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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CMS2130802J） |
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プラズマモールのテロリスト籠城事件が収束したのは、午後14時過ぎだった。
自衛隊が主導した“オペレーション・ライデン”発動から約１時間後、
内外の有志の活躍に自衛隊や防衛隊の突入部隊の援護もあり、事件は解決した。
常識を越えた怪人兵団の襲撃にも関わらず、人質に犠牲者が１人も出ず、
戦闘に巻き込まれてわずかなケガ人を出すに留まったのは、ある種奇跡と言える。
とりわけキトラの活躍で「九死に一生を得た」株主たちのケースは象徴的だ。
人間側に味方した異能者の戦闘でモールの１部は損壊したが、
人的被害が最小限に抑えられたことを思えば、これは大きな問題ではないだろう。
実際マスコミも、この結果に対しては概ね好意的に反応している。
１部捻くれたメディアもあるようだが、終わり良ければ全て良しという発想だ。
「加奈さん――大丈夫？」
モールの外に出てきた加奈を出迎えたのは、冬雪たちや陽炎たちだった。
既に“銅像娘形態”を解除された状態で、人肌に戻っている。
因みにこれは、作戦開始後に現場入りした、ライカのフォローによるものだ。
偶発的に発動した能力だったため、加奈はまだ自力では元に戻れなかったからだ。
「う、うん……大丈夫」
「ホント、大変だったよね……心配だったよ」
「ゴメンね、心配かけて」
そう言いながら、加奈の視線はどこか泳いでいる……誰かを探しているらしい。
そして間もなくその視線が定まった――その先にいたのはディアスとカズヤである。
視線が合ったことに気付いたカズヤは遠慮がちに手を振るが、
ディアスは複雑な表情を浮かべて目を背けた……まだ割り切れていないのだろう。
幼馴染の少女に起きた、非常識な事態をまだ十分には受け止められないのだ。
おまけにその時――自分は全くと言っていいほど無力だったのだから。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 第12章 怪人たちの逆襲 ★
2013年8月2日―日本・プラズマモール事件其の１０
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「――あっ、いたッスよ！」
そしてこちらは３階のゲームセンター周囲で保護された少年少女たち。
“中２病戦隊”の１人・壮太が、はぐれていた剣屋明日也を１階駐車場脇で発見した。
すぐに竜太郎が駆け寄り、複雑な表情で明日也を叱る。
「明日也、どこに行ってたんだよ、心配したぞ！」
「ゴメンゴメン、気付いたらはぐれちゃってたみたい」
「こんな大事件で、どうしてウロウロ出来るんだよ、もう」
壮太の“同志”である令子もさすがに破顔している。
「神隠しじゃなくてホントに良かったわ」
「神隠しどころじゃなかったと思うんスけどね……獣化した怪人とかいたらしいし、
特にあの“ガレス”って戦士はホントに感動ものだったッスよ！」
壮太的にはやはり、“ガンダム男”ガレスの活躍が印象に残っているらしい。
「やっぱあれって、コスプレの類じゃないのかなぁ」
「いや、ビーム撃てるコスプレって聞いたことないッスｗ」
「じゃあ何だったんだよ……確かガンダムって、あんなに小さくないよな？」
「そうッスけど…… ――あれ？そう言えば」
竜太郎のツッコミに苦笑いする壮太だが、ふと何かを思い出したようだ。
「何日か前にも、人間大の“シャアザク”を見たことあるんスよ」
「シャアザクって、あの“３倍早い”やつ？」
「そう言えば、前もそんなこと言ってたわね、イエローは」
礼子は壮太を“中２病戦隊”チームのコードネーム“イエロー”で呼んでいるらしい。
因みに礼子自身は“パープル”だそうだ、別にどうでも良いが。
「そのシャアザクも、ヒートナイフで木を切って、そのまま飛んでったんスよ」
「……イミフなキャラだな、シャアってそんなことしないと思うけど」
「そうッスよねぇ」
そんな少年少女たちの会話を、１人の少年が遠巻きに眺めている。
複雑な表情をしている、やや髪の長い少年は零児だ――その時。
「あぁおったおった、探したでホンマに！」
「あ、難波」
「『あ、難波』ちゃうわ、どこにおってん、めっちゃヤバい状態やったのに！」
「そ、それはこっちのセリフだよ、探したんだからね」
「まぁ……無事で良かったわ」
「おーい、難波ぁー」
「ん、この声はカズヤやな？」
「他に誰がいるんだよ、どこ向いて喋ってんのｗ」
１人でもきっちりボケる関西人センス、何の役にも立たないがまぁ気にするな。
そんな哲朗と零児の所に、カズヤとディアスが歩いてきた。
「あーみんな、大丈夫だった？」
「何とかね、結構ヤバかったと言えばヤバかったんだけど、いや凄い援護があってさ」
「そ、そっか……良かったな」
「そーいやカズヤとディアス兄は、２階の方に降りていったんやんな？」
「うん、そうそう、そこでね――」
そう言って、カズヤは緊急事態に援護に入った、ガレスの話を２人にした。
ただ加奈に起きた“激変”は、さすがにカズヤにも言いにくかったようだが。
「人間大のＺガンダムって……いったい何が起きとるんや」
「さぁねぇ……でも凄かったよ、メガビームライフルでテロリストを次々にさ」
「人間大の初代ガンダムやったらこっちも見たんやけど、仲間かいな？」
哲朗もカズヤも、２人の“ガンダム男”が“同一人物”であることはまだ知らない。
ガレスが“モードチェンジ”した瞬間を、目撃していないからだ。
「どうだろ……零児も興味あるんじゃない？」
「そ、そうだね」
「何やねん、いつもの反応とちゃうな……さてはもっと凄いシーンを見てんのやろ？」
「え、えーと……ヒミツｗ」
あははは、と笑い合う小学生トリオの横で、ディアスはなお無言で立っていた。
複雑な表情のまま、愛想笑いをしながらも。
そんなディアスの素振りを、何故か零児も時折、ちらちらと見ていた。
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そしてこちらは“異能有志”たちのグループ。
変身を解除した１号ライダー＝本郷猛が、彼の仲間を同志に紹介している。
「改めて紹介しよう、俺の仲間だ」
「どうも、結城丈二です」
以下省略（をぃ）
「本郷さんの仲間ってことは、やっぱり“改造人間”ってことですか？」
遠慮半分、興味半分で質問した夕張に、本郷は頷く。
「その通り、茂は俺とほぼ“同型”だし、結城はいわゆる“サイボーグ”だからな。
あ、もちろんルリ子とおやっさんは普通の人間だが」
オマケでフォローされた２人の１人、おやっさんこと立花が本郷の背後で苦笑した。
因みにストロンガー＝城茂は今ここにはいない。
エヴィルスクライドの神経ガスを食らって負傷したため応急治療中なのだ。
その“野戦病院”は数十ｍほど離れた所に、自衛隊が開設したテントの中にある。
「そうか……あんたたちが、本郷さんが言ってた“異世界の改造人間”なんだな」
点滴と酸素吸入を受けているのが茂だ……もちろん既に変身は解いている。
そしてその目の前にいるのが、ジーラとキトラである。
実はジーラも先ほどまで同じ治療を受けていたが、今はほぼ回復しているようだ。
さすがは再生能力に優れた“ゴジラ細胞”の持ち主である。
「斉藤１尉から聞いたぜ、本郷のおっさんの後輩なんだって？」
「ジーラ……おっさんって、ジーラだって実年齢は結構行ってるじゃない（^^;）」
「いーや、おいらは永遠の14歳だっ」
……それ何回言うねん。
「まぁな、俺の体にはカブトムシの遺伝子が組み込まれてるから、力加減が大変でね。
マイティライダーズで備品を何度も握り潰して、おやっさんに怒られたよ」
「おー、その辺は良く分かるわ、おいらもキトラも昔よくやらかしたもんなｗ」
「慣れるまで結構時間がかかったよね」
「確かに大変だったよ……でも、周りが理解者ばかりで俺もラッキーだった」
そんな会話をしていると、ふとジーラが人懐っこそうな笑顔を浮かべた。
体つきこそ逞しいが、顔はかなり“童顔”なので、笑うと結構可愛く見える。
「よっし、じゃあ今度おいらと腕相撲しよーぜｗ」
「ちょ、ジーラ？」
「何だよいーじゃんか、おいらの筋トレに付き合えるの、キトラくらいしかいねーし」
「お、大丈夫か？ カブトムシは昆虫界最強だぜ？」
……そして再び本郷と元気な仲間たち（何）
「――ぇきしっ」
「ん？ どうした猛、お前ともあろうモンが風邪でもひいたか？」
「いやぁ、茂が俺の変なウワサでも流してんでしょ」
流してるのは茂じゃなくてジーラやけどなｗ
「それで――その“マイティライダーズ”って、まだ他にも仲間がいるんですよね？」
こちらは神通である……再び本郷と立花が同時に頷く。
「あぁそうだ……君らほどの大所帯じゃないが、それなりに数は居ると思うよ」
「猛や俺らを巻き込んだあの光が、他所でも仲間を巻き込んでないとも限らねぇしな」
「……でも仮に巻き込まれたとして、どうやって捜索すれば良いのでしょう？」
はぁ、と小さな溜息を吐くルリ子に、今度は木更津茜が回答した。
「それに関しては、多分だけど、防衛特調が手配してくれると思いますよ」
「本当ですか？ えぇと、その防衛……何でしたっけ」
「防衛特調、正しくは防衛省特殊事態調査室ですね、立川駐屯地に置かれています。
今回のように時空を越えた異変の調査を専門にしている組織です」
「えっ、そんな組織があるんですか？」
目を丸くするルリ子に、陸自娘たちや艦娘たち、更に本郷も苦笑いした。
「この世界ではこの１ヶ月ほどの間に、こういう非常事態を何回も経験していてね。
必ずしも慣れてるわけじゃないが、そういう事態を想定して調査が必要ってことで、
防衛省の傘下にて調査チームを編成したんだそうだ。
俺も今はいちおう、防衛特調の“特別アドバイザー”なんだぜ？」
そう言って、本郷は胸ポケットから小さな名刺を出した。
その名刺を見て、茜や神通も反応する。
「あ、その名刺あたしも持ってますよ」
「私も頂きましたね」
「みんな時空を越えてきた有志だもんね、情報交換しないといけない立場だし」
まとめるように言ったのは瑞鶴だ……周囲の少女たちが一様に頷く。
今回彼女は加賀と共に、自衛隊の索敵チームに参加している。
そんな瑞鶴に、夕張が話しかける。
「そう言えば瑞鶴さん、瑞雲のパイロットは大丈夫でしたか？」
「何とかね……ちょっと危なかったけど、あの子らもベテランだからさ」
夕張や瑞鶴が話題にしているのは、本戦の裏側で起きた“空中戦”のことだ。
瑞鶴が射出した偵察機“瑞雲”がポイズンキャリアーのドローンと接触したらしい。
特攻を仕掛けてきたドローンを、瑞雲はギリギリで回避したようだ。
瑞雲は瑞鶴と同調する“装備妖精”が操縦するが、結構練度が高いのである。
そして立花は本郷が渡した名刺をまじまじと眺めて、改めて口を開いた。
「……こいつは感慨深いな、猛にこんな肩書きが与えられる日が来るとはなぁ」
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そしてこちらは立川基地の防衛特調――茜らが話題にしていたその組織である。
１足先に帰還したオーディアンの有志と斉藤たちが、黒木に報告を行っている。
一通り報告を受けた黒木は、腕を組んで溜息を吐いた。
「事件は何とか収束したが……テロリストに逃げられたのは少しマズいな」
「申し訳ありません、連中どうやら、ワープ装置みたいなものを持ってるようです」
「確かゾイド紛争の時にも、そういう現象が報告されていたな。
……レマック殿、やはりこれも“銀河社会”のテクノロジーと縁がありますかね？」
黒木に話を振られたのはアトラス傭兵団の団長レマック・ゼインだ。
レマックは甲殻類を人面に整形したような顔にシワを寄せて、軽く頷いた。
「恐らく、携帯式の空間転移システムを使ったのでしょうな。
銀河社会でも余り多くは普及していませんが、そういう技術ソースはあります」
「空間を飛び越えるって簡単に言うけど、使用者には負担が大きいものなんですよ。
強化兵としての耐久性を逆手に取ったアイデアとも言えますね」
こちらはアリシェイルだ……ショッカー連合の“切り札”に最初に気付いた１人だ。
その言葉にレマックの同志アリーナも同意する。
「普通は宇宙船を使うのが鉄板だもんね……自分自身が宇宙船並みにタフじゃないと、
そうポンポン使えるアイテムじゃないはずだけどなぁ」
「オートロンはそういう種族だからこそ、グランドゲートを使うことが出来るわけよ。
けど今回は、そのショッカー怪人ってのもそれが使えることを証明した。
それにあいつら――ゴーディスの名前を口にしたみたいよ」
アリシェイルの最後の言葉に、アリーナやレマックはすぐに反応した。
「ゴーディス……あいつらもこの事件に絡んでるのね！」
「確か宇宙マフィアの１つでしたね……その話は私も以前マーク殿から聞きました。
東京怪獣事件の際に霞が関に襲来したロボット兵器の主だと」
「資料を読ませて頂きました……確かにあれはゴーディスのジェネラルジョーだった。
そしてそれを操縦していたのもまた“ショッカー怪人”だったそうですな」
黒木の言葉にレマックが反応し、それを受けて改めて黒木が言葉を返す。
「……ということは、ショッカー連合を以前からそのゴーディスが支援をしていて、
これからもそうした技術がテロに利用される恐れがあるということですね」
「宇宙技術を悪用したら、独裁国家みたいなのが簡単に作れてしまうので、
銀河社会ではその供与の是非を、慎重に判断するのが常識なんですがねぇ……」
「秘密兵器を渡すようなものですよね、そのリスクは理解出来ます」
「それともう１つの報告なんですが……こちらも宇宙技術の可能性があるとか」
話題を切り替えたのは陸自娘の１人、市ヶ谷愛である。
“防衛省の記憶”を持つ彼女は今、防衛特調の幹部メンバーの１人となっている。
市ヶ谷が話題にしたのは、モール内で目撃された“新たな戦士”だ。
それは“ガンダム男”ガレスや、抽象的な怪獣のような“怪戦士”を指している。
市ヶ谷の指摘に、再びアリーナが頷いた。
「私たちがこの星に飛来するきっかけになった“事件”に、縁がありそうですね。
ほらついこの前も、宇宙マフィア工作員同士の衝突事件があったじゃないですか。
あの時立川基地で暴れた工作員のうち２人が、“変身能力”を持っていましたよね。
プラズマモールに現れた“怪戦士”にも、同じ技術ソースが疑われます」
「１人はデストラクタのルドルスだったらしいな、もう１人はあのアレックだったとか」
「ギスターがそう言ってただけだけどね、疑わしくはあるわよね」
アリーナとレマックの会話を聞きながら、市ヶ谷は思わず苦笑した。
「銀河社会には、ああいう変身アイテムがあるんですね……」
「まぁ色々な能力を持つ種族がいますから、ギャップを調整する意図もありますしね。
あ、そうだ――この技術、まだ見せてなかったですよね」
そう言うと、アリーナは腕に巻いた機器を軽く操作した。
するとアリーナの全身を光のリボンが包み込み、１秒弱ほどで服装が一変したのだ。
さっきまで着ていたラフな服装とは違い、今度は少し厚手の作業服のようである。
突然アリーナが見せたパフォーマンスに、黒木は目を白黒させた。
「なっ……今のは！？」
「エーテルスーツ……銀河社会では標準的な、作業服の装着システムです。
宇宙服のように手間のかかる装備も結構多いので、着脱の手間を省くために、
原子レベルで圧縮しているものを、こうして再構成するシステムが存在するのです」
アリーナの横でレマックが「やれやれ」といった素振りをしつつ、そう言った。
アリーナは苦笑しながらその言葉を補完する。
「えーとまぁ、つまりですね……銀河社会では必然的なアイテムだってことです。
今回の疑惑アイテムと違うのは、作業用か、戦闘用かってだけですね。
なので銀河社会の正規軍に属する兵士も、こうしたアイテムを標準装備してます」
「なるほど……ちゃんとした理由があるんですね」
「エーテルスーツのシステムは、我々オートロンも使いますよ。
メカニカルな装備品には変形機能がありますが、それでもスペースが足りない場合に、
原子レベルで装備を圧縮出来る、エーテルスーツの技術が重宝しますね」
アリシェイルが更に情報を加えたが、黒木も市ヶ谷もただ苦笑するばかりだった。
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そしてその日の夕方――異世界有志たちが金芽台のサイトＧに戻ってきた。
ただし今回は、結城や茂、立花やルリ子も一緒であるが。
「ようこそサイトＧへ……クルマはそこの車庫に入れてください」
一行を出迎えたのはアイレスとライカだ。
そして早速、アイレスの言葉に黒潮が違和感を感じたようである。
「えっ……車庫？ そんなんありましたっけ？」
「確かに最初はなかったわね、だから後から増設したのよｗ」
「な、なる……さすが銀河社会クォリティやなｗ」
ライカのフォローに苦笑いする黒潮――いや陽炎も苦笑している。
そして本郷はというと、１階ロビーの横のドアに、結城たちを案内していた。
「ここがロビーだ……そこのドアから、防衛特調がある立川基地にもつながってるぞ」
「えっ、立川ってここから５ｋｍは離れてますよね？ ――まさか」
怪訝な表情を浮かべた結城に、本郷は「あぁ」と意味ありげな笑みを浮かべた。
「こいつも“銀河社会クォリティ”でね、空間を飛び越えているらしいんだよ」
「何でもアリですね、銀河社会っていうのは……」
「そうですねぇ――ついでだから、もう１つ情報公開しておきましょうかｗ」
２人の横から、連絡ドアの前に出てきたライカは、新たな情報を有志たちに伝えた。
「数日前にドアノブに操作ボタンを付けたんですけど、気付いていました？」
「……そう言えば、何か改修してるなと思ってましたが」
「実はこれ、転移先の座標を前もって指定するボタンなんですよ」
ライカの言葉に、本郷はハッとする……何かに気付いたらしい。
「まさか……夢の島にある光写真館にも……？」
「ご名答です♪ あそこにも同じ設備を設置してますよねｗ
あとここから行けるのはその２ヶ所ですが、立川基地側からは更に、
幕張のＧフォース科学部にも連絡するように改修を加えてありますよ」
「参ったな……こりゃあ、俺のサイクロンの出番が益々少なくなりそうだ」
今度は本郷が苦笑いした……その横で、加賀がロビー奥へ有志を案内する。
「色々あって皆疲れているだろうけど、ちょっと話し合っておきたいことがあるの。
瑞鶴とは先日、話したことでもあるんだけど」
加賀の言葉に瑞鶴が神妙な表情で頷いた。
いつも加賀に対抗意識を向ける彼女にしては、ちょっと珍しいリアクションである。
ロビー奥の多目的スペースに有志を案内した加賀は、更に話を続けた。
「このサイトＧに集まっている人たちは、本来なら民間人が多いはずよね。
私たち艦娘は半分公務員みたいなものだし、陸自娘は自衛隊所属とも言えるけれど、
そうじゃない人たちは、どこに籍を置くべきなのか……ずっと曖昧で良いの？」
「確かに……おいらたち竜王メンバーとか、冬雪ちゃんとかは完全に民間人だよな」
「マイティライダーズも公人か民間人かと問われれば、民間人になりますね」
「それってこの前――防衛特調でも出てきたテーマよね。
民間人というだけでなく、学生年齢の子たちもいるのに、どうやって管理するのか」
ライカの言葉に、加賀は頷いた。
その横で鯖江も神妙な表情で頷き、陸自娘としての意見を加える。
「私たちは別に学生ではないから多少とも融通は利くけど、本物の学生もいるもんね。
特殊事態の対処に協力するにしても、“少年兵”にするわけにはいかないわ」
自衛隊法では、少年兵の運用は当然にして違法である。
世界を越えてきた異能者の中には、学生年齢である者も複数いるが、
公的には彼ら彼女らを、自衛隊や防衛隊の作戦に参加させるわけには行かないのだ。
例え彼ら彼女らが異能者でも、未成年を公的に戦闘参加させたりすれば、
世の人権団体が黙ってはいるまい……余計な火種をばらまくことになるのだ。
「そこでね――加賀とも話したんだけど、“有事向けＮＰＯ”を作ったらどうかって」
「有事向けＮＰＯ！？」
「なんだそりゃ？」
「ははぁ、なるほどそういうことかｗ」
瑞鶴の言葉に多くはピンときていないようだが、ライカはすぐに理解したようだ。
鯖江も瑞鶴の言いたいことが何となく分かったようである。
「なるほど……非常事態向けのボランティア団体を作るってことね。
確かに犯罪者の私人逮捕だって違法じゃないわけだし、あり得るアイデアよね」
鯖江やライカの反応を確かめるように、瑞鶴は言葉を続けた。
「民間ボランティアなら、人命救助やテロ工作妨害も違法ではなくなるわよね。
今後似たような有志が参加しても、融通が利きやすくなるわ」
「それなら――そのための“名簿”を作っておかなきゃいけないわね。
みんなで名簿をまとめたら、私やパドルが防衛特調に提出しておくわよ♪」
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| （１３章１話） |
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【Meking Memo／設定補記】
2024年に執筆したエピソード。
プラズマモール事件収束直後のイメージを書いたものだが、
こちらは旧ＯＷ企画打切り前には想定していなかったパートである。
そのため、広義の新作であり、13章以降の展開を匂わすフラグも入れてある。
最後に書いてある、“民間人の異能者有志連合”も新たな要素の１つである。
実は旧ＯＷ企画でもスタッフ間で議論になったテーマであり、
ヒーローマンガにしばしばある、学生年齢の異能者の扱いを解釈したものだ。
自衛隊や防衛隊といった公的な軍事組織が出てくるため、
若年の異能者の扱い方を適当にしておくのも何か違う、と判断したものだ。
かといって超法規的な英雄チームにするのも、ご都合過ぎると感じたために、
「民間人の異能者」が所属するボランティア組織を考えたのだ。
今のところ“民間人の異能者”は、サイトＧに滞在している冬雪たちなど、
限定的なものだが、本文の通りこれから同志が増加することも想定している。
例えばプラズマモール事件で新たな能力を発揮した加奈や零児もそうだし、
壮太や礼子などの“中２病戦隊”を巻き込むことも想定している（笑）
（彼らは異能者ではないが、異能者を高度に理解する同志になり得るからだ）
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