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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CMS2130802F） |
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「――おい、明日也どこに行った！？」
ショッカー連合の“立て籠もり”が続くプラズマモールの３階ゲームセンター。
剣屋明日也の友人である、小堀川竜太郎が急に大きな声を出した。
いつの間にか――明日也の姿が消えていたのだ。
“ガンダム男”ガレスが戦闘員を撃破したことで、３階ゲームセンターは半解放され、
まだ１階に降りては行けないものの、比較的落ち着いた空気になっている。
あちこちでシャッターが閉まっているので、追加の戦闘員も上がってこないようだが、
それにしたって小学生１人、テロ事件真っ最中のモールでウロウロするのは余りに危険だ。
明日也は年齢以上に「ませている」ので、そう勝手な行動は取らないはずなのだが。
「えっ、トイレじゃないんスか？」
「さっき見に行ったけど、いなかったんだよ……あいつどこ行ったんだ、こんな時に」
壮太の言葉に竜太郎は不安そうな表情で言葉を返す――そんな時。
「もしかして……神隠し？」
ふと――“自称魔女”の令子がそんなことを呟いた……思わず苦い顔をする竜太郎。
彼女のオカルト好きはよく知ってるし、個性的な自分設定を竜太郎も尊重しているが、
さすがに今そういう話をするのは野暮だろう……竜太郎だから落ち着いているが、
言う相手を間違えると、不謹慎だと批判され兼ねない。
返す言葉がなく、竜太郎が困惑していると……
「いや――さすがにそれはないんじゃないッスか？」
代わりに令子にツッコんだのは壮太だった。
“同志”の壮太にダメ出しを食らい、今度は令子の方が苦い表情を浮かべる。
オタク気質の壮太だが、ここでそういう話は場違いだと、さすがに分かっていたようだ。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 第12章 怪人たちの逆襲 ★
2013年8月2日―日本・プラズマモール事件其の６
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そしてこちらはプラズマモール２階奥――ディアスたちとナイトラプターが対峙する現場。
不安そうな表情を浮かべるディアスとカズヤに、ナイトラプターがにじり寄る。
「く、来るなよカラス野郎！」
「勘違いするな小僧、これはツバメだ、動物図鑑を見直すんだな」
「ど、どっちだって良いだろ！」
そんなナイトラプターとディアスの間に、木更津柚子が割って入る。
「ちょっと、来ないでくださいって言ったでしょう！」
「貴様まだ邪魔をするか、人間でもない者がどうしてそうまでして人間の味方をする？」
困惑するディアスと軽く視線を交わした柚子は、改めてナイトラプターを睨み付ける。
「私は自衛隊の化身ですから――国民を守るのが使命です」
「自衛隊の……化身？」
意味がよく分かってないディアスを横目で見る柚子は、声質を変えてフォローを入れた。
「これが終わったらまたゆっくり話しますディアスさん、でも信じてください」
「下らんな……茶番は終わりだ――お前たち、こいつらを捕らえろ」
「イィイィィィィィーーー！！」
ナイトラプターの“指示”と共に、黒い戦闘員たちがディアスたちを襲おうとしたその時。
――ツキュウゥウゥゥンッ
聞き慣れない電子音と共に１条の光線が斜め上から差し込み、先頭の戦闘員を叩き伏せた。
「えっ……！？」
「む――何だこれは！？」
見上げるディアスとナイトラプターの視線の先にいたのは――“ガンダム男”ガレスだ、
ガレスはゆっくりとフロアに降り立つと、“ビームライフル”の銃口を戦闘員らに向ける。
「これって……ガンダム？」
「なんか……人の顔っぽいの付いてるけど」
「そうか……貴様が３階の戦闘員を掃討した、もう１人の異能者というわけか！
何者か知らぬが、我らショッカー連合の邪魔をするならば、貴様も容赦はせんぞ！」
ナイトラプターはそう言って、背中から大きな“翼”を引き出し、ガレスに飛びかかった。
ガレスは手にした“盾”でナイトラプターの突撃を受け流すと、
背中の“ランドセル”から青白い炎を噴き出して、空中に飛び上がった。
そしてそんなガレスを、ナイトラプターも更に追撃する。
モールの吹き抜け空間で、怪人と“機械人”の激しいドッグファイトが始まった。
ガレスは手にした“ビームライフル”を発射するが、ナイトラプターは鮮やかに交わす。
広いとは言えない回廊状の吹き抜けの中で、重力を無視したような機動だ。
しかしその“流れ弾”を受けて、更に数体の戦闘員が壁際に弾き飛ばされていった。
いや――最初からナイトラプターを撃つと見せかけて、戦闘員を狙ったのかも知れない。
「す、すげぇ……いったい、何が起きてるんだ！？」
「ディアス兄ちゃん、きっとあのガンダム、僕らの味方だよ！」
実はカズヤは――“脳内高校教師”一也の“助言”を受けていたのだ。
（あのガレスという“ガンダム男”はこっちの味方だ、警戒する必要はない）
（あんたどうして、そんなことが分かるのさ？）
……ですよねー。
（……今は言えない、だが信じてくれ、君と体を共有する私が嘘を言うと思うか？）
どうやらこの“脳内教師”、カズヤに言えない何かを知っているらしい。
もちろん――そんなやりとりは、ディアスには聞こえていない。
「……どうしてそんなことが分かるんだよ？」
「え、え〜と……何となく」
僕も同じことを一也に尋ねたよ、と思いつつも、カズヤは言葉をはぐらかした。
そして柚子もそれをフォローする。
「でも確かに、私たちを庇っているように見えますね」
「……そうッスね。 人間かどうかなんて、もうどうでも良いのかな？」
「今のうちに、この瓦礫を撤去してしまいましょう！」
しかしそんなディアスたちに、今度は別の戦闘員が横槍を挟もうと迫ってきた。
「くそっ、あっち行けよ！」
大ぶりのパンチを繰り出す戦闘員の攻撃を、必死で避けるディアス。
彼もいちおう空手部だ……ケンカは苦手だが、体捌きの心得は他の人よりある。
そして空を切った戦闘員のパンチは、瓦礫の１部を抉るように破壊した。
その威力を見て血の気が引いたディアスだが――ふと、何かを思いついたようだ。
「へ、へーんだ、そんなパンチ、何ともないぜ、バーカバーカ！」
「ちょっ、ディアス兄ちゃん、あんまり煽ったら――」
「別に良いんだよ、良いからカズヤは来んな、端に寄ってろ！」
そんなディアスの“挑発”の意味を、柚子もすぐに察したようである。
「そ、そうですよね、こんなの全然大したことないですよ！」
「そうッスよ、おいお前ら、その程度で終わりか？ クソの役にも立たねーな！」
感情の起伏が乏しい戦闘員だが――煽られているのは分かっているのか、
再び奇声を上げて飛びかかってきた、しかも２人一緒に。
かなりスピードを上げて突っ込んでくるが、ディアスと柚子はギリギリまで引きつけて、
戦闘員のモーションが“最終段階”に入ったのを見計らって、ぱっと横に飛び退いた。
そして２人を殴り損ねた鉄拳と黒い体は――そのまま瓦礫に突っ込んだのである。
トラックでも衝突するような勢いで瓦礫がひしゃげ、戦闘員がめり込んでいく。
そう――これがディアスの“作戦”だったのだ。
人間が食らえば命の保証はないが、だから瓦礫の撤去に使えると考えたのである。
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そしてこちらはプラズマモール１階奥――リザードロンとジーラが対峙する現場だ。
突然トップライトを蹴破って殴り込んできたジーラに気を取られて、
リザードロンの手が離れたのを見計らい、健一郎と葵はすぐに怪人から距離を取った。
「あっ――このガキ、俺が簡単に逃がすと思って……」
「おいトカゲ野郎、どこ見てんだよ！」
健一郎をもう１度確保しようとしたリザードロンだが、すぐにガクンとつんのめった。
ジーラがリザードロンの長い尾を掴んだのである。
「ぬぉっ……この野郎、離しやがれ！」
「だぁれが離すかダァホ、てめぇの相手はおいらだ！」
「じゃかぁしいわヴォケ――俺の邪魔をするんじゃねぇよ！！」
振り向きざまに太い腕を振り被るリザードロン――ジーラはその拳にタイミングを合わせ、
自分の拳を叩き付けた――まるで岩をぶつけるような轟音が響く。
「ぐぅっ……この野郎、見た目によらず馬鹿力じゃねぇか！」
「てめぇもな！――あぁクソ、めっちゃ痛てぇ！」
衝撃でビリビリと震える腕を一緒に振るジーラとリザードロン、ちょっと可愛い。
そしてそんな“激闘のゴング”を、呆然と見つめる健一郎と葵に、斉藤が駆け寄ってくる。
「２人とも、こっちに……あの怪人は彼に任せるんだ！」
「で、でも……対話による交渉が……」
「健ちゃん、まだそんなこと言ってるの？ 話が通じないの見たでしょ！」
「でも――簡単に諦めたら、平和が実現しないじゃないか！」
声を荒げる健一郎に、葵は思わず気圧された。
そんな健一郎の“平和主義”を見ていた斉藤は、さりげなく口を挟む。
「確かに……戦いを避ける交渉を、諦めずにやることは大事なことだな」
「そ、そうですよね？」
「けれども――それは自分がちゃんと無事であればこそだ……死んだら、元も子もない」
痛いところを突かれたのか、健一郎がぐっと顔をしかめて俯いた。
「暴力的な方法で解決を図ろうとするやつの相手をするのは大変だよ、俺も自衛隊員だからな。
戦わないで済むなら、それが１番良いさ……けれども相手がこちらの立場を認めないなら、
受けて立たなきゃいけないこともあるんだ、キミはどうしてか分かるかい？」
「……い、いえ……どうしてですか？」
「それが俺の――自衛隊員の仕事だからさ、自衛隊員は日本国民を守るのが仕事なんだ」
斉藤の言葉に、健一郎はハッとしてその顔を見上げる。
「平和を愛するのは素晴らしいよ、でも国民が危険にさらされたらそれを守らきゃならない。
国民を守るために戦わなきゃいけないんだったら、自衛隊員としては本望さ」
「…………」
黙り込む健一郎……激しく殴り合う２人の“獣人”を見ながら、更に斉藤は言葉を続けた。
「本当なら――あの怪人も、自衛隊員の仕事として俺が相手をしなきゃいけないんだけどな。
彼がやってくれると言ってくれた……感謝するしかないよ、日本人として」
「彼……ですか？」
「ジーラ殿だ……見た目は黒いウロコに覆われた獣人だが、彼は元々人間だった。
だから“元人間”として、人間の味方をし続けるんだと彼は言っていたよ、素晴らしいな」
「元人間……なんですね」
「確かに平和の訴えを簡単に諦めちゃいけない、暴力を容認すべきじゃないと俺も思うよ。
だからこそ――」
そう言うと、斉藤は真剣な眼差しで健一郎の肩をがっしりと掴んだ。
「だからこそ、キミは生き残らなきゃいけないし、俺も自衛官としてキミを守る義務がある」
斉藤の真剣な表情に、今度は健一郎が気圧される番だった。
「俺も彼も、キミを助けるためにここに来た……そのことを、出来れば覚えていて欲しい。
そしてキミが大事にする平和のために、これから今日の経験を活かして欲しい」
健一郎がそこで見たのは――まさに“防人”たちの強靱な覚悟だった。
それを黙って聞いていた葵は、口元に優しい笑みを浮かべている。
「この向こうに俺の部下が待っている……これから一緒にそこに行く、良いね？」
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同じくプラズマモール１階の吹き抜け廊下にて。
斉藤の右腕である西村が、結城と共に慎重に歩き続けていた。
「誰もいませんね……人質はどこに？」
「奥にある催事コーナーの周囲だったと思います……自分の知人も多分そこに」
周囲を警戒しながら、壁や柱沿いに歩き続けていた、その時だった。
「――あっ！？」
「イィイィーーーー！！」
間が悪く――折れ曲がった壁の死角で、戦闘員数人と鉢合わせてしまったのだ。
咄嗟にメーサーライフルを構える西村と部下たち――しかしその前で、結城が動いた。
飛びかかろうとする先頭の戦闘員に、右手の手刀を鋭く差し込んだのだ。
手袋を取った結城の右手は、銀色の義手であり、結城はそれで戦闘員の体を刺したのだ。
義手の指先はナイフ状になっており、戦闘員の胴体に深々と突き刺さった。
そこに弱点があるのか、戦闘員はあっさりと脱力し、すぐにぐらりとよろめく。
「戦闘員は腰に重要な制御装置があります、だから頭や胸よりも、腰を狙ってください」
結城の助言を受けた西村は改めてメーサーライフルを構え、照準を合わせた――その時。
「そこまでだ結城丈二――観念して投降しろ！」
通路の奥に、オオカミのような顔つきの獣人――いや怪人が戦闘員数人と立っていた。
「ゾル大佐……！」
結城は渋面を浮かべて呟いた……どうやら面識のある相手らしい。
そしてその腕には、30代くらいの女性が１人、後ろ手で羽交い締めにされている。
「ゾル大佐、か――懐かしい名前だな、今は“ブラッデイター”と名乗っているがね。
彼女が誰かは知っているだろう、人質らに紛れ込ませたつもりだろうが、甘かったな！」
「結城さん、私のことは気にしないで！」
ゾル大佐――いやブラッデイターが捕らえていたのは、緑川瑠璃子であった。
「気丈な女だよ……実に私好みだ、あぁそうそう、私も再生後に新たな能力を獲得してね。
私が血を吸った相手は、脳改造せずとも私の部下になってくれるんだよ」
そう言って、ブラッデイターは長い牙をきらめかせて不気味な笑顔を浮かべる。
不敵なブラッデイターに対して、結城は更に険しい表情になった。
「お前が投降しないなら、代わりにこの女を私の眷属に招き入れるだけさ。
私が結城を殺せと命じれば、彼女は何のためらいもなく、お前に刃を向けるだろうよ」
「誰がそんなことをするもんですか――痛っ！」
「ホントに気が強い女だ……ゾクゾクするよ、この女が私の意のままに動くんだからな」
結城の顔が引きつった、その時だ――ふと、吹き抜け通路に影が差した。
「ん、何だ――非常灯でも切れたか――」
振り仰いだブラッデイターの視界に、ツバメやカラスのような黒い影がのしかかった。
「ぬ――おぉおぉぉぉっっ！？」
ブラッデイターの叫び声と共に、黒い影――ナイトラプターが落下してきた。
大きな黒い翼が煙を噴いている……どうやら、ガレスの銃に翼を撃ち抜かれたらしい。
「も――申し訳ありません、隊長！」
「ナイトラプター、貴様何をしておるのだ、私の邪魔をするな！」
その隙にルリ子はブラッデイターから離れた――戦闘員が再び彼女を捕らえようとするが、
そこにメーサーライフルの斉射が撃ち込まれ、戦闘員たちは行く手を阻まれる。
西村２尉率いる自衛隊レンジャー部隊はその勢いで、ルリ子の周りをぐるりと取り囲んだ。
「要救助者確保――総員、要救助者の周りで弾幕を張れ！」
「おのれ結城丈二、戦闘員のなり損ない如きが小賢しい真似をしおって――」
計画が狂って激高した、ブラッデイターの背中からコウモリのような翼が広がった。
“新たに得た能力”の１部らしい――空も飛べる獣人だということか。
そのまま、援護の少ない結城に上から覆い被さろうとしたブラッデイターであったが――
空中で数条の光線がその翼を撃ち抜き、ブラッデイターはあえなく失速した。
「ぐぅ――まだ邪魔者がいたか！」
ブラッデイターの視界には、健一郎たちを確保した斉藤の姿が見えていた。
今し方ブラッデイターの翼に穴を空けたのも、斉藤のメーサーライフルであった。
どうやら――ブラッデイターは渋谷事件のダークシザースと同じ過ちを犯したようである。
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再び１階奥の“激戦地”。
ジーラとリザードロン、パワーに関してはほとんど互角のようである。
殴る蹴るだけでなく、投げ飛ばしたりもしたのか――周囲の壁や床にもヒビが入っていた。
「こっ、この野郎……ガキみたいな顔しやがって、クソ力めが……！」
「……どいつもこいつも、おいらをガキ呼ばわりしやがって」
お前いつも「おいらは永遠の14歳だ」とか言うてるやん。
……まぁ実年齢は五十路だろうけどなっ
「いい加減に――観念しろこのガキが！」
「そいつは、こっちのセリフだぜ！」
再び飛びかかるリザードロン、ジーラは上体をくるりと回してパンチを交わす――が。
その目の前にリザードロンの長い尾が飛んできた――先端にはトゲがある。
「うぉっ――」
必死で体を捻って交わそうとしたジーラだが、胸のすぐ下でトゲがぐさりと突き刺さる。
そして間もなく――ジーラの視界がぐらりと揺れ、リザードロンは笑みを浮かべた。
刺し傷の１つや２つでは、ビクともしないはずなのに、何が起きたのか。
実は――リザードロンの尾の先のトゲからは、神経毒を分泌するのである。
「っかはっ――何だ、これ……！？」
「グハハハ、引っかかったなガキが、それは俺様の神経毒だ、呼吸が止まるぜ！」
肺や血管が絞られるような感覚と共に、ジーラの頭から血の気が引く。
よろめくノーガードのジーラに、リザードロンは容赦なく、岩をも砕く豪腕を叩き付けた。
「――ごはっ」
ジーラの黒い体が10ｍほど吹っ飛んだ……すぐに立ち上がろうとするが動きが鈍い。
上手く呼吸出来ないようで、激しくむせる。
「あっが……ゲホッゴホッ――」
「ぎゃははは、苦しいか？ 苦しいだろう――いい気味だぜ、最高だ――」
更に鉄拳を叩き込むべく、リザードロンがジーラを見下ろした、その時であった。
――ゴッッ
「――ヵばっっ」
中腰で屈み込んでいたジーラが、ロケット弾のようなアッパーカットをぶちかましたのだ。
200kg以上は優にあるだろう、リザードロンの巨漢が宙に浮き上がる。
そして更にジーラは支えを失ったその胴体に、強烈な廻し蹴りを見舞った。
「ぉげっっ」
今度はリザードロンの方が吹っ飛ぶ番だった。
神経毒で呼吸困難に陥っているとは思えない戦闘力に、さしものリザードロンも動揺する。
「ぅがっ……ど、どうなってんだ……てめぇ、不死身か！？」
ゆらりと起き上がるジーラ……その目は炎のようなオレンジ色の輝きを放っている。
「不死身、か……そうだなぁ、何せおいらは――“ゴジラ”だかんな」
ぜいぜいと、まだ苦しそうな息だが、むしろさっきよりも気迫のレベルは上がったようだ。
加えて背びれにも淡く青白い、セントエルモの灯のような不気味な光が灯りだした。
ゾクリ――と、得体の知れない悪寒のような感覚が、リザードロンの背筋を突き抜ける。
それはまさに、リザードロンが初めて感じたかも知れない“恐怖”であった。
この子供のように若い顔の――体こそ逞しいが――獣人に、彼は今恐怖を感じているのだ。
改造人間であるリザードロンですら「得体が知れない」と思う相手は、想定外だった。
「冗談じゃねぇ……何なんだよお前、バケモノかょ……！」
想像を超えた対戦相手に困惑するリザードロンの前で、ジーラは両手を胸まで上げる。
その手の平は、既に背びれと同じく、青白い淡い光を帯び始めていた。
「バケモノじゃねぇよ……“怪獣人”なんだよ、理解出来ねぇだろうけどよ」
「分からねぇ……分からねぇよお前……畜生、ふざけんじゃねぇよ！！」
ゆっくりとにじり寄るジーラに、再びリザードロンが砲弾のように飛び出して突撃した。
両手を腰に据え、同時にパンチを叩き込むつもりのようである。
「いい加減に、観念しろっつってんだよォオォォ――！！！」
――ボッッ
それは轟音というよりも――まるでガス爆発のような音だった。
そしてそれから１秒経つか経たないかのうちに、全てを粉砕するような轟音が響き渡った。
それこそまるで――弾道ミサイルでも着弾したかのような。
両手を突き出したジーラの腕のベクトルの先には、巨大な穴がぽっかりと開いていた。
穴はコンクリートの壁数枚を軽々と貫通し、その先の中庭の奥の方まで続いている。
それはちょうど――ゾイド紛争でジェノザウラーが撃った荷電粒子砲の爪痕のようだった。
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| （１２章７話） |
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【Meking Memo／設定補記】
2024年に執筆したエピソード。
ただし構想自体は旧ＯＷ企画打切り前からあり、想定していたアクションハイライトの１つ。
ショッピングモールでショッカー連合と異世界の有志たちが激突する展開であり、
ショッカー連合にとっては初期の“渋谷事件”のリベンジマッチとなる他、
加奈や零児といった、ＯＣＤ世界出身の少年少女たちの転機となるエピソードでもある。
ジーラとリザードロンの激闘に当面の決着が付く１方で、新たに複数のフラグを立てている。
ナイトラプターに追い詰められるディアスたちを援護するためにガレスが駆けつけ、
１階の別所では結城と西村が新たな怪人ブラッデイターと対峙するのだ。
本文にもあるように、ブラッデイターは“ＰＡ版ゾル大佐”に当たるキャラクターである。
リザードロンとナイトラプターでは寂しかったので追加したのだ（爆）
また実はこの12章6話から、草案のない“完全新作”になっていたりする。
前話までは旧ＯＷ企画の時に試作していたエピソードに、加筆したものを使っていたからだ。
既に草案がある場合よりも自由度が上がる反面、プロットもゼロから作る必要があり、
G-maの文章構成力がより試されるというわけである（苦笑）
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