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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CSGM-AVNG2） |
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世界平和監視組織“シールド”。
それは国家を超えて世界の危機に目を光らせる超科学防衛隊である。
世界各地に存在する常人を超えた異能を秘める“スーパーヒーロー”たちと接触し、
有事にはスーパーパワーの特戦隊“アベンジャーズ”を編成し、バックアップする組織としても機能する。
過去に“異世界からの干渉”も経験しているため、手練の実力者を数多く擁する。
シールドの本部は、空飛ぶ空母とも言うべき巨大飛行基地“ヘリキャリア”にある。
（有事の本部基地であり、通常時は別に地上本部を使うようである）
直径100ｍはあろうかという４基の巨大ローターを持ち、風景に溶け込む“光学擬装”が可能だ。
実のところローターだけではこの巨体を浮かせることは難しいが、補助的な重力制御機能を有しており、
斥力効果を持つ高強度貴金属を核にしたヴィプラニウム反応路を効果的に活用している。
その“移動要塞”のブリッジのほぼ中央部に、円卓の会議室がある。
今回――シールド長官であるニック・フューリーが“召集”したのは、まさに“アベンジャーズ”の顔ぶれ。
大企業の会長で天才的な発明家であり、強化服戦士“アイアンマン”の異名を持つトニー・スターク。
過去の実験で緑色の巨人“ハルク”の能力を獲得した、孤高の物理学者ブルース・バナー。
宇宙人の戦士種族とのハーフであり、強大な宇宙エネルギーを操る“神力”の女戦士キャロル・ダンバース。
ニックが今再び“伝説の勇者たち”を召集したのは、まさに「新たな危機が予見される」ためであった。
時空を越えてこの世界を訪れ、警告を発する青年――高山我夢の提言によって。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 序章 第１部 ★
アベンジャーズ外伝――時空を越えた光の巨人
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“異世界の日本人”を名乗る我夢は、20代半ばの柔和な青年だが、天才的な物理学者の頭脳と資格を持ち、
自ら時空を越えるマシーン“ディスカヴァリー”を開発し、世界を越えてここにやってきた。
彼を突き動かしたのは、見たことのない異世界の有志たちが一堂に会する“不思議な夢”であったという。
そして――過去の戦いで瀕死の重傷を負い、２年の昏睡から目覚めたトニーもまた、よく似た夢を見ていた。
「別々の世界の住人が、似たような夢を見るなんて……そんなことが起きるんだな」
「常識的には荒唐無稽に思えてしまう話だが……笑い飛ばせないのも確かだ」
「そう――これまで……僕らが歩んできた道を考えればな」
苦笑いを浮かべてトニーがそう言った。
アベンジャーズが過去数年の間に経験した、激動という以外に言葉が見つからない様々な事件を考えれば、
どんなに荒唐無稽に思える話を聞いても「あり得ない」などと突き放せるわけがなかったのだ。
そんな有志たちの反応を確かめながら、更に我夢は言葉を続ける。
「自分に夢を見せた“メッセンジャー”が語ったように、もし本当に地球に複数の異次元世界があり、
その様々な世界を連鎖的に巻き込むような危機が置きつつあるとすれば、重大な問題です」
我夢は夢の中で“隣り合う世界は１つだけではない”という謎の言葉を聞いていた。
実際に彼自身、過去に異なる別世界に飛んだ経験があり、今回でまさしく「２つ目」なのである。
宇宙物理学の世界でも、仮説レベルだが“ブレーン宇宙論”なる概念が存在する。
ミルフィーユを重ねるように「別々の時空が隣り合っている」という考え方は既にあるのだ。
（著者注：この仮説は実際に存在し、重力がその並行宇宙をつないでいるという説も唱えられています）
「だから君は“世界を越えた”わけか、その意味を調べるために」
「無謀な選択だったかも知れませんが……」
「いや、大した勇気だと思うよ。 普通、異次元の危機を調べるなんて、それが理論的に可能でも、
やろうとまでは中々思わないと思う……しかもそれを、たった１人で実行したんだからな」
ブルースの賞賛を受けて、我夢は照れ笑いを浮かべる。
その横でトニーは記憶を手繰り寄せるように、ある言葉を呟いた。
「……“ソー”を思い出すな」
「ソー、とは？」
首を傾げた我夢に、ニックが説明を付け足す。
「北欧神話の雷神としての伝説を持つ神の戦士だ。 我々とは違う世界に住み、世界の危機に関心を持つ。
昨日話した“数年前の事件”でも、彼が“アベンジャーズ”の１員として参加した」
「まぁ、神と言っても“神話の勇者”としての意味合いが大きいかな……だが中々正義感の強い男だよ。
そう……今さっきタカヤマが話した“ウルトラマン”のようにね」
「北欧神話の雷神……“トール”のことですか？」
「ラテン語読みだとそうなるのかな？ 我々が知る限り最も強い戦士の１人だよ――おっと。
“キャプテン・マーベル”を忘れてはいけなかったな、済まない」
「別に構わないわよ、間違ってはいないのだから」
相変わらず、済ました顔で言うキャロル……彼女はほとんど笑顔を見せないが、
強い責任感を持ち、また宇宙を統べるエネルギーに通じるが故に、相当に達観したところがある。
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「しかしアレだな……仮にその夢の警告が事実だったとしてもだ。 何が起こるか分からんのじゃなぁ」
見通しの効かない空を仰ぐように、“ウィンター・ソルジャー”バッキー・バックスが呟いた。
銀色の義手が目を引くこの男ももちろん、アベンジャーズの１員である。
「正直自分も何が起きるかまでは分かりません……だから調査を始めたのです」
「確かにタカヤマの言う“警告”の実態まではシールドも把握していない。
だがタカヤマの調査を支援することは可能だと考えている……諸君は、それについてどう思う？」
「まぁ……確かにそうだな。それに“あのマシーン”にもちょっと興味がある」
「スタークならそう言うと思ったよ……何しろ時空をワープする歩行メカだ、考えてみたら凄い代物だぞ」
トニーと“アントマン”スコット・ラングが話題にしているのは、我夢が乗ってきたディスカヴァリーのことだ。
我夢と共にヘリキャリアに持ち込まれており、今は他の艦載機と共に格納庫に置かれている。
「私は細かい機械は苦手……しかしガムの心意気には賛同するわ、誰かさんに似てるのがアレだけど」
呟くように言ったのは“スカーレットウィッチ”ワンダ・マキシモフである。
因みにサイキック能力者の彼女が言っている“誰かさん”とはトニーのことだ……天才的な技術力を持ち、
自ら進んで危険を顧みずに新境地に踏み出そうとするところは、確かに良く似ている。
もっとも過去に由来するとある“因縁”のため、ワンダ個人は余りトニーを認めたくないようだが。
「あ……ありがとうございます！」
概ね好意を持って受け入れられたと知って、緊張していた我夢の表情がほころぶ。
裏表の全くない純然たる支援の意思ではないだろう……ディスカヴァリーのテクノロジーへの関心も高い。
昨日今日、出会ったばかりの“異次元人”を全面的に信頼するのも、互いに無防備というものだ。
だがそれを差し引いても、円卓の勇者たちに“新たな関係”が生まれる実感を、我夢はひしひしと感じた。
――その時だった。
『長官、至急ブリッジへお越しください』
シールド副官のマリア・ヒルの声が、会議室に響いた。
前後して、会議室の窓から見える空が、妙に不気味な色を帯び始める。
「うん？……急に雲行きが怪しくなってきたな」
何気なく言ったのは“ファルコン”サム・ウィルソンだったが……トニーは眉を潜めて首を傾げた。
「……おい、妙だぞ、ここは高度１万ｍだろう……こんな雨雲が出来るような高度じゃないはずだ」
「どうした？」
『レーダー機器が強力なエネルギー反応をキャッチしたようです』
マリアの言葉通り、雨雲が出来るには奇妙な高度に誕生した渦状の雲が、パリパリと火花を散らし始めた。
形はハリケーンのようだが、本物のハリケーンよりはずっと小さい。
巨大積乱雲“スーパーセル”を平たく押し潰したように見えなくもないが、それでもこの高度は奇妙だ。
「こりゃあ……またあの“雷神様”のお出ましかな？」
「ソーはあの“宇宙人たち”と一緒に、地球を離れたんじゃなかったのか？」
「何だ、そうなのか？ 僕が意識を失ってからどうなったのか、全部はまだ聞いていないんでね」
「あぁそうか……そう言えばあの時には、トニーは既に昏睡状態だったな。
ソーは“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”と共に地球を離れたんだよ……今はどこにいるのか」
補足を加えたのはブルースである……実は彼は、“アスガルドの雷神”ソーとも深い関係を持っている。
彼が地球に飛来してアベンジャーズに加盟し、宇宙からの脅威に立ち向かい、
またその脅威に敗北して自信を喪失した時には、彼の苦悩を分かち合ってきた経緯があるのだ。
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だが――その“異変”を目にして、最も表情を変えたのは我夢だった。
「まさか……あれは……！」
『高度２万ｍに大きな質量の移動をキャッチしました、こちらに接近しています！』
「大きな質量、だって？」
「隕石でも降って来たってのか！？」
我夢は見る見るうちに血相を変えて、別人のように強い口調でニックに訴えかけた。
「いけない！ 長官、すぐに警戒態勢を取ってください！」
「タカヤマ！？ あの現象に見覚えが！？」
「まだ断定は出来ませんが、非常に良く似ています。しかも大きな質量を捉えているのならなおさらです！」
「分かった……マリア、艦内に警報を、緊急警戒態勢を取れ！」
「おいおい、何が来るというんだ！？」
トニーがそう言った――次の瞬間だった。
“雲の渦”を乱暴に突き破るように、巨大なドラゴンのような物体が姿を現した！
「――何だ、あれは！？」
「マジかよ……どえらく派手なヤツが出てきたな」
ドラゴンのような“モンスター”の全長は、優に100ｍ以上ある。
青黒い手足を生やし、胴体にはメタリックな外骨格をまとい、宝石のような水色の発光体が明滅している。
そしてその背中には、毒々しい模様が描かれた赤黒い翼を、大きく展開させていた。
しかもそのモンスターは、我夢が過去に見た、ある“怪獣”の姿に酷似していた。
「“コッヴ”……！？ いやしかし、そんな……あの翼はいったい！？」
根源的破滅招来体の斥候として、我夢の世界に襲来した“破滅魔獣”コッヴ。
今空から出現したモンスターはまさに、そのコッヴに巨大な翼を生やしたような姿をしている。
またその翼も、我夢が過去に目撃した、ある怪獣の背中に生えていたものだ。
「タカヤマ、どうだ！？」
「長官、すぐに迎撃体制を！ 自分がいた世界を襲った敵と同じ姿をしています！」
「あいつはタカヤマの世界にいたモンスターなのか！？」
「もしかすると、タカヤマのマシーンを追ってきたのかも知れないな……」
「ディスカヴァリーを！？ しかし、破滅招来体は１度撃破されたはずなのですが……」
眉間にしわを寄せて、ヘリキャリアに迫ってくるコッヴを凝視しながら、我夢は呻くように呟いた。
その横で立ち上がったトニーが推測を口にする。
「でも、残党くらい残っていた可能性はあるよな……どう見てもフレンドリーそうには見えないぞありゃ」
キャロルもトニーの推測に言葉を重ね、“ホークアイ”クリント・バートンもニックの横に歩いてきた。
「確かに、強い敵意を感じるわね……それから、どうも自然発生した種族ではないようね」
「それで長官、あのモンスターに勝ち目はあるのですか！？」
「負ければヘリキャリアごと沈められる……そうすれば全員あの世行きだ」
「冗談じゃない……！」
今度はブルースが緑色の顔にしわを寄せて呻いた。
「つまり……我々には勝つという選択肢しかないんだ」
「まったく皮肉だよな……奇襲攻撃を避けてここを選んだってのに、まさかこんなのに狙われるなんて」
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ヘリキャリアにスクランブル警報が発令された。
地上１万ｍに浮かぶ広大な飛行甲板に、多機能艦載機Ｆ３５“ライトニングⅡ”がスタンバイする。
だが――その直後に、ヘリキャリアのクルーは悪夢を見ることになった。
「待て……敵は攻撃態勢に入っているようだ！」
コッヴの口がスパークしていることに気付き、ブリッジは出撃を見送ろうとした。
だが――遅かった。
「待機せよ、攻撃隊は敵の攻撃を避け――」
そこまで言いかけたブリッジのクルーが、次の瞬間絶望に凍りついた。
コッヴの熱線が、今まさに甲板に配置されつつあった飛行隊を直撃する――ニックたちの目の前で。
青白い熱線が飛行甲板を乱暴に引き裂き、
カタパルトにスタンバイしていた２機のＦ３５を、パイロットもろとも吹き飛ばした。
地上１万ｍの飛行甲板に巨大な火柱が立ち上がり、ブリッジの大きなキャノピーを不吉な黒煙が覆う。
しかも被災したのは哀れなパイロットたちだけではない。
「くっ……総員、衝撃に耐え――」
「――うぉおぉっ！！？」
甲板を引き裂いたコッヴの熱線は、艦内にいた全クルーを、衝撃で床に叩き付けるのに十分だった。
ブリッジも直下型地震のような激震に襲われる……フェンスを掴んでいても、引き剥がされるほどに。
熱線が艦底まで貫通しなかったのが不幸中の幸いだったかも知れない。
貫通していたら今頃、ヘリキャリアは薪を割るように真っ２つに裂けていたことだろう。
「あいつ……ビームも撃てるのかよ！？」
「くっ、なんてことだ……！」
対流圏上層部に生まれた戦場で、ヘリキャリアの巨体が黒煙を長く後方にたなびかせる。
コッヴはそのままヘリキャリアの上空を通過すると、奇声を響かせながら大きく旋回していく。
恐らく……第２波の熱線を放つつもりなのだろう。
次の熱線がローターを直撃すれば、確実に１基以上のエンジンが失われる。
それだけならヴィプラニウム反応炉の恩恵で墜落まではしないが、黙って眺めている道理はない。
第２波を撃たせぬようにするには気を逸らすしかない……だが、先ほどの熱線で甲板が機能を失った。
少なくとも、カタパルトから打ち出すタイプの艦載機は、今は使えない。
「まさかあいつ……意図的に甲板を撃ったのか！？」
「そんなに知性があるように見えるか？ さっき金切り声上げて飛んで行ったぞ！」
「強化種族ならあり得るわね……見た目で判断すべきではないわ」
そう言って、キャロルはくるりと踵を返す。
「キャロル、どこへ？」
「これ以上ダメージを積み重ねるわけには行かないでしょ？
私がやつの注意を引き付けるから、出来るだけ早急に体勢を立て直して！」
「……承知した」
そう言って艦橋を出て行くキャロルにサムも続こうとするが、ニックとトニーが引き止める。
「キャプテン、空中戦なら自分も！」
「ダメだウィルソン、君の装備では、ここは高度が高過ぎる！」
「しかし幾ら彼女でも……」
「やめときなってサム、酸欠になったら１万ｍ下まで真っ逆さまだぞ、もっと冷静になれ」
サムは軽く歯軋りの音を立てたが、踏みとどまった。
確かに“ファルコン”は優れた空中戦能力を持つが、超音速のジェット機と張り合えるわけではない。
しかもここは高度１万ｍ……酸素ボンベ必須のエベレストよりも高いのである。
「命は大事にしろ、サム…… ――済まんな」
立ち尽くすサムの肩を、トニーは軽く叩く……その表情を横目に見て、サムは思わずはっとした。
軽い口調で諭すトニーの顔も、苦渋に歪んでいたからだ。
“アイアンマン”のポテンシャルなら、この高高度空中戦にも適応は可能だろう――だが、今は出来ない。
昨日２年の昏睡から目覚めたばかりの“病み上がり”には自殺行為でしかないことを、彼は分かっていた。
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「格納庫で火災が！」
「直ちに消火班を！弾薬に引火したら全てが終わりだ！」
艦内は騒然とした空気に包まれた。
コッヴの熱線は少なくとも、甲板の２層下の格納庫まで破壊したらしく、
整備中の艦載機も数機破壊されており、あちこちで火災が起きていた。
艦内の消火も急がねばならないのに、コッヴは無情な第２波の準備に入りつつある。
ニックはブリッジで作戦指揮を取るべく、会議室を後にする。
「私はブリッジに行く……諸君もそれぞれできることをやってくれ！」
「それぞれできること、ね…… うん、バナー博士はどこに行った！？」
ふとトニーが振り返ると、さっきまで会議室の椅子から腰を浮かせていた緑色の大男の姿が見えない。
ただ我夢は、“プロフェッサー・ハルク”の行動を見ていたようだ。
「バナー博士なら……先ほど下に行かれましたが……」
「まさか……！」
トニーは会議室の窓ガラスに駆け寄り、黒煙を噴く甲板を見下ろす――と、そこに見覚えのある大きな影が。
「あれは……バナー博士！？ この高度で無謀だって、さっき長官が言っていたのに何を！？」
「久々に“ハルク”の力を使うってわけか、つまり……」
「どういうことです？」
「バナー博士が特異体質なのは聞いただろ？ 彼なら、この環境に耐えられるのさ……それだけじゃない。
まぁ、見てなって」
トニーがそう言うのと共鳴するように、ブルース――いやハルクが上着とズボンを破り捨てた。
その下から、フィットネスで使うような黒いスーツが姿を見せる。
そしてハルクはちらり、と会議室の窓を見やり……トニーや我夢の姿を見ると、親指を立てた――その直後。
――――グヴォオォオオオォォオォォォォ！！！！
突如――コッヴの奇声にも負けない咆哮を搾り出したかと思うと、ハルクは猛然とダッシュを始めた！
高度１万ｍの低気圧と低温をものともせず、まるでドラッグレーサーのような加速度をつけて。
「……バナー博士に、あんな能力が……！」
「何しろ……アベンジャーズはクセモノ揃いだからな」
「そう言えば、さっきの女性――ダンバースさんは？ “注意を引き付ける”って言われてましたけど」
「“キャプテン・マーベル”はもう“出撃”してると思うよ……どうやら下で、ハルクと“打ち合わせ済み”のようだ」
アメフトの選手も青ざめるような緑色の巨人が、黒煙と炎を噴く甲板をジグザグに走り続ける。
見る見るうちに甲板の先端が近づいてくる……カタパルトもないのに、とんでもないスピードだ。
そしてその先には、旋回してきたコッヴがまさに、破壊されたカタパルトの真正面に陣取っていた。
コッヴもまた、黒煙の中を突進してくるハルクを視界に捉えたようだ……軽く首を傾け、照準を補正する。
その口腔の奥がじわじわと明るくなる……ハルクごとヘリキャリアをぶち抜く気らしい。
甲板の先端部が、ベコン、と大きく凹んだかと思うと、ハルクはミサイルのように空に飛び出した。
スパークするコッヴの口が、真正面から超音速で近づいてくる。
と――その時、コッヴの翼を上空からオレンジ色の“流星”が貫通した。
失速こそしなかったものの、翼に穴を開けられたためか、コッヴがぐらりとバランスを崩す。
そしてコッヴが軌道修正しようと上半身を捩るよりも先に――ハルクの剛腕が体ごとその目に突っ込んだ！
―――グギャアァァアァァァァ！！！
片目を失い、悲鳴のような声を上げるコッヴ。
その顔に取り付いたハルクは、なおも太い腕を振りかざしてコッヴを殴りつける。
戦車をオモチャのように解体するようなハルクの怪力だが、巨大怪獣を殴り殺せるほどではない。
だが頭部にしがみついてガンガンと刺激を与え続ける小さな敵を、鬱陶しいと思わぬ者はいないはずだ。
しかも以前の彼なら怒りに任せて殴りまくったが、今はそのパワーを意図して急所に集中することが出来る。
苦し紛れにコッヴの口から熱線が放たれたが、照準器を失った熱線は明後日の方向に飛んで行く。
そしてその横に“上昇”する流星のような光跡が、再び今度は斜め下から、コッヴの翼をぶち抜いた。
コッヴの翼に２つも穴を開けた流星の正体は――キャプテン・マーベルであった。
この宇宙エネルギーを駆使する“戦女神”は超音速で空を飛び、意思を持つ審判の流星となれるのである。
先端に高温のプラズマを集束して狙い澄ませば――彼女に貫通できない標的などない。
実際に２年前の“決戦”では、この能力で敵の宇宙戦艦の機関部を貫通し、撃沈せしめたのである。
そしてハルクも、最初から彼女との“連係プレー”で、コッヴの目を潰そうとしていた。
ヘリキャリアの墜落を阻止するためには――この極彩色の襲撃者を墜落させれば良かったからだ。
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１方我夢は、バッキーやサムと格納庫の消火活動に参加していた。
格納庫の被害は予想を超えていた……床や天井に大穴が開き、火災の煙が立ち込めて視界が悪い。
まるで爆発事故を起こしたコンビナートの内部に入ったかのようだ。
とりわけ今彼らがいるこの場所は、コッヴの熱線の直撃を受けた場所らしく、
絶壁のような破壊の爪痕が、細長く斜めに床板を引き裂いていた。
負傷者の搬送に手を貸しながら、バッキーは思わず溜息を吐く。
「あのビーム１発でこれとはな……まるで戦艦だ」
「自分が知るコッヴよりも強化されているかも知れませんね……あんな翼は生えてなかったし」
「ガムの世界でも猛威を振るったのか？」
「最初は強敵でした……ですが地球の兵器でも火力を結集すれば倒せることが分かってから対処可能に。
なので、この基地の武器でも、急所を重点的に攻撃すれば、倒せる可能性はあると思います」
「その辺はシールドの戦術次第というわけか……」
そう言いながら、サムは目を細めて炎上する格納庫の奥を眺めた。
そこには爆発で吹き飛ばされたのだろう、瓦礫や大破した艦載機の残骸が折り重なっている。
「ここを復旧させるには、あれをどうにかしないといけないな。しかし……
ガスバーナーで焼き切ろうにも、この火災では引火の危険がある……どうすれば？」
「そうですね……いえ、ちょっと待ってください。“あれ”なら何とかなるかも……」
「タカヤマ、どうするつもりだ！？」
「少し待っていてください、自分に案があります！」
そう言って、我夢は駆け出して行った。
２～３分ほどしただろうか……階下から聞き慣れない物音が響いてきた。
何事か、とバッキーやサムが思った次の瞬間。
目の前に大きく開いた床の穴から、ロボットのような大きな機械がぬっ、と姿を現したではないか。
その上部ハッチはわずかに開いており、中にはヘルメットを被った我夢が乗っている。
「タカヤマ！？ これは……さっき話していたマシーンか！？」
「このディスカヴァリーのマニピュレータなら、あの残骸を撤去できるかも知れません」
“ウォーカー形態”になったディスカヴァリーは、片腕でデッキの柱を掴みながら、
もう片方の腕を長く伸ばして、折り重なった瓦礫の１番上の鉄骨を掴んだ。
ねじ曲がった重い鉄骨同士がこすれ合う不快な音と共に、鉄骨がゆっくりと持ち上がる。
「な、なるほど……確かにこれなら、引火の危険性は少ないな。だが気を付けてくれよ」
「撤去した残骸を下の床に置きますので、どなたか移動を手伝って頂ければ」
「承知した。何人か下のデッキで待機してやってくれ……いや、俺も行こう」
そう言って、サムは素早く階下に駆け下りた……数人の兵士が後に続く。
数ｍほど下にあるデッキにはすでにねじ曲がった鉄骨の残骸が何個か並べられており、
その奥ではディスカヴァリーの巨体が際どい体勢を維持しながら、黙々と作業を続けていた。
「使える台車を持ってくるんだ……ひとまずは格納庫の開いた場所にこれを移動する。
できればクレーンが付いてある方がいい、人が持ち上げるのは難しいからな」
ディスカヴァリーを最前線に、サムを臨時の指揮官に、バケツリレーの要領で撤去作業が進む。
間もなくクレーン付きの台車が到着し、にわかに鉄骨の搬出が容易になった。
「ここが最前線か……全く酷いな！」
「バートンか、ちょうど良かった、そのクレーンの操作を任せていいか？」
「無論だとも、そのために来たんだ！ ラング、あんたは怪我人の救出を頼む！」
気付けば――クリントやスコットも、復旧作業に加わっている……間もなくワンダも駆けつけた。
彼女は持ち前の念動力を駆使して、別の瓦礫の撤去を試みているようだ。
作業が順調に進むかと思われた――その時だった。
――――ドォォンッ！！
突然、前方で大きな爆発が起こり、バッキーたちも爆風でデッキの上に投げ出された。
流出した燃料か何かに引火したらしい……いかにも毒性が強そうな、真っ黒な煙が吹き上がる。
「――くそっ、急げ、このまま放って置いたら、次はもっと大きな爆発が！」
「サム――危ない、上だ！！」
バッキーの声に振り向いたサムの視界に、大きな影が覆い被さる。
ディスカヴァリーだ……何かからサムを庇うように長いアームを広げた、その直後。
ガラガラガラ、と大きな音を立て、上部デッキの破片が降り注いできた。
100トンはあろうかという金属片の落下に強い衝撃を受け、ディスカヴァリーは思わず片膝を付く。
しかし新たな瓦礫となった金属片は容赦なく、ディスカヴァリーを包み込むように崩れていく。
間もなくディスカヴァリーは、その場から動けない状態になってしまった。
「……サム！！」
「俺は大丈夫だ、タカヤマが守ってくれた！」
「でもあれじゃ、今度はあのマシーンが動けないぞ……！」
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その頃……ヘリキャリアの艦橋も新たな緊張に襲われていた。
「――長官！新たな質量の反応が！」
「今度は何だというんだ……？」
謎の黒雲――さっきコッヴを“吐き出した”雲だ――から、何か小さな物体が飛び出して来たのだ。
１つではない……何百、いや何千という銃鉄色の物体が、わらわらと噴き出してくるのである。
戦闘機ほど大きくはない……人間と同じぐらいか、それよりも小さいようにも見える。
「まさか……チタウリ！？」
ニックは、以前起きた“異世界からの干渉”の際に、襲来したエイリアン兵団の名を呟いた。
チタウリは人間と似たような体形だが、トカゲのような顔つきで、全身を鎧で覆った戦闘種族である。
彼らはかつてコズミック・キューブによって開けられた“時空の穴”から、
水上バイクを思わせる飛行兵器に乗って、ニューヨークに無差別爆撃を仕掛けてきた。
今回、“黒雲”から飛び出してきたのも、そのチタウリの爆撃部隊にどこか似ている。
銃鉄色の“敵軍”は見る見るうちにヘリキャリアに迫ってくる……それはあたかもムクドリの大群のよう。
そしてコッヴの角をへし折ろうと奮闘していたブルース＝ハルクは、それを間近で見た。
「ぬぅっ……何だこれは！？ ブリッジ、金属のイナゴみたいなやつらが大量に飛んでる！」
それは異形の昆虫のような、ワシかタカほどのサイズの、メタリックなモンスターであった。
耳障りな奇声を発し、大群で襲い掛かってくる……迎え撃つべく、ハルクはその大群に豪腕を振るうが。
「――うぉっ！？ こいつら、全身がナイフみたいだ……畜生、このハルクを舐めるな！！」
メタリックな“昆虫モンスター”は、その翅や足にナイフのような鋭い突起を幾つも生やしていた。
ハルクのパワーならワンパンで叩き落とせる相手だが、そのたびに緑色の手足に鋭い切り傷が増えていく。
銃弾も無傷で弾くハルクを容易に傷つけられるなら、普通の人間などひとたまりもないことだろう。
攻めあぐねるハルクを援護すべく、キャロルの“プラズマ流星”が飛行怪物群の中に突っ込む。
彼女がプラズマをまとって大群の中を突き抜けるだけで、軽く数十匹の怪物が引き裂かれて墜ちていく。
しかし“飽和攻撃”を仕掛けてくるため、さしもの彼女も決め手に欠けるようだ。
「私たちの戦い方を読んでいるようね……やはり、意図的なもののようだわ」
更にヘリキャリアから放たれたミサイルの１部が、その２人を援護するが、中々貫通することが出来ない。
怪物群の鋭い体が簡単にミサイルの外装を劣化させ、あっけなく爆発させてしまうからだ。
その際に数匹が巻き込まれて撃墜されるものの、大群の表面を軽く削る程度の影響にしかならない。
弾道ミサイルサイズのナパーム弾でもぶち込まねば、この小さな襲撃者を減らすことは出来ないだろう。
ヘリキャリアの甲板にもその１群が飛来した……甲板の上に突き出したアンテナが軽く切り飛ばされる。
ブリッジの強化ガラスにも、見る見るうちに小さな引っかき傷が増えていく。
「やつら、全身が凶器なのか……こいつはまずいぞ……！」
こんな連中が万一、強化ガラスをぶち破って艦橋内に飛び込んできたら、地獄絵図になることだろう。
しかも同時に、高度１万ｍの非情な低気圧にもさらされることになる。
その時――赤い人影が甲板から飛び出し、怪物群に向かってレーザーガンのようなものを乱射し始めた。
「長官……あれは、アイアンマン！？」
「バカな……スターク、何をやっているんだ、自殺行為だと言っただろう！！」
「心配するなよニック……僕はここだ」
すると――すぐ背後でトニーの声が聞こえた。
ニックとマリアが振り向くと、トニーが艦橋のコンソールの１つを手際よく操作している。
「あの“マーク66ユニット”は空っぽだよ、万一撃墜されても誰も死なない……これなら良いだろ？」
装着者のいない赤い装甲兵“アイアンマン”は、艦橋に取り付いた怪物たちを個別撃破していく。
この高性能パワードスーツは、無人で遠隔操作することもできるのである。
「……スターク、君ってやつは……」
「悪いけど、こいつも時間稼ぎにしかならんようだ……次の策は考えているのかい？」
艦橋の外では激しい対空戦闘が続いている。
コッヴの熱線の初撃を生き延びたＣＩＷＳ――自動迎撃機関砲――が数千発の弾幕をまき散らすが、
砂嵐のように飛び交う小さな怪物たちの前に、効果を上げているとは言い難い。
もちろん対空ミサイルもこんな飽和攻撃には太刀打ちできない。
そしてハルクとキャロルの迎撃を受けているコッヴは、まだこの“砂嵐”の中を飛び続けている。
いつまでも２人の攻撃が、この“魔獣”の注意を引きつけていられる保証はない。
「……やはり“ビームキャノン”の搭載を急ぐべきだったか」
呻くようにニックは呟いた……口にしたのは、キューブ研究の過程で得たエネルギー兵器の試作品。
チタウリの撃破で、「これで人類がエイリアン対抗戦力を持つことを知らしめた」と、
ニックは新兵器のヘリキャリア搭載を急いだが……順調だったとは言えない。
アベンジャーズを危険視する国連安保理の声や、反戦政治団体の圧力、研究者たちの足並みの不一致。
今そこにある危機を目の前にしても、人類は団結できないというのか……！
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その頃――我夢はディスカヴァリーのコクピットの中でもがいていた。
落下する瓦礫からサムを守ったまでは良かった……だがおかげで身動きが取れなくなった。
瓦礫と激突した衝撃の所為か、ディスカヴァリーのリパルサードライブも調子が悪い。
「タカヤマ、大丈夫か！？」
「自分は大丈夫です、心配は要りません！」
とは言ったものの――身動きが取れないのではどうしようもない。
情けないものである……「まだ見ぬ世界の危機」を予感して、自分の世界を飛び出してきたのに、
ロクに対処することすらかなわぬ間に、こんな状況に陥ってしまうとは。
「私の力で……くっ、重いわね――ケホッケホッ」
「ワンダ、無茶をするな…… 一酸化炭素中毒を起こしてしまうぞ！」
「でも……それならどうしたら良いの！？」
ワンダが念動力で折り重なる瓦礫を持ち上げようとするが、上手く行かない。
おまけに専門の消火装備を持たないため、近づきすぎると彼女の呼吸器を破壊してしまう恐れがある。
ここは化学工場の火災現場と大して変わらないのだ。
破壊された甲板の穴の向こう――空の上から、コッヴの不快な奇声が遠く響いてくる。
ＣＩＷＳの発砲音が絶えず響き渡っているが、仕留め切れていないことが我夢にも分かる。
このままではヘリキャリアが沈没してしまう……乗り込んでいる何千という正義の有志たちを巻き込んで。
――自分は何のためにここまで来たんだ……ここで終わってもいいのか、高山我夢！？
我夢が無念さと憤りの中で強く思った――その時だった。
彼の心の中で、今までにない強い光が煌くのを感じた。
いや――それは、心の光だけではなかった。
ディスカヴァリーのコクピットの奥で、まばゆい光が煌く。
その光はやがてコクピットから溢れだし、廃墟と化した格納庫の中に拡がって行く。
あたかも――神の奇跡のように。
「なんだ――あれは！？」
同じ頃――決定打を欠くブリッジでも“異変”が起きていた。
乱れ飛ぶ小さな怪物たちの奥で不気味な影がこちらを向き――その重心に光が満ちる。
それがコッヴの熱線攻撃準備だと悟ったニックたちは、さすがに絶体絶命の状況を悟るしかなかった。
まばゆい光がブリッジを照らし上げていく――これで終わりなのか、とニックもトニーも思った。
しかしその光は、ニックたちを天国に誘うことなく、収束して行く。
いや――何かの形に“集束”して行く。
「いったい……何が起きた！？」
「……“あれ”はいったい？」
危機にさらされたヘリキャリアのクルーたちが皆――突如出現した“それ”を見上げている。
やがて光は明らかに……巨大な人間の形を取り始めた。
身長は50ｍほどもあるだろうか……輝いていた表面は次第に、プラチナのような銀色に。
そしてその銀色の表面には、流れるような赤い模様が走っている。
もちろん――コッヴと戦闘中だった、ハルクやキャプテン・マーベルも、それを見た。
“白銀の巨人”はコッヴに対峙し、ヘリキャリアをかばうように、空の上に“立っている”。
胸には黒い、金の縁取りを持つプロテクターのようなものを付け。
その中央にはエメラルド色のクリスタルのような物体が輝き。
頭部に当たる位置には、金色に光る卵型の大きな“目”が２つ。
特に表情らしいものは浮かべていないが、慈悲の表情のように見えなくもない。
「……まさかこいつが……“ウルトラマン”！？」
トニーは、何か確証があって言ったのではなかった……ただ、そうとしか呼べなかったのだ。
“対策会議”で我夢が口にした“光の巨人”を、想像することしかできなかったからだ。
――ジェアッ！！
――ギシャァアァアァァァ！！！
“ウルトラマン”が発した気合いのような声に、コッヴが殺気に満ちた咆哮を返す。
その角の横では、ハルクも呆然とその“ウルトラマン”を眺めている。
「どうやら、僕らにとっては味方のようだ……ってハルク、そこにいたら邪魔じゃないか！？
……聞こえてないな、奴らにゃ電波妨害能力もあるらしい」
そんなコッヴに向かって、銀色の巨人――ウルトラマンが躍りかかって行く。
真正面から突っ込むコッヴ――間もなく、両者が空中で激突した。
超音速の激突は衝撃も凄まじい……ハルクは当然、空中に放り出される。
だがその腕を途中でキャロルがキャッチし、ヘリキャリアの方へと退避行動を取った。
「おぉ助かった……済まない、キャロル！」
「いったんヘリキャリアに戻るわよ……これはさすがに私も、どうなるか予測が付かない！」
間もなく――銀色のイナゴが乱舞する甲板に降り立つ、紅と緑の戦士。
「ちっ、ここも大変なことになってるな……ん、あれはアイアンマンか！？ トニーは何を考えて――」
「いいえ、あれは無人よ、スタークは遠隔操作で動かしているようね」
「そりゃ良かった……幾らこんな事態とは言え、病み上がりに無茶はさせられないからな。
地上の怪物どもは僕がやる、キャロルは上空を頼む！」
スーパーヒーローたちの第２ラウンドが開始されようとした――その時だった。
出し抜けに、空からまばゆい光が降り注いだ。
さっきまで不吉な闇をたたえていた“黒雲”が白く輝き、閃光を放っている。
ウルトラマンが発した癒しのような光とは違う――核爆発にも似た不気味な光だ。
光は全てを飲み込むように広がって行く……ヘリキャリアはもちろん、ウルトラマンやコッヴをも。
「何だこりゃ――今度は何が起きるってんだよ！？」
しかもただの光ではない……まるで霧のようにヘリキャリアの艦橋にも押し寄せ、塗り潰して行く。
まるで――世界を麻酔にかけるかのように。
「これは……何だ！？」
「意識が……遠のいて行く……長官、気をしっかり――」
視界が真っ白になったその瞬間――ニックたちの意識は闇に沈んだ。
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| （本編９章１話／本編９章２話） |
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【Meking Memo／設定補記】
2012年頃に作成したエピソードを、2020年に再編したもの。
元々は旧ＯＷ企画で検討中だったもので、アメコミヒーローのドリームチームの１つである、
アベンジャーズのカメオ出演を意図した“エピソード・ゼロ”である。
そこに『ウルトラマンガイア』の主人公・高山我夢を１時的に“カメオ出演”させた上で、
アベンジャーズもろとも次元融合世界にジャンプさせる“２重クロスオーバー”方式を採っている。
これは元々、『ガイア劇場版』で我夢がアドベンチャーで異世界に飛んだ展開がモチーフになっている。
我夢が知識的にも技術的にも、能動的に異世界を認識することが出来るのであれば、
彼の「干渉」をきっかけに、クロスオーバーのプロットを動かす手もあると考えたわけである。
そして『アベンジャーズ』も受動的にではあるが、異世界干渉経験があるため、結びついたものであった。
もちろん、日米スーパーヒーローの“共演”も強く意識しており、ＰＡシリーズとは直接関係させずとも、
この『ガイア』『アベンジャーズ』に絡む３つのエピソードだけでも、共闘フラグがある程度確立する流れになっている。
異世界調査のために時空を越えた我夢を追って、破滅将来体の怪獣コッヴ（コッヴエグゼ）が襲来し、
これを迎撃するためにアベンジャーズが奮闘し、最後に「ウルトラマンガイアが蘇る」流れまで、
独立したクロスオーバーとして成立させることも可能なプロットになっているのだ。
因みに会議室のシーンで挙げた“ブレーン宇宙論”は現実の宇宙物理学会で唱えられている仮説である。
異次元世界とかマルチバースといえば、荒唐無稽な疑似科学の分野と思われがちであるが、
真面目な科学の世界にも、時空を越えた異世界を想定する仮説が存在するのである。
無の世界に様々な宇宙が「膜のように存在」し、重力がそれぞれの宇宙をつないでいるという概念であり、
ワームホールがこの“膜宇宙”を結びつける役割を果たしているという説もあるそうだ。 |
