で言う“司令官”に当たる役職だと説明したのであった。
だが――東郷には分かったようで、実際のところはサッパリである。
ここが防衛省だというだけでも不可解なのに、自衛隊ではなく“防衛隊”なる組織の名前が飛び出したのだから。
もちろん東郷には、今まで見たことも聞いたこともない組織である。
樋口と名乗る男の目には自信がみなぎっている……不審な侵入者にしては、余りにも堂々としている。
おまけに……東郷の後ろから、やはり東郷の知らない人物が部屋に入ろうとしたのだ。
樋口よりは年下に見える――東郷と同年代かやや下かも知れないその男は、樋口に敬礼をして“状況報告”をした。
その内容もやはり、樋口の言い分と同様、“防衛省”と“防衛隊”の実在を示唆するものだった。
樋口に報告をした男は黒木と名乗り、“防衛隊特佐”を名乗った。
「特生防衛隊第１特殊機動大隊特佐の黒木であります……して、どうして外務次官殿がこんなところに？」
黒木特佐もやはり、頭の上にクエスチョンマークを浮かべているようだ。
だが東郷は「俺が聞きたいよ」という思いしかなかった……恐らくは樋口幕僚長も、逆の立場で同様であろう。
――俺の知らない間に軍事クーデターでも起きたのか？
そんな勘繰りもした……だが、それならもっと強硬な態度に訴えているはずだ。
しかし目の前で話す樋口や黒木に、革命軍の志士のような態度は微塵も見られない。
それどころか――東郷をまるで、突然降って湧いた異邦人を見るかのような反応を見せたのである。
これが全て敵を欺くための演技だとしたら、それはそれで素晴らしい技能だろう。
外務官僚として国際社会の本音と建前の色合いを見てきた東郷にも、見抜けないほどなのだから。
まるで――突然、まるで関係のない２つの組織が、ミキシングされてしまったかのようだ。
しかもお互い相手を知らないと言い張るのだから厄介だ……そうそれこそ、別の世界から来たかのように。
――別世界、か……
いやそれは余りにも飛躍し過ぎている――と東郷は首を横に振った。
だが……“別世界から来た”と思わせてしまうほど、その組織が東郷にとって異質であったことも事実である。
しかし、そんな非科学的な――ファンタジー小説のような事態など、想定できるはずもなかった。
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「……はぁ、何で授業は続けるんだろう？」
中嶋カズヤは低い声で、そんなぼやきを漏らした。
金芽台第１小学校を襲った謎の異変……保健室も一時は長蛇の列ができた。
コレは上手くいけば臨時休校か――カズヤはそう期待したのだ……が。
学校側が出した結論は――その日の授業は、最後まで続けるということだった。
（しかし勉強はして損をするものではないぞ……観念して授業を受けた方がいい）
ひょんなことから彼の心の中に棲むことになった、中嶋一也という男がカズヤをなだめた。
カズヤの分離した別人格なのか、それとももっと別の原因なのかサッパリ分からないが、
この不思議な意識は、自分を高校教師だと名乗っていた。
（だってさぁ……算数の授業って面倒だし退屈なんだもん……おまけに“アイツ”だし）
アイツ、というのは担任教師の金田誠のことだ……少し嫌味な性格で、カズヤは好きではなかった。
（先生をアイツなどと言うのはよしなさい……性格はどうあれ、人生の先輩なのだから）
「――おいカズヤ、何ぼさっとしてるんだ？」
ふと――前から声が飛んできて、カズヤははっと顔を上げた。
案の定……金田が、嫌な笑顔を浮かべてこっちを睨んでいた。
腕を組み、ニヤニヤとした笑みを――ただし、目は笑っていない。
「教科書も広げないでいるということは、よほど自身があると見えるなぁ？」
「え……あ……いや……その……」
虚を突かれ、見事なまでにしどろもどろになる中嶋カズヤ１２歳。
「よーし、それならこの問題を解いてもらうかなぁ……はいみんな、カズヤ君に拍手〜♪」
教室から拍手が沸き起こる……おまけに口笛を吹く者まで。
現実とはかくも非情なものである。
あんなヤツに便乗しなくてもいいのに――とカズヤは苦虫を噛み潰した顔で立ち上がった。
こうなっては後に引けない……ましてや「分かりません聞いてませんでした」なんて言えるものか。
何しろこの金田、勝ち誇ったような顔で説教する男だ……少年にもプライドくらいあるのである。
だが――そうはいっても、サッパリ分からないこともまた事実。
チョークを持って黒板の前に立ったはいいものの、そこから先の行動が取れないカズヤ。
（あぁ、どうしよ……あんたに気を取られて、あいつ――先生に指されちゃったじゃんか！？）
（私の所為だと言うのか？……まぁ、君の集中力を奪ってしまったことは詫びるが……）
「どうしたぁ？ まさか分からないとでも？」
（うぅっ、悔しい……今日は厄日だ）
（仕方ないな……今から私の言うとおりにするんだ、そうすれば解ける）
（――えっ、ホント？）
（私は高校教師だぞ……まだ信じてないようなら証明しようじゃないか）
「そら見ろ、やっぱり分からんだろう…… ……んんん！？」
勝ち誇ったような顔になる金田……だがその時、カズヤが解答を書き始めた。
少年の指先を見ていた金田の表情が、見る見るうちに変わっていく。
無理もない……教科書も開かずに上の空だったカズヤが、
今日初めて教える予定だった計算問題を解いてしまうとは、彼でなくとも予期できなかっただろう。
「えっと……これでいい――ですか？」
「…………！？！？？」
金田はただ、「信じられない」とばかりに、目を白黒させるだけだった。
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「どうなってんのよ一体……」
「俺に聞いても分かんないっての」
私立金芽台学校中等部、校門を出てすぐの――放課後の帰路。
朝の約束通り、近所の喫茶店に向かおうとした加奈とディアスは、信号の前で呆然としていた。
目の前にはまるで、災害時のように数珠繋ぎになった、車の列。
普段は信号無視しても何ら差し支えないくらい、交通量の少ない通りなのに。
思えば、授業中からどこか変だった。
突如襲った集団頭痛、幻覚にしては不可思議な廃墟の景色。
そこから先は、生徒も教師もいつもと違う雰囲気に動揺を隠し切れなかった。
更に加奈たちを戸惑わせたのが、携帯電話である。
朝充電してきたばかりにもかかわらず、全く文字を表示しない。
しかも加奈だけでなく、ほとんどの生徒がそうだった。
不安げな表情で、車で溢れた横断歩道を渡る２人。
西日が差し始めた午後の通りに、クラクションの合唱がこだます。
しかも――その中には、どこかのＳＦ映画から飛び出してきたようなデザインの車もあった。
「うぉぉ、あの車めっちゃカッコ良くね？」
「でもなんか、浮いてるよね……」
そう言えば――空もどこか騒がしい。
報道ヘリだろうか、何機ものローター音がひっきりなしに響き渡り、止む気配がない。
ぱっと見、大災害が起きたような感じはしないのだが。
その空の色も……何となく不気味に見える。
夕焼け前の空にしては妙に毒々しく、青空に紫色のグラデーションがかかっているのだ。
そんな空に、やはりどこかいつもと違うカラスの鳴き声。
野生動物も、この“異変”を感じ取っているということなのだろうか。
……そんなこんなで、いつもの喫茶店“はなこ”にたどり着く加奈とディアス。
「こんにちわー♪」
「あら、加奈ちゃんいらっしゃい♪ ボーイフレンドも一緒？」
「あはは、いやですよーおばさん、こんなの彼氏なんて言わないでください♪」
ディアスが愕然とした表情をしたが、加奈はまるで気付かないように窓際の席に座る。
溜息をつき、ディアスも向かいの席に腰掛ける。
すぐに、店主の山本華子が水を持ってきた……ぽっちゃり型の主婦、といった印象がする女性である。
「いつものお願いします♪」
「クリーム蜜豆ね、ディアス君は？」
「え、あ、えーと……コーラフロートで」
「はいはいっと……あ、そうそう、２人とも大丈夫だった？」
メニューを伝票に書き終わった山本は、おもむろに話しかけてきた。
慣れた店なので、こうした会話自体は普通なのだが、今日の内容は少し違っていた。
「え、何がですか？」
「昼前から何か大変なことになってるみたいだから……」
「あぁ、やっぱり何かあったんですか」
「なんかねぇ……あたしもよく分かんないんだけど、あらゆる機能が止まってるみたいよ」
「あらゆる機能って？」
「テレビとかラジオとか全部そうね……銀行もてんやわんやみたい、ＡＴＭ止まっちゃって」
「システム異常とか何かかな？」
「だけど不思議よねぇ、全部一気におかしくなっちゃうなんて……幸い電気は通ってるけど」
確かに……店に備え付けてあるＴＶも、今日は何も映していない。
いつもなら、午後のバラエティを流しているはずなのだが。
「そう言えば、ケータイも変だったよね」
「そうそう、急にナンともカンとも言わなくなりやがって」
「ウンともスンとも、じゃないのそれ……情報処理の授業が中止になったのも、その所為かな？」
「まぁ、俺はパソコン苦手だから、丁度良かったけどな♪」
「みっともないなー、今時の子とは思えないわ♪」
「ＩＴできなきゃ仕事できないなんて俺は信じない、わっはっは♪」
精一杯の強がりなのか、乾いた笑い声を上げる金髪少年。
「第一さぁ、体力を売りにするんだったら、なんで部活休んだのよ？」
「うっっ、いやそれはホラ、お嬢さんをオモテナシするために」
「知らないよー、そのうち先輩にシゴかれるかも♪」
「はいはい、クリーム蜜豆とコーラフロートね、クリーム増量しといたから♪」
「わぉ、ありがとうおばさん♪」
笑顔を輝かせる加奈……ディアスの方は苦笑いだったが。
どうやら、追求を忘れてくれることを期待しているようである。
窓の外では、相変わらずクラクションとローター音の耳障りなアンサンブルが続いていた。
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| （関東其の３） |
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【Meking Memo／設定補記】
2008年頃に草稿を作成したエピソード。
当時はまだ旧ＯＷ企画であったが、ＰＡ期に入っても基本的なシナリオは変わっていない。
（現在のエピソードは旧ＯＷ『ファーストクライシス始動編１章２話』を再編したものである）
ただ旧ＯＷの打ち切りによって１部関係者の人脈を変える必要が生じており、
東郷と運命的な出会いをする防衛隊幕僚長の樋口は2016年に作ったキャラクターである。
ただ樋口の原形は拙著『第２次・怪獣大戦争』でチョイ役として登場した、
航空防衛隊の戦闘機パイロットだったりするのである（笑）
平成ＶＳシリーズで活躍した黒木特佐も、ＰＡシリーズに入ってから登場が決まったキャラだ。 |
