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★Active Solid Girls 統合ナンバー：EA-ATT18501NA（NA-E084） |
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（――あれ？ あたし……）
ふと――春海は意識を取り戻した。
眞希や瞳と強行した廃村探検。
突然植生の途切れた林道で出し抜けに“謎の地震”に遭遇し、崩れる道から転落したところまでは、何とか覚えているのだが。
全身がじんじんと痛む……が、打撲とは違う、妙な感覚が支配する。
同じ感覚をどこかで体験したような気もするが、思い出せない。
春海の視界に見えているのは――薄暗い地下道のような場所。
ただ壁が妙に青く、まるで磨き上げられたようにほとんど凹凸がない。
（いったい、ここは――あれ？こ、声が出ない）
何気なくつぶやこうとして、春海はふと、全く声が出ないことに気付いた。
まさか……さっきから続いている、全身のこの妙な感覚は。
春海は嫌な予感を覚えて、思わず自分の手を見た。
（――――！！…………はぁ、またコレだよ）
彼女の手は、まさに黄金細工のような輝きを放っていた。
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ＡＣＴＩＶＥ ＳＯＬＩＤ ＧＩＲＬＳ
★ 第８章 新たなる謎 ★
第４話 瑠璃色の地下迷宮
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群青色１色の妙な地下道の端で、全身金色に染まった少女がむくり、と上半身を起こした。
自分に起きたことを確認するように、手足や体、そして顔や髪に触れている。
（同じだ……あいつに襲われた時と）
金色の少女――春海の意識に蘇るのは、数日前に駅前商店街で遭遇した銀色の怪人。
その怪人は触手のような髪で彼女を捉え、ほとんど強制的に金色の動く石像へと変身させた。
おかげでその後、傷付くことはなかったものの、余り体験したくない感覚となって、彼女の体に刻まれた。
何しろ、血の気が引くような感覚が体を支配し、“石化していく過程”がはっきりと分かるのだから。
石化してもなお動けるという奇跡も同時に体験するが、“石像と化す”気持ち悪さを超える感動ではない。
体の中に“肉体の感覚”がほとんど消えうせ、“モノになった”ような感覚が全身を支配するのだ。
先輩の翔子は彼女を守るために“自ら変身”したが、決して気分の良いものではなかったはず。
その後何とか元の姿に戻れたが、できるならもう体験したくない、そういう思いの方が強かった。
なのに――１０日も経たずに、再びあの感覚が蘇ることになったのである。
（来なければ……良かったのかなぁ）
春海は群青色の壁に反射して青っぽく変色する、自分の姿を眺めている。
その目に瞳の影はなく、“全く生気を感じないほど”不気味に光り輝いている。
衣服も同調したのか、ややトーンダウンしているが似たような色だ――あの時と同じように。
この状態では全く声を出すことが出来ない……おかげで、ゆらゆらと動く自分が余計不気味に見える。
（先輩たち大丈夫かな……それにしても、ここはどこなんだろう？）
気分転換をするつもりで、春海は“地下道”を見回す。
磨き上げられた青い壁の所為で、まるでガラスの部屋にでもいるかのような錯覚を覚える。
ふと見上げれば、１０ｍほど上に四角い青空が見えた。
どうやら、転落中にここに落ちてきたらしい……今もパラパラと、細かい砂が降ってくる。
床にも土砂が蓄積している……ジャンプしても到底、届きそうにない。
諦めたように視線を落とす春海……溜息でも出そうな雰囲気だが、この体は呼吸自体をしない。
体の痛みはようやく治まってきた……落下の衝撃が、体内を今まで反射し続けていたのだ。
はっきりとは覚えていないが、恐らく落下中に“変身”したのだろう。
“石化後”の痛みこそ残っているが、擦り傷や切り傷の類は全くなかったからだ。
床材も相当硬そうだ……ここに“黄金娘”が落ちてきたのだから、さぞ相当な衝撃だったろう。
それでも、特に凹んだ様子がないのだから、この床の強度も凄い。
（この先に……出口があるのかな？――うぅ、なんか怖いよぅ）
そろり、そろりと春海は地下道の奥に歩き始める。
もっとも全身が黄金像と化しているも同然なので、どんなに慎重に振舞っても硬い音が響くのだが。
床から響いてくる音も妙に鋭い……ということは床材も金属製なのだろうか？
（それにしても、村の地下にこんな場所があったなんて…… ――あっ今、物音が！？）
春海が孤独を紛らすように考え事をしながら歩いていた、まさにその時。
地下道の奥から、似たような“足音”が響いてきた。
いや、まだ足音と断定は出来ないが、とにかく“人が歩くような”規則的な物音だ。
（だ……誰かいるの？……やばっ、今あたしこんな姿なのに――うゎっ、後ろからも！？）
きょろきょろと見回しても、隠れられそうな場所はない。
しかも、追い討ちをかけるように……背後からも同じような物音が。
春海は取り合えず、壁際に直立して“石像の真似”をする――もっとも“材質的には”本当に石像なのだが。
やがて……地下道の突き当たりから、白っぽい“人影”が姿を現した。
しかし――それは“とんでもない”ものだった。
（なっ――――何アレ！？）
何とそれは――無表情で歩く、女性の石像だったのだ。
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「はい、もう動けると思うわ……でもまだ、無理をしちゃダメよ」
センターＤ最奥部の被害者保管庫。
その奥まった場所で、ライカが斜めに立てかけたマットに向かって、何か話しかけている。
そのマットの上に“縦に寝ている”のは……先ほどライカに活性化処理を受けたばかりの、エリである。
エリはゆっくりと、確認するように、腕を動かしている。
（……本当……動く……凄い……あ……ありがとう……ございます……）
「最初から速く動ける子はいないわ、ここにいる子達はみんな、練習して上達したの」
ライカの後にいるのは、ルイやユウ、サラにマリ、そして眞希と手をつないだ瞳と翔子。
特に“初めて保管庫に入った”眞希は、明らかに戸惑うように周囲をきょろきょろと見回している。
無理もない……周囲にはまだ“石像状態”で立っている被害者が、３０人以上もいるのだ。
マネキンの倉庫も不気味だが、その比ではない……ここにいるのは全員、“元人間”なのだから。
「落ち着きなさいよ眞希、みんな被害者よ、ルイさんたちと同じじゃない」
「う、うん、それは分かってるつもりなんだけどね……」
（意識のある人もいるんだね……何も聞こえない人もいるけど……）
こっちは瞳だ……実は彼女も保管庫に入るのは初めてだが、自分も今は同じ姿なので、免疫があるようだ。
全く動かない被害者達の半数ほどから“聞こえてくる”、かすかな“声”を感じているらしい。
（あたしもサラさんもユウ君もマリさんも、数ヶ月前までこの中の１人だったんだよ）
（まぁ、そういうことになるッスよねぇ……あぁ、自分は確か、あの辺に立ってたっけか）
（あたしは……このあたりに……まだ３日くらい、前のことですね……）
「本当はゆっくり、養生して練習して欲しいんだけど……急いで聞きたいことがあるの、いいかしら？」
ライカが真剣な表情で、しかしいたわるように、エリに向かって話しかけている。
廃村跡で行方不明になった春海を“救出”するため、何か少しでも情報を確保したかったからだ。
眞希らを窮地から救ったホルスとアイガーは“元敵組織メンバー”だが、
廃村跡に関しては何も聞かされなかったらしく、詳しいことをほとんど知らない。
もっとも“組織”の実態には詳しいはずなので、今別室でパドルが聞き出しているところなのだが。
（……分かって、います……あたしも……早く、伝えたかった、から……）
少し言葉がたどたどしいが、数時間前に意識を回復したばかりとは思えないほど、エリは積極的だ。
もちろん“普通は”数時間後ならまだ文法も形を成しておらず、せいぜい単語のみの発言しかできない。
数時間後どころか、何日もの間、わずかな意識と感情しか、発露できないことも少なくない。
鉱物娘で“最も気丈な”ルイでさえ、ここまで言語発露が早くは現れなかった。
「彼女のお友達が、この街の北にある森で行方不明になってるの、何か心当たりないかしら」
そう言って、ライカは背後に立っている、翔子たちを紹介した。
エリはまだ腕以外ほとんど動かせないが、翔子や瞳は、彼女が自分の方に意識を向けたことを察した。
（……北の森……確か……奥……沢……）
「そうそう、旧奥沢村……凄いわね、記憶もかなり残ってるのね」
ライカは慎重に、記憶を掘り返そうとする……と、その時だった。
（……いけない……あそこ……あいつが……いる……）
「――あいつって！？」
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（いやっ……こ、こっち来ないで！）
どことも知れない瑠璃色の地下道で、春海は追い詰められていた。
突如、地下道の前方から出現した、薄灰色の女性像。
春海が歩いてきた地下道の後方からも、同じような女性像が現れた。
さらにその奥から数体……いずれも一糸まとわず、無表情で、ぎこちなく歩いている。
しかも春海が移動すると、まるで追うように方向を変えてくる――ただし、機械のような動きで。
（あ……あなたたち何者なの！？――こ、答えてよ！）
呼びかけても――反応はない。
ある意味では今の春海自身や、ルイ達のように“生きた石像”かとも思われたが、
彼女たちには“心の声”はおろか、感情の発露すら全く感じ取れなかった。
ただ無言で、カラクリ人形のように無表情のまま迫ってくる。
（な……何なのよ一体っ！？）
春海がパニックになりかけた――その時だった。
（――こっちに来て、早く！）
背後から“誰か”が、彼女の心に呼びかけてきた。
気付くと地下道の奥に細い“路地”が開いている……呼びかけはそこからだった。
春海は覆い被さるような女性像たちを潜り抜け、その路地に体を滑り込ませた。
（――――っっ！！？）
そして――絶句した。
路地の奥には、全身金色に光り輝く、別の女性像が立っていたからだ。
やはり服は着ていない……しかも関節が大きくくびれ、それこそまるで人形のようだ。
思わず立ち尽くす春海に向かって、その女性像が語りかけてくる。
（怖がらないで……私はあなたの味方、お願い信じて！）
しかし――その女性像には“表情”があった。
先ほど春海を“追い回していた”女性像たちとは違う、感情の温もりがあった。
春海は震えながらも、ゆっくりとその金色の女性像に近づいていく。
（さぁ、こっちへ……大丈夫、あの子達は私に任せて）
金色の女性像は春海の肩をポン、と叩くと、そのまま地下道の方へと歩いていく。
そして、路地に入ってこようとする、女性像の群れに向かって手をかざした。
すると――女性像たちはくるり、と向きを変え、地下道の奥へと去っていった。
無感情な規則正しい足音が、次第に奥へと遠ざかっていく。
（取り合えず……これでいいわね）
（……あ……ありがとう……ございます）
春海が戸惑いながら礼を言うと、金色の女性像は春海に向き直り――にこり、と微笑んだ。
純金と見紛うばかりに輝くその全身を、春海は改めて間近で見る。
部分的に極端なくびれがあるものの、素晴らしいプロポーションの持ち主だ。
今の春海と同様、目に瞳の影はないが、代わりに額や肩に小さな結晶体が埋まっている。
手足の関節や腰に深く節が刻まれたその体形は、やはり人形としか思えないが、
春海には彼女が“作られた者”とはどうしても思えなかった。
（私の名前はオーラ……あなたは？）
（え、えっと……は……ハルミ……日ノ本春海です）
（宜しく、ハルミさん――見たところ、中学生くらいかな？）
（あ……は、はい）
オーラと名乗った金色の女性像は、春海を興味深そうに眺める。
春海の方はというと、警戒心はかなり薄れたものの、まだ戸惑ったままだ。
（少し、驚いたわ……あなた、石化しているのに、動けるのね。しかも、とても自然だわ）
（……は、はぁ……そ、そうですか？）
（しかもあの子達と違って、最初から金色……もしかして、前にも同じような経験をしたことが？）
春海は戸惑いながらも、こくり、と頷いた。
（やっぱり……だからこんなに落ち着いてるのね）
（あ……あの……）
（……そうね、名を名乗っただけじゃ、何のことか分からないわよね）
春海も何かを尋ねようとするが、何と聞いたらいいものか分からない。
いや色々な出来事が立て続けに起こって、何から聞いたらいいのか分からないと言うべきか。
そんな春海の雰囲気を察したように、オーラは再び路地の奥へ、彼女をエスコートする。
（続きはこの先で話しましょう……大丈夫、安心できる場所よ）
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「……大いなる計画、だと？」
こちらはセンターＤの車庫。
大きなタイヤがいびつな、小型トラックの横で会話しているのは、パドルとホルスとアイガーだ。
直立不動のパドルとホルスに対して、アイガーは壁に背中を預けている。
「そいつは、あのセラフィとかいうヤツが言っていた“革命”のことか？」
「何だ……お前、セラフィに会ったことがあるのか？」
「直接ではないがね……相棒から聞いたんだよ、髪を触手みたいに使う銀色の怪人がいると」
「相棒って、さっきの女かよ……はっ、まるで男みたいな扱いだな？」
「その辺の男より逞しいぞ、確かそっちのエージェントを１人、蹴り倒してるはずだが」
「多分ネメシスだな……人生の屈辱だとぼやいてたのを覚えている、もう人ではないというのに」
メドゥアス８号ネメシス……かつてライカにハイキックを喰らって沈んだ男も、今は金色の体を持っている。
あの駅前テロでホルスと対峙した時も、ネメシスは軽い口調で色々話していたらしい。
「まぁ、そういうことになるのだろうな……“鋼の兵士が支配する要塞を作る”と言っていた」
「何だよオイ、あの鬼畜はそんなこと抜かしてやがったのか？」
「最初は裏社会で使える兵士でも作るのかと思ってたが……まさかあんな騒動を起こすとは」
「駅前テロのことだな……あんたにとっては予想外だったってワケだ」
「“この国の歴史を変える”と言っていたのは知っているが、あの時は比喩だと思ってた」
腕組みをするホルス……蛍光灯の灯りを反射する、銀色のボディがまぶしい。
「俺が組織を離れた後に、その計画が大きく動いたのは確かだ……あの言葉が比喩じゃなかったのだとすると」
「あながち、本気で“表社会も変える”つもりでいた、ってのも的外れじゃないか……？」
「そーいや、マスコミのコメンテーターにもいやがったな、『人類が進化する』なんて言ってたのがよ」
「……そんな情報、どこで仕入れて来るんだよ、その成りで」
「往来に出んでもそのぐらいの情報は入るさ、捨ててある新聞を拾えば大抵の時勢は見える」
「何だとコラ」と言いかけたアイガーを抑えるように、ホルスがフォローを入れた。
ステンレス色の大男が、今日何度目かの舌打ちをする。
「それで……今組織は何をしようとしているんだ？ もう壊滅したってワケでもないんだろう」
「さてね……そこまでは俺も、多分アイガーも知らん……第１ラボには行ったことがないんでね」
「第１ラボね……そこが組織の中枢ってワケか」
「俺も曲がりなりにも１桁ナンバーだったが、現場に回されてばっかりだったんでね。
ネメシスでさえ、第１ラボに入ったのは“人間を捨てた”あの時が初めてだったらしい」
「ラボってのは、３つしかないのか？」
「そのはずだがね……第４ラボの計画もあったらしいが、できたとは聞いてない」
「……ということは、今は第１ラボしかないわけだな」
パドルがそう言って、ひときわ真剣な目つきをした。
その意味するところを、ホルスやアイガーもすぐに悟ったようだ。
「そういうことだ……確信はないが、今組織は焦っているだろう」
「ってことは、またセラフィ辺りが襲撃でもしでかすか？ だがよ、同じこともできんだろ」
「兵士の増員をする可能性はある……“悠久の地下牢”を開放すれば、不可能じゃない」
「悠久の地下牢――だと？」
「何だそりゃ？」
悠久の地下牢――聞き慣れない言葉に、パドルだけでなくアイガーも反応した。
「第１ラボにあるという“粛清者の部屋”だ……見たことはないが、恐らく１種の“ギャラリー”だろう」
「組織の裏切り者なんかが、隔離されているというわけか」
「あぁ……セラフィたちのことだ、恐らく“オリがなくても逃げられない状態”になってるだろう」
「石化しているわけか……全く、そんな話ばっかりだ」
……そういう物語なのだから仕方ない。
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路地の奥には、部屋があった。
差し渡し３～４ｍ四方ほどだろうか、さしずめ６畳か８畳くらい。
そしてそこに、２人の女性像が立っていた。
（オーラ、さっきのは何だったの？）
（ってその子……もしかして新しい被害者？）
銀色と、壁の色に近いブルーメタリックの２人……やはり、人形のようにくびれた関節を持つ。
（紹介するわね……レイアとアクア、私の仲間よ）
（は、はぁ……えっと、日ノ本春海です）
（へぇ、ハルミさんって言うんだ……凄い、最初から金色って初めて見たわ）
（ハルミさんは前にも１度石化した経験があるみたいなの）
（ってことは、下の街の子なのね……まだやってるんだ、あいつら）
レイアと紹介された銀色の少女と、アクアと紹介されたブルーメタルの少女が、春海の前に来る。
オーラを含めて、３人とも春海より背が高く、スタイルも非常に良い。
腰辺りまでの長い髪を持つオーラに対して、レイアはショート、アクアは肩辺りまでだ。
２人ともオーラと同じように、額や肩にルビーに似た赤い結晶体が埋め込まれている。
人間体形ではあるものの、ややエッジが張っていて、“人形風に”磨き込まれた印象がある。
（怖かったでしょう……許してあげてね、あの子達は自分の意思で動けないの）
（自分の意思で、というか、意識もないに等しいよね）
（え……それじゃ、さっきの人たちも……）
春海の問いに、３人はほぼ同時に頷いた。
（えぇ……元々は人間だったのよ、私たち３人もね）
（や、やっぱり……そうなんですか……）
（今でこそこんな姿だけど、最初はあの子達と同じように、灰色の石像だったわ）
（ここには時間を計る物がないからはっきりとは分からないけど……もう３年くらい前かしらね）
（あの頃は高校生だったよね……あんまり覚えてないけど）
（じゃあ、皆さん、奥沢村の？）
（そう、朝陽北高校に通っていたのよ、今もあると思うけど）
（本当の名前も忘れちゃったのに、そういうところは覚えてるのが不思議よね）
（え、北高校って、あの廃校のことかな？）
（え……廃校になっちゃったんだ？……そっか、あの頃も生徒少なかったしなぁ）
しばらく自分達以外の話し相手がいなかったのが、興味津々な態度だった３人だが、
春海から“時代の変化”を聞かされると、寂しそうな表情になって沈黙した。
ここは３人用の部屋なのか、少ないながらも雑品が置かれている。
ただそのいずれも、金属製だろう硬いものばかりだ……布製のものは全くない。
“元々カバーか何かが付いていた”金属製の残骸のようなものは、部屋の端に放置されているのだが。
彼女達の“心”以外、まるで温かみを感じない、無機質な雰囲気が漂っている。
（……ここにいると時間の感覚がなくなっちゃうからなぁ）
（何もすることがなくて、何日か意識がないこともあるよね……）
（そうそう、それであいつに起こされて、色々世話をさせられるんだよね）
（あたしなんか、気が付いたら勝手に体が動いてたことがあるよ）
（え、あいつって、あの人たち以外にも誰かいるんですか？）
ふと、気になることを聞いた春海が、すぐに反応した。
そんな春海を見た３人が、無言で顔を見合わせる。
（……そうね、やっぱり一応、話しておいた方がいいかもね）
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| （第８章第５話へ続く） |
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【Meking Memo／設定補記】
2009年頃に草稿を作成したエピソード。
第２部の核心舞台の１つ、旧奥沢村地下基地のデビューエピソードである。
ＡＢＣやＭＢＳなどを見れば分かるが、G-maは元々こういう地下施設に屈折したロマンがある（爆）
人形のように加工されたメタロイドの変種、オーラたちもここが初登場であるが、
実はキャラの草案自体は2008年頃に出来ていたもので、それを再編した経緯がある。 |
