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★ＣＲＹＳＩＳ ＵＮＤＥＲＷＯＲＬＤ 統合ナンバー：EX-ATT18501R（ASG21201R） |
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2012年の12月中旬に、その計画は実行に移された。
鉱物娘温泉旅行プロジェクト。
秘密結社メドゥアスとの抗争に実質的なケリが付き、100人近い秘密結社の被害者、
すなわち「生きたまま石像化された」メタロイドの女性――俗に“鉱物娘”と言われる“元人間”の少女たちが、
“戦後”の癒しを求めて行き着いた場所の1つが、奥沢観光温泉であった。
これは単なるバカンスではない……人間のように食事でエネルギー補給をしないメタロイドは、
「直接熱を取り込む」ことがエネルギー補給の手段であるため、温泉のような環境は実に理想的なのだ。
同温泉は秘密結社を組織した魔界の技術者メドゥアス・ゼロによって「滅ぼされた」旧奥沢村の“裏手”にあり、
旧奥沢村の出身者が職員をしているため、鉱物娘たちにも理解がある。
更にこの村で「石化された」18人の鉱物娘のうち、レイアとアクアの2人は実際にここで勤務してもいるのだ。
ただし2人と“同型”のオーラは朝陽市の特別福祉センターで“交流係”として勤務しており、
今回の「温泉ツアー」では自ら幹事補佐の役目を買って出た。
今回参加したのは、鉱物娘と呼ばれるメドゥアスの全被害者ではないが、それでも総数30名を越える。
「全員ではない」のは、余りおおっぴらに「外の世界」に出たがらない被害者や、
保護されてまだ余り間がなく、活性化リハビリが十分に進んでいない者も一定数いるためである。
多くの被害者は、人間であった頃の記憶のほとんどを失っているのだが、元人間という自覚はあることから、
自分の姿、つまり「生きた石像」の容姿にコンプレックスを抱えている者も少なくないのだ。
鉱物娘の代表格であるルイですら、時々情緒不安定になって自虐的に振舞うことがあるのである。
人間の精神と石像の肉体をバランス良く使うことは、決して簡単ではないのだ。
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ＣＲＹＳＩＳ ＵＮＤＥＲＷＯＲＬＤ
クライシス・アンダーワールド 狂気の殿堂≪外伝≫
奥沢観光温泉 〜メタロイド・メドゥアス旅行記2012〜
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奥沢観光温泉の駐車場に、2台の観光バスが停車する。
30人余りの鉱物娘と、彼女たちと親交がある“キャリア”たちが、この2台に便乗しているのだ。
キャリア（メタキャリア）とは「石化経験がある人間」を指し、鉱物娘たちの境遇に理解がある“同志”である。
またメタロイドは普通の人間より数倍ほども体重が重いため、念のために2台に分けたというわけである。
小柄なスイでさえ、100kg近い体重があるのだ――全身が無垢の鉱物で出来ているためである。
「はーい、ここが奥沢観光温泉でーす、みんな降りてね〜」
その声と共に、先頭のバスから全身金色の鉱物娘が姿を現した――オーラだ。
鉱物娘たちの物語の“本編”では、この旧奥沢村出身の鉱物娘は、肉声を出すことが出来なかったが、
秘密結社との“決戦”から間もない頃に、自分の声を取り戻すことに成功したのである。
2次的な処理をされた体であるため、それを自分の意識でコントロールする過程で、この能力が復活した。
これはスミレやアンジー、ナイアといったグループと同じ現象であると思われる。
秘密結社が作り出した“実戦型”のメタロイド工作員も、やはり同様に声を出して会話することが可能であった。
更にゾロゾロと色とりどりの鉱物娘が、バスから降りてくる……まるで石材カタログのようにその色彩は多彩だ。
（おー、綺麗な建物〜♪）
（まさかこの体になって、温泉旅行に行けるとか想像してなかったわｗ）
（宿泊も出来るんだってね？）
（今回はあたしたちのために貸切りにしたんだってよ、自治体って意外とおカネあるのね）
（ホジョキンってやつでしょｗ）
彼女たちは肉声で会話することが出来ないため、いわゆる念話――テレパシーで会話する。
2次処理を受けたオーラやスミレたち以外の鉱物娘は、物質的には「1枚岩の単純な石像」であるためだ。
透明度の高いタイプは、後ろの景色が透けて見える……体内に骨も筋肉もないことが分かる。
この体を「念じる」ことで動かすのが、メタロイドの基本的なメカニズムである。
鉱物娘たちの目には「瞳の影がない」ため、視線の方向は分かりにくいが、
キャリアはその意識を感知できるため、誰に向かって語りかけているのかが分かる。
また彼女たちの「心の声」を感じ取れるのもキャリアの特性であり、ある種の“翻訳係”でもあるのだ。
秘密結社がその拠点を置いた朝陽市で起こした複数のテロ事件を経て、
「外の世界」もメタロイドという、ある意味では非常識な“強化人間”が存在することを理解し始めており、
その不運な被害者である鉱物娘に対し、組織的な支援を行う団体も存在するのだ。
“被災自治体”である朝陽市も、今や彼女たちを積極的に支援するため、専用の予算を組んでいる。
「それにしても、オーラさんが声を出せるようになるとはねぇ」
「いちばん驚いたのはあたし自身ですよ、人間の時のあたしの声ってこんなんだったのかな〜？」
オーラの“肉声”は女性的なハイトーンボイスだが、金属を擦るような独特の残響が混じる。
そのオーラに同じく肉声で語りかけたのは、キャリアの1人である海原明美だ。
濃い青緑色の瞳が幻想的な背の高い女性であり、その瞳の色が実は「石化された経験」を反映する。
来年2013年に成人を迎える大学生であり、鉱物娘たちの最大の理解者にして支援者の1人だ。
クラウドファンディングという“今流行りの資金調達法”も彼女は知っている。
「それわかります、あたしも時々不思議な気分になりますもん」
こちらはスミレだ……秘密結社による最後期のメタロイド実験体であり、紫色の光沢のある体表が特徴だ。
特殊なセラミック結晶の体を持ち、目や耳にサファイア色の結晶体を埋め込む“2次強化型”であるため、
スミレも肉声で会話することが可能であり、オーラと似た境遇の持ち主である。
スミレの後ろからも、同じ色相の鉱物娘が1人、歩いてくる……彼女アンジーもやはり“同型”である。
半袖シャツの上からフリース生地のパーカーを羽織り、サファイア色の目を細めて時々寒そうに腕をさする。
「だから上着を着てくれば良いのにって言ったのに……」
「まさかこんなに寒いって思わなかったのよ、暑いのは全然へっちゃらなのになぁ」
奥沢観光温泉の駐車場は、丘陵地から吹き下ろしてくる北風が、遮るものもなく吹き抜けていく立地だ。
寒の入りが本格化する12月を舐めてはいけない……体が慣れていない分、余計に寒く感じる日もある。
メタロイドも寒いのは苦手だ……熱が奪われると動きも鈍ってしまう。
スミレやアンジーの体を構成する特殊セラミックは保温性が高いので、他の鉱物娘よりもマシではあるが。
「そんなんじゃ、ルイさんに笑われるよ――あれ、ルイさんは？」
「あそこｗ」
ふと、“探している人物”の姿が見えないことに気付いたスミレが周囲をキョロキョロと見回すと、
オーラがどこか苦笑いのような表情を浮かべて、簡易な球体関節が付いた金色の手首を斜め後ろに振った。
オーラの指先を目で追うと、温泉施設の入口で手を振る、ルビーのように真っ赤な人影が1つ。
ルイだ……その色に違わず“ルビー属性”の持ち主で、鉱物娘の筆頭格に当たる。
ショートカットの髪も同じ色だが、髪のモールドの分だけ光を反射し、まさに宝石のようにキラキラと輝く。
人懐っこい笑顔を浮かべて手を振る彼女に向かって、既に“同志”が何人か、スミレたちの先を歩いている。
（画像挿入予定orz）
「もうあんな所に……相変わらず機動力高いなぁ」
「案外、ルイさんも寒かったんじゃない？ あたしより薄着だよね」
確かにルイの服装は薄手のパーカーにデニムパンツという「秋物ルック」であり、12月にしてはかなり薄着だ。
彼女の元に歩み寄ってくる鉱物娘たちが、多かれ少なかれ「冬仕立て」であることを考えると、なおさら浮く。
スミレ自身、首がすっぽり隠れるような暖かそうなタートルネックのセーターを着ている。
（いや〜、きっとアレは寒いと思いますよｗ）
（私たちも、もう1枚羽織った方が良いって言ったんですけどね）
スミレの後ろから、エメラルド風味とサファイア風味の2人の鉱物娘が「心の声」を投げかける……エミとサラだ。
ルイに次いで初期に“活性化処理”された鉱物娘で、メドゥアス絡みの鉱物娘では“古株”である。
エミは小柄な体格に合わせたジャンパー姿だが、サラは長身に合わせてシックなコート姿だ。
「サラさんめっちゃクール……どこでそんなファッション見つけたのｗ」
（ネットでファッションサイト見ていたら、暖かそうだから購入ボタンを押したんですよ）
明美の言葉に、サラは大人しい笑みを浮かべて音のない返答を返した。
その振舞いこそ大人しいが、責任感が強くて面倒見が良く、母性的な雰囲気に惹かれる同志は多い。
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（結構広いね……何だか懐かしい気がするけど、人間だった頃に来たことがあるのかな）
脱衣所に向かう温泉施設の階段を、ショートカット風味の灰色の鉱物娘がゆっくりと上っていく。
ラグだ……オーラと同様に旧奥沢村の出身であり、同村の18人の“生存者”の1人であるが、
実は“元男子”であり、石化こそ3年近く前だが、保護されて活性化されたのはつい最近のことである。
まだ全体にゆっくりした動きであり、歩みが遅く見えるのも「その速度でしか歩けない」ためだ。
因みに丘陵地にあるこの温泉施設のメイン浴場は玄関ロビーから見て“中２階”に作られているため、
10段ほどの階段を上がった先に続く廊下の突き当たりに、脱衣所が作られているのである。
いちおうバリアフリー仕様のため別にスロープもあるのだが、ほとんどの鉱物娘が階段の方を上る。
これも“活性化訓練”の一環だからだ……彼女らの多くも「もっと自由に動きたい」のだ。
（あ、ボクもちょっと懐かしい雰囲気を感じてたんですよ、やっぱり来たことがあるのかな）
ラグのすぐ前を、こちらはアクアマリンに似た透明感のあるライム色の鉱物娘が歩く。
髪型はラグに似て短いが、ラグよりコンパクトな体形ながらスタイルが良い……カオルである。
こちらも元男子であり、やや中性的なキャラクターだが、責任感が強くほぼ常に前向きに振舞う。
もっともカオルも活性化されて間もない頃は、自身の境遇に動揺して情緒不安定だった。
（俺はそんな記憶持ってないねぇ、中高生で温泉好きとか、なんかおっさんみたいだなｗ）
ラグに合わせてゆっくり歩くもう1人の鉱物娘がユウだ……こちらはアメジストに似た質感である。
ユウもやはり元男子であり、こちらは髪が長く、グラマラスな体形の持ち主であるが、
人格面ではこの中で最も男性的であり、活性化が早く進んでいるため実は結構動きが速い1人なのだ。
今はラグに合わせているだけで、必要なら「駆け回る」ことも出来る。
岩石の体を持つ鉱物娘で「走り回る」というのは「かなり凄い」ことである。
自分の意思で動けるとはいっても、体質上どうしても制約があるのがメタロイドの“常識”だからだ。
（確かにユウ君が温泉でくつろいでる絵は思いつかないね、カオル君は元々大人しいからねぇ）
カオルと並んで歩く山吹色の鉱物娘が笑って反応する……彼女ミキは元々少女だが、
“元男子”カオルの幼馴染みであったことが分かっており、カオルも記憶が戻ったためによく連れ歩いている。
多くの鉱物娘が人間時代の記憶を失っているが、この1〜2ヶ月ほどの間に徐々に思い出しており、
ミキやエミはほぼ元通りの記憶が復元されているため、結構“土地勘”があったりもするのだ。
エミに至っては親が理解者であり、今は実家で生活しているのである……そういうケースはさすがに珍しく、
家族の記憶まで戻っていても、まだ「再会の場」まで踏み切られていない方が多い。
人間時代の家族も「石像化した元娘や元息子」を今まで通りに受け入れる保障はないからである。
これは年が明けて2013年になっても、時間をかけて解決していくべきテーマだろう。
（温泉が気持ち良いってのは、別に年齢を問わないと思うんだけどな……）
戸惑うような表情でそう「言った」カオルが、「男湯」と書かれた暖簾を潜ろうとした時。
（ちょっとどこ行くのよカオル君、こっちだってば）
ミキがくいくい、とカオルの腕を引いた……再びカオルのアクアマリン色の表情が戸惑いに満ちる。
（いや、「女湯」はさすがに……）
体形的に「女体化」しているが、メンタルは今もいちおう男子のままであるため、
カオルもユウも、もちろんラグも、実は今も「女子と一緒に入浴する」ことはどこか避けるクセがある。
ミキなど元々女子である方は「気にしていない」ことが多いのだが。
（そっちじゃないってば、ほらほらアレ）
「女湯」の暖簾に戸惑うカオルの横で、ミキは更に廊下の奥を指差した。
そこには「混浴」と書かれた暖簾が下がっており、先に到着したオーラが上着を脱いで手を振っている。
「はーいみんな、こっちだよ〜 ほらほら元男子、キミたちも早くこっちに来る！」
（こ、混浴……）
（おぅ……お約束のパターンかなこれ）
ユウがアメジスト色の顔に苦笑いを浮かべた。
「今日はあたしらの貸切りだからね、男湯も女湯も同じように使うことが出来るよ」
（あれ――そうなんスか）
「でも最初のグループはこっちに来なさい、後でメンバー交代するから」
さすがに30人を越える“大所帯”を1つの入浴施設に集約するのは、混雑が過ぎるということらしい。
男湯・女湯・混浴と3つある入浴施設に分散しつつ、時々メンバーを入れ替えたり、
思い思いに“出張”したりして、「裸の付き合い」を深めるという計画になっているようである。
（どうやら……逃げ場はなさそうだね）
今度はラグが、灰色の顔に苦笑いを浮かべた。
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（おぉ――結構広いじゃんｗ）
混浴を想定した最奥部の大浴場は、半分露天風呂のような開放感のある設備となっている。
湯船こそプールのような形だが、空が抜けているためだ。
男湯や女湯も同じ構造らしい……雨の時は雨粒が湯船や洗い場に入り込むことになるが、
ここに来る利用者は「既に濡れている」ため、余り関係ないのだ……もちろん本降りは論外だが。
いちおう雨天でも使えるように、屋根の裾からアコーデオン・シェードが出るようになっている。
真っ先に洗い場に踏み込んだルイの後ろから、大理石のような質感のツインテールの鉱物娘が入る。
（翔子さん……大丈夫？）
（うん、大丈夫……この形態でお風呂に入るの、初めてだから新鮮だなｗ）
この“大理石娘”の正体は石塚翔子だ。
厳密にはメタロイドではなくキャリアであり、普段は人間の高校生であるが、
非常時には「擬似的なメタロイドに変身する」能力を持つ……これは多くのキャリアに共通する。
ルイとは「長い付き合い」であり、盟友と言えるポジションに立っている。
ただし余り頻繁に変身しても、体質が変わるリスクがあるため「推奨ではない」のだが、
今回の温泉ツアーは「疑似メタロイド形態で入浴してみる実験」を行う計画にもなっているのである。
翔子の後ろから、ルイに質感が似た真っ赤な鉱物娘と、全身金色の鉱物娘が入ってくる。
前者は浅田楓、後者は日ノ本春海……この2人もキャリアである。
（あたしはいっぺん試したことあるよ石塚さん、ちょっと面白い体験だったかもｗ）
（浅田先輩……能力の使いすぎは良くないんじゃなかったんです？）
（わ、分かってるよ春海ちゃん……まだその注意をされる前の話だからさ、勘弁して）
“疑似メタロイド形態”を取っている間は、キャリアもメタロイドと互換する体質を持つことから、
その体は石像並みに強靱になるが、その反面「肉声で会話する能力が失われる」という特徴がある。
実は今回の“実験”、翔子も楓も春海も、疑似メタロイド形態自体は過去に経験があるが、
そういう能力を使ったことがないキャリアもいるため、その感覚を体験してもらうという意図もある。
（おぉ春海ちゃん、今日はいちだんと綺麗だねぇｗ）
（こ、コナさん、からかわないでくださいよ）
春海の後ろから、引き続き全身金色の鉱物娘が洗い場に入る……こちらはメタロイドのコナだ。
サラ以上に長身であることに加えて金を含有する体のため、実は鉱物娘で“最重量級”でもあるが、
本人はそれを気にする性格ではなく、むしろポジティブに活用している。
腰を落として踏ん張れば、大の大人数人でも彼女を動かすのは簡単ではない。
（画像挿入予定orz）
（うーん……これは新鮮な気分だね博美）
（そうねぇ……使いすぎは良くないらしいから、気をつけないとダメだけどね）
コナの後ろから、こちらはシルバーを思わせる“2人組”が入ってきた……岩根雪子と天野博美である。
やはり2人もキャリアであるが、疑似メタロイド形態を取るのは実は今回が初めてだ。
秘密結社が強行した工作事件で石化された経験があるが、その時はショックで意識が止まっていたため、
「意識を残したまま体を石化させる」という状態は、今回初めて体験することになるのである。
（でもこれ……本当に元に戻れるのかな？）
（不安なこと言わないでよ博美……石塚さんたちが経験してるし、大丈夫じゃない？）
翔子は髪留めを外さずに変身しているため、髪留めの飾りになっている石だけ色が変わっていない。
因みに服を着た状態で変身すると、服もその能力の影響を受けて材質が変化してしまい、
体に貼り付いて「脱げなくなってしまう」ため、今回は脱衣してから能力解放している。
そのため「服を着ていない素体で変身する」というのは、実は翔子にとっても初めての体験なのだ。
（思ったより違和感が少ないのね……服着て変身した時は、今よりも違和感が強かったな）
（服まで変化して体に貼り付いちゃうもんねぇ）
そんなことを翔子が楓と言い合っていると、少し間が空いて再び脱衣所の引き戸が開いた。
アクアマリンを思わせるグラマーな鉱物娘が、戸惑うような表情で入ってくる……しかしカオルではない。
（おぉ……変身したらこういう感覚になるんだね）
彼女は明美だ……例に漏れずキャリアであり、さっきオーラと言葉を交わしていた“大学生”である。
こちらも疑似メタロイド形態を解放するのは今回が初めてらしい。
（石化された時の感覚も少し覚えてるけど……また違う感じかも知れないな）
（自分の意思で動けるからじゃないですかね、明美さん……あたしも雪子も、そうなんですよ）
そう言う“シルバー娘”博美に、目に瞳の影がないアクアマリン色の顔で苦笑いを返す明美。
博美も雪子も、普段の顔を知っているが、今は全く違うキャラと向かい合っているように感じてしまう。
まるで「みんな一緒に記憶を残して生まれ変わった」ような気分なのだ。
（浅田さんが変身能力にハマっちゃったのも……ちょっと分かる気がするな）
（でしょ〜ｗ）
明美のつぶやきに、先に洗い場に入っていた楓がちょっと“ドヤ顔”を浮かべて振り向いた。
彼女は変身能力をポジティブに捉えているため、実はキャリアの中で最も変身経験が多いのだ。
それゆえに「リスクを警告された」こともあり、今は必要性があるかを慎重に判断している。
リスクとは変身経験の蓄積で、普段の肉体がその変化を“恒久化”させてしまうという可能性である。
便利な能力だからと多用していたら、最悪「人間に戻れなくなってしまう」可能性があるのだ。
そうでなくても楓は「赤い瞳と赤毛の髪」に既に変わっており、人間の時もちょっと風貌が浮いている。
そのため変身解除後、最近は「容姿の変化をチェックする」クセが付いているらしい。
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それから――2時間ほどが経過した。
「あれぇ〜なんかのぼせたかな、熱くなってきちゃったよ」
湯船の端で、ストレッチをするような姿勢でそう呟いたのはアンジーである。
駐車場にいる時は寒そうな顔をしていたのに、今は逆に熱いと感じているらしい。
確かにアンジーの体は他の鉱物娘よりも保温性が高いので、比較的暖まりやすくはあるのだ。
また鉱物娘の体質に合わせて、今回は湯温が高めに設定されているのも1因だろう。
熱を直接取り込んでエネルギー補給することに加えて、熱湯で火傷する心配もないからである。
（へぇ〜、鉱物娘でものぼせるってことがあるんだね……まぁ確かにお湯が熱めだもんな）
アンジーの隣で関心を示す、ターコイズ（トルコ石）に似たコバルトブルーの鉱物娘……ルミだ。
秘密結社では後期のナンバーであり、わずかの差で「人間に戻れる術を失った」不運な境遇を持つ。
石化されても2〜3ヶ月なら、元の人間に復元することが可能なのだが、
それを過ぎると「人間だった時の肉体情報が失われてしまう」ため、元に戻れなくなるという特徴がある。
（ＴＢＬ報告書で書かれている“第６段階”に相当する、石化体が安定化する最終的な状態だ）
この“境界線”にいたのがルミと春海であり、ルミは人間に戻ることが出来なかったが、
春海は瞳が金色のままで残るという“後遺症”こそあるが、人間に戻ることが可能であった。
当初ルミはその境遇にショックを受けて塞ぎ込むこともあったが、今は克服してアクティブに行動している。
ギリギリの差で人間に復元できなかったルミだが、断片的な「人体感覚」が残っているらしく、
特に皮膚感覚はかなり鋭敏だ……メタロイドも基本的に触覚を持っているが、
全身が無垢の鉱物や金属に変わることで、皮膚感覚が変わってしまうことが多いのである。
慣れるとそれに違和感を感じなくなるが、疑似メタロイド形態を取れるキャリアなどはその変化が分かる。
やはり「ガラス繊維のグローブを嵌める」ような違和感があるらしい。
ルミはターコイズそっくりの体を持ちながら、皮膚感覚は限りなく人間に近いのである。
「単に入りすぎじゃないかな……だってあたしはそんなに気にならないもん」
アンジーの隣でスミレがさらっとツッコミを入れた……ルミは思わず青い顔に苦笑いを浮かべる。
（そーいやあたしらがいっぺん休憩で“メンバー交代”した時も入ってたっけｗ）
（２時間入りっ放しじゃなかったっけ、アンジーさん……そりゃあ、いくら鉱物娘でものぼせるよ）
湯船の中央付近に、やや大柄なセピア色の鉱物娘がいる……サヤだ。
属性は“ブラックオパール”であり、実は結構透明度が高いのだが、黒っぽいため余り目立たない。
彼女もルミと同じく後期の変異体であり、人間時代の記憶を残している1人だ。
（あたしが、1度上がった時、にも、まだアンジーさん、入ってた……）
ルミの横にいた、真鍮色のメタリックな鉱物娘が、たどたどしい言葉で反応する……これはシノだ。
活性化時の“障害”により、シノはスムーズに言葉を紡ぐことが難しく、失語症に似た症状を持っている。
そのため言葉尻だけを追うと感情の抑揚が少なく感じるが、実際には感情豊かである。
シノの“証言”を聞いて、再びルミやサヤが“ジト目”になった……アンジーは少し不満そうな表情である。
もっとも呼吸をしない体であるため「膨れっ面」というのはないのだが。
ただ活性化前後の“苦労”を知る関係であるため、お互いに弄り合うことはあっても対立はまずしない。
そんな湯船の鉱物娘コミュニケーションの後ろにも“物語”があった。
休憩室にいた鉱物娘たちが、“2度目”の入浴のため再び洗い場に入ってきたためである。
２時間経っているため、１度は上がったのだが、貸切りのためもう１度湯を浴びに来たわけだ。
……この間「湯船に浸かりっ放し」だったアンジーがのぼせるのは、仕方ないと言えば仕方ない。
（エミさーん、また来たよ〜♪）
脱衣所の引き戸を開けて、草色の小柄な鉱物娘が、ぱたぱたと――いやカチャカチャと駆けてくる。
スイである……ヒスイの属性を持ち、鉱物娘の中でも“最年少”だが、動きは非常にアクティブだ。
（ちょっスイちゃん、走ったらダメだよ、危ないから！）
しかしここは風呂場である……年齢相応に天真爛漫な性格だが、気をつけて頂きたいものだ。
エミは思わず狼狽する表情を浮かべた……更にスイの後ろでももう1人、緑色の鉱物娘が表情を変える。
こちらはマリである……長身ではないがグラマラスな体形であり、マラカイトの属性を持っている。
（スイちゃん、風呂場で走ったら危ないよ、鉱物娘も転倒したら痛いから！）
「生きた石像」である鉱物娘――メタロイドは、基本的にはとても頑丈な体を持っているが、
どんな打撃も効かないというわけでは決してない……衝撃を受ければ「痛いものは痛い」のである。
全身が無垢の石材や金属に「均質化されている」ため、応力を常に全身で受け止める特性があり、
強い衝撃を受ければ、簡単に損傷はしないが「全身に痛みが走る」特徴があるのだ。
転倒した場合「打撲した患部が痛い」のではなく、メタロイドは常に「全身が痛む」宿命なのである。
そして案の定――スイは磨き上げられたタイルの上で、つるっとバランスを崩した。
（あっ――！？）
（うわぁ――やっちゃった！？）
しかし倒れ込むヒスイ色の少女の足下に、真っ赤な鉱物娘がスライディングした――ルイである。
お互いに「石像同士」であるにも関わらず、柔らかく掬い上げるようにスイを受け止める。
思わず周囲は――ぽかんとした表情で固まった。
（大丈夫スイちゃん、走ったら危ないよ？）
（あ……うん、ごめん……なさい）
（ルイさん、今の何……ちょっと凄いんだけど）
（鉱物娘の動きじゃ、なかったよね……）
鉱物娘の中で「最も経験値が多い」ベテランなのは、伊達ではないということか。
気付けば湯船にいた面々も、ルイのスーパーファインセーブを呆気に取られて眺めていた。
湯の熱さに当てられていたアンジーも、その動きに見とれている。
「おぉう……今ちょっと、凄いアクション見ちゃった」
（やっぱりルイさんは次元が違うよね……あんな動き、あたしら普通想像出来ないもん）
（えっ……どしたのみんな、あたし何かした？）
したことはした、ルイ本人にその「自覚はない」ようであるが、だから「凄い」とも言えるだろう。
因みにここは“男湯”である……先にも書いた通り、今日は貸切りだから何の問題もない。
入れ替わり立ち替わり、どこの湯でも楽しめるのだ……のぼせない限りは。
……つまりアンジーは混浴側ではなく、最初から興味本位で男湯の方に入っていたことになるｗ
スミレと同型に当たるこの紫色の鉱物娘は、実に好奇心旺盛なのだ。
……あぁそうそう、そんなアンジーにシノも付き合っていたことになる（彼女は１度上がったが）
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そしてこちらは“女湯”――こちらもまた、普段は入らない者たちが入浴していた。
（見た感じは……普通の温泉だよね）
（そりゃあ、男湯と女湯でそんなに違いはないだろ、風呂なんだからｗ）
（普通の民家だったら、確かに違いはないよね）
カオルやユウ、ラグといった“元男子”の鉱物娘が、今は女湯をほぼ独占している。
彼らも見た目は「石像の少女」なのだが、メンタルはまだほぼ、男子のままなのである。
（ヒカルさんスタイル良いな〜♪）
「あ……ど、どうも」
ただし「ほぼ」と書いたように例外もいる……ミキなどが幼馴染みのカオルと共に入浴中だからだ。
その隣にいるのはヒカルである……スミレやアンジーと“同型”だが、彼も元男子だ。
そのためか、一糸まとわぬ姿でアプローチしてくる、トパーズ色の少女に少し戸惑っている。
自分自身も、グラビアモデルのように目を見張るプロポーションなのだが、最近慣れてきたらしい。
ヒカルは今ここにいる面々ではほぼ唯一、肉声で会話できるキャラなので、声がよく響く。
（ミキさん遠慮ないねぇｗ）
（まぁ……確かに見た目は、ボクらも女子だからね）
（画像挿入予定orz）
湯船にはラグの他にも2人、砂岩風味の2人組が入っている……ミグとティグである。
２人もラグと同様に旧奥沢村出身の元男子で、石化された18人に含まれている。
ミグはショートカット風だが、ティグは長髪だ……石化後に改めて“整形”されたようである。
気が強いがグラマラス、というティグの容姿はどこかユウに似ている。
その時――突然湯面が盛り上がり、クリスタル属性の鉱物娘が2人の前に現れた。
（――ひゃぁっ！？ えっ誰だ！？）
（え、えっと……確か瞳さん、でしたっけ？）
（おーよく覚えてるねぇミグ君、誰もいないと思ってたでしょｗ）
無色透明――厳密には反射光があるが――のクリスタル属性を持つ滝川瞳である。
彼女もキャリアであり、翔子や楓と同じように、今は疑似メタロイド形態に変身している。
湯船の中に隠れて、ミグたちを待ち構えていたらしい……彼女はこういうサプライズが好きだ。
メタロイドは呼吸をする必要がないため、必要なら何時間でも潜っていられる。
瞳は純粋なメタロイドではないが、変身状態の時はメタロイドに準じた体質になるのだ。
（いったい、いつから潜ってたんですか……）
（そんなに経ってないよ、10分くらいかな……でも人間だったら死んでたわねｗ）
「……笑顔で言うセリフですかね、それ」
「さぁ今だけは幹事しないよ、みんなお待たせ〜♪」
そこにガラガラと引き戸を開けて、こちらも一糸まとわぬオーラが入ってきた。
こちらも２次処理によって、マネキン人形のような球体関節を持っているため独特の外見だ。
最近肉声で会話できるようになって、元々開放的な性格が更にオープンになった。
（いや別に待ってないッス）
（ユウ、そんな言い方しちゃダメだって）
更にその後ろから、オーラと同型のレイアとアクアも姿を見せた。
２人はこの温泉で職員として働いてもいるが、今回はフリー参加を認められている。
「お邪魔しま〜す、おーカラフルｗ」
「元男子とは思えないよねぇ……あ、ミキさんと瞳さんは違うけど」
そしてこの２人にも肉声会話能力が復活した……温泉にはキャリアの職人もいるため、
念話による交流も可能だが、やはり直接「喋れる」方がコミュニケーションのハードルは低い。
（ほんと逃げ場がないなぁ……）
（まぁ、覚悟はしてたけどね）
「今となっては、確かにみんな“同志”ですしね」
“元男子”の６人は揃って苦笑した。
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その日の夜、施設最奥部の混浴場にて。
「――あ、昼ほど熱くないね」
“人肌”に戻って湯を浴びるのは翔子だ……後ろには同じく元の姿に戻ったキャリアの面々。
ずっと疑似メタロイド形態でいるのも不安なので、夜は元に戻ることにしたのだ。
これは彼女たちの能力を訓練した、今はいない“支援者”の推奨でもある。
「わざわざ、あたしらのために温くしてくれたのかな？」
「むしろ、昼間の方が熱めにしてたんですって、エミちゃんとかそっちの方が気持ち良いからって」
翔子に続いて春海、瞳、楓、博美、雪子、そして明美がぞろぞろと洗い場に入ってくる。
鉱物娘の「裸の付き合い」から数時間経過して、今度はキャリア同士の「人肌の付き合い」だ。
因みに今回は、翔子も髪留めを取っているため、髪型が普段と違う。
（画像挿入予定orz）
「坂本さんも来れば良かったのに」
「眞希は変身能力まではないからね、仕方ないんじゃないかな」
「滝川さん、モデルみたいですね〜羨ましいｗ」
「あはは、ありがとう博美ちゃん、キミも十分キレイだよ、健史君良いなぁこんなお姉ちゃんがいてｗ」
瞳の言葉に、博美は恥ずかしそうに笑い、隣で雪子がニヨニヨしている。
その横で、こちらは楓と春海が背中を流しっこしている。
「浅田先輩、またちょっと髪が赤くなってません？」
「き、気の所為だよ……最近、気をつけてるはずだから……脅かさないでよ春海ちゃん」
「え〜大丈夫かなぁ、ホントにちゃんとしてる？」
「あ、明美さんっ＞＜」
楓の横に腰掛けて体を洗い始めた明美に、楓は頬を赤らめて焦るような表情を見せる。
その後ろで春海は舌をペロっと出して笑う……どうやら確信犯で弄ったらしい。
実はその春海も他のキャリアに比べて、やや黄色っぽい肌色である……髪もやや脱色している。
目立つほどではないが、彼女も過去に１ヶ月ほど“黄金像状態”だったことがあるからだ。
「あ、明美さんもお背中流しますよｗ」
「何言ってるの春海ちゃん、今度はこっちが流す番よ、ほら背中出してｗ」
その時――脱衣所の引き戸が再び開いた……予想してなかった展開に、少女たちが驚く。
（やっほ〜翔子さん、あたしらも来ちゃったよｗ）
「る、ルイさん！？」
ルイ、エミ、サラの鉱物娘トリオが、「人肌の付き合い」に飛び入り参加したのである。
朝陽市の事件が起きて間もない頃に活性化された3人は、とりわけ翔子たちと縁深い。
「エミちゃん、これは昼の“お風呂会”とは違うけど……」
（分かってるよ春海ちゃん、でもこっちが本当の意味で「裸の付き合い」になるんじゃない？）
「言われてみればそうね……でもお湯が少し温いかもよ？」
（それは承知の上ですよ瞳さん、ルイさんの提案で、夜の会にも参加しようって）
そう言って、サラがサファイア色の顔に優しい笑みを浮かべる。
（まぁ、翔子さんたちに協力してもらったんだから、今度はあたしらが協力しなきゃでしょ？）
「湯冷めしても知らないよ？」
（そんなに冷たくないでしょ翔子さんｗ 初冬だから、それなりに湯温高いはずｗ）
「まぁ確かに、アンジーさんみたいに長湯は出来ないよね、この湯温だと」
「新しい武勇伝になったわね彼女も……今頃くしゃみしてるかな？」
「明美さん、あの子たち呼吸しない体だから、くしゃみもしないんじゃないです？」
「あ、そっか、確かに」
……数週間前なら、この手の話は、彼女たちも忖度して控えたかも知れない。
別に差別的な意味合いはないが、“元被害者”にはどうしても遠慮してしまうからだ。
けれども「鉱物娘のいる日常」が２〜３ヶ月ほどにも及べば、慣れても来るものである。
湯船で翔子と隣り合ったルイが、ふとまじまじと翔子を見つめた。
ルイの真っ赤な目には他の鉱物娘と同様瞳の影がないが、翔子にはその視線が分かる。
「……どしたの？」
（そーいや、翔子さんが髪を下ろしてるところ、初めて見たかも？）
「そうよね、よくあたしだと気付いたなルイさんもｗ」
（すぐ分かったよ、雰囲気がね、あぁこの人だな翔子さんはってｗ）
「あぁ分かる気がする、なんか空気あるよねｗ」
「……そんなもんかなぁ」
隣で話を合わせる瞳に、翔子は思わず苦笑いをした。
空には満天の星空が拡がり、湯煙が北風に吹かれてまるで雲のように流れていく。
アンジーを悩ませた初冬の北風だが、この大浴場は壁に囲まれるため吹き込んでは来ない。
脱衣所の引き戸を開けると風の通り道が出来るので、瞬間的にヒヤッとはするのだが。
ウワサのアンジーは今頃、休憩室に並べた布団の上で他の同志と語らっていることだろう。
「そういえば、ルイさんとか、ウワサされた時にどうなるの？」
（どうだろ……今ウワサされたって分からないし……あぁでも、なんかくすぐったいことはあるかな？
ほら、エミちゃんがよく頭を掻いたりするじゃない）
（言われてみれば……痒いわけでもないのに、頭に手が行く時がありますね）
「あれ可愛いリアクションですよね〜♪」
（春海ちゃんに言われても実感湧かないなｗ）
そう言って、エミはおもむろに春海の小ぶりな胸を、エメラルド色の指で「ぷにっ」と突いた。
元幼馴染みの“奇襲攻撃”に、春海の顔が真っ赤になる。
「――ちょっ、エミちゃん！？」
（確かに可愛いリアクションだよねぇｗ）
いたずらっ子のような表情で、エミが笑う……そして周囲は思わず苦笑した。
（……エミちゃんやるなぁ）
「あの子が１番、適応してるのかも知れないね……」
こうして鉱物娘とキャリアの濃密な夜（爆）は少しずつ、更けていった……。
因みにルイたちやスミレが「世界を越える」経験をするのは、これから半月後のことである――
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【Meking Memo／設定補記】
2023年に作成した、シークレット・コンテンツ向けのショートストーリーである。
ＡＳＧシリーズの“後日譚”に当たる物語であり、鉱物娘たちの“温泉旅行”を扱っている。
鉱物娘は秘密結社の非合法実験で「生きたまま石化された」元人間の被害者たちであり、
当初はその非常識な容姿から、人目を避けて活動することが多かったが、
ＡＳＧ本編クライマックスの“大事件”で「外の世界」に限定的に解放された形になっており、
それを前提に「温泉旅館を貸切りで利用する」という話を仕上げたものである。
ぶっちゃけ、G-maが「裸の鉱物娘の集合画を描きたい」という衝動の延長線だが（爆砕）
本編にはない“新設定”として、オーラ、レイア、アクアの3人に新たに肉声会話能力を与えた。
彼女たちも“2次強化型”に当たるため、スミレたちの能力があっても違和感なかったためだ。
更に具体化はさせていないが、エミやミキ以外にも「記憶を取り戻した」鉱物娘が複数おり、
その情報の使い方（エミのように家族と再会させるべきかというテーマを含む）について、
支援機関が対策を議論している最中というイメージも入っている。
因みにこの時点では、「異世界の協力者」であるパドルとライカは既にＡＳＧ世界を離れ、
ＡＳＧ世界（直接的には“被災地”である朝陽市）の関係者に管理を委任しており、
本編の最終章で書いた「鉱物娘支援施設」も既に稼働しているという前提になっている。
ＰＡ関連エピソードとして執筆したテキストにもこの施設が登場しているが、
今回は「2012年の大晦日」であるＰＡ関連エピソードより半月ほど前の12月中旬にした。
そのため彼女たちはまだ、ＰＡでの「異世界経験」をする前となっている。
奥沢観光温泉が男湯・女湯・混浴の３施設を持つのは、30人を越える団体で訪れると、
複数の設備を使うことになるだろう、という考証から生まれた設定でもある。
因みに貸切りにしているのは、鉱物娘を主役にしたエピソードにしたかったためで、
この時点では鉱物娘たちも間接的に外の社会にその存在が認知されていることから、
意図的に人目を逸らす目的があったわけではないということを補記しておく。
旧奥沢村出身のレイアやアクアを温泉施設の職員にしたのも、こうした背景からである。
最後の「夜の裸の付き合い（性的な意味はない）」はオマケであり、
「昼のお風呂会」ではキャリアである翔子たちにも疑似メタロイド形態を取らせたが、
ずっとそのままにしておくのも変化がない上、設定上その能力の乱用にはリスクもあるため、
「夜は人肌に戻って羽を伸ばしたが、想定外の鉱物娘乱入になった」展開にしてある。
エミに言わせたように、本来はこれが「自然な状態での裸の付き合い」であり、
翔子たちと縁深い“鉱物娘初期トリオ”と、翔子たちの絆の深さを強調する狙いもあった。
……性的な展開を期待するアダルト諸氏には物足りないだろうが、ご了承願いたい（低頭）
因みにキャリア各自の肌色は、普通の人間から外れない範囲内で個々に調整しているが、
そこに実は彼女らの疑似メタロイド形態時の“属性”を反映させていたりする。
とりわけ分かりやすいのは春海と楓であり、春海はゴールド属性なのでやや肌が黄色っぽく、
楓はガーネット属性なのでやや肌が赤っぽくなっている（人の色から外れてしまうほどではない）
その他も、シルバー属性を持つ博美と雪子は、白っぽい肌になっていたりするのだ（笑） |
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