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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CMS2130802B） |
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出し抜けの着信音に、本郷は困惑するような表情を浮かべた。
ポケットに入っているスマートフォンの着信音だ……別段、珍しいようなことではないのだが、
本郷にとっては、実は３週間振りに聞いた音だった。
防衛特調から借りているスマホとは違う、“この世界”に来る前から持っていたものだ。
「は、はい――本郷ですが…… ――えっ！？」
小さな声を上げて、本郷の表情が固まった……何があったというのだろう。
その答えは――間もなく出た。
『――本郷さんですか？ 本当に、本郷さんですか！？』
「結、城……なのか？」
声の主は結城丈二――本郷が属していた“マイティライダーズ”のエンジニアである。
まさかここで彼の声を聞くことになるとは――本郷も全く想定していなかっただろう。
もちろんそれは――結城も同じであった。
「そうです結城です、おやっさんやシゲルも一緒ですよ！」
数秒、絶句したような沈黙の後に、軽い深呼吸の音がして、本郷から言葉が返ってきた。
『……マジか…… お前ら今、どこにいるんだ？』
「えぇっとですね……プラズマモール、だったかな？ 日野市のショッピングモールです」
これが新たな運命の第１歩だったことを――まだ誰も知る由もなかった。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 第12章 怪人たちの逆襲 ★
2013年8月2日―日本・プラズマモール事件其の２
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そのプラズマモール３階にあるゲームセンター。
小学生トリオのうち２人――難波哲朗と安室零児が、とあるゲーム機の前に立っていた。
「ふふ、アーケード版か……」
「零児お前、本屋に行ってたんとちゃうん？」
哲朗のツッコミに、てへぺろと舌を出す零児。
「……難波だってそうじゃんｗ」
「まーなｗ」
目の前のゲーム機の筐体には『ガンダムオーバーキル』のタイトル。
零児の大好きなオンライン式カードゲームである。
ＩＣチップを埋め込んでいる手持ちのカードを差し込んで、勝負させることが可能だ。
アニメのロボット『ガンダム』を操るが、かなり派手なアクションで個性的なゲームらしい。
ビームサーベルやビームライフルだけでなく“ステゴロ”の格闘も出来るそうだ。
「そーいや零児の腕前、まだ見たことないわ」
「そう？ じゃあ見せてあげようｗ」
「わっかりやすいドヤ顔しよんな〜ｗｗｗ」
ニヨニヨ笑顔を浮かべながら、零児はゲーム機の前に立ち、コインを挿入する。
立ち上がる画面に従って初期操作を行い、おもむろに１枚のカードをポケットから出した。
『ＲＸ７８−２』と書いてある……いわゆる“初代ガンダム”だ。
「え、初代でえぇん？ 相手“ストライクガンダム”やぞ」
「まぁまぁ、見てなってｗ」
１分後――哲朗は唖然とした表情で立ち尽くしていた。
「の……ノーダメージでコンプ、やと……？」
そう――零児のガンダムは対戦相手の“ストライクガンダム”から１撃も食らうことなく、
完璧なプレイで勝利をもぎ取ったのである。
ストライクガンダムは作品が違うが、同レベルなら２つはクラスが上の機体とされており、
“２クラス下”の初代ガンダムで対戦するのはかなりの腕前である証拠なのだ。
スピードも相手の方が上なのに、１撃も受けずに勝つなんて、セミプロ級と言っても良い。
「うちの学校に、こんなゲーマーがおったとはな――うぉっ！？」
そしていつの間にか――零児のゲーム機の周りには人垣が出来ていた。
困惑する哲朗を横目に、零児は努めて澄ました顔で、次の対戦相手を選択する。
オンライン対戦ゲームなので、このゲームセンターだけでなく、全国からプレイヤーが集まり、
カネと時間が許す限り、幾らでも腕を競い合うことが出来るのだ。
「へぇ――３対３がお望みってか……今度の相手は慣れてるね」
「３対３？ プレイヤー増えるんか？」
「違う違う、カード３枚使うってことだよ……１対１よりぐっと難易度上がるんだぜ――あ。
このコードネーム、もしかして“アイツ”かな？」
画面の対戦相手を示すウィンドゥには『ライトニング・ニュータイプ』の文字が躍る。
どうやら――零児が知っているプレイヤーらしい。
因みに零児のオンライン上のコードネームは『ミノフスキー・チャージャー』だそうだ。
零児本人曰く、それなりに知られた名前だそうである。
実際この人垣の中にも、このコードネームを知っている者がいるようだ。
「“ミノフスキーチャージャー”が来てるぞ！」という声を哲朗も聞いている。
コードネームはある程度レベルが上がらないと持つことが出来ず、被りはないとされている。
腕利きゲーマーの“２つ名”とも言えるものなのだ。
「前は『ライトニング・マスター』だったんだけど、名前変えてきたねぇｗ
俺が前に対戦した時さ、『さてはお前ニュータイプだな？』とか言ったことあるんだよねｗ」
「名前変えたんやったら、別人かも知れへんのとちゃう？」
「アイツさ、３対３のバトルロワイヤルが好きなんだよ……だから多分アイツだと思う」
「ほー、んでそいつは強いんか？」
「結構手練だと思うよ、久々に腕が鳴るねぇｗ」
「手練とか腕が鳴るとか……小学生のセリフとは思えへんなｗ」
哲朗のツッコミに、零児はまたてへぺろと舌を出した――だが手の動きは止まらない。
３機の全部違う機種の“ガンダム”を巧みに操作してポイントを獲得していく。
１機をメインのプレイアブル機に設定している間は、他の機体はプログラムで連携するのだが、
その間は単調な動きしか出来ないため、時々プレイアブル機を切り替えてプレイするのだ。
そのタイミングの切り替えが、目を見張るほどに早く、巧みなのである。
タイミングを間違えれば、相手の機体にカットインされて撃破されることもあり得るのだ。
「零児お前さぁ、もうゲームを仕事にしたらえぇんとちゃうか？」
「悪くないかもねぇｗ」
そう哲朗に返す零児の表情は、とても生き生きとして見えた。
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「では今回の株主総会は、この辺で終了とさせて頂きます――」
プラズマモール４階にある多目的ホールで開催されていた株主総会が終わったようだ。
中央に掲げられた時計は、午前11時過ぎを指している。
総会に参加した株主たちは、思い思いに資料をまとめて、ホールを出て行こうとした――が。
「――ん？ おい、鍵が閉まっているぞ！」
真っ先にホールを出て行こうとした１人が、ドアノブをガチャガチャと捻りながら声を上げた。
すぐに事務員がすっ飛んでくるが、何故かドアは開かない。
「も、申し訳御座いません、すぐに開けます！」
「大事な総会と言ったって、鍵まで閉めることはないだろう……何考えてるんだね！」
「大変失礼しま――あ、あれ？」
「どうしたんだ、早く開けてくれ、私はこの後も用があるんだ！」
「残念ぢゃが――諸君を帰すわけにはいかぬのでねぇ」
突如不気味な声がホールに響き、部屋の隅にある勝手口のような所から男が１人入ってきた。
ミステリアスな白いスーツの老人……１時間ほど前、１階で冬雪が遭遇した人物だ。
「だ、誰だあんた！？」
「諸君はこれから――我ら“ショッカー連合”の大切な人質として利用させてもらう」
「「な――何だって！？」」
多目的ホール内にどよめきが起きる……白スーツの老人は確かに“人質”と口にした。
「今、人質と言ったのか……何だこれは、強盗か、それともテロか！？」
「おい早く開けろ、テロリストだ、警察も呼んでくれ！」
「ふふ、無駄ぢゃよ――」
不敵に言う白スーツの老人の後ろから、ガスマスクのようなものをした黒い男たちが、
ゾロゾロとホールの中に入ってきた……いずれも表情を窺うことは出来ない。
３週間前に起きた“渋谷事件”の目撃者がもしもここにいたら、
その黒ずくめの男たちが、あの事件で大暴れした“戦闘員”だったと気付いただろう。
突然ホールを占拠したのは、まさに“ショッカー連合”の戦闘員たちであり、
最初に入ってきた白スーツのミステリアスな老人こそ――その幹部の１人“死神博士”だった。
おもむろに戦闘員の１人が、ホールに置いていた長机を片手でひょい、と持ち上げた。
総会に参加していた群衆たちから小さな悲鳴が上がる。
そして衆人環視の中で、戦闘員はその長机を紙箱のように引き裂いたのだ。
ガラガラと不快な金属音を立てて、鉄屑と化した長机の破片が床に散らばる。
そんな非常識な光景を見て、群衆は皆引きつった表情を浮かべて一様に沈黙した。
「ご覧の通りぢゃ……余計な抵抗をすれば、今度は諸君が、この長机のようになるでな。
我が戦闘員たちに慈悲はない……ワシの命令１つで、このホールは血の海と化すぢゃろう」
「い、いったい……何が目的なんだ？」
気丈にも……総会を進行していたプラズマックス・グループの役員の１人がそう言った。
怯えている群衆を可能な限り落ち着かせねば、何が起きるか分からない。
そんな役員の方を向いた老人――死神博士は、再び不気味な笑顔を浮かべた。
「目的かね？ ……ふふ、それを聞いてどうするのぢゃ、所詮どうすることも出来ぬぢゃろう」
「カネなら払う、人質を開放してくれ、株主たちには何の罪もない」
「確かにカネも必要ぢゃなぁ……ぢゃが、それは第１の目的ではないのぢゃよ」
「ど、どういうことだ？」
「我がショッカー連合の第１の目的は『世界征服』――つまり、全てを支配することなのぢゃよ。
何を驚いておるのかね、世界覇権を目指す野心家など、世界中におるぢゃろうが。
我らショッカー連合はその覇権闘争に打ち克つために今――ここから“革命”を起こすのぢゃ」
それを聞いた役員は唖然とした表情を浮かべるが、すぐに深呼吸をして向き直った。
「そんな、無謀なことを……テロリストの要求を、日本政府が呑むとでも……」
「呑まねば諸君に死んでもらうか、我々の革命の尖兵になってもらうまでということぢゃよ。
ほれ、この戦闘員たちを見よ……人間など虫けらでしかない、諸君もなってみたくはないかね？
脆弱な人間如きに、この星を支配する資格などないと証明しようではないかね」
死神博士の恐るべき“計画”に――役員は今度こそ、返す言葉を失った。
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同じ頃――こちらはプラズマモール２階のブティックゾーン。
とあるアクセサリーショップを眺めていた、加奈と咲、木更津柚子はふと、違和感を感じた。
吹き抜け通路の方から、何やらザワザワと声が聞こえるのだ。
大勢の買い物客で賑わっているが、それとは違う、不穏な声が混じっている。
「ん……何か変な声、聞こえない？」
「私ちょっと、見てきますね」
柚子はそう言って、アクセサリーショップを出て行った。
加奈と咲はそのままアクセサリーを物色していたが、再び奇妙な音を耳にした。
「うん、これって何の音？」
「人の声じゃ……ないっぽいよね」
ザワザワとした人の声に交じって、ガーガー、と機械的な音がかすかに響いてくる。
気になった２人は、今度は店の外に足を踏み出し、そして――見た。
フロアの天井から、何基ものシャッターが一斉に降りてきていたのである。
「えっ……ちょっとこれ、どういうこと！？ まだ昼前だよね？」
「火事でも起きたわけ！？」
このままだと閉じ込められてしまう……２人は慌てて、非常口に向かって走り出した。
だが２人がいたのはモールの結構端の方だったため、非常口まで距離がある。
案の定――非常口にたどり着く前に、２人はシャッターに行く手を阻まれてしまった。
「ちょ、これヤバいって……さっちゃん、どうしたらいいの？」
「加奈こっち、まだ閉まってない所ある――」
２人が反転して、別の通路に向かって走り出した――その時だった。
――ドォオォォン！！
突然爆発音が響き、視界に激しい火花が走った。
そして間もなく――天井パネルがバラバラと、通路の上に落下してきたのである。
「えぇっ！？ ちょ、これどういうこと――」
何が起きたのか良く分からないまま――加奈の意識は闇に沈んだ。
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やはり同じ頃――１階催事コーナーの水着売り場。
突如として、モールのあちこちで防火シャッターが閉まり始めたことに、
買い物客たちは半ばパニックに陥りかけていた。
その中に、水着を物色中だった木更津茜や習志野飛音、陽炎や黒潮、冬雪や夏月らがいた。
「おい、いきなりなんだってんだよ？ シャッターが……サイレン鳴ってないだろ！」
「ちょっ……このままじゃ、みんな閉じ込められちゃうじゃん！？」
「防火システムの誤作動でも起きたの！？」
「何これ、ヤバくない？ 冬雪、早く出てきてよ、何やってんのよ！」
「えぇっちょ……まだ着替え終わってないよ！！」
「間に合わない、もう上から着たら良いじゃん、急いで！」
「えぇっ、このまま服着るの！？」
彼女にしては大胆な、ビキニ風の水着を試着した冬雪が、試着室で１人パニクっている。
脱いでいるヒマはない……急いで水着の上から服を羽織った。
非常時なら、仕方なかったと説明すれば、店の人も許してくれるだろう。
「――どうしたの、火事！？」
「分からない……サイレンは鳴ってないって、習志野さんが」
「でも火の手が見えたって言ってる人がいたよ――」
陽炎がそこまで言いかけた時――再び大きな爆発音が連鎖的に響いた。
「ひゃぁあぁっ！？」
「ぅわっ何！？ いったい何が起きてるの！？」
「まさかこいつは――テロか！？」
動揺しまくってる少女たちの中で、比較的冷静だったのが“陸自娘”組であった。
“軍事基地の化身”である彼女たちは、突然起きた事件の本質を鋭く嗅ぎ取ったらしい。
「そうだよね……あたしもこれ、事故って感じしないわ」
「くそっ……こうなると分かってたら、銃を持ってきたってのに……！」
「いや習志野はん、そりゃ幾ら何でも無茶やって……」
「でも何か変な雰囲気だよね」
“艦娘”たちも事件の不穏さを感じたようだ。
背景に何があるのかは見えてこないが、どうもただの事故ではないと思ったのだ。
這々の体で吹き抜け広場の方に駆け出してきた彼女らは、３層吹き抜けの天井を仰ぎ見る。
「見ろよあれ……どう見ても火事や事故じゃないぞ」
習志野が指差した先には、火花と煙を上げる壁面……２階や３階の、複数箇所で起きていた。
ただの事故なら、こうも複数箇所で連鎖的に起きるのはおかしい。
「すぐに特調か、サイトＧに連絡入れなきゃ！」
「それが……通じないの」
「何だって！？」
夏月が手にしたスマホの画面には、“通信切断”を意味するマークが。
その時――少女たち全員が、事態の本質を悟った。
「畜生……まんまとハメられた、ってことかよ……！」
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「――日野市のショッピングモールでテロ事件だって！？」
立川基地の防衛特調が、プラズマモールの“事件”の第１報を知ったのは、数分後だった。
ブルックリン事件の情報を精査していた、臨時司令部に緊張が走った。
第１報を入れたのは、Ｇフォース科学部にいた本郷である。
『“プラズマモール”にいる知人からかかってきた電話が途中で切れた』
そう――本郷は３週間振りに再会した、結城と電話している最中に、異変を知ったのである。
電話の奥でザワザワとした、困惑する買い物客の声も聞き取っていたようだ。
「モールの近くにある駐在所に、モールで爆発音が聞こえたという通報もあったようですね。
念のために私自身も茜さんや習志野さんに連絡を入れてみましたが、つながりません」
これは市ヶ谷である……同志が音信不通になっていることも、異変の実態を強く示唆している。
「どうやら事件を起こしたのは、渋谷事件を起こしたあの“ショッカー連合”のようですね。
首謀者たちから、先ほど“犯行声明”も出たようです」
そう言って、権堂が会議室のモニターを切り替える……すぐに“臨時ニュース”の画面が出た。
緊張した表情のリポーターが、現地から送られた映像について報じている。
『日本の諸君、我々はショッカー連合である……この国に革命をもたらすためにやってきた。
プラズマモール多摩日野は今、我々の支配下にある……余計なことは考えぬことぢゃ。
日本政府に要求する、まずはこのプラズマモールから半径30kmの地域を我々に提供せよ。
さもなくばモール内の人間は２度と戻ってこないと心してもらいたい。
色々と手続きもあることぢゃろう、24時間だけ待ってやる……朗報を期待しておるぞ』
それは白スーツの老人――死神博士が、４階の多目的ホールから“声明”を送る映像であった。
黒木は深呼吸をして、非常事態を前に精神を落ち着ける。
「随分と不敵なヤツだな……本郷殿、見たことのある人物ですか？」
『ショッカー連合の“死神博士”、最高幹部の１人だ……ヤツがわざわざ前線で指揮を執るとはな』
リモートモニターの奥で、苦虫を噛み潰した表情を浮かべた本郷が、吐き捨てるように言った。
「つまり――連中はそれだけ“本気”ってことか……しかしモール１つ丸ごと占拠するとは。
おまけにモールから半径30kmを提供しろと……テロと言うよりも“侵略”じゃないか」
『24時間待つと連中は言ってるが、悠長には構えていられない、すぐに動かねば人質が危ない』
「タイムリミットの前に、人質に手を出すというのですか？」
眉を潜めて言う富谷に、同じく眉を潜めて本郷が言葉を返す。
『連中は人質を開放する気などないだろう、改造人間の戦力として消費するのが目に見えている。
もたもたしていたら、人質がショッカー連合の戦闘員に変えられてしまうだろう。
あのブルックリン事件で“カリオスパーク”を使った、ディスヴェリオンと発想に差はない』
本郷の言葉に、会議室に居合わせた一同が愕然とした。
「改造人間の戦力って……それじゃ人質って言うよりも、もはや“拉致”じゃないですか！」
「制圧したモールの市民を戦力にするって、いつの時代だよ……奴ら、国際法も度外視なんだな」
信じられない、という表情の尾形の横で斉藤が吐き捨てる……佐津間も首を振った。
『ショッカー連合は世界の支配者を目指している……現行の法律なんて連中には全く無意味だ』
「話が通じないというのなら、益々急がねばなりませんね……黒木室長、どうします？」
権堂の言葉に、黒木は静かに頷いた――既に、答えは出ていたようである。
「権堂２佐、佐津間３佐、すぐに作戦本部を立ち上げてください……迅速な行動が必要です」
「政府が決断する前に動けるでしょうか？」
「合同庁舎の対策本部には私が確認を入れます……少なくともテロリストに屈する選択肢はない。
皆さんはいつでも動けるように準備を整えておいてください！」
黒木の号令と共に、会議室が慌ただしく動き始めた……斉藤や佐津間、富谷はすぐに散会する。
「黒木室長、我々も協力したい……是非指示を！」
これは龍二だ……ゾイド紛争でも活躍した異世界の工作組織“竜王”の現場リーダーである。
彼の傘下にあるメンバーの多くはいわゆる“異能者”だ。
「高山殿は防衛隊の富谷３佐の指示に従ってください……ショッカー連合というのは確か、
強化兵が主力のテロ組織です……間違いなく、あなたたちが必要になります。
本郷殿、可能ならショッカー連合の情報について、高山殿と連携して頂けますか？」
『承知した……すぐに立川基地に向かった方が良いか、それとも現地に集合しようか？』
「現地で合流した方が手間を省けそうですね」
龍二の言葉に、本郷も軽く頷く……既にゾイド紛争で共闘した関係でもある。
『分かった、じゃあ現場で会おう……そうだ、門矢君や小野寺君にも連絡を入れておこう。
彼らもマイティライダーズの理念は分かってくれているはずだ』
「では、宜しくお願いします……取り合えず30分ごとに、関係所管に確認の連絡を入れます。
政府と対策本部が決断次第、作戦を開始します！」
新たな危機に、今世界を越えた有志たちが連携して動き始めた。
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| （１２章３話） |
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【Meking Memo／設定補記】
2024年に執筆したエピソード。
ただし構想自体は旧ＯＷ企画打切り前からあり、想定していたアクションハイライトの１つ。
ショッピングモールでショッカー連合と異世界の有志たちが激突する展開であり、
ショッカー連合にとっては初期の“渋谷事件”のリベンジマッチとなる他、
加奈や零児といった、ＯＣＤ世界出身の少年少女たちの転機となるエピソードでもある。
株主総会を開催していたホールが立て籠もり事件の中枢になることは以前から構想しており、
要求が金銭ではなく“領土”であることも実は旧ＯＷ企画の時から考えていた。
世界征服や革命を目指すショッカー連合には、身代金目当ての人質事件は似合わないからだ。
どこかの侵略国家のように、制圧した町を軍事資源にする方が「らしい」と思う。
事件を知ってからの防衛特調の動きがかなりコンパクトだが、既にゾイド紛争後の話なので、
非常事態にどうしたら良いかは、大体分かっていると踏んで書いている。
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