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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CSTS-ZOID1）【投稿エピソード】 |
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地球から約６万光年離れた宙域に、地球に良く似た惑星があった。
通称“惑星Ｚｉ”。
殆ど地球と変わらぬ見た目を持ちながらも、
この星には大気中に含まれる大量の金属イオンを吸収して進化した、
優れた戦闘能力と生命力を持つ“金属生命体”が存在した。
Ｚｉに住む人間（Ｚｉ人）はこの金属生命体を軍事的に改造し、強力な兵器として生まれ変わらせた。
その名は――“ＺＯＩＤＳ（ゾイド）”。
この星の中央海域に横たわるデルポイ中央大陸、その中央大陸の北西に佇むニクス暗黒大陸、
両大陸の南西に位置するエウロペ西方大陸。
かの地ではヘリック共和国、ガイロス帝国、そしてゼネバス帝国などのいくつもの国家が、
長年の間激しい戦争を繰り返してきた歴史がある。
これらの国家の争いは双方に多大な犠牲と被害を齎しながらも、彼等の所有するゾイドは戦闘兵器として性能、
戦闘能力は凄まじいまでに進化発展を遂げたのである。
そんな中央大陸と暗黒大陸、
そして西方大陸の三大陸の間に挟まれる様に広がるアンダー海に浮かぶ群島“マヴィノ諸島”。
今、この地で新たな戦いが行われていた。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 序章 第１部 ★
メカ生体ゾイド外伝――時空を越えた戦闘機械獣・前編
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同諸島で最も大きな面積を誇るプリデリー島の平野にて、
白い獅子の様なゾイドと紅い角を持った恐竜型ゾイドが戦闘を繰り広げている。
紅いゾイドは全身の砲を相手に向けて一斉に撃ち鳴らすが、
獅子型の方はその攻撃を軽快に躱しながら、その距離を詰めていく。
そして白い獅子は地面を蹴って跳ね上がり、
そのまま獲物に飛び掛るように前足の光る爪を紅いゾイド“レッドホーン”の胴体に突き立てた。
その瞬間、激しいスパークが紅いゾイドの機体に奔り、そのまま横倒しになって動きを止めた。
「おっし、レッドホーン撃破！ これで５体目！！」
その白い獅子型ゾイド“ライガーゼロ”の搭乗者は歓喜の声を上げる。
コクピットには１０代後半の蒼髪の青年、イズキ・ティアリスが乗り込んでいた。
ZAC2300年代、この島ではゾイドを駆って互いの性能と腕を競い合う“ゾイドバトル”の競技大会、「アルティメットＺｉファイト」、
しかも全参加者合同のバトルロワイヤルが行われており、イズキもこの大会に参戦していたのである。
敵機を次々に倒したイズキは上機嫌で島の戦地を駆け回った。
「兄さん、兄さん、調子に乗っちゃダメだって。 これはバトルロワイヤルなんだから、どこから敵が来るか分からないよ」
と、通信機のモニターに小さな眼鏡を掛けたイズキ瓜二つの青年が映った。
名はイズル・ティアリス。
イズキの双子の弟で、その雰囲気は同じ顔でありながら、活発な兄とは違い大人しそうな印象を受ける。
「兄さんはそうやってすぐ調子に乗るから……」
「あ〜分かってるって！こんな所でヘマなんかしな――」
――其処にいきなり敵機の砲撃が！！
「うわぁあっ！！……くっそ〜待ったなしかよ！！」
「だから言ったじゃ……」
「ああっ！わぁったから、ちょっと待ってろ！」
兄は弟への返事もソコソコに戦闘態勢に入る。
敵は光学迷彩を使用しているのか、姿を確認する事は出来ない。
最小限の装備しかないライガーゼロのセンサーでは、見つけるのも難しい。
と、いきなり強力な電磁ネットがライガーゼロに襲い掛かった！
「うわっ！しまった！！」
ネットに絡まれ身動き取れないライガーゼロ、
すると光学迷彩を解いた黒い狐型ゾイド、“シャドーフォックス”が姿を現した。
「げっ……やべ……」
シャドーフォックスの徹甲レーザーバルカンが、ライガーゼロに撃ちこまれようとしたその時。
今度はそのシャドーフォックスに一撃が撃ちこまれた。
シャドーフォックスは倒れ、戦闘不能となった。
「ほんっと隙だらけよねぇ、あんたって……」
今度姿を現したのは白い狼型ゾイド“ケーニッヒウルフ”であった。
背部にはデュアルスナイパーライフル（ＤＳＲ）を装備しており、これでシャドーフォックスを倒したのだ。
「あっ……エリルか？」
ケーニッヒウルフのコクピットにはイズキと同年代の、薄い青緑色のポニーテールをした女性が乗っていた。
名はエリル・メイオン、このケーニッヒウルフＤＳＲのパイロットである。
ティアリス兄弟とは顔なじみで、彼女もこの大会に出場していたのだ。
「ふぅ……全く、私が助けなくちゃあんた間違いなくやられてたね。大丈夫？」
「……けっ……別に助けてもらわなくても俺なら何とかしたぜ」
「あっ！？助けてもらっておいてその態度？ あ〜あ、助けて損した」
「なにおぅ？上等だ。どうせバトルロワイヤルなんだ、お前とも決着つけねぇとって思ってた所だよ！」
「……ここでリタイアしても知らないよ？」
「うっせぇ、行くぞ、おりゃあああ！！」
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戦闘競技で白熱するこの島の上空を、翼竜型ゾイド“レイノス”が複数旋回している。
この島の状況やゾイドの戦いは、このレイノスを含め、
島の上空を飛び回る飛行ゾイドに積まれたカメラや上空の監視衛星、
そして島の各所に設置された隠しカメラにより撮影され、それを電波に乗せて各地に放送されるのである。
「さぁて！！盛り上がってまいりました！！乱入、共闘、妨害、
何でもありの『第四回アルティメットＺiファイトバトルロイヤル』！！
既にエントリーの３分の１が脱落しており、この後もさらに激しい戦いが繰り広げられると思います！
そしてこの戦いで生き残った８体のゾイドが、決勝トーナメントに勝ち進む事ができるのです！！」
と、一機のレイノスに搭乗しているリポーターが熱血中継している頃……
――ズシャンッ！！
と黒い犀型ゾイド“ブラックライモス”は機能を停止し、横倒しとなる。
そこに立っていたのはライガーゼロ同様白亜の装甲、
そして背部に一対の巨大なバスタークローを装備したティラノサウルス型ゾイド“バーサークフューラー”であった。
バーサークフューラーはバスタークローの回転を止めると、勝利の咆哮を上げた。
しかし、そのパイロット、デューク・シルバークはつまらなそうに呟く。
すらりとした長身、黒く長い髪と薄く鋭い眼差しを持ったＺｉファイターだ。
「ふん、この程度か……強いＺｉファイターが集まると言うからもう少し実力のある者が揃ってると思ったが……
いや、あいつの事だ。きっと現れるだろう……」
まるで誰かを探しているかのように呟くと、デュークはバーサークフューラーのスラスターを飛ばし、その場を去った。
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一方その頃、イズキのライガーゼロとエリルのケーニッヒウルフも高速移動しながら激しい戦いを繰り広げていた。
白兵戦能力に長けた２機は、牙や爪を交わしながら激突する。
さらにライガーゼロはショックガンを放ち、それをかわしたケーニッヒもまた、デュアルスナイパーライフルで狙撃してくる。
そしてそれもライガーゼロは素早くかわす。
「へぇ〜、逃げ足だけは鍛えられてるようね♪」
「うっせぇ〜！！ こっちはお前と違ってそんな遠距離武器持ってないんだよ！！」
「自分の未熟さゾイドの性能の所為にしてるんじゃないわよ！」
「くっそ……なんとかしてあいつに近づかないと……ってうわああっ！？」
「ぬおおおっ！？」
――と、ライガーゼロが偶然通りかかった別のゾイドにぶつかってしまった。
ケーニッヒウルフも動きを止める。
「あっ……あれは……」
ライガーゼロがぶつかった相手、それは漆黒のサーベルタイガー型ゾイド、“ブラストルタイガー”であった。
「あっ、やべぇ……」
「うぬううう、己……このワシ、“爆砲”の異名をとるゴウ・ブラウズに不意打ちかましてくるたぁ、いい度胸じゃのう……」
下顎を包む無精髭と長い丁髷、顔には大きな十字の傷、
まるでどこか素浪人のような出で立ちをしたブラストルのパイロット、ゴウ・ブラウズは、“不躾な行為”に怒り心頭気味だ。
「覚悟はいいかぁ！！！この童（わっぱ）どもぉ！！！」
ゴウはそう叫ぶと、ブラストルの前部の全キャノン砲を一斉に撃ち放った。
その火力はライガーゼロやケーニッヒウルフとは比較にならない……戦車を怒らせたようなものだ。
「うおわあぁあぁ！！わざとじゃねえのに…おい、エリル！こうなったら２人で…っておい！？」
「私の所為じゃないわよ。アンタで何とかしなさい〜」
「ああ〜あんのヤロ〜（エリルは女だろ）憶えて…うわあああぁぁっ！！」
「待ぁてえぇええぇえ！！！」
ライガーゼロはブラストルの砲撃に追われながら走り去った。
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その頃、バーサークフューラーのデュークは、彼方此方に散らばるゾイドの残骸を辿っていた。
それらの残骸は全て、巨大な鋏か何かで斬られたように真っ２つで、
コクピット部分を壊された物も多く、パイロットが生きているかどうかすら疑わしい。
やがてデュークは、荒野広がるウェスタ砂漠にて、犯人と思しきお目当てのゾイドを見つけた。
バーサークフューラーと同じティラノサウルス型でありながら機体の色は深紅、
頭部に長い角を持ち、両脇には楯……いや、大きな鋏のような武器を持ったゾイド。
その紅いゾイド“ジェノブレイカー”、その周りにも同様に壊されたゾイドの破片が散乱していた。
「見つけたぞ……ヴェイム・ガーデス……！！」
機体を見たデュークはすぐにそのパイロットが誰か察知し、通信機越しに吼える。
デュークの声を聞き、ジェノブレイカーのパイロット、ヴェイム・ガーデスは不敵に薄ら笑いを浮かべた。
機体同様に赤がかった頭髪、切れ長で冷酷な眼差しを持つこの男こそ、この惨劇の犯人であった。
どうやら２人は互いに知ったる仲らしい。
「ほう、貴様か。久しぶりだな、こんな所に居たとは」
「それはこっちの台詞だ。まさかお前がこんな遊戯に参加するとはどういうつもりだ？」
「なに、ちょっとした“宝探し”だ。何なら、お前も手伝ってくれないか？」
「宝探し……？ まぁ良い。今日こそケリを着けてやるぞ！！」
２機のティラノサウルス（型ゾイド）が吠えあい、身構える。
バーサークフューラーがバスタークローを展開し、
ジェノブレイカーが両脇の鋏のエクスブレイカーを開き臨戦体制に入ったその時。
「其処の２機！！動くな！！」
蒼い装甲とその体の彼方此方に輝くパネルを持った虎型ゾイド、“レイズタイガー”が２人の間に割って入った！
「ちっ……カウンターポリス（護衛専門部隊）の“ブルーセイヴァー”か……」
レイズタイガーのパイロットで金髪青眼が整った２０代の男、アッシュ・ハスラムが２人に通告した。
「私はこの試合の法規維持を任されている“ブルーセイヴァー”だ！！
そのジェノブレイカーのパイロット！！ 本試合においてコクピットおよび搭乗者への攻撃は禁止されている！！
よって本機に失格を通告、およびゾイドテロリズム行為の現行犯で逮捕する！！」
「――ほぅ、面白い。やれるものならやって見ろ……」
レイズタイガーが吠え、ジェノブレイカーに踊りかかる。
しかしジェノブレイカーは避ける事もなく、逆にエクスブレイカーで斬りかかって来た。
レイズタイガーの繰り出したストライクレーザークローは、
ジェノブレイカーのフリーラウンドシールドを傷つけるが、それだけであった。
なぜなら一方のレイズタイガーも、もう少しで前足を１本持って行かれる所であったからだ。
「くっ……やるな。 だが、私のレイズタイガーにはジェノブレイカーの持つ荷電粒子砲は通用しない。観念し――」
――と、今度はバーサークフューラーが飛び込んできた！！
「！？待て！其処の選手！！奴はもう資格を失っている！お前が闘う理由は……」
アッシュは非常用通信機でバーサークフューラーに語りかける。
相手は文字通り無法者、いくら戦いが専門のファイターとは言え、本来無関係な一般参加者を無闇に危険にさらすわけには行かない。
しかし、バーサークフューラーからは意外な答えが返ってきた。
「理由？ 悪いな。コイツはもとより俺の獲物だ！！ 今日こそ……倒す！！」
今度はバーサークフューラーとジェノブレイカーの戦いが始まる。
性能面ではバーサークフューラーの方がジェノブレイカーより上だが、互いのその気迫と殺気はほぼ互角である。
バーサークフューラーはバスタークローを高速回転させ槍のように突き立てる。
ジェノブレイカーはそれを交わし、脚部のウェポンバインダーからビームと小型ミサイルを同時に放つ。
だが、バーサークフューラーは開いたバスタークローからエネルギーシールドを発生させ、その攻撃を防ぐ。
間髪いれずＥシールドを解いたバスタークローからビームキャノンを撃つが、
今度はジェノブレイカーが両脇のフリーラウンドシールドでそれを弾いた。
「くっ……あのジェノブレイカー……おそらく相当なチューンが為されているようだな。だが、これで終わりだ！！」
デュークのバーサークフューラーがスラスターを飛ばし、ジェノブレイカーに挑みかかる。
その時、一筋の光線がバーサークフューラーの足元を抉った。
バーサークフューラーは素早く足を止め、射出点を見る。
そこに居たのはジェノブレイカー同様の赤い機体、骨格のような翼を持ったドラゴン型ゾイド“デカルトドラゴン”であった。
いきなりの乱入にレイズタイガーのアッシュも驚愕する。
「！？ デカルトドラゴンだと……！！」
「やはり仲間が居たのか……１人だけで潜り込んでいるとは思ってなかったが……」
「申し訳ありません、少し遅くなってしまいました……少々ゴミが多かった物で……」
無骨で禍々しいデカルトのコクピットにはその機体に似合わぬ１０代前半の少女が乗っていた。
髪は濃藍でたいした飾り気もなく垂れた前髪からは機械のような無感情な瞳が覗く。
彼女の名はネメア・ダーキュリー。
どうやら彼女も別の所でヴェイムと同じ様な事をしていたらしい。
「気にするな……俺も少々ゴミ掃除に手間取っていた所だ……片付けるのを手伝ってくれ」
「畏まりました」
彼女はか細い声で返事をするとデカルトドラゴンを走らせた！
そしてジェノブレイカーもそれに続くように標的に向けて疾走する！
２匹の紅い魔竜がレイズタイガーとバーサークフューラーに襲い掛かった！
「来い！！」
「ちぃ！！」
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マヴィノ諸島を構成する島の一つ、マナウィ島。
プリデリー島に隣接し、現在「アルティメットＺｉファイト」の大会主催本部がある島だ。
その大会の本部にして、大規模なゾイド研究施設であるマナウィ研究所にて、
数機の電子工作用のディメトロドン型ゾイド“ディメトロドン”が待機していた。
本来は通信傍受や索敵、通信妨害がその任務だが、本機は電波収集及び中継に特化した特別機であり、
此処の他にも島の各地に配備された同型機が低高度衛星のカメラで撮影された島での戦闘の映像の電波を収集し、
メディア放送用の衛星に中継しているのだ。
そしてそのディメトロドンの傍らに長い尻尾と巨大な体躯、
そして大きな顎を持つギガノトサウルス型ゾイド“ゴジュラスギガ”がいた。
この機は流れ弾や乱入者などの不慮の事態からディメトロドンを守る任務に就いていた。
「……はぁ〜退屈だなぁ、アッシュ隊長。何やってんだろう……？」
ゴジュラスギガの頭部にあるコクピットで、やや深茶色の髪を持ち少しがっしりとした男が、つまらなそうに呟く。
この機体の搭乗者でレイズタイガーのアッシュ同様、“ブルーセイヴァー”の隊員のグリッド・シュトラウドである。
と、通信機から若い女性の声が響いてきた。
「グリッド！そっちは異常無い？ 定期連絡ないからちょっと心配したじゃない！」
声の主はセイナ・サフィーア。
長身細身の黒髪の女性でアッシュやグリッドと同じく“ブルーセイヴァー”の隊員であり、
レイズタイガーと同様の青い装甲そして橙色の硝子状のパネルを持ったティラノサウルス型ゾイド“凱龍輝”に乗り込み、
島の港であるブランウェン港にて試合の動向を見守りながら待機していた。
「おぉ、いけね……忘れてた。すまね、こっちは異常ないぜ。現在はな」
「忘れてた、ではないでしょう？ 全く……殆ど職務怠慢ですよ」
と、彼女はコクピットの中で毒づく。
「心配と言えば……アッシュ隊長……大丈夫かね」
「大丈夫でしょう。 隊長はそう易々とやられるような人ではありません」
「あっそう……セイナは心配じゃないのか、そうか♪」
「そんなワケ無いでしょう！！ だからこれ以上心配事を増やさないでください！！」
２人が２機のゾイドの通信機越しに喚いていると……突如ディメトロドンから緊急通信が入った。
「ん？ 何だ……？」
「この島一帯の空間がおかしい？ ……重力場干渉計に異状が？」
「あ？……クウカン？ ンだよそりゃ……」
ディメトロドンの観測器には、地磁気に加えて重力場の観測システムが組み込まれている。
ゾイド自体に重力場に干渉する能力はないが、“金属生命体”のために影響を受け得ると考えられているためだ。
過去にはガイロス帝国が重力子を用いた兵器を研究していたようだが……今は失われている。
すると急に――ゾイドの計器類が激しく明滅し始めた。
セイナの凱龍輝も、グリッドのゴジュラスギガも、まるで何かの前兆を感じ取ったかのように咆哮する。
「えっ！ なに……これ……？」
「――おわぁああぁぁっ！？」
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島にある起動しているゾイド全てがこの異常事に呼応していた。
ライガーゼロとブラストルタイガーも動きを止め、何かを察したかのように怪訝な反応を見せていた。
ただのプログラム異常ではない……ゾイドの本能そのものが“異様な気配”を敏感に感じ取っているのだ。
「……ぁん……何だ……！？」
「どうしたんじゃブラストル！一体何が起こった！？」
レーダー稼動中のディメトロドンは、この島全体の重力場が歪み始めているという情報を叩き出した。
やがて、島自体がまるで地震に見舞われたかのごとく振動する。
空を飛んでいたレイノスのリポーターも慌てふためく。
「な……何事でしょうか？ 急にゾイドの調子がおかしくなった挙句、島でも何か異常な事態が起こっているようで――」
――その時、巨大な稲妻の光が轟音と閃光と共にマヴィノ諸島に叩き込まれた！
同時に激しい地響きと烈風が島全体を駆け巡る。
「うわぁああぁぁっ！？」
「ぬうううぅぅ！！」
凄まじい衝撃にライガーゼロとブラストルタイガーも動けなくなり、中のイズキとゴウも思わず声を上げる。
そして、この異変に本島から離れていたグリッドとセイナにも戸惑いを隠せないでいた。
「な……何て事……グリッド。大丈夫？」
「あぁ、何とかな……それにしても何だってんだ！？」
気が付くと――ゾイド達の異常は収まっていた。
「とにかく……隊長に報告を……」
――と、今度は突如、島の彼方此方で爆炎が上がり始めた。
「！！今度は何だっつうんだ！？」
「隊長……！！」
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その頃、混乱に巻き込まれたイズキのライガーゼロとゴウのブラストルタイガーも、落ち着きを取り戻していた。
「イテテテテ……何だよ、おい……」
「うぬぅ……雷か……えらくでかいモンが落ちたようじゃが……」
と、今度はそこに獅子型ゾイド“シールドライガー”が飛び出してきた。
「げっ！！こんどはシールドライガーかよっ！！ブラストルタイガーだけでも厄介だってのに……」
しかしシールドライガーはそんなライガーゼロとブラストルタイガーを尻目に、慌てたように走り去っていった。
「……なんだ？」
「なにかから逃げていたみたいじゃ――」
するとシールドライガーが逃げてきた方向から、
見た事も無い銀色のラプトル型と思しきゾイドが数機ほど駆けて来た。
その姿は従来のゾイドとは一線を画しており、正に骨のような装甲を持った異形のゾイドであった。
と、謎のゾイド達はイズキのライガーゼロとゴウのブラストルタイガーを見つけると、足を止めそちらの方を見やる。
どうやら標的を変えたようだ。
数は……７機ほど。
「何だよ……あれ、見た事ねえけど……ゾイドなのか……？」
銀のゾイド群は奇怪な咆哮を上げ、口から次々と火球弾を吐きつけた。
「うわっ！！やる気かよっ！」
ライガーゼロは素早くそれをかわす。
一方、銀のゾイドはゴウのブラストルタイガーも攻撃対象とし、爪を振り上げ襲い掛かる。
「ぬぅ！この三下どもめがっ！」
ブラストルタイガーは前脚部のショックカノンで迎撃した――銀のゾイド数機が爆炎に包まれる。
……しかし黒煙が治まった後には、まるで何事も無かったかのように佇む銀のゾイドがいた！！
ブラストルの火力は、あの程度の小型ゾイドならば充分倒せるはずだが……銀のゾイドには殆ど通用していない。
「なんじゃと！！ばかな……このブラストルの砲撃が直撃しても傷１つ付いて無いなぞ……あり得ん！！」
再び銀のゾイドの１体がブラストルに踊りかかる！
と、今度はライガーゼロがストライクレーザークローでその銀のゾイドを弾き飛ばした。
「んっ……！！ お前……」
「あ〜 ……なんかよくわかんねぇっけどこいつら滅茶苦茶やばそうだ。
ブラストルの人！ここは協力して乗り切ろうぜ」
「うぬぅ……わかった」
しかし、その弾き飛ばされた銀のゾイドも傷らしい傷を受けずに立ち上がる。
２体はこの最大の危機を前に身構えた。
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一方、さらなる脅威にいまだ気付いていない参加者達は、異変が過ぎた事で戦いを再会させていた。
「いっけぇーーーーーー！！！」
ケーニッヒウルフ背部のデュアルスナイパーライフルが火を吹き“ベアファイター”の腹部を直撃、
ベアファイターはもんどりうって倒れた。
「やった！」
その時、彼方此方から火球弾が次々と２機に目掛けて打ち込まれた。
「えっ！？」
ケーニッヒウルフは何とか交わすが、動けないベアファイターは火球の連続直撃を受け爆発四散する。
「あっ……誰！？ 出てきなさいよ！！」
自分だけを狙うならまだしも、戦闘不能になった機体まで狙うという卑怯この上ない戦法に、エリルは怒りを露わにした。
と、其処から現れたのはイズキ達を襲っているのと同じ、５、６機の銀色のゾイド群であった。
「な……何よ、あんた達……」
その異形のゾイド達は咆哮を上げながら、エリルのケーニッヒウルフに飛び掛った。
しかし、彼女はそのゾイド達の姿の余りの異形さに気を取られ、反応が遅れてしまった。
「きゃ……！！」
「危ない！！」
そこに素早くアッシュのレイズタイガーが飛び出し、銀のゾイドを威嚇、牽制した。
「大丈夫かっ！？ 其処のゾイドのパイロットども！貴様等は何者だっ！？」
しかし、その問いに答えるものなどいやしない……まるで、言葉など分からないかのように。
銀のゾイド達は低い声でうめきながら、レイズタイガーとケーニッヒウルフを睨みつけている。
「あ……ありがとうございます」
「気にするな……しかし、奴等は何者だ？あんな形状のゾイドなど見た事が無い……」
再び銀のゾイドが２機に向かって突進してきた。
「……仕方ない！やるしかないか！！」
「わ……私もっ！！」
レイズは前脚のピンポイントレーザーと下部の３連装ショックキャノンを、
ケーニッヒはデュアルスナイパーライフルで銀のゾイドを狙い撃った！
しかし、撃たれたゾイドは衝撃で倒れ込んだが、まるで損傷も無く立ち上がり威嚇する。
「……ウソ……でしょ」
「何！！この攻撃を受けても無傷だと……？
あの程度のサイズのゾイドでそれほどの防御力があるというのか？」
銀のゾイド達はそんな２機を扇状に包囲し、じわじわと追い詰める。
今、彼等に恐るべき事態が襲い掛かった。
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| （中編へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2007〜2009年頃に飛石武氏が投稿したエピソードを再編したもの。
『メカ生体ゾイド』のクロスオーバーを想定して執筆された“序章”であり、
旧ＯＷ企画及びＰＡシリーズでは現代の地球が主な舞台となるわけだが、こちらは未来史の惑星Ｚｉが舞台であり、
ゲームにもなった『ゾイドインフィニティ』及びアニメ『ゾイドジェネシス』の世界観をベースにしている。
大陸間戦争時代が１段落してから開催された競技としてのゾイド戦闘に参加したキャラクターがメインになっており、
そこに更に未来史に登場するバイオゾイドが敵として襲来するシナリオになっている。 |
