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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E054） |
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「……は、はは……これは素晴らしい……！」
秘密組織メドゥアスの第１ラボにて。
銀髪のひょろりとした男が、興奮でぶるぶると震えていた。
「何か問題はありませんか、セラフィ？」
スピーカーを通じて聞こえてくるのは、ナンバー４――アグネムの声だ。
「何もないさ……いや、最高の気分だ」
「他のメンバーの処置も完了したところです」
「素晴らしい……やはりお前は天才だな、これで目的を果たせる」
「幹部メンバーに招集がかかったようです……ナンバー１が来たと」
アグネムの言葉に、ナンバー２――セラフィはぴくり、と反応した。
「ナンバー１……だと？」
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第５章 常識という名の壁 ★
第４話 メドゥアス・ゼロ
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（……これ……が……あたし、の……体……？）
センターＤの最奥部にある、鉱物娘たちの“保管庫”にて。
今日もまた……新たな活性体が、誕生しようとしていた。
今だゆっくりとした動きながら、意思に従って動く手を見つめるのは、全身金色の少女。
――といっても、春海ではない……身長は１７０ｃｍ以上あり、サラよりも高い。
戸惑う“金色の少女”を取り囲むのは、ルイ、エミ、サラ、
そして……先日活性能力を手に入れたばかりのスイ。
金色の少女の背後に立っているのは、ライカだ……パドルの姿はない。
（へぇ……ライカさんも、パドルさんの“魔法”が使えたんですね）
エミが感心したように“呟く”。
「まぁね♪……どう、コナちゃん？」
（……凄い……です…………ちょっと……信じられない、けど……）
コナと呼ばれた金色の少女は、まだ表情までを作ることは出来ない。
今さっき動けるようになったばかりなので、無理もないわけだが。
そのために、表情こそ苦悩を浮かべているが、しかし精神は高揚しているようだった。
（わぁ……こうやって、動くようになるんだ……）
（そっか、スイちゃんは初めて見るんだよね）
（これで５人になりましたね……）
「６人目もすぐ始めるよ……もう、問題ないはずだからね」
そう言いながら、ライカは少し離れた、紫色の鉱物娘に向かって歩いていく。
アメジストのような色合いを持つ、半透明の少女だ。
（おぉ、今日は１回に２人なんですね……凄いです♪）
「甘い甘い……３人は処置するつもりだよ♪」
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セラフィが円卓の会議室に入ると、既に幹部組は集合していた。
先日、セラフィに向かって辛辣な批判を浴びせたナンバー３“タイタン”もいる。
そして……円卓の正面に、漆黒のスーツを着た、男が１人。
黒い覆面を被っており、銀色のネクタイだけが浮かび上がって見える。
メドゥアスの最高幹部――ナンバー１“クリスタ”である。
「これで全員かね……ん、ナンバー８はどうした？」
「ナンバー８は体調を崩したようで、治療中なのです」
ナンバー１の声は電子音を伴っている……変声器を使っているらしい。
ナンバー８の欠席を伝えたのは、セラフィと共に会議室に入ってきたアグネムだった。
そんな報告に、タイタンが小ばかにしたような反応をする。
「あのナンバー８が体調不良だと？……ふ、珍しいこともあるものだ」
「では……全員揃ったということだな？」
ナンバー１を正面に、円卓を囲むように座る、７人の幹部たち。
よく見れば、女性の姿も確認できる……ナンバー７だ。
１桁ナンバーを持つ幹部唯一の女性であり、“魔女”の異名を持っている。
「では、幹部会を始めるとしようか……まずは“メドゥアス・ゼロ”からの指令だ」
ナンバー１の言葉に、周囲の６人が一斉に反応した。
驚いたようなリアクションを取る者、視線だけを動かす者など、差はあったが。
メドゥアス・ゼロ。
メドゥアスの影の支配者とも、創始者とも呼ばれる謎の存在である。
メドゥアスという組織名は、この存在の名前から取っているとも言われるが、
何しろナンバー１以外は顔も見たことがないだけに、詳しいことはほとんど不明なのだ。
ただし、その影響力は絶大だ。
過去、問題を起こしたために何人かがメドゥアス・ゼロのもとへ送られたが、
誰１人として、ラボに帰ってきた者はいなかったからだ。
いや――帰ってこなかった、というのは正確ではない。
帰ってきたことは帰ってきた……ただし、生きた形ではなかったのだが。
“処罰者”の末路は、語ることすらタブーとされている。
「メドゥアス・ゼロが……今また、何を？」
「我々に問題が……まさか、先日の第２ラボの件ですか？」
タイタンはまるで、触発するように言うと、セラフィをじろりと睨みつけた。
しかし……当のセラフィは反応しない。
だがナンバー１の口から出てきたのは、抽象的な――しかし意味深な言葉であった。
「ゼロはこう言っている……『時が動いた』と――」
「時が……動いた！？」
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（え……ユウちゃんって、男の子だったの！？）
真っ赤な目をまん丸にして、驚いているのはルイだ。
彼女の目の前には、先ほど活性化処理を受けたばかりの、アメジスト色の少女。
ゆっくりと、ぎこちなく腕を動かしながら、その少女が反応する。
（……信じられ、ない……ですよね……でも……本当、なんです……俺……本当は……）
「……石化される前に、性転換処理を受けたってことね……どうやら嘘じゃないみたい。
石化のショックで記憶を失う子が多いけど、彼の場合は記憶が残ってたようね」
ライカがそう言って、腕組みをする。
彼女には、特殊な透視能力がある……“魂”や意識を透視し、その特性を分析できるのだ。
その能力が、アメジスト色の少女＝ユウの供述が、嘘ではないことを裏付けていた。
（はぁ……あいつら、女の子を石にするだけじゃなくて、男の子を女の子に変えたりもしてたんだ）
（色んなことしてたんですね……他にも、そういう子がいるんでしょうか？）
「えぇ……確かにいるわ、少なくとも１人はね」
ライカの視線の先には、アクアマリンを思わせる明るいブルーの、半透明の少女像が。
まだ意識を回復したばかりで、つむぐ言葉もたどたどしかったが、
ライカの透視能力は、少女がかつて、少年であったことを示唆していた。
「時々気まぐれに、男の子を性転換させて、石に変えてたみたいね、あいつら。
ほとんどゲーム感覚じゃない……全く、呆れてものが言えないわ」
（――あ、そう言えば、ルミさん大丈夫かな？）
ルミ、というのは、この日活性化処理を施した、３人目の鉱物娘である。
ターコイス（トルコ石）を思わせる、コバルトブルーの不透明な石に変えられている。
「あぁあの子ね……今は個室に寝かしているわ。しばらく、そっとしておいてあげましょ」
（可愛そう……あと半月早かったら、人間に戻せていたんですよね？）
そう……ルミはある意味、鉱物娘の中で最も不幸であったのだ。
彼女のメドゥアス・ラボでの処理番号は、第６９番――つまり、春海のすぐ前である。
春海は人間に戻せたが、直前のルミは戻すことが出来なかったのだ。
他の鉱物娘と違い、ルイやユウと同様、石化される前の記憶が彼女にはある。
ルミという名もルイらがつけたのではなく、“瑠深”という彼女の本来の名前だ。
“あと半月早かったら人間に戻れていた”ことを知ったショックは、どれほどのものだっただろうか。
そのためか、ルミは活性化処理後、ほとんど沈黙してしまっている。
意識や思考が停止しているわけではないようだが、今は何も考えたくないらしい。
無理もないことではある。
「全く……運命は非情なものだわ……」
そう言って、ライカはため息をついた。
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町外れの廃校。
１ヶ月ほど前……翔子らが忍び込んだ、あの廃校だ。
校門からはほぼ裏側に当たる、“中庭”の外れに、小さな倉庫がある。
昔は恐らく、体育用具室として使われていたのだろう。
その半ば朽ちた倉庫の中に、“鋼の戦士”アイガーは潜んでいた。
しかも――彼、１人でではない。
「……本当に……大丈夫なのか、ホルス？」
アイガーの目の前には、白銀に輝く体を持つ、オールバック姿の男が１人。
ナンバー２“セラフィ”によって強制的にメタロード化された、アイガーの相棒――ホルスである。
第２ラボがセラフィの手で爆破された時、アイガーを抱えて脱出したのがホルスだった。
自分自身に起きた出来事に動揺していたが、それでもクールに状況を判断し、
まずは隠れられる場所を探し、夜が明ける前にこの倉庫に身を潜めたのである。
「まぁ、な……もっとも、しばらく夢を見ていた気分だが……」
アイガー同様、金属的な残響が混じる声で、呟くように語るホルス。
まるで感傷に浸るように、今や金属化した自分の手を、コンコンと軽く突く。
「皮肉なもんだな……お前だけじゃなく、俺まで人間じゃなくなってしまうとは」
「……皮肉？……ふん、俺は腹が立つがな。コイツは明らかに、ナンバー２の陰謀だぞ」
「確かに……ナンバー２は早く、金属の戦士が欲しかったみたいだな」
「だから“本意じゃない”洗脳処理まで使ったってわけか……だが良く自我が回復したな」
「はっきりは覚えていないが……誰かが俺に、活を入れてくれたらしい。
意識がはっきり戻った時は……既に周りは火の海だったってワケさ」
「仮想人格とかいうやつを消去か、封印できるのがいたってことか……あの男じゃなさそうだが」
「あの男……お前、あいつと再戦したのか？」
「まぁな……もっとも、ナンバー２が余計なことをした所為で、決着はつかなかったが」
「俺も第３３番実験体らしいのを見たからな……そうそう、あの娘」
ふと……ホルスが白銀の顔に、意味深な笑みを浮かべた。
「……あん？第３３番のことか？」
「あぁ……あの娘、面白いことになっているようだぞ」
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昼過ぎ……パドルが“調査”から帰ってきた。
「――ただいま」
「あらお帰り……末留警部は何て？」
「いや……警部は外出していたらしくてな、会えなかったよ……まぁ、資料の１部は読めたがね」
「あらそう……まぁ警部というぐらいだし、忙しいのね」
そう……彼は午前中、朝陽警察署に出かけていたのだ。
先日の“廃コンテナ火災”の捜査進捗に関わる情報収集と、資料の閲覧が目的だったが、
担当者である末留警部が外出していたため、１部の情報収集は達成できなかった。
もっともそれでも、「警部の許可済」というお墨付きで、幾つかの捜査資料を閲覧できた。
石化被害者の発見に関わる現場情報や、聞き取り捜査の資料、分析結果等々。
被害者の“成分分析”では、「特殊な成分の石だが、人間が変化したとは思えない」と結論されていた。
特殊な成分というのは、「通常の石より密度が高く人造石に近いが、やや比重が軽い」というもの。
パドルにしてみれば、これこそこの石像が被害者――メタロイドである証拠だったのだが、
オーバーサイエンスを理解できない分析官が、そこまで判断できるはずもなかった。
「まぁ……こういう調査ってのは元々、一進一退だがね……こっちはどうだ？」
「あ、そうそう、今朝は３人処理したわ……２人は今ちょうどリハビリ中よ」
「……２人？ ――そうか、１人は“彼女”か」
「まぁね……あの子は自分からアクションを起こすまで、そっとしておいた方がいいでしょ」
とある個室の前に、不安げな表情を浮かべた鉱物娘が１人……ルイだ。
廊下の奥から、ゆっくりとパドルが階段を昇ってくる。
（あ……パドルさん、お帰りなさい）
「――気になるか？」
（はい、まぁ……やっぱり）
個室の横の札には、“瑠深／ＬＵＭＩ”と書かれている。
ルイと名が似ているので紛らわしいが……例の“最も不運な被害者”だ。
活性能力を与えたにもかかわらず、ベッドの上から動こうとしない……無理もないが。
ルイは先ほど１度、部屋に入って慰めようとしたのだが、ルミはルイの呼びかけに応えようとしなかった。
（残酷ですよね、運命って……）
「そうだな……もう少し早く発見できていたら、とは俺も思う……だがそうなれば今度は、
彼女より前の番号の娘が、悲劇を背負うことになっていただろう」
そう……瑠深以外にも、自分の過去を記憶している被害者がいるのだ。
第６８番実験体に当たる“サヤ”と、同６７番に当たる“ミカ”である。
共に“沙夜”“美夏”という“実名”であり、意識もほとんど途切れることなく現在に至っている。
２人とも早ければ、明日か明後日にも活性能力を与える予定だが、
さすがに“人間に戻れない”ことを知った時は、２人ともかなり動揺した様子であった。
「記憶を消して欲しい、と言われるかも知れんな……」
（そうですね……あ、そうだ、パドルさん）
その時ふと――ルイが、何かを思い出したようにパドルに振り向いた。
「……ん、どうした？」
（パドルさんに、言っておきたいことがあるんです……この前、あたしが何故喋れたのか）
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「……それで、お前はどこまで付いて来る気だ？」
メドゥアス第１ラボの、薄暗い廊下。
前を歩くナンバー３“タイタン”の背後、付かず離れず歩くのはセラフィだ。
「くふふ、何……もうすぐ終わるさ」
「もうすぐ終わる、だと？……くくく、それはお前の寿命が、か？」
嘲笑するようなタイタンの言葉に、しかしセラフィもにたりと笑った。
ただし――殺気に満ちた笑みであったが。
「いや――お前さんの寿命さ」
――ずぶり。
「――んなっっ！？」
タイタンがセラフィの“異変”に気付いた時は――もう遅かった。
自身の背中に突き刺さり、胸まで貫通した……銀色の“槍”。
「がっ……こ、これ、は……い……いつの、間に……！！？」
「もう少し……お前さんが謙虚なら、見逃してやっても良かったんだがなぁ……♪」
「き、貴様……ど、どこに、こんな……武器、を……隠し……」
「――どこに？ さっきから持ってたさ、“ここに”……ね」
すでに、タイタンの足腰は、自重を支える術を失っていた。
しかし背中から胴を貫通した長い槍に“串刺し”にされる形で、直立を維持している。
背後から“奇襲”されたタイタンには、見えていなかった。
その“槍”が……セラフィの腕から“直接”伸びていたことを。
そして間もなく……次の変化が始まった。
シュウシュウ、パキパキ……と音を立てて、タイタンの体が石化し始めたのだ。
「ぐぁ……な……んだ……これ……は！？」
「このまま血みどろの死体にするのもアレだからね……お前さんにはオブジェになってもらう」
「……かっ……な……ん……だと……セ……ラ―― 」
タイタンの言葉は、そこでぷつりと途切れた。
メドゥアスのナンバー３として君臨した男は今……串刺しにされたまま、銀色の彫像と化していた。
「あぁそうそう……そう言えば１度も、コードネームで呼んだことはなかったね、タイタン♪
まぁ――もう聞こえちゃいないだろうが……」
石化――いや金属化したタイタンを貫通する“槍”が、セラフィの腕の先でぷつっ、と切れた。
もはや支える術を失った銀色の彫像が、ごとりと廊下に転がる。
片やセラフィの腕の先に残った“銀の槍”の１部は、そのままするすると、腕の中に納まった。
「……何か文句があるなら、承りますよ――ナンバー１？」
ナンバー３を“処刑”したセラフィは、振り向かずに言った。
彼の背後にはいつの間にか……黒い覆面の男・ナンバー１“クリスタ”が。
しかしクリスタはセラフィの予想に反して、まるで動じることなく、低い笑い声を返した。
「ククク……文句などとんでもない、ナンバー３は自業自得だよ」
「ほぅ…………これは意外ですな？」
「君が“新たな力”を得ることは既に予想済みだった……むしろ、歓迎したいね」
「予想済み！？」
「ナンバー８の欠席も、君が仕組んだものじゃないのかね？」
「……ふ……これは、参りましたなぁ」
「好きなようにやれば良いさ……さて、このオブジェを何とかせねばならんな」
「地下のギャラリーに置いておきましょう……“処罰者”は皆、あの部屋に行く運命ですからね」
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| （第５章第５話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2008年頃に草稿を作成したエピソード。
鉱物娘量産エピソードの第１弾（核爆）であるが、実は半数以上のキャラは2007年時点で出来ており、
いつ登場させられるかと思いながら、今まで執筆を続けてきたのである（笑）
ＴＳ（性転換）鉱物娘のユウもこの１人であり、最初から登場させる予定だったのだ（爆）
キジアのような“俺っ娘”であり、今後の活躍も保証済みである（をぃ） |
