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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（OSLM-ADW2） |
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うっそうと茂った怪しい森、ギザギザの険しい山地、不気味に曇り、時折稲妻が煌く空……
ギャアギャアとけたたましい声を上げ、翼竜のような怪鳥が天空を舞う。
……ここは、通常の“地上”ではない。
アーク超宙域――別名“地球魔界”。
数多い地球（アーク）の並行時空の１つであり、破壊者（魔族）たちの深淵なる巣窟である。
――突然、赤茶色の怪鳥の群れを切り裂くように、
やや紫がかった黒色の怪生物が数体ほど翼を広げ、奇声と共に飛び去っていった。
その背中には、黒い甲殻に覆われた、身長３ｍほどの異形の巨人が乗っていた。
甲殻からはみ出した筋肉が、淡いオレンジ色の輝きを放つ。
巨人の名はゼルガ・ローヴ。
宇宙で活動する破壊者“ゾアクロイド”の１種、ゾーリックの暗殺者として知られている。
ゼルガが乗っている“魔獣”以外の個体にも、異形の“魔人”がそれぞれまたがっている。
５つの目と外骨格のような機関に覆われた魔人や、ぎょろりとした単眼の魔人。
いずれもこの薄暗い魔界で、灯が集中している方向に飛んで行った。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 序章 第１部 ★
アーク超宙域――金角兄弟の壮大な野望
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やがてゼルガらを乗せた怪生物は険しい山脈を越え、開けた平野に到着した。
その平野の中央に、恐らくは都市であろう、巨大な構造物の複合体が発達していた。
巨大な魔界都市の中央部は陥没し、その地底ではマグマが煮えたぎっている。
そしてその火口のような溶岩湖から、巨大な岩山がそびえ、途中でキノコ状に広がって発達していた。
地球魔界最大級の破壊者連合国家、魔修羅連合の首都“マジュラザイト”である。
“邪鬼族”ことメイジェロムを中心に様々な破壊者種族やその亜種が住み、膨大な人口を抱えている。
ゼルガらを乗せた怪生物は、そのキノコ状の岩山（構造物）の頂にひときわ高くそびえる、
漆黒の巨大な城砦へ向かって飛んでいった。
キノコ状の構造物は稲妻状の防壁に護られていたが、怪生物が接近すると、道を開いた。
徐々に近づいていく城砦には、２人の人間型の影がゼルガの到着を待っていた。
人間型、とは言っても、１人は２ｍを超す体格で青白い肌を持ち、
辮髪を垂らした頭部には銀色に光る２本の角があった。
彼は魔修羅連合の副総統に当たる、メイジェロム高位体の戦士・銀角……連合軍の大将でもある。
もう１人は緑色の甲殻に覆われた、こちらも大柄な魔人で、３対６本の腕を持っていた。
彼は魔修羅連合の軍高官（中将）である、ディルギアン亜種のディプス。
因みにディルギアンも、ゾアクロイド（宇宙魔族）の１種である。
ゼルガを乗せた怪生物は、城砦上部にあるデッキに降り立ち、頭を下げてゼルガを降ろそうとした。
もっともゼルガは、その必要もないと言わんばかりに、ひらりと跳躍してデッキに降り立った。
そんなゼルガに、ディプスが歩み寄ってくる。
「よく来たなゼルガ……金角総統がお待ちかねだぞ」
「砕獣魔とやらは乗り心地が悪いな……誰が調教したんだ？…良く言い聞かせとけ」
そう言いながら銀角の横を過ぎて城砦の奥に向かおうとしたゼルガを、銀角がたしなめた。
その体には静かながらも威圧感のある妖気が満ちている。
「調子に乗るなよ……俺はまだ貴様を認めてはいない」
そんな銀角の態度を、ディプスは「やれやれ」といった態度で逆にたしなめた、毎度なのだろう。
「よせ銀角……これは総統の意思だぞ」
「総統の意思？……それがどうした、俺には関係ない――第一なぜこんなヨソ者が絡むんだ」
不満をぶち上げる銀角に、ゼルガも反応する。
「それは違うな……今回の計画は、我々にも関係がある…小国だけの問題ではない」
「……魔修羅が小国だと言うのか？――いい度胸をしてるな、貴様」
「……宇宙から見れば小さな世界だ」
飄々としたゼルガの態度に、銀角は妖気の圧力を上げる……ディプスもこれには賛同したようだ。
「おい待てよ……小国は言い過ぎじゃないのか？ いくら戦友のお前でも聞き捨てならんな」
「小さな世界に違いはないだろ……第一、お前もゾアクロイドだろう……
亜種とはいえ、ディルギアンにしてはちょっとばかり、視野が狭いんじゃないのか？」
「この野郎……下手に出てりゃ……その減らず口、少し調教した方が――」
「……その辺にしておけ」
一触即発の空気を、奥から出てきた男が制止した。
銀角とほぼ同じ体格、青白い肌に、紫色の長髪と金色の２本の角がよく目立つ。
魔修羅連合の総統、金角である……銀角の兄でもある。
「ここは私の城だ……こんな所で暴れてもらっては困るな」
「何故だ兄者……なぜ我らの問題にヨソ者を使う？」
銀角は納得が行かないという表情で兄――金角に詰め寄った。
「“大いなる計画”のためだ……ゼルガが言う通り、今回の計画は１国レベルのモノじゃない……
そもそもディプスも、ジェドもそのためにここに招いたのだ」
「一体何なんだ……この魔修羅ですら、手に余るほどの計画があるというのか？
あの“元魔”とて、我が軍の誇る“浮遊母艦”１隻で十分落とせると見られているではないか」
「はて……あの母艦の整備には、宇宙技術も流用したんじゃなかったかな？」
横槍を刺したゼルガを、銀角は殺気を込めた目で睨む。
そんな弟の態度を再び兄がたしなめた。
「いずれ話す……今は言う通りに動いて欲しい……悪いようにはしないさ」
その言葉を聞いた銀角は、憮然とした表情でその場を去った。
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数分後――金角とゼルガ、ディプスは、城砦の上部中枢に当たる、謁見室にいた。
またそこには、もう１人の魔修羅高官もいた。
ディプスに似た緑色の甲殻に覆われ、湾曲した２本の角が特徴的だ。
彼の名はジェド・ア・イーグ。
ディルギアンの古い血統の末裔に当たり、ゼルガとも顔見知りのクールな魔人だ。
「ジェド……もう来ていたのか」
「銀角から聞いたぞ、魔修羅が小国だと言ったらしいな……だが意外に大国だぞ、ここは……
いや、これから大国になると言うべきかな？」
ジェドの思わせぶりな言葉に、ゼルガは腕をアゴに当てて低く笑った。
「ふ……なるほどね、そういう狙いか……」
「悪い話ではないだろう？ 貴君も“ヴァーツ”とは距離を置いているそうじゃないか。
いや貴君だけではないな――“闇の使徒”がそうだと言った方が良いか」
“ヴァーツ”とは、宇宙で最も規模の大きな破壊者連合の１つである。
破壊者種族全般に絶大な影響力を持つが、当然にしてその権威主義に反発する者も少なくないのだ。
マジュラザイトは今、そういった反ヴァーツの野望を持った破壊者種族の、巣窟となっていた。
「まぁ……確かにそうだな」
「しかし……あの“オメガ”がヴァーツに反旗を翻すとはな……元はヴァーツの幹部だったのに……」
「反旗を翻したのではない……我が同志は“進化”だと言っていた……
もはや、ヴァーツの１部ではない、ということらしいな」
「……ふ、そいつは頼もしいコトだ♪」
“悶着話”はいつしか、本筋である“計画”の打ち合わせへと入っていった。
金角がゼルガに“計画の進捗”について訪ねる。
「それで……そちらの状況は？」
「悪くない……時空の不安定化は極限まで発展している……だが、１つ問題がある」
「問題とは……？」
「最後の“引き金”が足りない……それさえあれば、地上に無数の“ゲート”を開くことが出来る。
だからここに来たのだよ――“アレ”を使わせてもらおうと思ってね」
ゼルガの言葉に、金角はなるほど、という表情を浮かべた。
「そういうことか……確かに“アレ”なら良い刺激になるな」
「貴公が同志の計画に賛同していることに感謝するよ……“アレ”は時空を越えた“秘宝”だからな」
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その頃、金角の城砦“魔修羅城”の地下。
溶岩湖の湖面スレスレに展開する迷宮のような構造物が、魔修羅連合軍の総本部である。
全長４ｋｍを超す巨大な兵器、コンロン級浮遊戦闘空母も、ここで整備されている。
魔界の勢力地図を書き換えるために、これらの母艦は建造されていた。
そんな浮遊空母の１隻、コンロン級３番艦“アルタイ”のドックを望むデッキに、銀角がいた。
軍の大将の階級を持つ銀角は、魔修羅連合の副総統であると同時に、軍の総司令官でもあるのだ。
……と、そこに、身長２ｍほどの体格を持った、メイジェロムらしき男が歩いてきた。
小さいが分厚い丸眼鏡をかけ、灰色のローブでほぼ全身を覆っている。
彼の名はアギーラ。
魔修羅連合軍の、生物化学兵器開発部“マジュラ・バイオサイト”の技術者の１人である。
「ご苦労様です、副総統……いえ総司令」
「なんだ、お前だけか……ナギルは、他の連中もどこにいるのだ？」
「……“因子取得”の為に、出張しているようで御座います」
「お前は行かなくていいのか？」
「いえいえ、総司令のために、お時間を取って参りました」
「言うじゃないか……まぁいい……で、進捗状況は？」
お世辞を言うアギーラを適当に交わして、銀角は本題に入った。
「ようやく、合成因子の相性が判明してきまして……これから本格的に開発出来ると思われます」
「そうか、面白くなってきたな……“劫獣魔”だけでは物足りなかった所だ」
アギーラの“近況報告”に、銀角はほくそ笑む。
１方アギーラは、銀角から別の情報を引き出そうとしていたようだ。
「ところで総司令……あのゼルガとかいう男は何者で？」
「ん、お前あいつに興味があるのか？」
「……あ、これは出過ぎました……余計な質問をしたようで御座います」
「いや、いい……“オメガ”にくっついてる腰巾着さ……ヨソ者のくせに態度がデカいやつだ」
「魔修羅が本懐を遂げるための計画だと総統閣下は仰っておられましたが……」
「富国強兵とかいうヤツだろう……しかし魔修羅の力なら独自で発展できるハズだ……
この力さえ使いこなせば、この魔界に怖いモノなどあるわけが……これから始める作戦とて――」
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「腰巾着とは酷いな……俺は自分の意思で動いてるんだぜ」
気付くと、ドック展望デッキの外れに、ゼルガとジェドが立っていた。
連絡もなしに基地を訪れた“生意気な余所者”を、銀角はまるで敵でも見るような眼で睨みつける。
だが、当のゼルガはまるで意に介さない。
「ヨソ者が何しに来た……ここは俺の管轄だ……第一ジェド、なんでこんなヤツを入れた？」
「そう言うなよ……ゼルガが大将殿と話したいと言ってたんでな」
「帰れ……話すことなど何もない。俺はこれから大事な戦略会議があるのだ」
「金角総統から聞いたぞ……貴公は地上の人間共に、強い敵意を抱いているそうじゃないか。
……何でも“技術を奪われた”とか？」
ゼルガのその言葉に、銀角は苦虫を噛み潰したような表情で舌打ちをした。
「兄者め、余計なコトを……あぁそうだよ、それがどうした！
……いいかゼルガとやら、これは魔修羅の、いや、俺達がケリをつける問題なんだよ！」
「それで？……地上に攻め込んで人間共を滅ぼすか？
だがお前達メイジェロムの生命力は、人間の憎悪と深くリンクしているのだろう？」
魔族の異名を持つ破壊者は、憎悪や怨念という感情のダークサイドを生命力の糧にしている。
それは同じ破壊者よりもむしろ、知的に未熟な人間の方が都合が良いのだ。
特に今の人間は個体が多い――1000万の魔族よりも10億の人間の方が「使い勝手が良い」のである。
しかも魔族は自身の魔力の使い方が分かっているため、逆に使い勝手が悪いこともあるのだ。
ゼルガの指摘を受けて、銀角は再び苦い顔をした。
「……滅ぼそうとは思っていない、ただ報復をするだけだ」
「それは自分達が優位に立つためだろう？
……視野を広く持てよ、この宇宙でも優位に立ちたくはないか？」
「立ちたいね……だが、ヨソ者の手を借りる必要はない」
「分かってないな……ここは“オメガ・シード”の封印地だということを忘れたか？」
オメガ・シード。
それはかつて、銀河系に多大なる脅威をもたらした、魔神オメガの“小片”である。
太古の時代、オメガは銀河の覇権を巡って神々の連合軍と熾烈な戦いを繰り広げて、敗北したのだ。
敗北したオメガの肉体は無数の小片に分割され、
銀河の中心の超宙域（異空間）や、辺境の惑星に封印されたのである。
それから悠久の時が経ち、封印地の１つに新たな生態系が誕生し、独自の進化を遂げた。
それこそが――現在の惑星アーク（地球）である。
「オメガ・シード……あの“魔神の種”か」
「この超宙域も、お前達メイジェロムも、いや地上の“ザイオロード”たちも、
元を正せばオメガ・シードの影響によるものだ……これでも、魔修羅だけの問題と言えるかね？」
ゼルガの持ち出した“交渉の切り札”に、わずかに殺気を緩める銀角。
「まさか貴様……あの魔神の種を利用する気か？」
「必要があれば、な……だが、俺には直接の決定権がない――本来“同志”のものだからな」
「まさか……あの魔神が……この世界に来ているのか？」
事態の背景に気付き、顔色を変えた銀角に、ゼルガは仮面のような顔の奥で含み笑いをした。
「あぁ――“同志”は今もこの世界のどこかで、我々の動きを眺めているよ」
ゼルガの言葉に、銀角は思わず天を仰ぎ見た。
もちろん、そこに見えるのは基地の殺風景な天井でしかない。
どうやら“オメガ”とは、銀角ほどの魔人に、思わずそうさせるほどの存在なのだろう。
「兄者が言っていた『時が来た』ってのはそういうことか……とんでもない事態になるぞ？」
「我も最初はそう思ったが……今は悪くない話だと思っている」
ジェドのフォローを更に保管するように、ゼルガは言葉を加えた。
「こういう事態は、間違いなく激動を引き起こす……それは最初から承知の上さ。
第一激動と混乱は、我々破壊者の望む状況だろう？」
「……ふん、言うじゃないか」
銀角は口角を上げた……ゼルガに対して、初めて笑みを見せた形になる。
その反応を確かめるように、ゼルガは新たな提案を銀角に投げかけるのだった。
「ところで……今人間界で１つ工作を進めてるんだがな……
貴公も付き合わないか？ 貴公の“恨み節”にも、多少とも関係するコトだぜ♪」
銀角はふん、と鼻を鳴らして腕を組んだ……その眼がぎらりと光る。
「ヨソ者と組むのは気が進まんが……人間共を苦しめる結果になるなら、考えなくもないか。
だが――楽しませてくれるんだろうな？」
「もちろんさ――きっと、期待以上のものになるだろうよ」
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| （本編へ続く／魔界大戦前編） |
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【Meking Memo／設定補記】
2006年頃に執筆したエピソードを、2024年に再編したもの。
旧ＯＷ企画の際に“魔界勢力の暗躍”というテーマで書いた広義のエピソード・ゼロであり、
ＧＤＷ世界観における「魔界の解釈」を説明することを兼ねている。
ただしＰＡシリーズとは登場キャラクターなどが１部異なっているので、そこは改修を加えており、
現在の世界観の背景に合わせて調整したものになっている。
また原文は既に“魔界大戦”が勃発した後という前提で書いていたが、勃発前夜に修正した。
これは別に魔界大戦と連動するエピソードを新たに執筆したためである。
次元融合変動が起きる前後に、魔界で起きていた「裏方の暗躍」という形でプロットを調整し、
それが魔界大戦と連動していることを示唆するものとなっている。 |
