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★ＣＲＹＳＩＳ ＵＮＤＥＲＷＯＲＬＤ 統合ナンバー：EX-ATT18501R（MBS21301R／追記分） |
（注）当ページには年齢制限情報が含まれております、ご注意ください。
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“彼”は湯船の中で、困惑に押し潰されそうになりながら、どうしたものかと思案を巡らせていた。
男子サッカー部の後輩５人と共に、人里離れた林道の奥にある隠れ家温泉を訪れたまでは良いが、
そのミステリアスな露天風呂で、突如自分を含む仲間たちが“変身”してしまったのである。
先ほど生まれたばかりの、ソフトボールより１周りほど大きな“胸”を、彼は改めて触る。
とても柔らかいこの器官は、彼の常識が正しければ本来、女性に付いているはずのものである。
そして胸の下、下腹部の方にはこちらも違和感全開の“開放感”がある。
こちらも彼の記憶が正しければ、本来男性に付いているはずの器官が、今はないのだ。
そう――彼とその仲間たちは、この露天風呂で突然、グラマーな女性の姿に変わってしまったのだ。
彼は半ば達観して、湯船の中で脚を投げ出す。
これからどうなるのか皆目見当が付かないが、せっかく温泉に来ているのだから、縮こまっていないで、
この想像を絶する事態を受け止めた方が、気が楽になる気がしたからだ。
脚を投げ出すことで、上半身に形成された豊満なバストと、下半身に形成されたコンパクトな器官が、
“全開”に近い形で露出してしまうが、ここにいるのは全員、同じ“事件”の経験者なのだ……遠慮も要るまい。
「キャプテン――これからどうするんです？」
「分からない……何か名案ある？」
「……ないです」
そう言って、キャプテンと呼ばれた“彼”以上にグラマーな体形の、髪の長い少女が苦笑いを浮かべた。
この少女もほんの数分前までは男児だった……自分の後輩であり、仲も良い。
すぐ隣に座っている、さっきまで男児だったグラマーな少女は、髪の色も鮮やかな空色だ。
脚を投げ出して座る“キャプテン”の横で、もう１人の“元・彼”は今も少し硬くなって正座している。
それでも、湯船の下で、下腹部にある“縦筋の器官”が湯面を通してチラチラ見える。
女性のそれにしては、やや前寄りにあるようにも見えるが、２人ともまだそこまで女体に詳しくない。
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ＣＲＹＳＩＳ ＵＮＤＥＲＷＯＲＬＤ
クライシス・アンダーワールド 狂気の殿堂
ＭＢＳ日本支部 〜メタロイド実験記2013Ａ〜
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更に耳に入ってくる、自分の声とは思えないハイトーンボイスに、２人は顔を赤らめて押し黙った。
“女性化”によって声も変わってしまったようで、半分ほど夢を見ているような気分だ。
“彼”の隣に座っている後輩の顔も、元々の面影があるものの、まるでアイドルのように可愛い。
その“正体”を知らなかったら、混浴でもこんなに近くに座ったりはしないだろう。
舞台衣装を着せたら、さぞかしスポットライトに映える――そこまで想像して、彼は思わず首を振る。
それを想像させるような容姿だが、それを認めるのは後輩への侮辱になる気がした。
第一今は自分だって大して変わらない姿だ……髪こそ短いが、湯面に写る顔は自分とは思えない。
いちおう元の面影はあるのだが、ドキッとしてしまうほど“少女的”なのだ。
露天風呂の別のコーナーでも、同じように“元サッカー部員”が困惑全開の表情を浮かべていた。
露天風呂の端の方に座っている上記の２人とは別に、中央近くに２人いる。
これも“キャプテン”の後輩であり、中学3年生・15歳のキャプテンの２歳下、つまり中学1年生だが、
見た目は10代後半の女子高生か、それ以上のグラマーな女体へと変わっている。
思春期が始まったばかりの13歳の少年が、突然こんな姿になったのだから困惑しないわけがない。
因みにキャプテンの隣に座る後輩は中学2年生・14歳なのでまさに思春期真っ盛りだ。
しかしそんな状況でも、２人の後輩の片方は、変わってしまった自分の体に好奇心が旺盛であり、
顔を赤らめながらもあちこち触っている……無理もないことではあるが、
その隣に座っている“相方”は、両足を抱えて友人の好奇心を戸惑いながら見ている。
その自分にも同じ好奇心があるはずだが、根がとてもシャイらしく、自らは積極的に触ろうとしない。
「体が女になってしまった」ことを、認めたくないところもあるようだ。
「ひゃぁ……ウソみたい……！」
「ちょっ、やめなよ……なんか恥ずいって」
「恥ずかしいけどさ……ぅわ、柔らかい……ほ、ホントにないね下は……不思議……」
思春期が始まっただけでなく、いきなり女性化してしまうという非常識な状況なのだから、
羞恥心がないはずもない……好奇心がそれに勝るかどうかは、それこそ個人差なのだろう。
２人ともやはり女性的な声であるが、元々声変わりしていなかったようで、まだ違和感は少ない。
そして２人の髪の色も個性的だ……１人は青く、１人は赤紫色である。
“キャプテン”も自分では余り認識出来ていないが、実は青紫色の髪だったりするのだが、
隣の後輩が自分以上にインパクトのある外見に変わったため、圧倒されているらしい。
露天風呂の横にある洗い場にも２人いる……共に中学2年生・14歳であり、
赤茶色の髪でやや大柄な方が、困惑の表情を浮かべながらもワイルドな素振りをする。
チームのムードメーカー的な存在だったようで、強がりもあるのかも知れない。
体がやや大きいこともあって、かなりグラマーな体形であるが、抜群のスタイルを持っている。
もっとも本人は困惑しかないだろう……14歳の男子がいきなりこんな姿にされてしまったのだから。
「くそ……ガチなのか、これ……マジかよ……！」
口調はまさに男子のそれだが、やはり女性的なハイトーンボイスである。
隣に座るもう１人は、対称的に顔を赤らめ、縮こまっている。
体格は隣の赤茶色の髪の“元チームメイト”より小ぶりだが、バストはむしろこちらの方が大きい。
実は元々サッカー部のマネージャーで、クールな性格の持ち主なのだが、
それだけに自分とチームメイトに起きた非常識な事態に、頭の整理が追いついていないようだ。
髪の色は濃い目のエメラルドグリーンだ……この辺も普通の女性とは違う。
「あ、あり得ない……どうなってるんだ……！」
「お前……声めっちゃ高いぞ」
「そっちだって……」
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その時――湯船に浸かっている“後輩”の１人から、悲鳴のような声が上がった。
「ちょ――何これ！？」
露天風呂の真ん中当たりに座っていた“元13歳のシャイな少年”が、自分の指を見ている。
その指は白っぽく変色し、光沢を放っている……濡れているからではない。
まるで陶器を思わせる、無機質な光沢なのだ。
「指先が変色して……何だこれ、硬いよ、どうなってるんだ！？」
「あ、ボクもだ……今度は何が起きてるの！？」
隣の“好奇心旺盛な友人”も同じ現象に遭遇したようだ――いや、この２人だけではない。
元キャプテンの“彼”は、ふと違和感を感じ、湯船に沈めていた手を引き上げた。
そしてその指も、やはり変色していた……白っぽいというか、ほのかに桜色にも見える。
しかしその指先はまるで白磁のような光沢を放ち、関節はマヒでもしたかのように既に動かない。
更に隣の後輩も、やはり同じ変化を起こしていた。
「キャプテン、それ……え、もしかして……あっ、自分の指もだ！」
しかも変化はかなり早く、すぐに手の平を覆って手首へと進んでいく。
“彼”は不吉な想像をした……まさか、この現象の結末って……！
「まずい――みんなすぐに、湯船から上がるんだ！」
それは想像でしかないが、それが現実になるとしたら、取り返しの付かないことになる気がした。
キャプテンの“号令”に、後輩たちが困惑の表情を浮かべる。
「えぇっ――こんな姿なのに！？」
そう、今“彼ら”は全員、グラマーな女性の姿になっているのだ。
こんな格好で飛び出して、どこに行けというのか……そして誰がこの非常識な事態を信じるのか。
「気にしている場合じゃないよ、もっと大変なことになるかも知れない！」
だが――彼らいや“彼女ら”が危険を察知した時は、既に手遅れに等しかった。
“キャプテン”も露天風呂の縁にある階段状の石に這い上がるものの、そこから先に進めない。
腕だけでなく脚も変色が進み、思うように体が動かなくなっているのだ。
「うわぁっ……何だこりゃ、体が石みたいに……！」
洗い場に先に出ていた後輩の１人が、再び甲高い悲鳴を上げた――赤茶色の髪の方だ。
白磁に似た光沢のある桜色の変色は、その後輩の下半身を塗り潰し、上半身へと進んでいる。
立とうと片膝を立てたまでは良いが、その先の動きが思うようにならず、青ざめた顔でもがいている。
“キャプテン”が知っている、その後輩の逞しいキャラクターからは、信じられないほど動揺していた。
「ヤバい……助け、呼ばなきゃ……くっ、もう脚が……！」
隣にいた“元マネージャー”も、動かなくなった脚を引きずり、這うように出口の方へ向かうが、
そうこうしている間にも変化は下半身を塗り潰し、前に進めなくなる。
クールでプライドが高いはずの“彼”の表情が苦悶に歪み、ぶわっと大粒の涙が溢れた。
これから何が起きるのか……キャプテン同様、彼にも想像出来たらしい。
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そして最初のピークは、露天風呂の中央に座っていた若い後輩に現れた。
「わぁっちょ……しっかりして！」
「体が、動かない……イヤだ、誰か……助けｔ――」
“彼”は今や――ほぼ全身が桜色の陶器細工のように変わろうとしていた。
自分の信じられない変化に動揺する表情が途中で停止ボタンを押すように静止し、
目から瞳の影が消えたかと思うと、もはやポーズをほぼ変えないまま、小刻みに震え始めた。
陶器のような無機質な目の縁から、涙の筋が複数、動かなくなった頬を伝っている。
声もほとんど聞こえない……いやかすかに、絞り出すような呻き声だけが断末魔のように籠もる。
「ヴァ……ア”……ァ……ァ…… ――」
そしてそのかすかな呻き声も数秒で急激にフェイドアウトし、後輩はついに全く動かなくなった。
頬を伝う涙の跡だけを残し、今や全く反応しない桜色の彫像に。
（ヤだ……声が……息が、止まって……苦しいよ……！）
実は――その時点でもまだ意識は残っていたが、既にそれを感じ取れる者はそこにはいなかった。
「そ、そんな……くそっ、イヤだ……このまま、固まる、なんて……！」
寄り添っていたもう１人の後輩も何とか立ち上がろうとするが、中腰の姿勢はもうほぼ動かない。
好奇心で体を触っていた時と似たような姿勢のまま、その動きが奪われつつある。
「やめろ、イヤだ……誰ｋ―― ア”ッ……ア……ァ……！」
更に洗い場にいた大柄な後輩もほぼ全身が変化したようで、表情は苦悶のまま硬直していた。
こちらもカタカタと不気味に震え、湯煙の向こうから喘ぐような小さな呻き声が漏れる。
這って出口に向かおうとしていた方も、既に顔まで変化が進みつつある。
「くそっ、なんで……やめろ、助け――ィア”ッ……ア”……！」
そして隣のチームメイトが“全身変化”して数秒後、こちらも全身が陶器細工のように変化した。
涙が溢れる目から瞳の影が消え、動かない喉から絞り出すかすかな呻き声のみに変わる。
そして“彼”がそうなった頃には、隣のチームメイトは既に声を失い、全く反応出来なくなっていた。
（畜生……息が、出来ない……苦しい……！）
そして“ハイライト”は、それからわずか数秒後にやってきた。
今や自らも上半身まで変化が進んだ“キャプテン”が、隣のグラマーな後輩に必死で訴えかける。
その後輩は何とか湯船から体を出し、洗い場に上がろうとしていたが……
「くそ、体が動かない……キミだけでも、助けを呼んできて……早く――！？」
その後輩に呼びかけたキャプテンだが、しかし“彼”も洗い場に身を乗り出した所で体が止まっていた。
顔まで進んだ変色で表情はほぼ動かなくなり、無機質な桜色の頬を苦悶の涙が流れている。
「キャプ、テン……助けて……もう……ダ……ｍ―― ヴァッ、ア”……アァ……ァ……！」
思うように動かない唇を必死で動かし、訴える後輩だが、間もなくその唇も全く動かなくなった。
既に完全に止まった後ろの仲間たちを追うように、かすかな呻き声だけが、後輩の意識の存在を示す。
間もなく失われてしまうだろう、キャプテンの“最後の視界”に、変わり果てた光景が広がる。
自分と共にこの露天風呂を訪れた５人の後輩は今や全員、桜色の無機質な彫像へと変わった。
うち２人は既に微動だにせず、呼吸も止まった……いや今まさに２人、それに加わろうとしている。
しかもキャプテン自身を含め、ここにいる６人全員がグラマーな女性の姿に変えられたまま……
「そ、そんな……こんなことって…… ――くっ、うぅっ、ここ……マデ……カ……ヴァッ……！」
サプライズでやってきた格安温泉で、まさかこんな目に遭うなんて。
間もなくキャプテンの視界も完全な闇に閉ざされ、顔が動かなくなった“彼”は、“死”を覚悟した。
しかもそれは“人間としての死”ではないのかも知れない……それもまた、絶望的なことだった。
（信じ、られない……こんな、形で……人生が、終わる……なん……て……）
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数分後――音のなくなった露天風呂に、桜色の陶器細工のような“少女像”が数体、並んでいた。
いずれも苦悶の表情を浮かべ、ポーズは様々だが、目には瞳の影がなく、既に呼吸も全くない。
目尻からは涙が数滴流れているが、この露天風呂の熱気の中では、間もなく乾くだろう。
数分前まで“彼ら”だった“彼女ら”は、今や全く動かないが、しかしまだ実は死んではいなかった。
（………、………）
（………？………！………）
（………！………！！………）
桜色の陶器細工のような硬い物質に「石化された」６体の「女性化された少年たち」は、
いずれも全く動かなくなった体の中で、まだ弱いながらも意識が残されていた。
石化の完了と共に生物としての器官を失ったためか、既に思考は完全に止まってしまっているが、
意識自体はあるため、「言葉にならない自我」に今も動揺し、苦悩し続けているのである。
（………！………！！………、………）
完全に自由を奪われてしまった“キャプテン”は、光を失った世界で音もなくもがいていた。
これが覚悟していた死なのか、それとも違うのか、それを考えることも出来ない。
自分の意思を反映しなくなった体には、かすかに温泉のさざ波が当たる感触があるが、
既に視界は闇と化し、音もなく、思考もなく、かすかな感情の波だけが揺れ動いていた。
（………？………、……… ――）
自分がどうなってしまったのか、もはやそれを考える余裕もないが、１つだけ確信していたのは、
間もなくこの感情の発露も止まり、全てを感じなくなってしまうだろうことだった。
それは恐怖と呼べるのかも知れないが、どうにもならない今となっては、どうしようもなかった。
永遠に闇の世界に閉じ込められることに比べれば、多少はマシだったかも知れない。
それから――更に数十分ほどが経過した。
「メタ・クォーツ・ジェネレータはちゃんと止めたな……始めるぞ」
そう言って、血の気のない肌と短い角を生やす“怪人”のような男が２人、扉を開け放った。
木の枝のようなものを洗い場に差し込み、上下左右に振る。
そして変化がないことを確認してから、２人は洗い場の中に踏み込んだ。
それは“彼ら”を石像に変えてしまった“波動”が、まだ出ていないかどうかを確認するためである。
「ほぅ、今度は少しピンクがかってるんだな」
「元男子だったとは思えんな……良い体つきじゃねぇか」
「“エヴァノイド”ってやつだからな、体形は幾らでも弄られる」
洗い場で“石化”している２人を見て、人外の男たちはそう言った。
ここにいる“少女像”たちが、元々は男子であったことも知っているようだ。
それもそのはず――彼らはこの“元少年たち”を“少女像”に変えた組織の部下だったのである。
１人がおもむろに、片膝を立てた“元ムードメーカー”の少女像のところに歩いて行き、
その豊満なバストや下腹部を興味本位にまさぐった。
「……ん？ 女性器ってこんなに前だったか？ 別に幼女ってわけでもねぇだろう」
「それがエヴァノイドの特徴の１つらしいぜ、元々そこに男性器があった名残なんだとよ」
「つまり出ていたヤツが引っ込んで、溝まで出来たってわけか」
そんなことを言いながら、男の１人がその“女性器に変わった男性器”を更に指で撫で回す。
そしてその“仕打ち”を――実は“当事者”は苦悩と屈辱を持って味わっていた。
（――！？ ………！………！！………！！！）
グラマーな少女像に変わってしまった自分の体を、胸や下腹部を、誰かが撫で回している。
“元男子”にとって、これほど恥辱的かつ、屈辱的な気分もないだろう。
とりわけワイルド気質で、ムードメーカーだった“元・彼”には耐え難いことだったに違いない。
思考はなく、視界もない暗闇の中で、彼の意識は沈黙の中でもがいていたが、
しかし体は全く動かず、人外の男たちの残酷な好奇心の行為に、全くなすすべはなかった。
わずかな救いの１つは、男たちの卑猥で屈辱的な言葉も、聞こえていなかったことだろうか。
「硬いのが残念だな、柔らかいなら挿れてヤれるのによ」
「おい、遊ぶのもその辺にしとけ、もたもたしてると俺たちが粛清されちまう」
改めて見回すと、露天風呂の方にも４体の少女像が、思い思いのポーズで並んでいる。
１体は露天風呂の縁に膝をかけ、今まさに逃げ出そうとしていたことも分かる。
「こっちにも逃げ遅れたヤツがいるようだな……中途半端な敬礼してるのは何でだ？」
「石化する頭か顔を触ろうとして、途中で固まったんだろうよ」
「それにしても、相変わらず精神の波動が皆無だな……絶縁性が強いっつったって、
霊力や魔力なら電磁波の効果に依存しなくても良いはずだろう」
「何でも、多結晶構造だから、魂がそこに複雑に“ねじ込まれてしまう”かららしいぞ」
「なんかそれって、魂の方も無事じゃ済まなそうだが、死んでいるわけじゃねぇのか……」
「この“ＺＦＣ”ってセラミックは結合が強いから、魂が抜け出せないのかもな」
そう呟きながら、人外の男は再びその「膝をかけた少女像」の胸をまさぐった。
“元キャプテン”の横にいた後輩だ……奥にはその元キャプテンもいる……もちろん少女像の姿で。
（……！？ ………！………！！………）
そこにもやはり、今なお思考のない意識が“少女像”の中に閉じ込められているが、
人外の男たちにはその“波動”を感知できないようである。
“元少年”の彼はそのことを当然知り得ない……言葉を奪われた状態でなお助けを求めようと、
“懇願の感情”を向けるが、受け入れられないこともまた、苦悩の１因であった。
既に光も音も言葉もない世界に閉じ込められて数十分が経ち、意識も曖昧になっていたが、
男たちがその体に触れることで、意識が再び鮮明になるのだ。
けれども意識が鮮明になっても闇の世界は変わらず、思考もないのである。
何も見えない世界で突然、硬い体に触感が伝わるだけなのだ。
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「そら、この結晶体を使え……これでこいつらの意識の有無が分かる」
“作業開始”の前に、男の１人がもう１人に水晶体のようなものを手渡した。
それを先ほどの“キャプテンの横の後輩”の少女像に向けると、水晶体が淡く明滅する。
明るいと見逃すような小さな明滅だが、薄暗くなってきたため分かりやすい。
男が試しにその白磁の壺のような胸を触ると、水晶体の明滅は強くなった。
「ほぉ……意識があるだけじゃなくて、触られているのも分かってるのか。
ってことはさっきの洗い場にいたやつにもこいつを試したら、どうなるかな？」
男が言っている「洗い場にいたやつ」というのは、元ムードメーカーの少女像のことである。
さっきは全く無反応――外から見ればだが――だったため、関心を持ったらしい。
しかしもう１人の男はそれをたしなめる……同情ではなく、遊んでいたら作業が進まないからだ。
「そいつは後で良いから露天風呂の湯を抜け、熱風で乾かして消毒したら、作業開始だ」
そして数分後――露天風呂の湯が抜かれ、湯船にいた４体の少女像が熱風乾燥される。
ドライヤーのような機械は見当たらない……どうも“魔術的”な処理のようだ。
この施設自体、ある魔界組織の傘下にあるためだろう。
実はこの施設――３年前にも同じように人体を石化する実験に使われている。
３年前ここで、同じようにセラミック質の石像に変えられた少女たちがいたのだ。
知っていたら彼らもここには来なかったろうが、それもこれも、今や全てが無意味なものだった。
今また自分たちも、同じような姿に変えられてしまったことも、知る由もないだろう。
洗い場にいた２体を２人で台車に載せる……陶器細工のような少女像は結構重い。
恐らく体重は100kgを越えているのではなかろうか……同サイズの陶器細工ならそのくらいあろう。
どこかに運び去るつもりらしい……そして男たちの作業は、露天風呂側の４体に入る。
縁の岩に膝をかける、不安定な１体を運び出し、その奥に男の１人が向かった時であった。
ふと――男が持っていた結晶体が、淡い光を放射した。
「ん、何だと……おい、水晶体が光ってるぞ、まだ触ってねぇのに」
「そんなことあるか……意識も通さない絶縁結晶だぞ、俺たちの気配が分かるはずない」
「だったら自分で確かめてみろよ」
男たちの接近に「反応している」のは、露天風呂の中央やや縁寄りに立っている少女像だ。
「人間だった頃」女性化した自分の姿に関心を持って色々触っていた“元少年”である。
何も見えず、聞こえず、触らなければ何も感じないはずなのに、確かに結晶体が明滅している。
とても淡い光だが、朦朧とした意識の中で、何かを感じ取っているらしい。
（………？………、………）
隣に座っている“最初に石化した”少女像の方は、近づいても変化がない。
立っている方よりも暗いながらも光はあるため、まだ意識の完全停止には至ってないようだが。
ただどうやら「気配を感じる」のは、この個体だけらしい。
「光が強まるのはこいつだけか……水晶体のバグじゃなさそうだ」
「元々、霊力の資質が強かったのかもな……人間にも時々、そういう掘り出し物がいるらしいぞ」
「じゃあこいつは復活するのか？」
「自力じゃ無理だろ、幾ら霊力が強くても……人間にそこまで出来てたまるか、さぁ続けるぞ」
そう言って男たちは“運び出し作業”を再開した。
先ほど「触っていないのに反応した」少女像は、その方向に目を向けて、音もなく立っている。
もっともその目に瞳の影はなく、恐らく何も見えてはいないはずなのだ。
彼らはこの露天風呂から運び出され、近くに隠してある地下室へと移設される。
地下室には“先客”がいる……３年前に、同じ実験で石化処理された10数体の少女たちだ。
もっともこちらは正真正銘の元少女だ……今回の“実験体”より白が強く、まさに白磁である。
もちろん、彼女たちには既に意識がない……石化されたのは３年も前なのだから。
セラミックの彫像と化した体の中に封印された意識は、概ね１〜２週間ほどで停止する。
今回新たに運び込まれる６人も、同様に１〜２週間で意識も止まってしまうだろう。
当然のことながら、運び込まれる地下室に“同志”がいることも、認識出来ないはずである。
彼ら（彼女ら）のかすかな意識の中では、ひたすら「沈黙が支配する闇」でしかないのだ。
それはまさに絶望としか呼べないものだった……５年後に、ある有志がここにたどり着くまでは。
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2040年のある日、紀伊半島の山中にあるアクエリアス・センター。
その地下７階にある個室に、かつて同志に“キャプテン”と呼ばれていた者が暮らしている。
メタロイド・アークスの“元実験体”の１人である“フィオ”だ。
2013年に、中部地方にあった“偽装温泉施設”で「生きた石像」に変えられた１人であり、
「人間時代」の記憶の多くは失っているが、“元男子サッカー部員”という自覚は漠然と残っている。
ただし本名の記憶は失われているために、今はフィオという名前を「与えられている」のだ。
またその外見も、“男子サッカー部キャプテン”だった時代の面影はほとんどない。
淡く桜色を帯びたガラス細工のような質感を持つ、特殊なセラミック結晶質のメタロイドであり、
しかもグラマーな女性体形を持っているからだ……彼らを“保護”したアクエリアスの諜報記録では、
女性型の強化人間、エヴァノイドに分類される処理を受けたことが分かっている。
ただ顔つきだけは中性的な雰囲気で、“少年時代”の面影がかすかに残っているようであるが。
フィオは自室に設けられた多用途モニターで、ある画像を複雑な表情で眺めている。
後ろの壁が透けて見えるホログラム式ディスプレイに映し出されるのは、少女の石像だ。
22年ほど前、2018年にアクエリアスが保護した当時に撮影された、フィオ自身の写真である。
裸で石化されたまま、偽装温泉施設の近傍の地下室に放置されていたため、体形がよく分かる。
当時は全く意識がない状態で、実はフィオが意識を取り戻したのはまだ３年前、2037年のことである。
“元少年”の自覚を残しているフィオにとっては「不幸な運命の原点」とも言える画像だが、
自分自身の「メタロイドとしての新たな人生の原点」に当たるため、あえて保管することを希望した。
画像を見ているフィオの目には、2018年に撮影された写真と同様に瞳の影がないが、
2018年の画像と違って、全体がうっすらと淡い光を帯びている。
絶縁性の強いセラミック結晶の“体質”である今のフィオは、そのままでは視覚が全くないため、
新開発の“人工網膜フィルム”をその表面に貼ることで、擬似的な視界を補完しているのである。
フィオが「意識を失っていた頃の自分の写真」を見ることが出来るのも、このフィルムのおかげだ。
また耳の穴にもエメラルドグリーンの結晶体が埋まっており、これも感覚補完器具の１つである。
メタロイドは石化した体を「強く念じる」ことで、自分の意志でその体を動かせる特性を持つのだが、
絶縁セラミック体質のフィオはそれが単独では上手く行かないため、こうした補完器具が必要なのだ。
ザイオファイン・セラミックスと呼ばれる高強度新素材の“体質”を持つメタロイドに共通して、
こういう感覚補完器具が後からインプラントされており、それによって彼らは初めて視覚を確保し、
また自分の意志をほぼ自由に「セラミック結晶の硬い体」に反映することが可能なのだ。
その時ふと――フィオはホログラム画像の光沢面に、背後に人影が立ったことを示す写り込みを感知した。
振り返ると――自然に振り返る程度には動けるようになった――自分と似た外観のメタロイドが１人。
個室の扉は、寝ていない限りは開けていることが多いため、通路から入ってきたのだろう。
やはり桜色のガラス細工を思わせる質感で、グラマーな女性体形――今はケオと呼ばれるが、
こちらも“元男子”であり、フィオが人間時代にキャプテンだった、男子サッカー部の後輩である。
2013年の偽装温泉施設で同時に“被災”し、自分のすぐ隣で石化したことも、フィオは記憶している。
元々純粋な性格だったが、女体化＆メタロイド化後、人格も少し中性化しているようだ。
（センパイ……その画像って……）
ケオは困惑の表情を浮かべている……２次処理を受けていないメタロイドに共通して肉声は出ないが、
代わりに念話――テレパシーのことだ――でコミュニケーションを取ることは可能である。
ケオはフィオを良く“センパイ”とか“キャプテン”と呼ぶことがある。
ケオも人間時代の記憶の大部分を失っているが、フィオが先輩であることは漠然と覚えているのだ。
実はフィオと同時に石化を強いられた“元部員”の多くは、こういう呼称を今も使っている。
（あぁ、これ？――うん、龍二さんに頼んで、ここに保存してもらったんだ）
（ボクらが保護された時の写真ですよね……確か2018年でしたっけ）
（良い思い出じゃないけど、今の自分の原点だからね……初心を忘れないためにって）
（……センパイって強いですね……）
ケオはそう「言って」、苦笑するような素振りを見せる。
メタロイドは呼吸しないため音は出ないが、笑顔を見せられる程度には、ケオも自由に動けるのだ。
これも耳の穴のインプラント器具の恩恵である……この器具がないと満足に動けないのだから。
（……そうかな？ 今の原点はみんなほぼ同時だから、大して変わらないと思うけど……）
（いやぁ、強いですよ……ボクだったらとても直視できません、今の自分の姿にも馴染めてないのに）
ケオはそう言って、寂しそうな表情で自分の「桜色のガラス細工」のような腕をさする。
その腕が大きなバストに当たり、小さく「キンッ」と高い音を出した――強化ガラス製のボウルのように。
（過ぎたことを悩んでも仕方ないって、シアさんとかは言うけど……やっぱり割り切れないですよ。
どんなカラダになっても、心の方はまだ「あの頃のまま」ですからね……）
（分かるよ、ボクだって時々気分が沈むから……こういう画像を見て、何も感じないってことはないよ）
（それでも……直視できるだけ凄いと思います）
（ところでケオ……ボクに何か用事があったんじゃないの？）
（えっ……あっあぁ、そ、そうでした！）
ふと――フィオに「本題」を問われて、ケオの複雑な表情が慌てるような雰囲気に変わる。
（ちょっとリハビリルームに来て欲しいんですよ……凄いことが起きてるんです！）
（凄いこと……？）
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ケオがフィオを「呼びに行った」頃――“リハビリルーム”には“音にならないざわめき”が起きていた。
このリハビリルームは、まさにメタロイドのように「活動に制約を持つ者」のために作られている。
基本的には身体障害者向けの訓練室の延長であるが、アクエリアス・センター独自の設備もあるようだ。
そのリハビリルームに、様々な姿の人影が集まっている……全員、普通の人間とは容姿が違う。
やはりメタロイドの比率が多めだが、それ以外の“種族”の姿もちらほらといる。
このアクエリアス・センターに「保護されている」のは“石化被害者”だけではないからだ。
彼らが一様に目を見開いて凝視する先に――やはり１人の、桜色のメタロイドがいる。
やはりフィオやケオの“同期”に当たる、女体化された元少年の“セラミック娘”、ピオである。
フィオやキオに比べるとやや小柄だが、体形はやはりグラマーで「人為的に女体化された形跡」がある。
ピオはサッカーボールをヒザの上に乗せて、蹴るような仕草を何度かする。
２回ほど繰り返すと、ボールは明後日の方向に飛んでいき、それをピオは慌てて追いかける。
そう――サッカーのテクニックの１つである“リフティング”を試みているのだ。
ピオにも“元サッカー部員”の記憶が漠然と残っているため、それを再現しようとしているのだろうか。
しかしピオは本来「まともに動くこと自体に制約を持つ」絶縁セラミック体質のメタロイドである。
メタロイドは「強く念じることで石化した体を動かす」能力を持つが、それ故に「反射行動」には弱い。
「考えなくても体が勝手に動く」ようなアスリート的な反射行動は苦手なはずなのだ。
だから瞬間的な重心移動がないと出来ない、「走る」という動きを実現できるメタロイド自体少数である。
想定外の応力でバランスを崩すと、そのまま補正できずに倒れてしまうケースの方が多いのだ。
しかもピオやフィオといったザイオファイン・セラミックス体質のメタロイドは、
インプラント器具がないとまともに動けないなど、メタロイドの中でもひときわ活動に制約を持っている。
（画像挿入予定orz）
この制約だらけのカラダで「リフティングに挑戦する」ことがどれだけ「とんでもない」ことか。
20年以上も意識がない状態で地下室に放置されてきたフィオたちには、人間時代の肉体感覚はもうなく、
サッカー部の「昔取った杵柄」などとうの昔に「リセットされている」はずであり、
幾ら記憶の１部を残すとは言え、それを改めて再現するのは、普通に動くよりはるかに困難なはずだ。
しかしそれにピオは挑戦しており、２〜３回程度とはいえ「リフティングする」ことを成功させたのだ。
メタロイドの活動メカニズムを知らないとピンと来ない話だが、これは「奇跡的なこと」なのである。
（あぁ〜ダメだ、さっきは３回続いたのになぁ……）
（いや２回でも奇跡だって……どうやって反応してるんだよ、ピオ）
（うーん、どうやってと言われても……直感的なものなんですよねぇ）
（それが奇跡なんだって……俺たち、念じないと動けないはずだろ普通）
ピオの横で唖然とした表情を浮かべているのも“元サッカー部員”の１人であるラオだ。
フィオたちの“同期”では最も大柄だが、推定年齢はフィオより１年ほど若く、ケオと同年代である。
１人称が「俺」であるように男性的な人格が強く残るが、プロポーションはグラビアモデル顔負けだ。
2013年の「あの日」、ラオは偽装温泉の洗い場で石化された、２人のうちの１人であった。
とても負けず嫌いなキャラクターだが、そんなラオでもピオの挑戦は無謀に思えるものだったようだ。
（ピオ君って“高位体”の可能性があるみたいだよ、ラオ君）
（えぇと、高位体って……確か、稀に出る潜在能力の高い個体、でしたっけ？）
（絶縁体質で周囲を満足に認識できないのに、ピオ君は「気配を感じ取れる」可能性があるんだってさ）
（マジっすか……ピオ、そんな潜在能力あったのか……）
（ちょ、なんですか、ラオ先輩もキアさんも……人をエスパーみたいに言って……）
ラオの横で「補足説明」をしているのは“セラミック娘”の１人であるキアだ。
フィオたちよりも３年古い2010年頃、同じ偽装温泉施設で石化された“元少女たち”の１人である。
意識を取り戻したのはフィオたちと同時期であるため、実に27年も意識がなかったことになる。
また彼女も特殊セラミック体質であるため、人工網膜フィルムなどのインプラント処理を受けている。
風呂上がりに駆けつけてきたのか、キアは“トップレス”だ……さすがに下は履いてるが。
周囲に“同志”が多く理解があるためか、あんまりこの辺、遠慮しないことがキアには時々あるのだ。
裸のまま20年以上も放置されてきたわけなので、「もうみんな知っている」のもあるだろう。
ここの同志たちは皆苦労を知るので、そんなキアを見て変な反応をすることもない。
「アレか、ウワサの“リフティング・メタロイド”って……すげーな、夢見てるみたいだ」
珍しくリハビリルームに“肉声”が響く……金色に近い質感を持つ“石像娘”はソリアである。
例に漏れず“彼”も元男子であり、ゴールド属性に見えるが別の特殊金属らしい。
この特殊金属は「霊力に共鳴する」特性を持つため、ソリアも肉声を出せるようになったという。
ピオとは違うベクトルでソリアも“高位体”に当たるが、そんな彼もリフティングまでは出来ない。
その後ろから、ケオと一緒にフィオがリハビリルームにやってきた……予想通り、唖然としている。
（……まさに生命の神秘だね……このカラダでリフティングするなんて）
（あ、キャプテン……いや、まだ２〜３回しか出来ないんですよ、全然出来てる内には……）
（不規則に落ちてくるボールに、このカラダが反応すること自体が奇跡だと思うよ）
（でも、これがある程度出来ないと、サッカーは出来ないですよね……）
（そうだけど――ん、もしかしてピオは、もう１度サッカーを始めるつもりなの？）
その時初めて――フィオはピオの「無謀な挑戦」の真の狙いを悟った。
そう、ピオは「人間時代のキャリア」である、サッカー部の再興を希望していたのである。
（無茶なのは分かってるつもりです……でも、ボクのわずかな“人間時代”のキャリアだから……）
（そうか……サッカー部か……確かにハードルは高いけど、アリかも知れないな……）
（え、どういうことッスか、キャプテン？）
（ねぇみんな――ここでもう１度、サッカー部やってみない？ ピオに習ってさ）
今度は居合わせた同志たちが、フィオの“爆弾発言”に仰天した。
ケオやラオはもちろん、キアもソリアも、瞳のない無機質な目を丸くしている。
（ちょ、キャプテン、それ本気で言ってるんスか！？）
（本気かどうかは自信がないけど、冗談ではないつもりだよ……将来の目標にも良いじゃない）
（サッカー部やるとなると、リフティングでは済まないですけど……）
「メタロイドのサッカー部か……ちょっと面白そうじゃね？」
（ソリアさん、楽しそうな顔してるなぁｗ ――でも、結構ハードル高いよねこれ）
「でもさキアさん、俺らメタロイドの目標って、ただ人並みに動けたら、それでゴールなのかな？
なんかもーちょっと、野心的なこと考えても良さげじゃないかって思うんだけど」
（そうだねぇ……野心的なことかぁ……あたしにも似合うかな、サッカー部のユニフォームｗ）
「良いじゃん、結構絵になると思うよ、俺より話題性あるかも？」
意外？にも、ソリアとキアは“乗り気”のようである。
ケオとラオも苦笑するような表情を浮かべた……無茶なのは承知でも試す、と言うのは簡単だが、
確かに「やってみないと始まらない」話でもあり、人間だった頃はその挑戦を前向きに考えたろう。
（どうする、ラオ？ これ――やめようって言い難そうだけど）
（実は、興味はあるんだよ俺も……アレかな、“乗りかかった船”ってやつかな？）
自分から言い出すのは気が引けるけど、誰かが音頭を取ったらやぶさかではないということらしい。
アクエリアス・センターに“ミュータント・サッカー部”が誕生したのは、数日後のことだった。
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【Meking Memo／設定補記】
2023年に作成した、シークレット・コンテンツ向けのショートストーリーである。
同年に作成したシークレット・コンテンツ向けの集合画から閃いたもので、
最初は集合画特集側に同じ話を書いたが、より細部を掘り下げて１話仕上げることにした。
G-maは時々、衝動的にこういう変態妄想が膨らむことがある（爆）
そして物語に合わせて、新たに挿絵を追加して編集している。
挿絵の１〜３枚目は、ＺＦＣ系メタロイドとなる“予定”の６人の“初期化形態”である。
メタロイド化と同様、エネルギー的な術式でエヴァノイド化されたイメージで、
最初の２人がフィオとケオの「石化前の女体化モード」に当たる。
２枚目の２人がピオとキオの「石化前の女体化モード」に当たり、
３枚目の２人がラオとセオの「石化前の女体化モード」に当たる、というわけである。
“元サッカー部少年”の６人にとっては、ここまでだけでも「１大事」だろう。
年齢的に13〜15歳で設定しているため、まさに思春期真っ盛りでこんな姿にされたのだ。
そしてその後に、メタ・クォーツ・ジェネレータによる「石化処理」が開始されたイメージであり、
最初に全身石化に達するのがキオに当たる……処理開始から約93秒後という設定だ。
ただしこの時点では、まだ体の芯までは石化していないため、全身が細かく振動して息もあり、
この全身石化（体表面石化）から5秒前後で、振動と呼吸が止まる設定である。
「全く動かなくなった」というのがこの段階で、外から見る限り完全静止で無反応になるが、
まだ思考機能はかろうじて残っており、息が出来ない苦しさを「心の声」で訴えている状態だ。
そして更に10秒前後で体の芯まで石化が進むことで「思考停止」状態に達するのだ。
完全石化によって「脳を失う」ため、生理学的な方法によっては思考不可能になる設定だ。
活性化されたメタロイドも「物理的には無垢の鉱物」であるため、実は「脳がない」のだが、
彼らは代わりに「魂で思考する」ノウハウを身につけている、という設定になっており、
（実はこれは精霊のような「肉体を持たない生命体」の知性を説明するための概念でもある^^;）
この能力が開拓されていない者は、完全石化と同時に思考が止まってしまう設定なのだ。
2番目に全身石化するのが、洗い場にいたラオで、処理開始から約99秒後という設定だ。
3番目がキオの親友であるピオ、そして１〜２秒の差で4番目のセオが全身石化、
この辺りが処理開始から102〜104秒後くらいと設定してあるため、
4番目のセオが全身石化して1〜2秒以内に、ラオは振動と呼吸が止まることになるのである。
そして5番目が、セオを除く全景集合画では最も大きく描いているケオとなる。
“元キャプテン”に当たるフィオのすぐ横にいるキャラだ……これが処理開始から106〜107秒後。
そして最後にフィオが108〜109秒後くらいの時間で全身石化することになるのだ。
6番目のフィオが全身石化した頃には、最初に全身石化したキオは15秒以上経つため、
1足早く思考停止状態まで進んでいるイメージで、石化処理の最終段階になっている。
（厳密に言えば意識停止状態が“ゴール”だが、それは1〜2週間のブランクを挟むのである）
フィオの全身石化から約5秒後である113〜114秒後には６人全員の振動と呼吸が止まり、
約15秒後である123〜125秒後くらいには、ついに全員が思考停止まで追い込まれるのだ。
メタ・クォーツ・ジェネレータが作動してから概ね２分余りで、全員石像化することになる。
ただ動作自体はそこから更に数十分続き、実験体の安定を確立させているイメージであり、
「実験体が自発的に復元しない」と確認されてから、装置がストップする設定になっている。
細かい設定だが、「石化を永続化させる」意図で行われているイメージだ（鬼）
無論、メタロイドという設定である以上、６人とも最終的には意識を取り戻し活性化するが、
それは20年以上未来という設定であり、それまでは意識が戻らない設定でもある。
更に竜王が石化実験体（被害者）を発見するのは2018年という設定になっているため、
2013年に設定している今回のエピソードだと、５年は地下倉庫で放置されることになるのだ。
地下倉庫には2010年に石化処理された少女たち（シアやキアに相当する）が既にいるが、
こちらは既に意識はなく、フィオたちも彼女らの存在を認識することは出来ない設定である。
何も見えず、聞こえず、動けないため、自分の周囲に何があるか分からないのだ。
これはエヴァノイド・フリージスやエヴァノイド・セラコートでも同じである。
石像に等しい状態であるため、隣に仲間が立っていても気付くことはまずないのである。
（ＡＳＧの鉱物娘たちも、活性化処理されるまでは似たような状況というイメージがある）
また保護及び活性化後の話は、最初の話から１ヶ月ほど後に追記したものであり、
フィオやケオと呼ばれることになった“元男子サッカー部の石化娘たち”の「新展開」を書いている。
ピオが高位体に準じる潜在能力の持ち主、というのは後付けの設定になるのだが、
「思考停止を強いられた石化体の状態で気配を感じる」という変化は既に仄めかしていたため、
その延長線で「セラミック系メタロイドが奇跡のリフティングをする」シーンを想像した経緯がある。
本文に書いたように「念じないと動けない」メタロイドがリフティングするのは「大変なこと」なのだ。
フィオたちが「サッカー部を再興する」展開も、この延長線で連想したものである。
ＡＳＧシリーズにも言えることだが、「石化してバッドエンド」という展開をG-maは基本好まない。
どこかネガティブな嗜好にも思えるためだが、「プラスアルファ」を好むが故でもあるだろう。
更に銀河社会考証にも通じる文脈で「異種族の能力の有効利用」の発想の“原点”でもある。
異能を「戦うためだけに使う」という“異世界ものの先入観”を、G-maは共有していない（苦笑）
きっかけは「戦闘志向の異世界創作に飽きた」ためだが、「裾野を拡げたい」と思ったのは確かだ。
新しい変化をポジティブに活用する、そこに「未来がある」とG-maは信じているのである。 |
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