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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E061） |
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――今日はどんな気分？
金色の少女が、あたしに語りかける。
（……うん、まぁ……普通かな？）
――ごめんね、でもあたしたちもあのまま消えたくなかったから。
――最後の希望だったもんね……
エメラルド色とサファイア色の少女が、言葉を交わす。
（分かってます……あたしも、みんなを放っておけませんでしたし）
――ありがとう、ルイさん……おかげで、あたしたちも生きられる。
銀色の少女が、そう言った。
礼を言われるほどのことはしてないよ……まぁ、最初は戸惑ったけど、でも後悔はしてない。
あたしの体で満足してくれるなら、この体の中でも良いなら……断る理由なんかない。
――そう、この子達は今……あたしの中にいる。
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第６章 牙を剥く闇 ★
第１話 止められない宿命
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彼女たちと出会ったのは、１０日ほど前だった。
あの爆破された“あいつら”のラボ……そこに、彼女たち４人がいた。
でも……彼女たちには、腰から下がなかった……腕も、肩から先がなかった。
まるで胸像みたいに、台の上に乗せて飾られていたの。
そして、もうその時には……彼女たちは全く意識がない状態だったみたい。
ラボの連中も、もう復活しないと思ったから、下半身を砕いてしまったんだって。
まぁこのことは後で知ったんだけどね……ほんと、酷いことしか考えない奴らだよなぁ。
けれども――あの日、奇跡が起きた。
爆発で壁が破れて、隣の部屋から彼女たちが“降って”きた。
そして、あたしを拘束していた処置台の横から、小さな結晶が転がり落ちた。
そんな２つの偶然が、あたしを触媒にするように、奇跡を呼び起こした。
（参照：第４章５話）
その時……彼女たちは、その特殊な結晶を介して、あたしと交じり合ったの。
虹色の光であたしも気が遠くなって……気が付いたら、パドルさんたちに助けられてた。
あたしを発見したサラさんは、あたし自身が虹色に輝いていたと言う。
しかも、その時あたしは、“声”を出して喋っていた。
意識は朦朧としていたけれど、そのことは何とか覚えている。
そしてその“融合”によって、彼女たちの意識が蘇るという“奇跡”が起こった。
それ以来……４人はあたしの体を借りる形で、あたしの中で感覚を共有している。
体を奪われるということはないみたい……多分“属性”が違うからだろう。
そして彼女たちとの“意識交流”の結果、色々なことが分かった。
しばらく黙ってたんだけど……ある日、その人たちにだけは、事情を打ち明けた。
――誰だって？ 決まってるじゃない、あたしの命の恩人だよ。
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「……それじゃあの時、ルイちゃんはその４人と融合したというの？」
（はい……あたしも後になってから気付いたんですけど、そうみたいなんです）
「なるほど……道理で、行方不明の被害者がいたわけだ」
（え、そうなんですか？）
「あぁ……あのラボで保護された被害者の中に、意識を維持していた者がいたのは知っているよな？
その被害者の証言だと、“トルソー化された４体が壁際に置かれていた”らしいんだ」
（うわぁ……多分その子たちです、あたしと融合したのって）
「存在場が重層化していたのは、その所為だったわけね……」
「それで今……その４人とコミュニケーションを取ることは可能か？」
（えーと、多分……ただ４人とも、あたしほどは活発じゃないから……）
「まぁ、恐らく崩壊寸前だった精神が、融合の反動で再生された形だろうからな。
元がどうであれ、今君の中にいる彼女たちの意識は、最小限の反応しか出来ないだろう」
（あ、はい……ちょうどそんな形です……夢の中だと、結構会話してるんですけど）
「喋ることができたのも、融合の影響によるものかしら……でも何故、あの時だけ？」
「構成が安定化していなかったためかも知れんな……意識効果がそのまま反映されたんじゃないか？」
（は、はぁ……そうなんですか）
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――もう分かるかも知れないけど、打ち明けたのはパドルさんとライカさん。
この人たちだったら、きっと実にしてくれると思ったし。
まぁ……その時は専門用語っぽい言葉がぽんぽん出てきて、何話してるのかサッパリだったけど。
――綺麗な人だね、ライカさんって。
――でもどこか、可愛い感じもあるかも。
――パドルさんって人も逞しくて頼もしそうじゃない？
――あの２人って、デキてるのかな？
……最近話す内容が日常化しているのは、良い兆候だと考えていいんだよね？（^^;）
あ、そう言えば……この子達の名前、考えておかなきゃ。
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――廊下や階段の床板を踏み鳴らす、幾つもの音であたしは目が覚めた。
そうそう……ここも随分と賑やかになったんだよね。
それにしてもみんな朝が早いなぁ……あ、もしかしてあたしが遅いだけ？
あたしはぐぅっと伸びをして、自室から廊下に足を踏み出した。
冷たいステンレス製の床板の感触が、あたしの硬い足の裏から伝わってくる。
（あ、ルイさんお早う♪）
すぐ隣りから“声”をかけられて、あたしは振り向いた。
あたしより１０ｃｍ以上背の高い、金色の顔がにこにこと笑っている。
金色、といっても春海ちゃんじゃないよ。
この人は“コナ”さん。
あたしより多分２歳くらい年上で、確かサラさんと同い年。
ここ１週間くらいの間に活性化処理を受けたばかりのはずだけど、もう表情を作れるみたい。
凄く前向きで活発な人で、とても人懐っこい。
動きはさすがにまだ遅いけど、この勢いなら半月もすれば“人並み”になりそう。
改めて近くで見ると、その純金と見まがうほどの体の輝きがまぶしいほど。
あたしもそうだけど、“鉱物娘”の肌は磨き上げられた宝石みたいにすべすべだから、
コナさんみたいにメタリックな体を持ってると、光の反射が物凄いんだよね。
（おはよ、コナさん……みんな起きてるんですか？）
（うん、そうみたいよ……やっぱりみんな、早くルイさんみたいになりたいからじゃない？）
（そっか……なるほど）
だからみんな朝早くから起きて、体を動かしてるんだね。
あたしはここ数日、運動不足気味だからなぁ……負けてられないや。
この１〜２週間くらいの間に、動ける鉱物娘の数がぐっと増えた。
どうやらあのラボから保護された子たちが、すでに保護されてた子たちの意識を触発したらしい。
あたしとエミちゃん、サラさん、スイちゃんとかの“初期組”を除いても、なお１０人くらいいる。
視線を廊下の手すりから、吹き抜けになっている１階へと向けると、
すぐに４人ほどの鉱物娘の姿が視界に入った。
若草のような色合いの、半透明の鉱物の体を持っているのが“リン”ちゃん。
そのリンちゃんにエスコートされるように手すり沿いに歩いている銀色の子が“キナ”ちゃん。
２人とも、昔の記憶はないらしい……コナさんもだけど。
まぁ、記憶が残ってたって、エミちゃんみたいに悩みの原因になったりするんだけどね。
そういえば、エミちゃんの姿が見えないな……まだ悩んでるのかな、やっぱり。
リンちゃんとキナちゃんのコンビから少し離れて、１人で奮闘しているのが２人。
淡いピンク色を帯びた、真珠のような質感を持ってるのが“パル”さんで、確かあたしとほぼ同期。
といっても石化されたのはあたしより半年くらい後だったらしいけど。
この前戦闘が起きたあのラボで、すでに不定期に動くことができるようになっていたらしい。
そしてもう１人、サラさん以上に黒っぽい、オパールのような体を持っているのが“サヤ”さん。
サヤさんもあたしとほぼ同期だけど、石化されたのはほんの３ヶ月くらい前だった。
だからサヤさんには“人間だった頃”の記憶が結構残っているみたい……あたしみたいに。
サヤという名前も通例にならってこの施設で付けた名前じゃなくて、
“沙夜”という自分自身の名前……あたしが“瑠唯”という名前を覚えているのと同じ。
活性化処理を受けた鉱物娘の中には、３〜４人くらい、自分の名前を覚えている子がいる。
サヤさんみたいに、比較的最近に石化された子が多い。
１番新しかった春海ちゃんは人間に戻してあげることができたけど、この子たちはできなかった。
あと１ヶ月……保護が早かったら、戻してあげられたかも知れないんだよなぁ……
それでもサヤさんたちは、「動けるなら石の体でも」と、今の道を選んだ。
……なんか、居たたまれない気持ちになってしまう。
あたしだって同じ鉱物娘なのに、考えてみたらおかしいよね。
――間に合わなかった不運が非情だよね。
――ルイさんの気持ち、私も分かるよ。
ふと――あたしの心の中で、そんな声が交錯する。
そう、さっき紹介した、あたしと融合した４人のうちの２人。
今“言った”のは……えーと確か、サファイアと銀色の子――あぁ、早く名前考えなきゃ。
（……ルイさん？）
（……え？……あ、ごめんコナさん、ちょっと考え事してたの、は、はは……）
そうだよね、あたし１人感傷に浸ってたって仕方ないよね。
歯車は回り始めてしまったんだから。
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（お早うございます、ルイさん）
（……お早う……ルイ、さん）
（お早う、ルイさん）
（あ、おはよ♪ リンちゃんキナちゃん、パルさんも早いね）
（みんな……速く動けるように、なりたいから……あたしも早く……手すりから離れないと）
（あぁー、無理しなくてもいいよサヤさん）
１階に降りて、奥の部屋の方向へと歩を進める。
その途中に、色々な運動器具が置かれた、ジムのような部屋がある。
最初に来た時よりも器具が増えた感じ……最初の頃は単に広い部屋って雰囲気だったし。
この部屋にも何人か、運動を課している鉱物娘の姿があった。
奥の方で壁にもたれて、ストレッチをしている背の高い人はルナさん。
淡いピンク色の鉱物の体で、羨ましいぐらいのナイスバディ……ライカさんにも負けてないかも。
確か、動ける鉱物娘の中では、今ルナさんが最年長だったんじゃないかな……１８歳か１９歳ぐらい。
テーブルの上に置かれた小物を拾って、握力の訓練をしているのはミカちゃん。
あたしよりやや黒ずんだ、ガーネットみたいな濃い赤系の鉱物の体と、セミロングの髪。
この子も記憶が結構残っているみたいで、ミカ（美夏）という名前も自分の本来の名前らしい。
（あ……ルイさん）
（ほんとだ……誰を探してるんですか、ルイさん？）
あたしが部屋を覗き込んでると、急に背後から声をかけられた。
トルコ石を思わせる鮮やかな青い石の体を持つ子と、真鍮のようにやや薄い金色の体を持つ子。
それぞれ、ルミ（瑠深）ちゃんと、シノさんと呼ばれている。
シノさんは昔の記憶がないけど、ルミちゃんには残っているみたい。
このルミちゃんは春海ちゃんのすぐ前のナンバー（第６９番）で、石化されたのは３ヶ月前よりも最近。
パドルさん曰く、「あと半月早かったら復元できていた」という、ある意味とても不運な子。
でもルミちゃんは、いつも明るく振舞おうと頑張っている。
“運命の非情”にショックがなかったはずはない……実際、最初の頃は部屋から出てこなかった。
春海ちゃんもそのことを知ると、自分からルミちゃんを避けるようになった。
エミちゃんの件でもそうだけど、申し訳なくて居たたまれないらしい……仕方ないと言うのは簡単だけど。
ルミちゃんも複雑な気分になるのか、余り春海ちゃんの話はしようとしない。
……そうそう、そんなルミちゃんを廊下に引っ張り出したのが、エミちゃんだったなぁ。
自分も大きな悩みを抱えていたはずなのに、ルミちゃんの前では常に笑ってた。
――寂しそうな笑顔では、あったんだけどね。
（……もしかして、エミちゃんですか？）
（え……分かった？）
（……はい、何となく）
まるで見透かしたかのような、ルミちゃんの１言。
（エミちゃん、だったら……奥の部屋……ジュリさんや、ユウさんも……いる）
その後を、シノさんがフォローする。
少し言葉がたどたどしいのは、活性化処理の直前、軽い意識障害があったため。
彼女もラボで不定期に活性化していたらしいけど、意識は途切れがちだったらしく、
その後遺症みたいなものが、今も残っている。
（ありがと、シノさん♪）
（あ、あの、ルイさん、ちょっと……）
奥の部屋へと向かいかけたあたしを、ルミちゃんが引き留めた。
（え、どうしたの？）
（い、いやその……エミちゃんに伝えて欲しいことが……私は大丈夫だって）
少し照れ臭そうに、うつむき加減でルミちゃんはそう“言った”。
いい子だよなぁ……ほんと、何とかしてあげたい。
もちろんエミちゃんも、サヤさんもミカちゃんも――その他の子たちも。
（うん、分かった、心配いらないよ♪）
今は……満面の笑顔で、笑ってあげることしかできないけど――いつか……きっと。
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センターの１番奥にある大きな扉を、ゆっくりと開ける。
まだ動けない鉱物娘たちを、保管してある部屋。
もちろん今もまだ……意識さえ戻ってない子が何十人もいる。
動けるようになった子が増えたっていっても、せいぜい十数人だからね。
何しろこのセンターにはあたしたちを含めて、６０人以上が保護されてるんだから。
そこに……エミちゃんがいた。
いや、エミちゃんだけじゃないな……スイちゃんもいるし――それに。
アメジスト色の鉱物娘だけど、心は少年だというユウ君。
手を腰に当てたり、足を広げたり、仕草もどこか男の子っぽい。
そして、この前動けるようになったばかりの、ステンレス色の少女――ジュリさん。
ジュリさんって、結構体つきは逞しいんだよね……運動してたのかな？
全身ガラスかクリスタルのように半透明な体を持つ子も横にいる……この子はリアちゃん。
ミカちゃんのすぐ前のナンバーらしいけど、ミカちゃんと違って昔の記憶はないらしい。
セミロングの髪の毛が部屋の照明を反射して、まるでダイヤモンドみたいに輝いている。
エミちゃんの表情は、思ってたほど寂しそうじゃなかった……ちょっとだけ、ホッとした。
それでも……どこか陰のある表情ではあったんだけどね。
４人揃って、まだ彫像のように立っている、他の子たちを眺めている。
いや、眺めてるってのは正確じゃないな……正確に言えば意識交流。
まだ動けない子たちの数は４０人を超えるけど、そのうち数人程度は意識を回復してるから。
あたしに気づいたスイちゃんが、にこりと笑いかけた。
この子は本当に成長が早いよなぁ……もう結構普通に歩いてるし、笑顔も作れるんだから。
（おはよーございまーす♪）
（スイちゃんおはよ♪）
（あ、ルイさんお早う、今日は遅めだね）
（何よぅユウ君……それ嫌味？）
（ルイさん……お早う、ございますぅ……）
（あ、お早うございます）
（おはよ、ジュリさんにリアちゃん♪）
（お早うございます、ルイさん）
（……うん、お早うエミちゃん……調子はどう？）
（そうですねぇ……カオルさんとリラさんが、今日は元気ですよ）
……あたし的には、エミちゃんの調子を聞きたかったんだけどね。
カオルさんってのは、アクアマリンを思わせる明るい青の半透明な鉱物娘。
まだ動けない子だけど、意識はもう結構ハッキリしている。
ここの鉱物娘じゃ“少数派”のショートカットだけど、実はこの子も元少年だったみたい。
昔の記憶がユウ君同様結構残ってて、意識復元後の回復が早かった。
リラさんって子は、不透明な青い石の鉱物娘……やっぱりまだ動けないけど。
ルミちゃんとは違って、ラピスラズリを思わせる群青色。
こっちは記憶がほとんど残ってないみたいで、パドルさんに言わせれば結構前のナンバーらしい。
まぁ……石化されたのが古いんだったら、覚えてなくても仕方ないよね。
その他にも何人かが意識を取り戻してるけど、まだ不鮮明な子も多い。
シノさんみたいに、意識障害を起こしてる可能性のある子もいるらしい。
実際確かに、感情の発露はあるけど、上手く会話できない子がいる。
そして……動けない５０人近い被害者の半数は、さっき書いたようにまだ完全に沈黙したまま。
可愛そうだけど……あたしたちには今のところ、どうすることも出来ない。
――でも、あたしたちも何日か前までこんな感じだったしね。
――そうだよね、だからまた奇跡が起きるかも。
そうだと、いいんだけどねぇ……でも奇跡って、そう簡単に起きないしなぁ。
――あれ、ルイさんって結構シビアなんだ。
――もっとロマンを持ってもバチ、当たらないと思うよ？
うぅ、それは確かに。
うん……そうだね、希望持たなきゃね。
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そんなワケで結局あたしも、１時間くらい保管庫にいた。
運動でもするつもりで保管庫を出ると、事務室から会話する声が聞こえてきた。
男の人っぽい話し声が２つ聞こえる……ってことは、あの刑事さんが来てるわけね。
えっと……確か、末留さんだっけ……余り聞かない、珍しい苗字だよね。
風呂さんなんて人も、この国にはいるらしい……とか何とか、ＴＶで言ってたしｗ
何を話してるのかな？
あたしは聞き耳を立ててみる。
え、盗み聞きは良くない？……いやまぁ、そーなんだけどさ。
「……いっそ、街に出られてみては？ 知っている間柄なら、問題はないでしょう」
「そうですねぇ……まぁ確かに、直接目撃されなければ問題はないわけですし」
「彼女たちも、街の雰囲気を知った方が、良いリハビリになると思うのですよ」
え、街に出るって、どゆこと？
「聞いたままよルイちゃん、昼間の街に出て体験会やらないかって話」
（へぇ、そうなんですか、何か面白そう――って、うわぁぁぁ！？）
気が付いたら、ライカさんが事務室の横にある談話室から、あたしを見ていた。
……そっか、そう言えば事務室って、直接談話室とつながってたっけ。
あたしがあからさまに狼狽してたら、今度は事務室の扉が開いた。
「お、ちょうどいいところに来たな♪」
（うぅあえぇ！？ あ、その、あたし、別に……）
「責めはしないよ、というか君らに関わる話だ」
「あぁ、確かこの子は……ルイというのでしたっけね」
「警部が面白い企画を提案してくれたんだが、どうだ？……聞いてたんだろ？」
（はぁ、その……いや……あはははは）
……完全にお見通しだったみたい。
もう、誤魔化しても意味無さそうだね。
「ルイちゃん、面白そうだってよ♪」
「そりゃ良かった♪きっと興味を示してもらえると思ったんですよ」
「商店街の貸ホールでオフ会ってことですよね、要するに」
「えぇ……完全な体験会じゃないですが、ここよりは刺激があるかと」
（真昼間の街に出るんですか……そう言えば昼間の街はあたしも初めてだなぁ）
今までは出たとしても全部、夜中だったからね。
唯一の例外が、あのラボに連れて行かれた時だけど、あれは街中じゃなかったし。
センターに引っ越す時は昼間だったけど、あれも通過しただけだし。
「行くとしたら、３人くらいかしらねぇ」
「そうだな……人並みに動けるのはルイ、エミ、サラぐらいだろうし……」
「上手く行ったら、他の子たちも誘うというのはどうです？」
（３人……ですか？）
「あぁ、まぁ……まずは試験的にやってみる上でも、そのぐらいがいいだろう」
――へぇ、何だか面白そうじゃない。
――あたしたちも、街の風景、見てみたいなぁ。
何だか、面白いことになってきた。
昼間の街に繰り出して、その街の１角で翔子さんたちと遊ぶ体験会だって。
さすがに人込みの中で堂々ってわけには行かないだろうけど、
それでも今までにない、新鮮な体験になりそうな気がした。
「ルイちゃんもＯＫそうね、それじゃ後はエミちゃんにサラちゃんに、そしてあの子たちか」
「……だな、連絡係、頼めるか？」
「いいわよ、あんたの図体じゃ目立つモンねぇ♪」
「……いやまぁ、俺は多分その日、警部と署の資料を見ていると思うから、な」
「決まりですね、いやぁ、楽しい体験会になることでしょう♪」
……まぁ、そんなわけで。
何かあれよあれよって間に話が決まって、明後日決行されることになっちゃった（^^;）
いや、あたしは別にいいんだけどね……サラさんも興味を示したし。
エミちゃんは１瞬ためらったけど、断りはしなかった。
まぁなぁ……この街にお母さんがいるかも知れないし、複雑だよなぁ。
……あ、そうだそうだ、全然違う話だけど。
（えぇと……例の力、ちょっと試してみたいんだけど……いいかな？）
――そうね……あたしも１度、試した方がいいと思う。
――そうだね、賛成♪
――あたしも……でもどこで試すの？
――ここはやっぱり、個室じゃないかな？
何の力かって？……それは内緒。
この子たちと体を共有するようになって、気付いた能力なんだけどね。
いずれは必要になってくると思うし……おっとっと、ネタバレするところだったわ。
もっとも……この力をあんなに早く使うことになるとは、この時思いもしなかった。
あんな出来事が起きることだって……
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| （第６章第２話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2008年頃に草稿を作成したエピソード。
ルイ視点で書いた、鉱物娘量産エピソード第２弾である（をぃ）
実のところこの辺までのメンバーは、本編を書き出した頃にほぼ固まっていたりする。
ルイ以外のムードメーカーポジションがコナやスイ辺りなのも、ほぼ確定事項であった。
そして物語は、2008年執筆編としては最大のハイライトに続いていくのである。 |
