 |
★ＣＲＹＳＩＳ ＵＮＤＥＲＷＯＲＬＤ 統合ナンバー：EX-ATT18501R（MBS20702R） |
（注）当ページには年齢制限情報が含まれております、ご注意ください。
|
2007年の日本、中部地方の山岳地帯。
岐阜県北部の観光都市・高山から10数kmほど離れた丘陵部の森林地帯に、うごめく人影があった。
「えっ……あっ……」
薄暗い森林の地表部、草が生い茂り比較的土壌が柔らかい部分に、女性らしき２つの人影。
ミステリアスなスミレ色のワンピースを着た黒髪の女性が、もう１人の上に覆い被さっている。
「ふふ……驚いた？ 大丈夫よ、キミはとても綺麗――」
ワンピースの女性の下にいるのは――やや小柄ながら、一糸まとわぬグラマーな“少女”であった。
裸の少女は困惑の表情を顔いっぱいに浮かべているが、手足や胴体は力なく雑草の上に横たわっており、
起き上がる気力がないように見える……“行為”の後なのだろうか。
少女に覆い被さるワンピースの女性も少女のように小柄だが、その表情はどこか異彩を放っている。
一見同性同士の“行為”のように見えるが、そこには“魔術的”な意図があった――
|
ＣＲＹＳＩＳ ＵＮＤＥＲＷＯＲＬＤ
クライシス・アンダーワールド 狂気の殿堂
ＭＢＳ日本支部近傍 〜スティノア暗躍記2007〜
|
ワンピースの女性は、裸の少女の体を、恍惚とした表情で撫で回している。
女性の指が胸部の乳房や下腹部を撫でるたびに、少女の体がぴくぴくと細かく痙攣するが、
激しく抵抗する様子はない……彼女を受け入れているのか、それとも脱力して上手く動けないのか。
一帯の森林はとても静かで、鳥のさえずりさえ聞こえてこない……２人の吐息がハッキリ聞こえるほどだ。
「あっ……うっ……」
「可愛い声……キミ中々良い感じよ――大丈夫、綺麗に“仕上げて”あげるから、安心して。
ほら――“あの子”みたいにね？」
「ぇっ…… ――！！？」
女性が指差した方向に、ぎこちなく首だけ傾けた少女は、驚きで目を見開いた。
そこにいたのは――草むらの中の岩に背中を預けた、グラマーな女性の“石像”であった。
片手を戸惑いがちに前方に突き出し、苦悩の表情を浮かべている。
両足は大きく開かれているため、下腹部にある女性特有の“秘部”がほぼ丸見えだ。
草に埋もれていないところを見ると、ここに“置かれて”から、まだそれほど経っていないらしい。
「うぁっ……あっ……やっ……」
“女性石像”を見た少女が、ワンピースの女性に向かって、引きつった表情で小さく首を振る。
脱力状態が続いているのか体は余り動かず、声は出るが言葉にならないようだ。
そんな少女を、ワンピースの女性は不気味な笑みを浮かべて眺めている。
「何を心配しているの？ ――老いることもなく、その綺麗な体を保っていられるのよ？」
「あっ……ぼ、ボク……ちがっ……」
「せっかく、あたしの“昔の体”をあげたんだから、もっと喜んでよ……女子になったのがそんなに嫌なの？
どうせ――男とか女とか、どうでもよくなるというのにねぇ……」
そう言って――女性は少女のピンク色の唇に、ゆっくりと自分の唇を押し当てた。
「うっ、ふむ、うむ――！？」
口を封じられた少女の声が、喉の中で小さく籠もる。
そんな少女の困惑に満ちた顔を間近で見る女性の目が――不気味な紫色の光を帯びた。
「ふっ、うっ、む――！？」
すると――草の上に横たわっている少女の手足の先が、灰色に変色し始めたではないか。
変色は少しずつ手足を這い上がり、胴体へと近づいていく……質感も皮膚と言うより、まさに石のようである。
自分に何が起きたのか分かっているのか、少女は涙を浮かべて顔を震わせ、呻き声を上げた。
「んんーー、んむーー！！？」
変色は容赦なく胴体を這い上がり、髪の毛を巻き込むように頭部をも包み込んでいく。
変化に合わせて少女の呻き声は徐々に小さくなり……やがて全く聞き取れなくなっていった。
そして――かすかに「キシッ」と堅いものを擦るような音が響くと共に、少女の目から瞳の影が消えた。
それを確認したワンピースの女性は、少女の口から自分の唇を離す。
今やその唇も灰色で、力なく開いたまま全く動いていない。
「ふふ……これでキミも、永遠の美しさを手に入れたね、おめでとう♪」
今や全く音を出さなくなった少女の“石像”に向かって、女性は怪しげな笑みを浮かべて囁いた。
|
|
ワンピースの女性は、しばらく“石像化”した少女の裸体を眺めていたが、ふと誰ともなく呟いた。
「そうねぇ……綺麗だけど、やっぱちょっといまいちかな？」
そして再び、少女の灰色の唇に自身の唇を重ねる。
数秒ほど後に、石像化した少女の体が、質感はそのままに、ツヤツヤした不思議な光沢を帯び始めた。
そして――
（……？ ――！？ ……！！）
音声にこそならなかったが、石像化した少女の中に、意志を感じさせる感情の発露が芽生えた。
さっきまでは、その感情の発露もなかったのだが。
「ふふ……物足りないから、精気を少し戻してあげたよ……これで意識を保てるでしょ。
こっちの方が綺麗だしね……作り物には絶対、真似出来ない輝き……うん、ホントに綺麗よキミ♪」
（……！？ ……！！）
女性の声が聞こえているのか、石化した少女は女性の言葉に反応するような感情の変化を見せる。
もっとも……具体的な言葉にまでは、ならないようである。
そんな少女の硬い体を、女性は再び撫で回した。
（……！ ……！！）
「あら、良いじゃない。 さっきと同じよ、柔らかくはないけどね。
“あの子”は全部吸い取っちゃったから、意識がないのよね……だからちょっと、ツヤが足りないのよね。
キミよりも成熟してたから、良い感じになるかなと思ってたんだけどね」
奥に見えている少女像――いや、女性の言葉が正しいなら、こちらも「元は人間だった」のだろう。
少女像は全身に細かいヒビが入っており、それは女性が「さっき石化した」少女も大して違いはないのだが、
磨き上げたようなツヤが両者は全く違うのだ……丁寧に仕上げた名工の作品のようである。
「さてと……１仕事済んだし、下界に戻ろうかな。 ――あぁ、心配しないで、また戻ってくるよ。
キミは出来が良かったから、何日かは楽しめそうだしね」
（……！ ……！？）
言葉にならない感情を発する少女像――もちろん、音は全く聞こえないし、動くこともないのだが。
目尻に残った「人間として最後の涙」も、乾きつつあった。
立ち上がった女性は踵を返すと、数十ｍほど歩いたところで、指をパチンと鳴らした。
すると――急にそよ風の音や小鳥のさえずりが、森の中に聞こえ始めたではないか。
女性は「普通の森林」に戻ったことを確認するように、木漏れ日の陽光が降り注ぐ空を仰ぎ見る。
さっきまでは――まるで霧の中にでもいるような雰囲気だったのに。
彼女の名はスティノア――実は人間ではなく、異種族の“魔女”である。
見た目は中学生の少女くらいだが、実際には既に数百年を生きている。
彼女の種族はギリシャ神話のメドゥーサの起源で、有機物を無機物に変える“石化能力”を持つのだが、
スティノアはその能力をベースに独自の魔術を編み出し、洗練させたのである。
先ほど人間の少女を石化したのも、そうした魔術の１つであった。
しかも――この“石化少女”、元々は「少女ではなかった」のである。
“彼女”に話しかけたスティノアの言葉からも示唆されるが、この少女は元々は「少年だった」のである。
スティノアの魔術は“獲物”を石化する際に、性別や肉体年齢を変えることが出来るのだ。
これは自身の魔術行使を敵性組織やライバルに悟られないための“隠蔽工作”の一環であると同時に、
獲物が持っていた“生命因子”の１部を取得することも可能になっている。
スティノアが中学生のような、若い少女の姿をしているのもこのためだ。
先ほど石化された“少女”は元々、小学生の少年だった――その“肉体的な若さ”を取り込むのと引き換えに、
スティノアは過去の自分が持っていた肉体的な特徴を少年に与えて“少女化”したのである。
その結果スティノアの見た目はより若くなり、少女化した少年はグラマーな体形に変わったのだ。
先ほどスティノアが「物足りない」と言っていたもう１体の少女像も、例に漏れず“元少年”の人間であった。
さっき石化された“元少年”より発育の良い姿をしているのも、スティノアが与えた“生命因子”が、
さっき石化された“元少年”とは質が異なるものだったためである。
実はこちらの方が、スティノアの本来の姿に近く、スティノアは自らの素性を隠す意図を持って、
２人の少年に「自分の肉体情報」の１部を与えて“少女化”したのである。
そして逆に２人から「若い人間の因子」を取得することで、以前よりも若い少女の姿を獲得したのだ。
また“犯行”を行う森林にも自作の結界を施しているため、魔術に理解がないと立ち入ることは出来ないのだ。
“元少年”の少女を石化した時、森林が異界のようになっていたのもこのためである。
|
|
2027年、和歌山県にあるアクエリアス・センターの地下道。
灰色の砂岩に似た“少女像”が、ドアを開けて地下道に姿を現した。
その容姿はまさに――20年前に異界の魔女スティノアに「石化された」元少年のそれであった。
“彼女”の名前はジン。
アクエリアスに保護されたミュータントやジェネティック（生体実験被験者）の多くは、
「人間時代」の記憶を失っていることが多いため、保護された後に新たに名前を受けることが多いのだが、
ジンは元々の本名の１部を使っている……完全には覚えていないが、１部記憶していたからだ。
ジンがアクエリアスの実働部隊である竜王に保護されたのは2017年――強制石化から約10年が経過しており、
既に意識はなかったが、その後８年で意識を取り戻し、メタロイドとして活性化されたのである。
活性化の過程で“リハビリ”を行うことで、全身に入っていた細かいヒビは消えており、
磨き上げた高級な彫像を思わせる、ツヤツヤとした光沢が前以上によく目立つ。
“石像娘”と化した運命自体を変えることは敵わなかったが――自力で動くことは可能になったのだ。
（あ――ジンも身体検査？）
地下道を歩くジンに、ふと“心の声”が投げかけられた。
顔を上げると――リハビリでポーズを付けるのも容易になった――似たような“石像娘”が１人。
いや――更にその後ろから、やはりよく似た“石像娘”がもう１人歩いてくる。
（テルさん――あ、ハイ、そうです）
ジンに話しかけた石像娘――いやメタロイド個体の名はテル。
実はジンが石化を強いられる直前に見た、もう１人の石化娘がテルであった。
小学生の時に少女化された上で石化されたジンに対し、テルは中学生の時に“被災”している。
ジンも結構グラマーな体形だが、テルの方が胸も大きく、全体にボリュームがある。
（画像）
その後ろから来たのはレンだ……こちらもスティノアに女性化後に石化された“元少年”であるが、
石化されたのはジンの後だったため、ジンがレンを知ったのは保護されてからである。
テルよりは“細身”であるが、ジンより背が高いため、やはり存在感がある。
（ボクとレンもそうなんだよ……じゃあ、検査の前にシャワーだね）
（そうですね……あ、テルさんとレンさんはもうシャワー浴びたんですか？）
（そうなんだ……ごめん、ジンも誘ったら良かったな）
（あ、いえいえ、気にしないでください）
ジンとテルの“会話”はいわゆる“念話”で行われるため、普通の人間には何も聞こえない。
メタロイドは石化した体を自力で動かせるが、声は出せないからである。
２人とすれ違ったジンは、地下道の奥にある共同浴場に向かった。
身体検査は“素体”で行う……保護・活性化後の体の状態を詳しく調べる必要があるからだ。
そのため検査前にはシャワーを浴びるなどして、ホコリを落としておく必要がある。
石化した体は垢などは溜まらないが、時間が経てばホコリが付くのである。
活性化しているメタロイドの体は静電気を帯びているため、実は余りホコリも付きにくいのだが。
服を脱いだジンは、浴槽の隣にある集団用シャワールームに入った。
シャワーの前にある大きな鏡に、ジンの灰色の裸体が鏡面反射で映り込んでいる。
細かいヒビが消えていることを除けば、まさに石像そのものだ……目にも相変わらず瞳の影はない。
ただこれでもいちおう、周囲の風景を見ることは可能だ。
全身が均質に石化されているため「目で見る」のとは、少し違うメカニズムなのだが。
複雑な表情で、ジンが鏡に映った自分を眺めていた時――再びシャワールームのドアが開いた。
（お、ジンが入ってたんだね、静かだから無人かと思った）
（あ、リオさん）
御影石のような質感の、かなり背の高い“石像娘”が入ってきた――リオである。
アクエリアス・センターに保護されたメタロイド実験体の中でも“最古参”の１人である。
メタロイドとしても“高位体”であり、珍しく目の中に“瞳の影”があるのが特徴だ。
ジンもテルもレンもそうだが、大多数のメタロイドには瞳の影がないからだ。
眼球が別器官としてあるわけではないのに、リオの目には「瞳がある」のである。
（まだ――慣れられてないみたいだね）
リオの指摘に、ジンは思わず沈黙した……まさに図星だったからだ。
活性化され、メタロイドとして生きる決意はしたが、やはり動揺がないと言えばウソになるだろう。
元少年という自我と、石像娘という外観のギャップは、簡単には克服出来ない。
困惑する自分を嘲笑うように眺めていた、魔女スティノアの悪夢が蘇ることもある。
それを分かっているかのように、リオは柔らかい笑みを浮かべて、ジンの背後に立った。
（色々悩むこともあるだろうけど……取り合えずリラックスしなよ、ジンはもう自由なんだから）
（す、すいません……分かってる、つもりなんですけど……）
（まぁ――そうだよね、うん、ボクにも分かる）
そう言って、リオは背後からジンの体を抱きしめた。
お互い「石の体」なのに、不思議と柔らかく暖かいエネルギーが伝わってくる感触をジンは覚えた。
メタロイドの硬い体も熱伝導機能はあるので、その応用に過ぎないのだが、
物理現象以上の“暖かさ”をジンは感じたのだ……振り返ると、リオは再び笑顔を見せる。
そのリオを見て、ジンも思わず――ぎこちないながらも笑みがこぼれる。
（そう、それで良いんだよ……ジンは自分で笑えるんだ、凄いことだよ）
（そ、そうですかね……）
鏡の向こうで照れ臭そうに笑う石像娘――自分自身の笑顔にも、ジンは癒される気がした。
|
|
|
|
【Meking Memo／設定補記】
2024年に作成した、シークレット・コンテンツ向けのショートストーリーである。
2019年に作成したジンを中心に構築しているが、ほぼ同期であるテルやレンも後半で扱っている。
G-maのメタロイド妄想は、ＭＢＳ系の魔導実験体から始まり、ＡＳＧシリーズに発展したが、
古典的な“石化魔術ネタ”を後から組み込んでおり、それがスティノア絡みのエピソードだった。
魔女スティノアはメドゥーサを“種族化”した魔族メタギュランの魔術師であり、
ゴーゴン３姉妹の１人ステンノから連想したキャラクターである。
単なる「石化能力魔族」ではなく、その能力を独学の魔術として発展させているイメージであり、
「証拠隠滅のために獲物の性別を操作する」アイデアでＴＳジャンルと関連付けた（爆）
きっかけになったのは「獲物の生命因子を捕食する」ギルザムの設定である。
G-maのメタロイド創作としては「後から来たグループ」だが、アイデアとしては原始的なため、
ＭＢＳやＡＢＣ、メドゥアスなどのメタロイド実験が本格化する前に、
「伝統的な魔術に手を加えたケース」として、スティノアの事件群を位置付けることにした。
その結果、ＭＢＳ古典組である、リオやシアなどと「ほぼ同期」のキャラになっている。
エピソードの中では初々しさを漂わせているジンであるが（メンタル的には中学生くらいだ）、
アクエリアスのメタロイドとしては、ジンもまた広義の“古参組”なのである。 |
|
|
