ＧＤＷ雑記帳

　　　　　

　
★雑記帳特別編――ドナルド・トランプ旋風について思うこと　（2025年2月2日作成）
　

　　本コンテンツは、2016年以降の世界に大きな影響をもたらしてきた、
　　アメリカ政界の“風雲児”ドナルド・トランプ氏の様々な政治活動について、
　　筆者G-maがその都度感じてきたことをまとめたものである。

　　これは基本的には従来、時事雑記や考察シリーズで書いてきたものであるが、
　　2025年に第２次トランプ政権がスタートしたことで、
　　再び感じることも色々あるだろうと思い、特集ページを作ることにしたものだ。
　　以降トランプ氏のテーマに関しては、特別考察以外については、
　　本特集で随時扱っていく所存である（要はコロナクライシス特集と同じだ）


　2016年アメリカ大統領選挙――トランプ旋風の始まり

　2017〜2020年第１次トランプ政権――米政界のジョーカー誕生

　2021年連邦議事堂襲撃事件――トランプ敗北の闇と怨念

　2022年中間選挙から2024年大統領選挙へ――共和党の苦戦と民主党の混乱

　2025年第２次トランプ政権スタート――アメリカは偉大になるか

　追記雑記（第２次政権スタート後の情勢）


　◆2016年アメリカ大統領選挙――トランプ旋風の始まり

　　トランプ旋風の始まりは、2016年のアメリカ大統領選挙であった。
　　民主党のバラク・オバマ政権が２期８年の任期を終えた後に始まった出来事であり、
　　当初は同じ民主党のヒラリー・クリントン氏の当選が有力視されていたのだが、
　　（ヒラリー氏は1990年代に大統領を努めたビル・クリントン氏の妻である）
　　不動産業界の実業家で、リアリティ番組でもそのキャラクターから人気を博していた、
　　ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補として急浮上したのである。

　　トランプ氏は主に不法移民によるアメリカの治安悪化や、
　　企業の海外進出による産業の空洞化を問題視し、民主党リベラル派の政治手法を、
　　アメリカの繁栄を阻害する社会主義エリートのやり方と激しく批判した。
　　トランプ氏の主張は、経済空洞化の煽りを受けていた当時のアメリカの労働者たちや、
　　リベラル左派のエリート政治を嫌うクリスチャン保守派層に熱烈な歓迎を受け、
　　当初当選確実とされたヒラリー氏を猛追するようになったのだ。

　　更に民主党のエリート政治に対する批判に、いわゆる“Ｑアノン”に代表される、
　　右派の陰謀論者の影響が強く関わっていたとされ、報道でもこれが度々話題となった。
　　この手の陰謀論は古くはユダヤ陰謀論などに見られるが、
　　アメリカでは1980年代頃からよくあった話で、カルト文化の１つとも言える。
　　（ＴＶドラマとして人気を博した『Ｘファイル』もこのジャンルの有名な作品だ）
　　右派と左派の間に当時から既にあった不信感が背景にあると見られ、
　　保守寄りのパワフルな政治家の登場で、それが一気に爆発したという印象もあった。

　　またトランプ氏は、民主党政治のエリート色を強く批判するだけでなく、
　　国際社会でのアメリカの取り組み方にも疑問を呈し、攻撃的な主張を繰り返した。
　　気候変動対策の国際的な取り組みであるパリ協定の離脱はその象徴である。
　　トランプ氏は地球温暖化問題の懐疑派であり、同協定を無意味なものと考えたのだ。
　　同協定の温室効果ガス削減義務などに縛られることを強く嫌っていた。
　　実際「地球温暖化問題に対する疑念」はトランプ氏だけではなく一定数の支持があり、
　　「気候変動と人類活動には因果関係がない」という主張もあるのだ。

　　更にＴＰＰなど、オバマ政権が推進した自由貿易協定からの離脱も主張し、
　　汎国家的なプロジェクトに対して批判的な視点を持っていたのも特徴の１つである。
　　後々も言われたことだが、複数の国の首脳や大臣がテーブルに着く協議スタイルより、
　　焦点を絞った国との「２国間協議」を好み、またどこか権威主義的な志向もあった。
　　考察99にも書いたように「昔気質のワンマン社長」の気質がトランプ氏にはあり、
　　それ故か「複数国による国際会議での協議」に余り関心を示さなかったのだ。

　　同盟国である日本に対しても、当時は貿易収支のアンバランスが問題視されたため、
　　「貿易収支のバランスを日本が改善しないなら在日米軍を引き揚げる」と言い出した。
　　こうした攻撃的な主張がトランプ氏の持ち味でもあるのだが、
　　それ故に日米のメディアにかなりマイナスの印象で受け止められる人物でもあった。
　　ＴＶメディアはリベラル左派に傾斜する傾向が強かったためである。
　　（こうしたメディアの偏向性は2020年代の民主党バイデン政権でも見られた）

　　だから日本でもアメリカでも、主要メディアはトランプ氏よりもヒラリー氏に注目し、
　　大統領選の終盤になるまで、トランプ氏をイレギュラーとして報じ続けた。
　　だが蓋を開けてみれば、そのイレギュラーが次期大統領として当選したのだから、
　　メディアは半ばパニックになったようにこの「大番狂わせ」をトップで報じたのだ。
　　またトランプ氏の良く言えば保守的、悪く言えば孤立主義的なスタイルは、
　　日米同盟にも悪影響を及ぼすのではないか、などと当時盛んに危惧されたのである。


　◆2017〜2020年第１次トランプ政権――米政界のジョーカー誕生

　　2016年大統領選挙の熱狂を経て、2017年に第１次トランプ政権がスタートした。
　　もっともトランプ氏は、当時はまだ政治家経験のない“初心者”だったこともあって、
　　要領良く強かな閣僚との間に摩擦が起きることもしばしばあったようである。
　　「アメリカを再び偉大にする（ＭＡＧＡ）」というスローガンの実現のために、
　　内外から多くのブレインを引き入れたが、その多くが途中で政権を離脱しており、
　　トランプ氏と話が噛み合わず苦労した部下が多かったことを匂わせる。

　　とりわけ象徴的だったのが、国際外交や安全保障関連の取り組みであり、
　　中国やイランに対して厳しいと言われた防衛顧問のボルトン氏や、
　　元米軍高官で“狂犬”の異名を持つ国防長官のマティス氏が後に罷免されている。
　　マティス氏の場合は「自ら辞表を出した」と言っていたほどだ。
　　仮想敵国に対しては軍事的に強硬に振舞うことを重視した“タカ派”に対して、
　　トランプ氏と意見が噛み合わなかったのではないかと推察する。

　　というのも、あぁ見えてトランプ氏は「必ずしも好戦的な政治家ではない」からだ。
　　まるでマフィアの脅迫のような攻撃的な主張を展開するが、
　　「自国に有利な取引に持って行く」ためのブラフであることが、よく指摘されている。
　　実際にトランプ氏自身も自慢気に語っているように、
　　第１次トランプ政権時代に、アメリカの影響で起きた明確な戦火はなかった。
　　「下手には出ないが取引で解決する」のが実業家であるトランプ氏のやり方なのだ。

　　第１次トランプ政権の真っ只中である2017年に、北朝鮮との間で外交摩擦が深化し、
　　筆者も「このまま朝鮮戦争が再開されるのか」と危惧した事態もあったが、
　　最終的に戦火にはなっておらず、逆に米朝会談という首脳対話に結びついている。
　　核兵器や弾道ミサイル開発に勤しむ北朝鮮に対し、アメリカ側も強気で対峙し、
　　２隻の原子力空母を日本海に向かわせるといった軍事的な威圧もあったが、
　　それも後から振り返れば、トランプ氏お得意の「強気のディール」だったのだろう。

　　こうした「一見乱暴に見えるが実は強か」なトランプ政治は、とても興味深いものだ。
　　バイデン政権時代に勃発したウクライナ戦争と比べても際立つ対照性がある。
　　実際ロシアのプーチン大統領は、バイデン氏の「ウクライナに軍は出さない」という、
　　軍事的には弱腰に見える言葉を受けて、ウクライナに侵攻しているからだ。
　　突然始まった戦争に対してアメリカはウクライナへの軍事支援を買って出たが、
　　バイデン氏が「余計なこと」を言わなければ、起きなかった戦争だったかも知れない。
　　（「軍事ビジネスのための確信犯」という陰謀論もあるが、ここでは論じない）

　　またパリ協定やＴＰＰからの離脱で、国際的には物議を醸しているトランプ氏だが、
　　当初「在日米軍の撤退」まで匂わせた日本に対しては、意外にも穏健だった。
　　これは当時の日本の宰相、つまり安倍晋三首相（当時）の采配が大きいだろう。
　　安倍氏とトランプ氏の友好関係は当時良く言われた話であり、
　　やや身勝手で自己主張の強いトランプ氏を、安倍氏は上手くコントロールしたのだ。

　　あと余り報道絡みの考察では指摘されない（認めたくないのか）ことなのだが、
　　トランプ氏は大統領選の時から、安倍氏に一定のリスペクトをしていたのだ。
　　貿易収支のアンバランスを批判する際に、「日本の首相は賢い」と何度も言っている。
　　ロシアのプーチン氏など、元々「権威主義的な強いリーダー」に親和性を持つので、
　　戦後日本最強クラスとも言える安倍氏にも、シンパシーを感じたのだろう。
　　また実業家であるトランプ氏にとって、外交・安保は本来得意分野ではないわけで、
　　その際のアドバイスを安倍氏に求めるほど、トランプ氏は安倍氏を信頼したのだ。

　　そうした安倍氏との関係が最大限に活かされたのが“ＱＵＡＤ”である。
　　日米に加えて豪印（オーストラリアとインド）を追加した、
　　太平洋からインド洋にまたがる「民主主義４大国」の連携によって、
　　中国に象徴される覇権主義を抑制し、国際社会の自由を担保する取り組みであり、
　　「多国間協議に無関心」だったはずのトランプ氏が、この取り組みだけは別だった。

　　国際競争のライバルとアメリカが見る中国を効果的に牽制するために、
　　日本はもちろん、オーストラリアやインドとも、効果的に連携することが重要であり、
　　アメリカの国益にも寄与するということを、安倍氏は恐らく説得したのだろう。
　　そして「外交・安保では安倍氏を強く信頼」するからこそ、トランプ氏も賛同した。
　　安倍氏も保守派の政治家としてリベラル派に毛嫌いされていたが、
　　その安倍氏とトランプ氏が上手く噛み合った最大の成果がＱＵＡＤと言えよう。

　　他方、同時に世界中を襲ったコロナクライシスに関しては、日米とも無力だった。
　　アメリカは結局世界で最もコロナウイルスの被害を被った国になったし、
　　（ゼロコロナ撤廃後の中国でも感染爆発が起きたが、具体的な数値は未公表だ）
　　日本も欧米諸国に比べれば幾分マシなものの、最終的に安倍政権の終焉に影響した。
　　国際社会の力学を変えるきっかけになったＱＵＡＤ誕生を左右した両雄が、
　　コロナクライシスで失墜したというのもまた、意味深な示唆である。

　　そしてこの混乱に便乗するように、民主党の反攻が始まった。
　　トランプ氏は任期中に２度の弾劾訴追を受けるなど、左派には徹底的に嫌われ、
　　コロナクライシスの混乱も相まって、再び先行きが不透明になっていったのである。
　　そうして始まった2020年の大統領選挙で、トランプ氏は負けたのだ。
　　ただトランプ氏はこの結果を「不正が行われた」と主張し続けて頑なに認めず、
　　それが新たな混乱の火種を蒔くという、キナ臭いオチが付いたのである。


　◆2021年連邦議事堂襲撃事件――トランプ敗北の闇と怨念

　　2021年1月6日、民主党バイデン政権発足を半月後に控えたこの日、
　　大統領選の結果をなお不服とするトランプ氏の“煽り”が引き金になって、
　　数千人の共和党支持者が連邦議事堂を襲撃し、１時占拠するという争乱が勃発した。
　　連邦議事堂が襲撃されるのは実に200年振りで死傷者も出す事態になっており、
　　ここ数年目立ち始めていたアメリカの“分断”を象徴する事件となった。

　　事件収束後、「トランプ氏が騒乱を主導したのか否か」で激論になったが、
　　筆者の見立てでは「煽りはしたが主導まではしていない」と基本的に考えている。
　　何故なら第１次政権でもそうだったように、トランプ氏は言動こそ攻撃的だが、
　　「実際に手を出す」好戦的な人物であるとは言い難いからである。
　　あくまでも「取引を有利に進めるための煽り」に留めることが多い印象であり、
　　そういう“ビジネスマン”が、クーデター紛いの騒乱を主導するだろうかと思うのだ。
　　煽られた中には極右の活動家もいたので、そちらの暴走の成分が多いと思う。

　　とはいえ、政権移行期にこうした“ミソ”を付けてしまったことで、
　　左派が多い主要メディアに格好の“攻撃材料”を与えてしまったことは確かだろう。
　　安倍氏の時もそうだったが、アンチはこういう時、ここぞとばかりに騒ぐからだ。
　　またトランプ氏を「アメリカ分断の元凶」のように書く人が時々いるが、
　　これも実は正しくはない……アメリカの“東西葛藤”はオバマ政権時代から存在し、
　　主張性の強いトランプ政権がその印象を強めた側面もあっただろうが、
　　トランプ氏自ら分断を促進したという主張は、アンチの印象操作ではないかと思う。

　　またトランプ氏が選挙に敗れてからずっと主張し続けていた「不正選挙論」も、
　　選管団体の公式こそ認めていないものの、疑惑となる情報はあるようだ。
　　（開票時に不自然にバイデン票が急増したという事例が、幾つかの投票所にあるのだ）
　　余り神経質にそこばかり突いても、陰謀論になり兼ねないので悩ましいテーマだが、
　　デジタル改革が進む現代、出来ないことでもないというのは確かである。
　　何しろ、海外ハッカーが政府庁舎のサーバに大規模な侵入を繰り返す時代なのだから。

　　そんな不穏な事件で始まったのが民主党のバイデン政権であり、
　　「内戦１歩前」とまで形容される、揺れ動く国内情勢の改善にも取り組んだようだが、
　　結果は芳しくなかったようである……結果的にリベラルエリートが復権したため、
　　彼らが幅を利かせる「エリート政治」に戻ったという批判が結構あるのだ。
　　またバイデン大統領（当時）自身の“高齢問題”もそれに拍車をかけた。
　　任期中に80歳を越えたのはバイデン氏だけらしい……トランプ氏も若くないのだが。
　　（トランプ氏も第２次政権の最中に80歳を越えることになる）

　　そしてバイデン政権時代に起きてしまったのが、ウクライナ戦争である。
　　上記もした通り、バイデン氏が軍事に弱腰とも取れる発言をしてしまったことが、
　　プーチン大統領の「開戦判断」に影響を与えたのではないかという説がある。
　　この辺り、念仏のように平和ばかり唱える、日本の平和主義に対する警鐘でもあろう。
　　筆者自身も「平和を重んじる」が、バカ正直に平和を唱えるだけではダメなのだ。
　　この意味において「戦争させないための抑止力」という考え方は大事である。
　　少なくともトランプ氏は、それを理解していた政治家だと思う。


　◆2022年中間選挙から2024年大統領選挙へ――共和党の苦戦と民主党の混乱

　　2022年の中間選挙では、バイデン政権を追い上げる共和党がいまいち不調であり、
　　複数の裁判案件を抱えるトランプ氏の“威光”が衰えてきた、という印象があった。
　　そのため考察99に書いたように、この時点では筆者も「トランプ旋風の終焉」を感じ、
　　アメリカ政治は次世代の時代に入っているのではないか、と見ていた。
　　トランプ氏もこの時既に75歳を越えており、決して若くはなかったのも１因だ。

　　ただ現実は、その次世代の政治家たちは、アメリカ政治を牽引するほどではまだなく、
　　2024年以降再び「トランプ復権」が話題になるように風向きが変わっていく。
　　この時期のアメリカ経済は概ね好調だったが、移民問題はなお不穏な課題を抱え、
　　（バイデン政権も移民をむしろ奨励するような政策を実施していた）
　　アメリカの１部有権者たちのフラストレーションは、解消されていなかったようだ。

　　更に新たなアジェンダとして浮上してきたのが、ポリティカル・コレクトネスである。
　　人種の平等や性選択の自由化を謳い文句にするリベラルな政治運動であるが、
　　これを推進する民主党の政治家や活動家が、しばしば急進的な運動で問題視され、
　　保守派が疲労感を感じるようなケースがしばしば指摘されたのである。
　　筆者自身、差別は論外であるが、そのために思想統制まで必要だとは考えていない。
　　多様性という言葉は本来“共存共栄”のためにあり、政治闘争のためではないはずだ。

　　そして共存共栄は、イデオロジストが上から目線で押しつけるものではない。
　　自発的な相互尊重により、相手の世界観を受け止めることが重要だと筆者は思うし、
　　欧米特にアメリカに顕著に見られる政治運動化した平等や多様性推進は、
　　逆に押しつけがましく、共産主義の革命運動に似た危うさを感じてしまうのである。
　　日本でもこの時期、岸田政権が可決させたＬＧＢＴ理解増進法が物議を醸したが、
　　何を尊重すべきかを政府が国民に押しつけるというのは、結局権威主義ではないのか。
　　ガイドラインが要らないとは言わないが、やり過ぎ感もあるのである。

　　そうした“違和感”はベクトルは違えど、アメリカにもあったということなのだろう。
　　そして革新よりも保守を重視する有権者たちが、トランプ復権を支持し始めたのだ。
　　2024年7月に起きた“暗殺未遂事件”も、トランプ復権に追い風となったろう。
　　（その後の展開からこの事件にも“陰謀論”があるようだが）
　　極めつけは「バイデン氏の引退宣言」だった……流石に82歳という年齢には勝てず、
　　認知症が疑われるような演説も指摘されていたので、限界だったようである。

　　バイデン氏が選挙戦を撤退したことで、民主党は副大統領のカマラ・ハリス氏を立て、
　　再び共和党の大統領候補に指名されたトランプ氏との対決に臨むことになったが、
　　準備不足は否めなかったようである……左派メディアは「支持拮抗」を報じ続けたが、
　　蓋を開けてみれば「トランプ圧勝」に近かったのは報道の通りだ。
　　前々回、ヒラリー氏と戦った時よりも、はるかにトランプ氏が優位だったらしい。


　◆2025年第２次トランプ政権スタート――アメリカは偉大になるか

　　こうして2025年1月、第２次トランプ政権がスタートした。
　　２度目のホワイトハウスということもあってか、今回トランプ氏は以前よりも強気で、
　　バイデン政権時代の大統領令を撤回したり、ジェンダー自由化政策を停止するなど、
　　リベラル派から見れば“粛清”とも受け取られる活動を展開している。

　　筆者も「前回大統領選でバイデン氏に負けたのがそれだけ悔しかったのか」と思った。
　　敗者を尊重するという発想は、どうもこの御仁にはないようである。
　　攻撃的に見える振舞いは、トランプ氏においては「取引の前座」であることが多いが、
　　就任直後に見せた「初日だけ独裁者」のパフォーマンスは、
　　どこか「先行きの不穏さ」を感じさせるところもあったのは確かである。

　　同氏の持論らしい「グリーンランド購入論」や、メキシコやカナダへの関税圧力など、
　　第１次政権以上に強硬で国際協調を軽視しているようにも見える振舞いは、
　　ウイグル問題や台湾問題を抱える中国と、どこか被って見えてしまう嫌いもある。
　　「アメリカを再び偉大にする」というトランプ氏の政治理念も、
　　“20世紀の覇権国家”だったプライドを取り戻すことを意味するのだと考えれば、
　　対外的には「傲慢に見えてしまう」のも仕方ないことなのかも知れないが、
　　そうした態度は果たして本当に「アメリカを偉大に出来るのか」と困惑もするのだ。

　　その１方で「24時間で終わらせる」と息巻いていたウクライナ戦争問題に対しては、
　　権威主義的な視野に共感すると言われるプーチン大統領に「即時停戦」を呼びかけて、
　　「拒否すれば関税や制裁を強化する」と吹っ掛けており、事前評論よりも好印象だ。
　　トランプ氏は「プーチン氏にシンパシーを持つ」と言われていたので、
　　ウクライナに譲歩を求めて「ロシア有利の停戦」に持って行くことが懸念されたが、
　　「停戦せねば制裁するぞ」と言っているのを見ると、そう単純な話じゃないのだろう。
　　それもトランプ流ディールの１部なのだろうが、こちらはお手並み拝見だ。

　　“第２次トランプ旋風”に揺れるメディアでも“脱アメリカ”が話題になっていたが、
　　筆者自身「アメリカと対立する必要はないがアメリカ依存も好ましくない」と考え、
　　トランプ氏がそれを考えさせてくれる、良いきっかけになると感じている。
　　左派メディアはトランプ政治を“対立軸”で論じたがる傾向があり、
　　「アメリカに尻尾を振るか、アメリカを見限るか」といった極論に走りがちであるが、
　　国際外交も国際協調も、そんなに単純なものじゃないと筆者は思う。

　　考察シリーズで何度か書いてきたように、アメリカは戦後日本の強力な同盟国であり、
　　その関係性を重視していくべきだという筆者の考えは、今も変わっていない。
　　ただしその１方で「アメリカに依存する日本も好ましくはない」と考えており、
　　主権を持つ独立国として「適度な間合いでアメリカと対等に付き合う」べきだと思う。
　　現状の日本はまだそうした方向性がハッキリと示せていないところがあり、
　　それをちゃんと確立させられるか否かは、アメリカ大統領が誰になるのかと関係なく、
　　日本と日米同盟の未来を左右し得る重要なアジェンダだと考えているのだ。


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