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★Ｐｒｏｊｅｃｔ Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ 黙示計画 統合ナンバー：EC-X20501（CMS2130802H） |
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プラズマモール１階の吹き抜け広場。
「はい、こちら暗黒司祭――何ですと！？」
ショッカー連合“本隊”とヘッドセットらしきもので通信していた暗黒司祭が、
急に声を上げた――その表情からは不敵な笑みが消え、横にいる立花を鋭く睨み付ける。
対する立花の表情は“想定外の事態”を察したか、逆に笑みが生まれていた。
「どうやら――予定が狂ったようだな？」
煽るような立花の言葉に、暗黒司祭が小さな舌打ちをした――その時だった。
吹き抜け広場の端にあった、階段室横の従業員通路につながる扉が突然開け放たれ、
迷彩服の小柄な女性数人が雪崩れ込んできたのだ。
「手を挙げろ――自衛隊だ！」
“陸自娘”の松本亜衣璃と春日井樹、そして豊川かるらである。
松本たちは両手に小銃を持っており、“人質”の少女たち数人と瞬時に目配せする。
視線の先にいたのは――木更津茜と習志野飛音、福知山凛子だった。
「松本、豊川！」
呼びかける声と共に、松本たちが手にしていた小銃の１部を素早く放り投げる。
そして姿勢を低くして飛び出した茜や習志野が、それを最短距離で確保した。
少女らの目にも留まらぬ“連携プレー”を間近で見た暗黒司祭が、再び眉を潜める。
「この小娘共――怪しいと思っていたら、自衛隊員だったというのですか！？」
どうやら暗黒司祭は、彼女たちが「普通ではない」ことには気付いていたらしい。
“念話回線”こそ傍受出来なかったが、気配を怪しんでいたようだ。
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ＰＲＯＪＥＣＴ ＡＰＯＣＡＬＹＰＳＥ
プロジェクト・アポカリプス 黙示計画
★ 第12章 怪人たちの逆襲 ★
2013年8月2日―日本・プラズマモール事件其の８
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同じくプラズマモール１階の吹き抜け通路にて。
緑川瑠璃子と再会した結城丈二が、斉藤や西村と共にブラッデイターと対峙している。
ブラッデイターの横には、傷ついたナイトラプターもいる。
ブラッデイターは先ほど斉藤のメーサーライフルに“撃墜”されたのだが、
ナイトラプターは“ガンダム男”ガレスとの空中戦で後れを取り傷ついたようだ。
「おのれ……たかが人間如きに、この俺が後れを取るとは……！」
「人間を舐めてるからだろう、手を抜いても勝てると高を括るから負けるんだよ！」
「黙れ裏切り者め、出来損ないの改造人間のクセに！」
コウモリの翼を生やす“狼男”が結城を指差して毒づく。
「その人間に撃墜された“コスプレ野郎”如きが、何とも賑やかなもんだぜ」
もちろん――ブラッデイターやナイトラプターは“コスプレ”ではない。
斉藤は分かって言ったのだ……渋谷事件の時にダークシザースにそう言ったように。
そしてブラッデイターも、ダークシザース同様に血走った目を剥く。
「そうか……ダークシザースの翼を撃ち抜いた“自衛隊員”とは貴様のことだったか」
「本郷殿の支援があってのことさ、俺だけの手柄じゃない」
「改造人間の体を撃ち抜ける武器を、自衛隊が持つとはな……それも“異世界”の恩恵か」
「異世界ね……どうやら、今この世界で何が起きてるのか、分かってるらしいな？」
斉藤はそう言って、西村と目配せをすると、再びメーサーライフルを構えた。
「その話、もっとしてくれよ……話しやすいところに連れてってやるからよ」
「笑わせるな、誰が貴様ら人間に白旗を揚げるか！」
「投降してくれないなら、強制的に連行するしかないことになりますよ？」
西村も慇懃無礼にそう言って、メーサーライフルのトリガーに指をかける。
「図に乗るな人間、我らショッカー連合にはまだ“駒”があることを知らないようだな！」
「ハッタリは通じないぞ……あと“ナイトライダー”なら既に確認済みだ」
「そのナイトライダーは誰に預けてきた？ １号と貴様の同志だけで止められるか？」
ナイトラプターがブラッデイターの横で声を張り上げた――まさにその時だった。
鈍い破壊音が響き渡り、地下駐車場に向かう通路から黒い塊が飛び出してきた。
１号ライダーに似た黒いスーツを着た、昆虫顔の怪人――ナイトライダー１号である。
１号に仮面を剥ぎ取られた黒いバッタ怪人は、よろめくように同志に救援を求めてきた。
「え、援軍を……援軍を寄越してくれ、ブラッデイター！」
「馬鹿者めが、貴様こそ何をしておるのだ……３人もいて何故ライダーが止められぬ！」
「簡単なことだ――俺たちの方が“数が多い”からだよ」
ナイトライダー１号の代わりにブラッデイターに“回答”したのは１号ライダーだった。
更にその横からストロンガーも現れる。
「１号……また貴様か、今度は誰と手を組んだ――！？」
忌々しげにそう言ったブラッデイターの顔が、しかし全て言う前に引きつって強張った。
２人の背後から現れたアリシェイルと出浦信……いや、その２人だけではない。
陸上防衛隊の尾形１尉や桂川３尉も、メーサーライフルを構えて姿を現したのである。
そしてその防衛隊将校の背後には、更に数名の防衛隊員の姿が見えている。
「地下駐車場は既に防衛隊が制圧した、他の出入り口からも突入が始まっているぞ」
「人間に味方する異種族がいるって知らなかったの？ 今まで何調べてきたのよ、バカね」
迷彩カラーに擬装しているアリシェイルが、腰に手を当ててやれやれ、と呟いた。
確かに渋谷事件の時から日本で暗躍しているのなら、そういうことを知ってるはずだ。
ブラッデイター自身、斉藤らの装備を「異世界の恩恵」と言ったのだから。
「知ってはいたさ……忌々しいがな、どうして愚かな人間などに味方するのか……」
「あのさぁ、“愚かな人間”ってのは、あんたらみたいなのを言うんじゃないの？
あんたらも元は人間だそうじゃないの、偉そうに言えた義理かしら」
「バカにするな、我々を人間如きと一緒にするな！」
「分かってないな――そういう所だよ、“愚か”なのは」
今度は１号ライダーが、溜息交じりにそう言った……ブラッデイターが歯軋りする。
「ほざけ裏切り者が……まぁ良かろう、１階は貴様らにくれてやる」
「調子に乗ってんじゃねぇぞコスプレ野郎、突入部隊の１部は屋上から来てるんだぜ」
「言っただろう、ショッカー連合にはまだ“駒がある”とな！」
そう言って――ブラッデイターは腰のベルトに手を当てた。
瞬間、エメラルドグリーンの光のリングが立ち上がり、ブラッデイターを包み込む。
いやブラッデイターだけでなく、戦闘員やナイトラプターも同様だ。
それは第１次立川事件時、斉藤たちが立川基地で目撃した光景とよく似ていた。
「この光は、まさか――！？」
そして光が収まった時には、ショッカー怪人たちの姿は消えていたのだ。
その時何が起きたか――それを理解したのはアリシェイルだけだったようである。
「あいつら――“グランドゲート”が使えるっていうの！？」
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ほぼ同時刻、プラズマモール４階の多目的ホール。
人質にされた残りの株主が唖然とした表情で、目の前の光景を眺めている。
死神博士や地獄大使といった“首謀者”と対峙する、金色の獣人キトラ。
人間離れしたその獣人は、しかし幼い少年を思わせる、あどけない面影を残しており、
今し方窓から突き落とされた被害者を“光の漁網”で助けたのである。
「……大した能力ぢゃのぅ、ショッカー連合に是非ともスカウトしたいくらいぢゃわぃ」
「悪いですけど、遠慮します……僕らはあなたたちのテロを止めに来たんですから」
「それだけの力を持つのに、何故人間を味方するのだ……世界を支配出来る力だというのに」
苦虫を噛み潰した表情でそう言う地獄大使に、キトラは溜息を吐くように言い返した。
「あなたたちと違って、望んで得た能力じゃないですからね……心はまだ人間のつもりです。
体は人間じゃないかも知れないけど、僕は人間が好きなんです」
そう言ってキトラは、床に落ちている切り花を１つ２つ、金色の指でつまみ上げた。
株主総会の時に飾られていたものだ……占拠のゴタゴタで床に散らばったものらしい。
そしてその切り花を、そっと演壇の上のテーブルに置かれた花瓶に戻す。
花瓶は元々テーブルの上に２つあったが、１つは既に割れてしまっていた。
「お前がそう思っていても……人間はお前を受け入れぬかも知れんのだぞ」
「それは仕方ないですよ……僕だって普通の人間だったら、こんな獣人警戒して当然ですし。
でもそれを恨んだって仕方ないこと……僕はその心まで人外にしたくはない」
そう言ったキトラは再び――地獄大使と死神博士をオレンジ色の目できっと見据える。
２人は軽く溜息を吐き、目配せをする……そしてやおら、地獄大使はキトラに向き直った。
「見上げた根性だな……敵ながら天晴れだと言ってやろう――お前、名は？」
「キトラ――キトラ・ケイスです」
「キトラか……良かろう、その心意気と共にしかと、その名を覚えておこう！」
言うや――地獄大使の姿が大きく変化した……ズボンの裾も破れ、長い尾が伸びていく。
「この地獄大使――いや“ソニックヴァイパー”がショッカー連合の名にかけて相手する！」
“怪人化”した地獄大使――ソニックヴァイパーは、まさに“大蛇”の姿をしている。
ファラオのマスクに似た被り物の下にあった顔はキングコブラのように変化し、
両手こそリザードロンのように付いているが、下半身にあった足は１本の尾に変化した。
２ｍほどの“鎌首”を上げたその“毒蛇”の全長は６〜７ｍほどもあろうか。
アナコンダほどもある“コブラ男”の尾の先端には、ガラガラヘビを思わせる器具がある。
同志の“変身”を見届けた死神博士は、含み笑いを浮かべたまま、勝手口から出て行った。
変身を終えたソニックヴァイパーは、大きく裂けた口ににやりと小さな笑みを浮かべると、
キトラに向かって一気に“突進”してきた――見た目に拠らずかなり素早い。
「――！？」
一気に組み付こうとしたソニックヴァイパーから僅差で飛び退き、キトラは距離を取る。
「はは、良い判断だ――組み付けていたら、毒を食らわせるつもりだったがな！
時にどうしたキトラ、お前にはさっきの“飛び道具”があるだろう、何故それを使わぬ？
人間どもがいるから、遠慮しているのか？――甘いな」
雄弁に言いながらも、ソニックヴァイパーは動きを止めず、キトラとの距離を詰めた。
長い尻尾を様々な角度で振り、その先端にある器具のトゲをキトラに向けるが、
キトラは跳躍を繰り返して、ギリギリそれを交わしていく。
そして２人を結ぶ線が株主たちから逸れたのを見計らって、先ほどの“雷撃”を放った。
ソニックヴァイパーはこれも僅差で交わし、外れた雷撃はホールの壁を直撃した。
重力波を含む雷撃によって、壁はあっけなく崩れ落ちていく。
「おっと危ない――ようやく１発目か、だがそんなモーションはすぐにバレるぞ！」
「良いんですよ、別に――」
だが――キトラには“別の目的”があったようだ。
「今です、皆さん逃げてください！ 壁の向こうにある３階屋上に自衛隊が待ってます！」
獣人同士の格闘戦を呆然と眺めていた株主たちが、ハッと我に返る。
「むっ――なるほどな、それが狙いか！ おいお前たち！」
「イィ――！！？」
キトラの“作戦”を知ったソニックヴァイパーは、すぐに戦闘員に妨害させた。
先ほどの“連撃”を回避して生き残った数名の戦闘員だ――しかし、
キトラはその戦闘員の動きを見逃してはいなかった。
ピンポイントでキトラの雷撃を食らい、追撃を図る戦闘員がダウンしていく。
ホールの壁を崩した“爆発”は、戦闘員と人質の間に“空間”を作るためでもあった。
「僕が――やすやすと妨害させると思っていたんですか？」
「く、くふ……こいつは本当に大したものだ、俺もお前のような部下が欲しかったよ」
引きつった笑みを浮かべながら、ソニックヴァイパーはそう言った。
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さてこちらは２階端の現場。
加奈たちを閉じ込めていた瓦礫のバリケードに穴が開き、咲を救出出来たまでは良かったが、
ディアスたちは今なお２体の戦闘員に追い詰められた状況にある。
そしてピンチのディアスたちを救ったのが、“金属化変異”した加奈であった。
見た目は銅像のようだが、駆け回る程度には自由に動き、かつ熱や衝撃にも強い状態であり、
戦闘員のパンチに耐えることも出来るが、しかし撃破出来るほどではない。
しかも幼馴染みの“激変”を目撃したディアスたちに弁解出来ないという制約もある。
自分の意志で動けるとはいえ、この状態の加奈は声を出すことが出来ないからだ。
“念話回線”を持つ柚子と意思疎通出来るのが、救いではあるが。
（困ったな……どうすれば良いんだろう）
戦闘員は加奈の打たれ強さに攻めあぐねているが、それは加奈も同じだ。
柚子も武装がない上、失神した咲を抱えた状態では満足に動き回ることが出来ない。
咲をディアスたちに預ければまだマシだったが、戦闘員の１人がそれを妨害しているのだ。
何を考えているか分からない無口な戦闘員であるが、その辺の融通は利くらしい。
加奈の背後にいるディアスやカズヤが思わず大きな溜息を吐いた――その時だった。
「そこまでにしなさい――自衛隊だ！」
通路の反対側から声が響いた……見ると迷彩服の小柄な女性――木更津若菜である。
その後ろには更に数名、やはり陸自娘らしい若い迷彩服の女性が立っている。
「えっ、じっ自衛隊？」
「何か……中学生か高校生っぽいけど……」
再び困惑するディアスたち……学生にしか見えない陸自娘たちの風貌に戸惑っているのだ。
これがヘルメット姿の成人男子なら、困惑もなかったのだろうが。
「柚子、要救助者はこれだけ？」
「はいそうです、１人熱にやられて意識がありません、医療的な処置が必要です！」
「分かったわ……そこのあなた、抵抗を止めて投降しなさい！」
若菜は戦闘員に向かって小銃を向け警告するが、戦闘員は気にも留めない。
そして意に介すこともなく再び柚子に拳を振り上げようとした時、
その背中に光線が直撃し、戦闘員は弾かれるように吹っ飛んだ。
そして間もなく――２階通路に光線を発射したらしき“人物”がふわりと降り立つ。
「えっ……これって、さっきのガンダム！？」
「何か……ちょっと違うよね……」
先ほど“参戦”したガレスによく似ているが、手足の装甲部などのデザインが違うのだ。
しかも背中には黒っぽい“翼”のようなものを背負っているし、
手に構えている銃器もさっきまで持っていたものより長くスマートである。
そして更にその“異形ガレス”は、加奈と対峙していた戦闘員も同様に光線で弾き飛ばした。
（うゎっ……何これ！？ ちょっと凄いんだけど）
自分が“銅像娘”になっていることを忘れて、加奈も思わず目を奪われる。
若菜は突如乱入した“ガンダム男”に警戒するが、今度は柚子がそれをフォローした。
「姉さん、その人は味方です、さっきも私たちを援護してくれました！」
「そうなの？ ――って、危ない柚子！」
若菜の声にはっとする柚子――その背後に突然、得体の知れない気配が満ちる。
カラスのような大きな黒い翼――ナイトラプターだ。
しかしどうやって、袋小路となっている柚子の背後に回ったのか。
最大限に気配を殺しても、ディアスたちの横を通過しなければ行けないはずなのに。
柚子は思わず、ぐったりとしている咲を加奈に向かって投げていた。
「加奈さん――咲さんを頼みます！」
（えっ、あっ、はいっ！？――ぅわっ！？）
加奈が咲を受け止めるのとほぼ同時に、柚子の首にナイトラプターの手が触れた。
「ふん、良い判断だな娘――それも異世界の経験値か？」
「……あなたに答える必要はありません」
「強気だな……だがこの状況、どうするつもりかな？」
額の横に冷や汗を流しながら、しかし柚子は努めて冷静に振舞おうとする。
見た目は少女だが、その精神はクールな自衛隊員なのだ。
とはいえ、一難去ってまた一難……今度は柚子が、敵の人質に取られる形になった。
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再び１階奥の吹き抜け広場。
武器を手にした陸自娘たちが、人質を監視していた暗黒司祭を逆に包囲していた。
暗黒司祭は苦虫を噛み潰しているが、まだ完全に余裕を失っているわけでもないようだ。
「人間共に味方する“異能の抵抗者”がいるとは聞いていましたが……あなたたちもでしたか」
小銃を構えた陸自娘の１人、習志野飛音はふん、と鼻を鳴らす。
「薄々勘付いてたんなら、どうしてもっと早く行動しなかったんだ……要は舐めてたんだろ？」
「確かに想定外の要素もあったようです……しかしそれはあなたたちも同様でしょう」
慇懃無礼に煽る暗黒司祭に、習志野の眉がピクリと動く。
「まぁ異能者であったとしても、こんなところで大立ち回りなど簡単には出来ますまい。
私は１人ではありません……彼らも“異能者”だということは、分かっておりますよね？」
暗黒司祭はそう言って、周囲で身構えている戦闘員たちに視線を向けた。
「人質に犠牲を強いることなく、この場を収拾する自信が、本当におありですかな？」
「――それはこっちのセリフなんだがな」
ふと――吹き抜け広場の別方向から声がした。
暗黒司祭が振り向くと、１号ライダーやストロンガーが、斉藤たちを連れて立っている。
因みに西村は、健一郎と葵を保護するために地下駐車場に向かったようだ。
「お久し振りです、１号……“あの時”以来ですな」
「あぁ――あんたが変なマジックを使ったお陰で、実に掛け替えのない縁を獲得できたよ」
「相変わらず余裕だな、しかしこの数をどうにかする自信があるのか――」
ストロンガーがそこまで言いかけた時だった――暗黒司祭の手前にグリーンの波紋が煌めいた。
光が収まると――そこにはまさに死神博士が立っていた。
彼もまた、ブラッデイターやナイトラプターと同じ“アイテム”を使ったようである。
死神博士は不敵な笑みを浮かべて、１号の正面に立っている。
「……あんたまでこの世界に来ていたか、しかも最前線で見物とはどういう風の吹き回しだ？」
「わしも“リフレッシュ”したのでね、色々と試してみたいのぢゃよ」
「ほぉ、俺のライダーキックで爆死したヤツが、今度は何をするというんだ？」
「そうさな――ちと早いが、お前には見せてやっても良いのぉ――」
そう言って、死神博士が赤黒いマントをばさっと翻し、自らその姿を隠した――次の瞬間。
アイボリーホワイトのムチのような物体が数本飛び出して、１号を強襲した。
「むっ――これは、何だ！？」
僅差で交わした１号だが、結城とストロンガーは反応がわずかに遅れた。
アイボリーホワイトの“ムチ”がその脚を掬い上げ、あらぬ方向に投げ飛ばす。
ストロンガーは空中で姿勢を立て直したが、結城は上手く立て直せない。
そのまま床に落下しかけた時――木更津茜がそこに滑り込んで自らクッションとなった。
「くっ――す、すいません！」
「気にしないで――あなたは大丈夫？」
そして翻ったマントが元の位置に戻った時に――周囲は死神博士の“変化”を目撃した。
「……イカデビル！」
それはまさに――人型のイカを思わせる、アイボリーホワイトの怪人だった。
１号や結城、ストロンガーなどは死神博士の“正体”を知っている。
怪人たちを生み出すマッドサイエンティストであると同時に、自らも怪人であることを。
その“怪人名”こそ“イカデビル”……ショッカー怪人の代名詞的な存在だ。
しかし目の前にいる“新生・イカデビル”は、過去に見た姿とは少々異なっているようだ。
両腕はかなり逞しく、しかもイカの触腕のように複数に枝分かれする機能があるようで、
先ほど結城とストロンガーの脚を掬い上げた“ムチ”も分岐した腕の１部だった。
「懐かしい名前ぢゃな……今は“エヴィルスクライド”ぢゃがね」
「あのイカデビルが……随分とマッチョになったもんだぜ」
「中々絵になるリフレッシュぢゃろ？――それにこの姿は、ハッタリではないぞ！」
言うや死神博士――いや“エヴィルスクライド”は再び、太い腕を前に突き出した。
瞬間、５本の指が裂けるように５本の触腕に分岐し、ぐんぐんと伸びて襲いかかってきた。
１号とストロンガーは再び交わすが、触腕はすぐに軌道修正して追撃してくる。
それはまるで、５頭の白い大蛇がのたうち回っているかのようだ。
そしてエヴィルスクライドは、更にもう１方の腕も同じように触腕に分岐させた。
こちらは小銃を構えて立っている、陸自娘たちに矛先を向ける。
「きゃっ……何なのこれ！？」
「ふざけんなこのイカジジイ、これでも食らえ！」
習志野の小銃が火を噴く――だが触腕は銃弾をまるでトリモチのように絡め取り、
更には小銃の銃身に巻き付いて、信じられない力で引っ張り始めたのだ。
「くっ、何だこの力！？」
そのまま習志野まで触腕の餌食になりかけた時――鋭い電撃が触腕を直撃した。
思わず習志野の小銃から離れるエヴィルスクライドの触腕。
「ぬっ……今の電撃は誰ぢゃ！？」
エヴィルスクライドが射線の方向に視線を向ける――周囲も吊られて同様に振り向いた。
そして彼ら彼女らは、“新手”の姿を見ることになった。
それは抽象的なクリーチャー風味の外観を持つ、謎の“怪戦士”だったのである。
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| （１２章９話） |
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【Meking Memo／設定補記】
2024年に執筆したエピソード。
ただし構想自体は旧ＯＷ企画打切り前からあり、想定していたアクションハイライトの１つ。
ショッピングモールでショッカー連合と異世界の有志たちが激突する展開であり、
ショッカー連合にとっては初期の“渋谷事件”のリベンジマッチとなる他、
加奈や零児といった、ＯＣＤ世界出身の少年少女たちの転機となるエピソードでもある。
自衛隊や防衛隊の突入が本格的に始まる、クライマックスパートの１つであると同時に、
ショッカー連合の“支援者”の影を匂わせるシーンを挟んで伏線にしている。
ネタバレすれば、アリシェイルが“グランドゲート”と呼んだ怪人たちの転送機器は、
ショッカー連合に“銀河社会”のテクノロジーを供与する、ゴーディスのアイテムである。
グランドゲート自体は厳密にはオートロンのテクノロジーだが、互換性があるのだ。
もちろん人類にはまだ早いオーバーサイエンスであり、それが伏線フラグとなるわけである。
銀河社会を共通の背景の１つにしているのは、ＧＤＷ世界観のクロスオーバーだからであるが、
出身世界の異なるキャラクターたちが共演するのに、統一感を持たせる狙いもある。
人類文明から見れば未知の術式やテクノロジーであったとしても、
人類よりはるかに進歩した銀河社会では、その原理が分かっていても良い理屈であるため、
「空想科学のバックボーン」として銀河社会を位置付けているわけである。
ショッカー連合の大幹部、死神博士と地獄大使が“怪人形態”を見せるのもハイライトだ。
それぞれイカデビルとガラガランダをＰＡ風にアレンジしたものであるが、
より激しいアクションが出来るように、細部のデザインを変えている。
この辺りのアレンジは渋谷事件でのスパレイダーやシザーランスと同様であるが、
特にエヴィルスクライドは本家よりも“ボスキャラらしさ”を強調出来たと思う（笑）
（もちろんＰＡ版ガラガランダであるソニックヴァイパーも中ボス級を意識している）
２階のシーンで柚子がナイトラプターに拘束されるのは、桂枝芽路氏の提案からであるが、
何の前触れもなくナイトラプターが柚子の背後に現れるのも、この宇宙技術によるのだ。
銀河社会はこうした戦術に対応出来るが、人類には未知の技術なので、当然反応が遅れる。
因みに“帰ってきたガレス”はモードチェンジで“Ｚガンダム形態”になっている（爆）
（ナイトラプターが１度は空中戦でガレスに負けたのもこのためという解釈だ）
最後に１階吹き抜け広場に登場した“怪戦士”の正体は、次話に譲ろうｗ
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